魔法の力が宿った道具
舞台となるのは剣と魔法のファンタジー世界。世界には魔法の力があふれており、魔法の力を宿した「魔導具」が存在していた。「魔導師」や「錬金術師」と呼ばれる人々は魔法の力をあやつり、魔導具を作っていた。ただし、魔法をあやつるために大量の魔力が必要で、魔導師や錬金術師になれる人間は一握りだった。そんな中、魔力が少なくても魔導具を作る専門の職人たちが現れ、彼らは「魔導具師」と呼ばれるようになる。魔導具師は魔法を自在に使うことのできない者が多いため、魔導師や錬金術師に比べて社会的地位が低く見られがちだが、彼ら職人の手によって生活に非常に密着したさまざまな道具が生み出されている。
婚約破棄から始まる自由な職人ライフ
前世に日本人の記憶を持つダリヤ・ロセッティは、魔導具師の父親と仲よく暮らしていた。自らも魔導具師として父親に弟子入りし、前世の知識を生かして数々の魔導具を開発していた。そんな中、父親が他界して悲しみに暮れていたが、生前に父親がまとめた婚約話に乗り、これからはよき妻、よき母となることを決意する。しかし婚約者のトビアスの浮気が発覚し、彼から一方的に婚約破棄を言い渡される。これをきっかけにダリヤはいろんな意味で吹っ切れ、我慢して頑張ることをやめ、思う存分好きな魔導具作りに取り組むことを決めるのだった。
魔性の瞳を持つ騎士との出会い
ダリヤ・ロセッティは魔導具師としての仕事を始めるにあたり、自らで素材を集めるべく、近隣の森へ採集に向かう。そこで偶然にも魔物の討伐で傷ついた騎士、ヴォルフレード・スカルファロットに出会う。ヴォルフレードは自らの意思と無関係に女性を魅了する魔性の瞳を持っており、女性との触れ合いを苦手にしていた。しかしダリヤは、女性の一人歩きは危険だからと男装していたため、ヴォルフレードは女性だと気づかずにダリヤに助けを求める。のちにヴォルフレードはダリヤが女性だと気づくものの、自分の瞳に惑わされないダリヤに興味を抱く。その後、恋愛に苦い思いを持つ者同士は意気投合し、ダリヤとヴォルフレードは奇妙な友人関係を築くこととなる。
登場人物・キャラクター
ダリヤ・ロセッティ
魔導具師の女性。燃えるような紅い髪と翡翠(ひすい)色の瞳を持つ。前世では家電メーカーで働いていた日本人の記憶があり、その知識を活かして魔導具作りに邁進(まいしん)している。父親も優秀な魔導具師で、父親を師匠として仰ぎ、幼い頃からさまざまな試行錯誤を行ってきた。父親と協力して「ドライヤー」を作り、その後も「防水布」など便利な道具を作っていたが、1年前に父親が仕事中に病の発作に襲われ、そのまま帰らぬ人となる。兄弟子のトビアス・オルランドと婚約しており、夫を立てるため、彼の好みに合わせて地味目の服装を身につけ、髪も暗い色に染めていた。しかし、トビアスが結婚直前に不貞を働き、そのまま婚約解消を言い渡されてしまう。トビアスとの婚約解消を受け入れたあとは、さまざまなことが吹っ切れ、好きなことをして前向きに生きることを決意する。
ヴォルフレード・スカルファロット
騎士の青年。輝くような美貌を持つ偉丈夫で、黒い髪と金色の瞳を持つ。実家は「水の伯爵家」とも呼ばれるスカルファロット伯爵家で、ヴォルフレード・スカルファロットは四男に当たる。魔性とも表現される容姿で、本人の意図に反して女性を魅了する。それが原因で友人と恋人の関係を破局させたり、同性からも反感を買ったりと人間関係に苦労してきたため、街中では人目を忍ぶようにして暮らしている。騎士団では「赤鎧(スカーレット)」と呼ばれる人目を惹く鎧(よろい)を身につけ、魔物を引き付ける最も危険な部隊に所属する。赤鎧はその性質上、精鋭ぞろいで、ヴォルフレードも「黒の死神」と呼ばれるほどの類まれな身体能力を持つ。しかし、ワイバーンとの戦いで負傷していたところを、ダリヤ・ロセッティに助けられ、彼女と交友を育む。ダリヤから認識阻害の眼鏡をもらったことで、街中もふつうに歩けるようになり、改めてダリヤに強い感謝の念を抱く。
クレジット
- 原作
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甘岸 久弥
- キャラクター原案
-
景
書誌情報
魔導具師ダリヤはうつむかない ~Dahliya Wilts No More~ 6巻 マッグガーデン〈ブレイドコミックス〉
第1巻
(2019-09-25発行、 978-4800008978)
第6巻
(2023-08-31発行、 978-4800013644)