概要・あらすじ
規定の退社時間を過ぎ、会社内に人の気配がなくなったのを確認すると、海老内いのりは自分だけの残業タイムを開始する。残業とはいえ、やり残した仕事をこなすわけではない。彼女が行うのは、職場のフロアを使った、「残業技」という名の遊びである。規定の残業時間をフルに活用し、今日もいのりはフロアに残って、人知れず残業技に挑戦する。
登場人物・キャラクター
海老内 いのり (えびない いのり)
「キマイラソリューションズ」の第三開発部第一課に勤める女性。退社時間を過ぎ、フロア内に誰もいない状態になると、人知れず残業技に勤しんでいる。誰もいない社内での残業技が何よりの楽しみで、残業技のためならば、自らの意思により喜び勇んで休日出勤もする。
河合 (かわい)
「キマイラソリューションズ」の第三開発部第一課の課長。海老内いのりの上司にあたる、朗らかで無邪気な中年男性。自分のデスクには、随所にフリルやリボンがあしらわれており、ぬいぐるみが置いてあるなど、少女趣味に溢れたものとなっている。
守衛 (しゅえい)
「キマイラソリューションズ」の社内警備を務めている老人男性。鼻の下に長いひげを蓄え、その先に小さなリボンを付けているのが特徴。歴戦の残業技者(ザンミッショナー)であり、深夜、誰もいなくなった社内を巡回している最中に、海老内いのりと残業技を競い合う仲。普段は守衛室でモニターをチェックしている。
9Fの女性 (きゅうかいのじょせい)
「キマイラソリューションズ」で、9階のフロアに勤める眼鏡をかけた女性。例えば扉を開けることを「開錠せよ(デスキデチ・ポアルタ)」、ポットでお湯を沸かすことを「電熱の器(ボルエレクトリカ)」といったように、日常的な言葉はすべて、魔法や悪魔に関する言葉に置き換えて発言する。深夜残業の最中に知り合った海老内いのりを、自分が召喚した悪魔だと思い込んでいる。 自宅から持参したレバーを「契約の贄」として、連日にわたっていのりに契約を迫っている。その目的は、いのりを自分の仕事を手伝う悪魔とするためである。
その他キーワード
残業技 (ざんみっしょん)
海老内いのりが勤しんでいる残業のこと。すべての社員が勤務を終えて帰宅した後、誰もいなくなった社内で行われる。残業技をこなす者は、「残業技者(ザンミッショナー)」と呼ぶ。残業と言っても、本当に業務をこなしているわけではない。規定の残業時間を利用して、電話の内線取り次ぎなど、通常の業務に関係したさまざまなことをネタに、タイムを競ったり、自分なりの目標を設けるなどして、社内で遊んでいるに過ぎない。 なお、すべての残業技には、「雷電の内線(ブリッツ・コール)」「魔女の完全定理(ピタゴラス・ウィッチ)」など、中二病全開の名称が付けられており、残業技に関連する各種用語も「内線外線同時コール(テレフォン・ダブル・ショッキング)」「【背水の陣】型(ジン・バックウォーター・スタイル)」のように例外ではない。