概要・あらすじ
女子高生の橘雫は、高校から下校すると、質屋「ぜにや」の店主として店を切り盛りしていた。ある日、お客の1人が買い取ってほしいと、高価な腕時計を持ち込んでくる。質流れにならない限りは買取にならないと説明したうえで、雫は時計を査定し始める。結果、雫は時計に値段をつけられないと説明するが客は激怒し、他の質屋に持って行くと「ぜにや」を立ち去ろうとする。
雫はそんな客の手を取り、彼の持ち込んだ時計の上にともに手を乗せる。すると時計は直接客に語り掛け、これまでの感謝の気持ちを伝えるのだった。結局客は、その時計を質に入れることをあきらめる。雫には、こうして物の記憶や伝えたいことを読み取り、人に伝える力を持っていた。ある時、そんな雫の前に、自分と同じように特別な力を持った少女の透が現れ、雫は透が所属する「リリアン部」のメンバーたちと距離を縮めていくことになる。
登場人物・キャラクター
橘 雫 (たちばな しずく)
女子高生にして、坂の上にある質屋「ぜにや」の店主。セミロングの髪にぱっちりとした瞳の元気いっぱいな少女。物が持つ記憶や想いを読み取る特別な力を持っている。両親や兄がいたが、既に死去している。橘雫は家族の形見の品であるカメラと櫛を大切にしている。
月乃 (つきの)
橘雫の幼なじみの女子高生。ふんわりとしたおさげ髪で、雫よりも背が高い。家は銭湯で、翔太という弟が1人いる。穏やかな性格でお姉さん気質のため、雫からは「月姉」と呼ばれている。雫の兄で今は亡き橘陽向に対し、幼い頃から恋心を抱き続けている。
翔太 (しょうた)
月乃の中学生の弟。橘雫よりも年下だが背は雫より高い。家の銭湯のお手伝いとしてよく番台に座っている。月乃と同様に雫の幼なじみで、雫に対して密かに想いを寄せている。
クロ
橘雫の家に住む黒猫。非常に賢く、人の言葉を良く理解する。時に雫を励ましたり、物事に気付かせるヒントを与える存在。雫の幼なじみである月乃や翔太にもよく懐いているが、雫と同じように特別な力を持った透には警戒心を見せる。
悠 (ゆう)
女子高生で、橘雫の同級生。見た目がボーイッシュで、運動神経の良いカッコイイ系女子。周りの女子からも人気が高いが、男子からはあまり女子扱いされていない。特に雫や一華と仲が良く、3人で一緒にいることが多い。
一華 (いちか)
女子高生で、橘雫の同級生。長くストレートな黒髪のお嬢様系女子。特に雫や悠と仲が良く、3人で一緒にいることが多い。欲しいものを買うため、父親からもらった河童のミイラを、フリーマーケットで高額で売ろうとするなど、突拍子もない行動をとることがある。
透 (とおる)
橘雫と同じ学校に通う女子高生。長髪で背が低く、頭にはいつもお面をつけている。また、言葉遣いが時々古風になる不思議な人物。人の過去を読み取ったり、自分の考えを、言葉を使わずに相手の脳に伝達させる「テレパス」という力を持っている。リリアン部の代表であり、同じく特別な力を持つ雫を何かと気にかけている。
栞 (しおり)
橘雫と同じ学校に通う女子高生。髪が長くカチューシャを付けている。リリアン部に所属しており、人の記憶を消去したり、改ざんする力を持っている。リリアン部では「しおりん」と呼ばれ、笑顔で透の身の回りの世話をしている。そのため、透の扱いはリリアン部で一番上手。
ユーリ
橘雫と同じ学校に通う女子高生。ハーフツインテールの髪型をしている。楽観的な性格で、しゃべると語尾に☆マークが付く。さらにマイペースなところがあり、何かと場の空気を乱しやすい。リリアン部に所属しており、重いものでも軽々と持ちあげる「剛腕」という特別な力を持っている。
火茉莉 (ひまり)
橘雫と同じ学校に通う女子高生。黒くて長い髪の持ち主。照れ屋でクールなキャラクターを装っているが、存在感が薄く、時折自己主張するために騒ぎ出す。リリアン部に所属しており、手から炎を発生させる「パイロキネシス」の力を持つが、部内ではコンロがわりに使われるのみである。
小萌 (こもえ)
橘雫と同じ学校に通う女子高生。髪型はポニーテールで、小柄だが、透よりは少し大きい。しゃべる時には語尾に「じゃ」が付く。リリアン部の部活紹介を聞いて、自由で面白そうだと入部を申し込む。自然の中で育ったため運動神経に優れているが、友達がおらずいつも一人ぼっちだった。
橘 陽向 (たちばなひなた)
橘雫の年の離れた兄で、故人。面倒見が良く、雫はもちろん、幼なじみの月乃や翔太ともよく遊んであげていた。運動神経が良いため翔太には尊敬され、勉強を教えていた月乃からは、好きだと告白されたことがある。
土田 直純 (つちや なおずみ)
質屋「ぜにや」に客としてやって来た、メガネをかけた青年。幼稚園教諭で、園児の杏からは「つっちー」と呼ばれている。遠距離恋愛をしている彼女からの贈り物を質入れするために、暗い顔をして橘雫のもとを訪れる。勇人の別作品、『はなまる幼稚園』の主人公の1人。
杏 (あんず)
草野蕗央瀬とともに、質屋「ぜにや」に客としてやって来た幼稚園児。草野の思い出の品を勝手に質入れしようとしたり、翔太の橘雫への片想いに気づいて一人心を躍らせる、元気な女の子。勇人の別作品、『はなまる幼稚園』の主人公の1人。
草野 蕗央瀬 (くさの ろおぜ)
短髪のハツラツとした幼稚園教諭の女性。過去に土田直純に恋心を抱いていた。その恋の思い出の品であるマフラーを、同行してきた杏に勝手に質入れされそうになってしまう。勇人の別作品、『はなまる幼稚園』の登場人物の1人。
集団・組織
リリアン部 (りりあんぶ)
橘雫が通う高校に突如として現れた部活。部の名前はあくまで仮のもの。部員は透や栞をはじめとした特別な力を持った少女たち。活動内容は特になく、「高級お菓子食べ放題」「合宿はハワイで思い出作り」とうたっている。雫はお店の経営があるため入部はしていないが、度々部室に通っている。
場所
ぜにや
橘雫が経営する質屋。雫はこの家に住んでいる。外側も店の中も古びている。営業を始める時には、入り口に「質」と書いた緑色の暖簾を出す。さまざまなお客が思い出の品を持って来ては、さまざまな物語が展開されていく。