概要・あらすじ
温泉宿を舞台に、忽然と姿を消した人物の謎を解き明かす刑事の姿を描く。うぐいす張りの廊下がトリックのカギとなる、「完全犯罪」や「密室もの」を意識した作品。江戸川乱歩の小説『幻影城』で紹介された密室のアイデアを読んだつげ義春が、自分でも密室ものを描いてみたいと考えて創作したという。
登場人物・キャラクター
伴駄陰 (ばんだいん)
東京からやってきた刑事。一千万円を強奪した銀行強盗に似た男、仁蛭を追って温泉宿に泊まる。密室状態の部屋から忽然と姿を消した仁蛭の謎を推理する。名前は、アメリカの高名な本格推理小説作家、S.S.ヴァン・ダインをもじったと思われる。
仁蛭 (にひる)
一千万円を奪った銀行強盗の指名手配写真にそっくりな男。大雨の中、大きなトランクをさげて温泉宿にやってくる。翌日、部屋から忽然と姿を消してしまう。
宿の主人 (やどのしゅじん)
温泉宿を経営している。新聞の指名手配写真を見て、大雨の中、宿にやってきた仁蛭が銀行強盗だと確信する。
場所
温泉宿 (おんせんやど)
襖や障子のある和風旅館。左甚五郎が作った「うぐいす張りの廊下」をまねた「うぐいす廊下」が自慢。人が歩くたびに「ケキョ、ケキョ」と鶯の鳴き声のような音がする。