うらら迷路帖

うらら迷路帖

母親を探す山育ちの少女「千矢」を中心に、一人前の占い師「うらら」を目指して共同生活を送る4人の少女たちの修行と青春の日々を描いた作品。ノスタルジックな中国風のたたずまいの建物が建ち並ぶ架空の「迷路町」を舞台に、ほのぼのした日常や修行を通じてのさまざまな出会いと、千矢の出生の秘密や占いの神にまつわる不思議な出来事が描かれる。「まんがタイムきららミラク」2014年6月号より連載中。四コママンガ誌らしく、ページあたり2本の縦組み四コマが置かれ、縦に四つのコマを読んで次の四コマに進む構成となっているが、複数の四コマが連続したストーリーになっていることが多い。2016年3月にテレビアニメ化された。

正式名称
うらら迷路帖
ふりがな
うららめいろちょう
作者
ジャンル
異能力・超能力
関連商品
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世界観

架空世界のファンタジーとしつつも、日本や中国の少し古い時代を思わせる衣装や建物、小道具等を用いて、懐かしさや親しみを感じさせる世界を構築。また主要なテーマである「占い」について、現実にあるものをベースに、学問的あるいは実践的に掘り下げ、「祝詞」を唱え、「神様」の力を借りるという設定にすることにより、巫女のようなシャーマニズム要素を加えて作品の奥行きを深めている。

あらすじ

「十番占編」

迷路町で出会った千矢巽紺雪見小梅棗ノノの4人の少女たちが、占い師「うらら」の見習いとして、占い茶屋「棗屋」で共同生活を送りながら、棗ニナのもとで学び、「九番占試験」を突破するまでを描く、いわば初年度編。千矢の母親探しと、千矢自身の謎についても描かれていくが、この段階では、なにかひとつ情報が得られたとしても、謎自体はより深まる形になっている。

「九番占編」

千矢たちが進級し、棗屋を離れて迷路町九番地にある占い学校「九占塾」で新しい先生・椿や新たに加わった仲間・二条臣とともに学び成長していく。主要登場人物の服装や髪型が少し変化し、占いについても「花占い」を主体により、深くバリエーション豊かに学んでいくスタイルになっている。2017年4月時点(単行本4巻まで発行)で進行中の二年度編。千矢の母親と謎の存在「くろう」についても、徐々に明らかになっていく。

メディアミックス

アニメ

2017年1月から3月までの放送期間で、TBS系列を中心にテレビアニメが放送された。制作会社はJ.C.STAFF、監督は鈴木洋平、シリーズ構成・脚本は赤尾でこ、キャラクターデザインは大塚舞、音楽を田渕夏海、中村巴奈重、宝野聡史が担当した。全12話の構成は基本的に原作忠実な形で、「九番占試験」に合格するまでが描かれている。主な声の出演は千矢が原田彩楓、巽紺が本渡楓、雪見小梅が久保ユリカ、棗ノノが佳村はるかで、4人によるユニット「らびりんず」名義でオープニングテーマ「夢路らびりんす」も担当した。

登場人物・キャラクター

千矢 (ちや)

人里離れた山奥で暮らしてきた自然児の少女。生き別れている母と会うために、迷路町の棗屋へとやってきた。母がどこにいるかわからないため、「うらら」となって捜す決意をし、巽紺、雪見小梅、棗ノノとともに、見習いとして棗ニナのもとで修行を始める。それまで社会と隔絶した場所で、動物たちとともに暮らしていたため、一般的な社会ルールを知らず、怒られたときなど謝る際には、腹部を露出して動物のように恭順の意を示そうとする。 また、屋外にいると、どこからともなく動物たちが集まってくる。このように、動物に慕われる、あるいは同じ仲間のように見られる傾向がある。足元に届くほど豊かな明るい金髪とアホ毛が特徴。堅苦しい着物を苦手とし、ラフで露出の多い服装をすることが多い。 非常に長い髪の毛に強い執着があり、切られることを断固として拒絶する。それだけでなく、ハサミを極度に恐れ、見るだけで狂暴化し、水辺ではカニを天敵とみなしているほど。もっとも基本的には天真爛漫な性格で、思い込んだら一直線に行動する一途さも持っている。両親についてはもちろん、出生など謎は多く、育ての親セツの手紙によって15歳になったとわかり、迷路町にやってきた。 正確な誕生日はわからない。自身で、どの占いが得意なのかがわからないまま、九番占に進むことになる。紺の占いで名前を知り、「九番占試験」で窮地を救ってくれた謎の存在「くろう」を通して占う「くろう占い」を使いこなせるようになるべく努力していく。

巽 紺 (たつみ こん)

千矢と同じ日に迷路町を訪れた「うらら」見習いのひとり。同じ15歳の千矢、雪見小梅、棗ノノとともに修行することになる。黒髪ロングヘアーが特徴の、淑やかで生真面目な性格の持ち主。小袖の着物に長い白袴、といった日本の明治・大正期の女学生風の服装を好む4人の中で、もっとも大人っぽく落ち着いた印象の女の子。 同じ迷路町に店を構える「巽屋」の一人娘。幼い頃からうららとしての心得を学んできており、占いについては人一倍詳しい。褒められると得意になって、長広舌となる一面も持ち合わせている。得意な占いは、お狐様を降霊し、文字盤を使ってメッセージを読み取る「狐狗狸」など。そもそも名前からして狐の鳴き声っぽい。千矢にとっては、山で馴染みだった狐と同じだったり、髪を結わえるリボンが狐の耳のように見えたり、得意な占いなど、「狐」を連想せせる特徴が目立つ。 しかし、狐が好むとされる油あげが苦手で、稲荷寿司も食べたがらない。苦手なものとしては、他に幽霊などの心霊現象が挙げられ、怪談などが「弱点」といえる。

雪見 小梅 (ゆきみ こうめ)

千矢、巽紺と同じ日に迷路町を訪れたうらら見習いのひとり。2人とともに修行する仲間となる15歳の少女。「雪見財閥」の令嬢で、紫色の髪をツインテールにしていたり、着物の下にコルセットを着用し、リボンタイやミニスカートでアレンジした、我が道をゆくスタイルに表れているように、西洋文化を好む明るく活発な女の子。 西洋趣味は、「月刊倫敦」という雑誌を愛読しているところにも表れている。水着や下着なども、西洋風のものを好んで身に着けているようだ。なお、普段、先の折れたとんがり帽子を被り、竹箒をよく持ち歩いているのは、10年前マリ・キスピルクエットと出会って以来、西洋の魔女に憧れているから。「小梅」という名前は古臭いと嫌っており、「ミス・プラム」と名乗ることもある。 うらら見習いとなった当初から「タロット」占いが得意と自称していたが、当時はその方法などよくわかってはいなかった。強がりなところがあるが、虫の類を嫌っている。また、勉強嫌いのため、難しい本に囲まれると酔って倒れてしまう。基本的には初心者にも扱いやすい「振子占い」を得意としている。 マリから贈られた「魔女の予言書」での「書物占い」も行うようになる。

棗 ノノ (なつめ のの)

うららである姉の棗ニナと迷路町で暮らしてきた15歳の少女。町にやってきた千矢、巽紺、雪見小梅とともに、うらら見習いとしての修行を始める。知らない人に囲まれると、固まって動けなくなってしまうほどの人見知り。自身の気持ちを代弁するように喋る人形「マツコ」を常に携えている。よくできた姉にコンプレックスを抱きつつ、その背中に隠れるように庇護されてきた。 その背景には、幼い頃に母親を亡くし、姉が母代わりになっていたという事情がある。姉譲りの明るい茶髪のロングヘアーを背中で1本にまとめ、中国の女学生風の袴を着用することが多い。得意とする占いは、マツコの言葉を借りる「人形占い」としている。雷が大きらいで、泳ぎも苦手。 歌を歌ったり覚えたりすることは得意。歌っているときは、人見知りの性質も目立たなくなる上、難しい祝詞を歌として覚えることにも繋がっている。

マツコ

棗ノノが常に携帯する人形。日本人形によく似た着物姿で、長い黒髪の女の子の姿をしている。ノノが幼い頃に亡くなった母の形見とされている。ノノが持つと、カタカナ表記となるぎこちない口調で喋るが、基本的には「腹話術」のようにノノが喋っている。ただし、ノノが意図的に喋っているわけではなく、無意識のうちにマツコの言葉として発しているらしい。 ノノ自身の弁によると、ある日ノノの考えていることを話し始めるようになり、ノノもマツコが考えていることがわかるようになったという。日本人形にまつわる怪談のように、髪の毛が伸びる現象も確認されており、千矢たちに怖がられることも多い。

二条 臣 (にじょう おみ)

千矢たちが九占塾で出会った、巽屋の同期生の女の子。「九番占試験」にひとりだけで合格した優秀なうらら見習いで、扱うことが難しいとされる「夢占い」を得意とする。どこでも眠ることができ、眠ったらなかなか起きない上、寝ぼけて夢占いの結果を口走るなど少々奇矯な行動をとる。小柄な体形とクールな性格、紫色の長い髪を両耳の上でおだんごのようにまとめている髪型が特徴。 前髪で片目が隠れることが多いが、本人によると、居眠りをしてもバレないようにするため。由緒正しい家柄に生まれたが、父親の代で家が没落し、家族全員で内職をする貧乏生活を送っていたため、高額な報酬目的で「一番占」を目指している。眠っていても仕事ができるから、という理由で夢占いを特訓したが、そのせいでどこでも寝落ちする体質を持つに至った。 ある目的のため、千矢の母親を探しており、最初に千矢と出会ったときは、目的の女性と勘違いした。九占塾の寮では千矢たちと同室になる。

棗 ニナ (なつめ にな)

占い茶屋「棗屋」の店主でもあるうららの女性。千矢たち4人のうらら見習いが学ぶ最初の先生。占い茶屋の店主となって弟子を取ることが許される「五番占」の位にあって、千矢たちは初めての教え子ということになる。少々おっとりしたところのある母性的な優しさが印象的。千矢たちからも優しい教師として慕われているが、それまで常に守ってきた気の弱い妹棗ノノが教え子に含まれていることにも、甘やかし気味の教育スタイルが影響していると思われる。 明るい茶色のロングヘアーに、西洋風のエプロンをつけた着物姿が特徴。自分に自信が持てない弱気な面もあり、意外と泣き虫だったり、佐久などごく親しい間には、飲酒して騒動を起こすような姿も見せている。 18歳にして、異例のスピードで棗屋主人を襲名した天才肌のうららで、さまざまな占いに長けている。特にお茶を淹れて相手が飲んだ後、茶碗に残った茶葉の形から占う「茶葉占い」を得意としている。自身の年齢や将来について気にしており、毎日「ニナのどきどきお茶占い」と称して、自身の恋愛について占っている。

椿 (つばき)

「花占い研究室」の教員の女性。「九番占」となって九占塾に入った千矢たちが学ぶことになる。「五番占」のうららだが偏屈な性格。好きな研究だけをしたいからと、当初は千矢たちを教えることを拒んでいた。四角いメガネをかけ、知的な印象ではあるが、身なりにはあまり注力しない。そのため、長い髪はボサボサで、着物も肩をはだけただらしのない恰好になっている。 また長いキセルを咥(くわ)えていることも多く、退廃的空気も漂わせている人物。棗ニナと佐久とは同期で、ニナのことはおせっかいなところが「うるさい」と、苦手だった。自身で考案したものも含め、さまざまな「花占い」を研究しており、マニアックで読みにくいと評判の、長すぎる論文も書いている。 千矢たちは、教え子としてだけでなく、研究の助手や実験対象と考えている。

くるみ

迷路町九番地にある占い学校「九占塾」の事務員の女性。おっとりした印象の和服美人。優しい口調で厳しい案内をするなど、新入生など慣れない人物でも、一度で覚える印象的な人物。「うらら黒歴史帳」の異名を持つ学生名簿帳も管理しているが、実のところは、趣味で生徒たちの仮想写真をコレクションしている。

佐久 (さく)

町の警察的組織「迷路町警ら隊」の「十番地」を担当する隊長。風紀の乱れを取り締まり、町の平和を守るため常に見廻っている。大人の女性だが、ショートカットでアホ毛のある髪型に、詰襟の上衣とショートパンツという動きやすいスタイルが特徴。抜くことは滅多にないが、日本刀に似た刀を携えている。棗ニナとは同年代で、ごく親しい友人でもあり、まるで痴話げんかをするように、じゃれ合う姿がよく見られる。 夜勤で徹夜明けのときなど、朝食に棗屋を利用することも多く、町にやってきたばかりの千矢を「破廉恥な行為を行う痴女」と思い込んで以来、千矢たちを見守るような立場となった。警ら隊に入隊した16歳の頃は髪を伸ばしていたが、命を懸けて町を守る決意の証として切って以来、ショートカットを続けている。 ボーイッシュないでたちのせいで、迷路町に暮らす女性たちにファンが多い。

大島 (おおしま)

迷路町警ら隊の十番地隊平隊員の女性。佐久の部下で、同じ立場の塩沢同様、佐久のファンであることを隠さない取り巻きのひとり。塩沢とはいつも一緒に行動している。黒髪をポニーテールにした髪型が特徴。

塩沢 (しおざわ)

迷路町警ら隊の十番地隊平隊員の女性。佐久の部下で、同じ立場の大島同様、佐久のファンであることを隠さない取り巻きのひとり。大島とはいつも一緒に行動している。長い茶髪を一本にまとめたお下げが特徴。

弁天 (べんてん)

迷路町十番地にある「占物屋 弁天」の店主の老婆。代々迷路町に店を構えているが、うららではなく、町から商売の許可を得て住んでいる。小柄だが貫禄を感じさせ、迷路町のうららを牛耳る「十番地の古狸」の通り名でも知られている。独自の情報網で町の状況を常に把握し、裏社会にも通じているとされる。「賽を振らせたら右に出るものはいない」と評され、イカサマもお手の物の賭博師でもある。 店主として人使いが荒いことでも知られているが、心意気を認めた相手には、なにかと力になってくれる優しい人物。

セツ

千矢の育ての親の女性。千矢の母親の友人で、千矢が15歳になるまで預かる約束をし、田舎の山中でひとり面倒を見ていた。千矢にとって親代わりだが、山で生きるためのサバイバル技術を教える先生であるとともに、友達のように近しい人物でもある。もっとも、セツがどのような立場の人物なのか等、詳しいプロフィールは千矢にもわからない。 作中に顔などがはっきりと描かれないため、年恰好も含めて謎だらけの人物となっている。

巽 時江 (たつみ ときえ)

占い茶屋「巽屋」の主人である「二番占」のうららで、巽紺の母親。紺とよく似た和服美人で、まっすぐな黒髪ロングヘアを、背中で輪を作るようにまとめている。優しい性格だが、少々負けず嫌いで、サディスティックな性質も垣間見せる。「水晶占(すいしょううら)」を得意とし、常に携えている水晶を使って、いつでも占うことができる。 しかし千矢と初めて会った際に行った占いで、母親について読み取ろうとしたときに使った水晶は、砕けてしまっている。

マリ・キスピルクエット (まりきすぴるくえっと)

雪見小梅がまだ幼かった10年前に、仏蘭西から留学生としてやってきて「雪見家」にしばらく滞在していた魔女。それまで小梅が知らなかった西洋のさまざまな文化をもたらし、魔女に憧れる原因を作った女性。マリ・キスピルクエットは当時18歳ながらいたずら好きで、振り回されてばかりだった小梅は、同時に彼女のすべてに夢中だった。 小梅のことは「プリュネ」を略して「プー」と呼んでおり、棗ニナが「ミス・プラム」を略して「プー」と呼ぼうとした時、マリ以外の人にそう呼ばれたくなかった小梅が拒否をしたことにも繋がっている。マリが留学中の間に、雪見家のある町で流行病があって、住人たちに原因だと噂されたマリは仏蘭西に帰国。その際、一緒に行きたいと願った小梅に、「この国で一番の魔女になること」ができたら弟子にすると約束しており、小梅が一番占を目指す理由になっている。

お狐様 (おきつねさま)

巽紺の狐狗狸占いで呼び出された存在。最初は雪見小梅たちに次々乗り移って、占い事故になりかけた。その後、特訓を積んだ紺が、硬貨ではなく自身に憑依させ、そこから力を借りて占いの精度を上げられるようになった。一見すると、紺が激しく情緒不安定な多重人格者になったようで、憑依されているときの紺は、普段とは違ったワガママでイタズラ好きな顔つきに変わる。 最初のときに、千矢におなかを撫でられて怒りを収めた経緯があり、千矢に撫でられるとメロメロになりやすい。また千矢に言わせると、憑依された状態は「きつねくさい」匂いがするらしい。

くろう

千矢が度々目撃している謎の存在。真っ黒な大きなケモノの姿をし、目だけが赤く光っていて、実体がない霊的存在にも見える。ウサギのような長い耳とツキノワグマにも似た胸の白い毛が特徴。巽紺の狐狗狸占いで導き出された文字列「くろう」が名前だと思われる。占いの最中に紺も目撃したことがあって、迷路町の神様ではないかとも考えられているが、正体はわからない。 地下迷宮呪われた大蛇の胃袋で行われたうらら見習いの昇級試験の最中にも、迷宮の魔物に襲われた千矢を守るように姿を現している。

夜見 (やみ)

千矢の母親と思われる人物の名前。千矢がうらら見習い昇級試験の最中に遭遇した呪われた大蛇の胃袋の魔物の声によって知った。魔物は「罪深き裏切り者」と呼んでおり、千矢を「裏切りうららの子」と呼んで、亡き者にしようとしていた。

場所

迷路町 (めいろちょう)

「うらら」の町とされ、「桃源郷」ならぬ「桃占郷」の異名を持つ町。上空から見ると螺旋状に並んだ一番地から十番地までの街区に分けられており、最奥の中心部に一番地がある。名前の通り迷路のような構造をしているが、各番地はひとつ上あるいはひとつ下の番地としか行き来ができないよう建物や壁で仕切られ、番地間は、大きな扉によって通行が制限されている。 うららは自身の位を表す十段階の札と同じ番地までしか入ってはいけないルールになっており、分不相応な番地に入ると、迷路町の迷路から一生出られなくなるといわれている。町の住人の多くがうららで、それ以外の住人も女性に限られており、「女の町」と呼ばれることもあるが、日中は客として町を訪れる男性も少なくない。 地下には巨大な迷路があり、「呪われた大蛇の胃袋」と呼ばれている。

棗屋 (なつめや)

占い茶屋。迷路町を訪れたばかりの千矢たちが、うらら見習いの修行の場として住み込むことになる。迷路町の十番地にある十軒の茶屋のひとつで、棗ニナが四代目の店主を務める歴史ある店。千矢たちはニナにとって初めての弟子にあたる。

巽屋 (たつみや)

迷路町十番地にある占い茶屋のひとつ。巽紺の母である時江が店主を務める。時江自身「二番占」という高位のうららであり、巽屋も十番地の茶屋で筆頭といってもいい存在。優秀な生徒が多く、「九番占試験」にひとりで合格した臣もそのひとり。

吉田屋 (よしだや)

迷路町十番地にある十軒の占い茶屋のひとつ。千矢たちと同じ「九番占試験」に合格した同期生の3人組がいる。3人とも瓶底のような丸眼鏡をかけた秀才タイプだが、昇級試験は三度目の正直で合格。一度目で合格した千矢たちに「ライバル宣言」をしていた。九占塾の寮で隣の部屋になった千矢たちは、3人のことをまとめて「吉田屋先輩」と呼んで仲良くなっている。

占物屋 弁天 (うらものや べんてん)

占いの道具を扱う店。迷路町十番地にあり、町最大とされている。広い店内は無数の占い道具でひしめく。古今東西の貴重な品物が集まることで知られ、連日大勢のうららたちで賑わっている。さまざまな衣装の類も揃っており、一時的に働くことになった千矢たちの中で巽紺だけがメイド服姿で働かされていた。

甘味処 ありんす (かんみどころ ありんす)

迷路町十番地にある甘味茶屋。千矢たち、特に雪見小梅が甘味を好むので、度々作中に登場する。「甘露梅あんみつ お団子ましまし こうめすぺしゃる」という、桶に盛り付けられた巨大なあんみつも提供。正式なメニューなのか、小梅用の特別メニューなのかは不明。甘味以外のメニューに「ありんす特製辛々ライスカレー」などもあり、佐久がこれをよく食べている模様。 なお迷路町には「おしるこ占い」「だんご占い」「あんみつ占い」といった、甘味を利用した占いも行われている。

呪われた大蛇の胃袋 (のろわれただいじゃのいぶくろ)

迷路町の地下にある、複雑に入り組んだ構造の巨大迷路状空間。「魔境」とも呼ばれる迷いやすい場所。からくり屋敷のようにさまざまな仕掛けがあって罠も数多く、普段は封印されている。あまりに巨大な迷路なので、高位のうららにも全容を把握している者はいないといわれるが、なぜかうらら見習いの昇級試験には伝統的に使用されている。

九占塾 (きゅうせんじゅく)

迷路町九番地にある全寮制の占学校。「九番占試験」に合格した千矢たち4人が入学することになる。現役のうららが教員を務め、さまざまな占いの研究室が設けられており、生徒は自分で教わる先生を選ぶことになっている。3年間の期限内に「八番占試験」に合格すると卒業できる。裏庭に樹海があって、生徒たちの修行のための合宿が行われる。

その他キーワード

うらら

この作品に描かれる女性の占い師(作中では「占師」と表記)のこと。星占いやタロット占いなど、さまざまな手段を用いて占いを行う。国中の女の子たちのあこがれの職業。15歳以上の少女が、見習いとして先輩うららのもとで修業し、資格を獲得することになる。入門当初は「十番占(じゅうばんうら)」と呼ばれ、「十番札」という免状を持つ。 試験に合格すると、九番、八番と昇級していくが、八番までは「見習い」の立場、七番占から占いの仕事を受けることができるようになる。五番占になると、茶屋の主人として弟子を取ることもできるようになる。最高位の「一番占」は、世界に数人しかいないとされ、占いを頼むには法外な料金が必要とされている。占いの方法はさまざまで、自分が得意とするひとつあるいは複数の方法を用いることができるが、それ以外の占い方についても学ぶ必要がある。 占う際は占いかたに合わせて、詩歌あるいは呪文にも似た祝詞を唱え、迷路町の神である「姿無き神様」の力を借りて、結果が得られるといわれている。さまざまなことについて占うことが可能だが、結果を都合よく解釈してしまいやすい「自分を占う」ことは、すべきではないとされる。 また占いに力を貸してくれている神様を占うことは、絶対の禁忌として堅く禁じられている。なお、うらら同士は、見習い期間も含めて通常ライバル関係となることが多い。

うららの心得 (うららのこころえ)

「七番占」以上のうららが、仕事を引き受ける際に心に留めておかねばならないルール。占いの依頼者とその意思を尊重することや、仕事をする上で信用を損なう行為を禁じることなどが定められている。なお、千矢のだらしない服装は、第二十五条の品位ある服装を保つべしというルールに抵触している。

伝説の一番占 (でんせつのいちばんうら)

うららの最高位で、世界に数人しかいないとされる「一番占」中、特に優れた能力を持つ人物。どんなことでも占うことが可能で、普通のうららでは見ることすら叶わないものも、見られるとされている。

姿無き神様 (すがたなきかみさま)

迷路町の神々のこと。うららたちの占いに、力を貸していると信じられている。迷路町には「八百万」の神がいるとされ、常にうららたちを見守っているという。うららが占いに力を貸してくれた神の正体を知ろうとすることは禁忌とされ、神を占うなどの行為には、占う力が一生失われるか、あるいは命が失われる、といった罰が与えられると信じられている。 巽紺の母時江によると、神様に選ばれたうららだけが神様の姿を見ることができ、声を聞くこともできるという。

白無垢祭 (しろむくまつり)

迷路町で毎年行われている伝統行事。うららたちが花嫁衣裳をまとって町中を練り歩く華やかな祭りで、神様が花嫁となるうららを選んでいるといういわれがある。町の外から多くの見物客が訪れるが、中にはうららの「ナンパ」を目的とする者も多く、佐久たち警ら隊が取り締まりを強化する機会にもなっている。

水止舞 (みずとめのまい)

雷鳴に怯える棗ノノを見て巽紺が踊った謎の舞。古来より伝わる、雨を止ませるための日照り乞いの儀式に行われるもの。紺自身も本でしか知らず、まるで「しゃちほこ」のような奇妙な体勢なので、雪見小梅たちには「一発芸」と受け取られていた。

狐狗狸 (こっくり)

文字盤上を動く硬貨からメッセージを読み取る占い。占師と占いの対象者や同席者が、文字盤上に置かれた硬貨に人差し指を置き、「お狐様」あるいは文字通り狐や狸などの動物霊を、降霊することによって行う。占者が一種の自己催眠状態に陥ることでコインを動かすものとされる。巽紺が好んで用いる占いだが、占いに参加した者は一種の背徳的心理状態に陥ることが確認されている。 西洋の占い「テーブルターニング」が基になったと考えられているが、厳密には占いというより「心霊現象」だろうとする人物もいて、集団催眠など、危険が伴う術とされている。現実に行われることもあり、オカルト的な都市伝説ともされる「こっくりさん」と基本的には同一。

流れ星占い (ながれぼしうらない)

うらら見習いになったばかりの千矢たちが、棗ニナの授業で習った初歩的な占い。占いで得られる結果も、対象者の願いが叶うかどうか、「可」か「不可」といった程度の単純なものに限られる。占いの手順は、まず黒い紙を貼った提灯を用意し、暗幕を張って暗くした室内で願を駆けながら、線香で提灯に12か所穴を開ける。 するとプラネタリウムのようにロウソクの明かりが漏れて星が現れるが、提灯を傾けて燃やし、星を「流す」。ゆっくり20秒数えてから火消し布で提灯をくるみ、燃え残った提灯に星がひとつでも残っていれば、その星が願いを叶えてくれるといわれている。

黒子占い (ほくろうらない)

棗ニナが千矢たちに出題した「暗記試験」のテーマにした占い。身体にあるひとつひとつの「ほくろ」に意味を見出すもので、占いの種類としては「人相占い」の一種。黒子(ほくろ)は一説に、母親が子に望んだ性格などが、おなかの中にいる間についたもので、「母黒(ははくろ)」と呼ばれていたといわれている。占い方は基本的には黒子の位置と形からその意味を読み取り、例えば棗ノノのように右目尻に泣き黒子があると、「男泣かせな魔性の女」になるという。

振り子占い (ふりこうらない)

千矢たちが棗ニナの授業で習った占いのひとつ。水晶のような石を結び付けた紐を使って、主に探し物などの用途に使うもの。古くから地下水脈を探す際などに使われてきた。探し物を念じることで、それがある方向に振り子が揺れる。読み取り方も直接的でわかりやすいため、経験の少ないうらら見習いでも扱うことができる。雪見小梅は習って以来、振り子に「振子・ユレール」という名前をつけ、年齢や性格などの設定もつけていた。 これは一般的にそうするものではなく、小梅らしさが表れた行為。なおこの設定の内容は、九番占に昇級するための試験までに、美幼女から癒し系お姉さんへと成長していた。占いを実践する際の祝詞も、小梅オリジナル作となっている。

祝詞暗唱試験 (のりとあんしょうしけん)

うらら見習いである「十番占」の段階で必ず受ける重要な試験。テキストとして使われる「占いのための祝詞全集」の全十章百節を、すべて暗記する必要があるため、うららを目指す誰もが苦労する伝統的な難関とされている。祝詞は占いだけでなく「まじない」や「祈禱」にも使われるが、基本的にその種類ごとに定型文が決まっている。古くから伝わる伝統的なものは、言い回しや言葉遣いが古めかしく、覚えるのも難しい。 本来祝詞とは、神様の力を借りるために送るメッセージであり、気持ちが込められたものであれば、どのような言葉を使ってもいいとされている。

天の数歌 (あまのかずうた)

病の平癒や日々の健康を維持するまじないのための祝詞。特に身近で生活に密着したものと捉えられていて、子守歌として歌われることも多い。祝詞も数え歌になっていて子供にも親しみやすく、幼い時分の棗ニナが、母親と一緒に、まだ赤子のころの棗ノノに歌い聞かせていた。

泉中術 (せんちゅうじゅつ)

うらら同士が、互いの占力を高めるために行う秘術。水の清らかな泉で行うものとされ、うらら同士が水中に潜り、水を媒介として互いの気を混ぜ合わせて、占力を増幅したり共有することができる。ただし、行う者同士の相性によって結果が変わりやすく、一方に力が集中してしまうなど、危険性があって秘術とされている。

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