概要・あらすじ
幼い頃、大好きな母を亡くした糸野きずな。スタイリストだった母のクロゼットで毎日泣いていたら、いつの間にか洋服たちの声が聞こえるようになった。きずなは「今日どうしても着て欲しい」という洋服の声に応え、私服で中学校に行ってしまい、先生から怒られることもしばしば。そんなきずなの夢は、魔法のようなコーディネートでみんなを夢中にさせていた母のようなスタイリストになることだった。ある日、クラスメートの二人の女子が「日曜に男の子たちと遊びに行くのにかわいい服がない」とぼやいていた。その子たちの友達の藤末真咲が「たくさん服を買ったから1~2回着た服をあげてもいいよ」と彼女たちに言っているのを聞きつけたきずな。きずなは彼女たちと一緒に真咲の家についていき、二人に似合う服をコーディネートする。きずなが「どうしてそんなに着ないうちに次の洋服を買ってしまうの」と真咲に尋ねると「親が喜ぶから」だと言う。真咲の両親は仕事で忙しく、服を買うことで愛情を示しそうとしていたのだ。たくさんの服の中にかなり着古したワンピースがあった。クラスメートがかわいいと触ろうとした時、誤って袖を少し破いてしまう。真咲は一瞬悲しそうな顔をしたものの、「繕えば着れるでしょ」とその子にワンピースをあげた。しかしその子はワンピースを忘れて帰ってしまう。真咲がワンピースを持ってその子を追いかけると、服をもらった二人は真咲の陰口をたたいていた。真咲は二人に「嫌なら直接言えば?」と怒り、そのワンピースをゴミ箱に捨てた。近くにいたきずなはワンピースを持って帰り、袖を繕ってワンピースの声を聞いてみた。するとそれは両親との思い出のワンピースで真咲の宝物だった。きずなは小さくなってしまったそのワンピースを、今の真咲でも着られるようにリメイクすることを思いつく。
登場人物・キャラクター
糸野 きずな (いとの きずな)
中学2年生、13歳の女の子。母は人気のスタイリストだったが、きずなが幼い頃に亡くなる。母のクロゼットで泣いていたら、いつの間にか洋服たちの声が聞こえるようになった。洋服以外でも身に着けるイヤリングや靴の声も聞くことができる。「洋服たちが今日どうしても着て欲しいと言っている」と、制服があるのに私服で登校してしまい、たびたび先生から叱られている。周りからは「面白いことを言う人」「不思議ちゃん」と思われている。髪型は両耳の後ろでお団子にしたり、三つ編みにしてまとめたりしている。夢は母のようにみんなを夢中にさせる無敵のスタイリストになること。
藤末 真咲 (ふじすえ まさき)
中学2年生の女の子。糸野きずなのクラスメート。腰までの黒髪ストレートで、前髪は真ん中分けでおでこを出している。きりっとした目元の美人で、タワーマンションに住んでいる。両親は仕事で忙しく、服を次々に買い与えることで、子供への愛情を示していた。真咲は素直に寂しいと言えず、強がっているうちに友達の前でもうまく笑えなくなり、周りに気を使わせていた。