あらすじ
大人の幼なじみ
弁当屋「よつばDELI」で働く加賀屋楓と青山春は実家がとなり同士で、家族ぐるみでなかよしな幼なじみ。お互いに一人暮らしを始めた二人は、色々な事情によって同じアパートのとなりの部屋に住むことになる。しかし会社員だった春は、同僚の立花恵のセクハラを助けたことで上司とケンカになって退職して以来、無職のままだった。すぐに部屋を散らかす春に対し、毎朝彼を起こしに行ったり食事の面倒を見てあげたりと、楓は春を心配して毎日のように世話を焼いていた。そんな楓の姿を春は「母ちゃん」と表現するが、楓は昔から春のことを一人の男性として好意を寄せていた。どんなにさりげなく好意をアピールしても、春への思いは届かぬままでずっと進展しないと悟った楓は、春のことをあきらめて職場のマネージャーと付き合うようになるが、マネージャーは妻がいることを隠したうえで楓と不倫に走ったとんでもない男だった。マネージャーと距離を置いていた楓だったが、白菜の誤発注で忙しくなった際に、マネージャーと妻の麻美が楓のもとに押しかけ、不倫の事実を問い詰めてくる。楓は即答でマネージャーと別れると言い放つも、楓に未練のあるマネージャーは未(いま)だにしつこく言い寄ってくる。そんな楓のもとへ駆けつけたのは春で、マネージャーから楓を守った春は自分が楓の「騎士(ナイト)」なのだと宣言。これによって楓はマネージャーとの泥沼状態を回避し、誤発注した白菜の処理も春が手伝ってくれたことで解決する。トラブルや失敗続きの楓は、なんだかんだで支えてくれる春のことがやっぱり大好きなのだと実感する。そんなある日、自分が春にとってどんな存在なのかを思い切って尋ねるが、春の口からはまた「母ちゃん」という言葉だった。鈍感な春が一向に振り向いてくれないことにがっかりした楓は、次の日の仕事をなんとかこなし、帰り道にもう一人の幼なじみの蓮見伊織に遭遇する。食事に誘われた楓は明るく振る舞うも、伊織の車の中で自分の気持ちを抑えられなくなり、泣き出してしまう。
伊織の思い
加賀屋楓は、昔からずっと片思いしている青山春との仲がまったく進展しないことに悩んでいた。それでも春への思いを捨て切れない楓のもとには、春の元・同僚のゆるふわ系女子、立花恵がライバルとして現れる。花見で春に積極的にアタックしてくる恵を強く警戒する楓だったが、春は相変わらず楓のことをなんとも思っていない様子だった。そんな中、蓮見伊織が楓に対して真剣なアプローチを開始し、伊織の参戦によってそれぞれの恋が動き出す。幼少期からの伊織の真剣な気持ちに驚きつつ、なかなか恋愛対象として見てくれない春に未練を残しながらも、楓の心は揺れ動いていた。一方、伊織は春にも楓への思いを告げて宣戦布告し、楓も伊織に告白されたことを春に伝えたことで、彼の心境にも大きな変化が現れ始める。そんな春は、楓の母親が生きていた頃、当時入院していた楓の母親の見舞いに伊織と訪れていた際に、彼女と交わした約束を思い出す。春と伊織は、楓の母親から楓のことを守って欲しいと願いを託されたことで、春はどんな時でも楓のことを守る騎士になることを決意していた。春は楓を大切に思う一方で、騎士にとっての姫である楓のことを一人の女性として思っているかどうか、まだ曖昧だった。楓や伊織のことをよく知る小戸森美桜からの忠告もあり、春は焦りを隠せなくなるが、一方の楓は知っているようで知らなかった伊織のさまざまな一面を見ると同時に、彼の方が自分を女性として見てくれていることを悟り、思いがさらに揺れていた。そんなある日、怪しい占いに走るほどに思い悩んでいた春は伊織と再会し、楓のことは渡さないと改めて宣戦布告されてしまう。それぞれの気持ちが複雑に交錯する中、家族ぐるみの恒例イベントであるBBQの時期が今年も近づいていた。
片思いの嵐
蓮見伊織の真剣で優しい振る舞いの数々に触れ、伊織と付き合った方がいいのではと考え始めた加賀屋楓は、毎年恒例の家族ぐるみのBBQに祖母や父親と参加する。そして青山春をはじめ、数年ほど欠席していた伊織と小戸森美桜も参加することになる。にぎやかながら複雑な三角関係の中、なかなか気持ちの整理がつかない楓は、気晴らしに一人で散歩していたがゲリラ豪雨に逢い、苦手な雷の中で一人怯(おび)えていた。心配した春は森で迷っていた楓を発見したものの、伊織の話を持ち出されたことにカッとなった春は、勢いで彼女にキスをしてしまう。伊織に告白されて以来、次々とときめかせるような行動を見せるようになった春に、楓の心は再び揺れ動く。春の鈍感さから停滞していた三角関係が複雑さを増す中、伊織の真剣な気持ちに早く答えを出すべきと考える楓だったが、それと同時に春との関係にも悩んでいた。そんな中、楓が勤める弁当屋「よつばDELI」に新マネージャーが訪れるようになり、彼女の厳しい態度に戸惑う楓は仕事の悩みも増えていく。さらに売り上げの低下を指摘されたことで、データ処理の仕事を任されることになった楓は、何年も使っていないパソコンを引っ張り出して慣れないパソコン操作で仕事を終わらせようとするが、次々とパソコントラブルに遭ってしまう。結局、パソコン操作に詳しい伊織に頼ってしまった楓は、一晩中仕事の手伝いをしてくれた彼の優しさを改めて実感。一方、新しい就職先のホームセンターに出勤した春は、BBQの時に楓に勢いでキスしたことや、それが原因で伊織に楓への恋心を指摘されたことに悩んでいた。常連客のトメに恋愛相談をしていた春は、楓の幼少期や高校時代のことを思い返していた。そんな春の悩みを知らぬまま、これまで自分の仕事がおろそかになっていたのを実感した楓は、自分もいずれは独立して店を構えたいと考えるようになる。
恋心の不時着
青山春は、加賀屋楓が蓮見伊織と一晩いっしょに過ごしたと聞いたことで悪夢を見ていた。その日からずっと二人のことばかり考えていた春は、職場で買い物に来た伊織に遭遇し、あの夜は楓の仕事を手伝っていただけだと知る。安堵(あんど)しながらも伊織を問い詰める春だったが、楓への気持ちをはっきり伝えないからだと言われたうえに、伊織を通して楓が将来的に自分の弁当屋を持ちたいと考えていることを初めて知る。伊織への敗北感を覚えながらも、ついに楓への思いを決心した春は、街中で楓への思いを叫びながら伊織に宣戦布告をする。一方、新マネージャーからがんばりを認められた楓は、本社への転勤を打診される。しかし本社の場所は九州と遠く、春のことも伊織のことも心残りいっぱいな楓は、ひとまず伊織に相談するも楓自身が決めるべきと言われてしまう。将来のことを踏まえてどうすべきかを考える楓は小戸森美桜にも相談する。そんな中、楓がいなくなるかもしれないと知り、昔からそばにいてくれた楓のことが好きだと改めて自覚した春だったが、いざ彼女を前にすると言葉が出なくなってしまう。春の悩みをよそに、楓は1か月のあいだは新マネージャーが勤める支社で研修をすることになり、それを終えて九州に転勤するつもりでいた。だが、いざ研修が始まると雑用や退屈な会議が多く、自分は現場勤務の方が向いているのではないかと悩むようになる。そんな楓を心配して真っ先に励まし、アドバイスをくれたのは伊織だった。さらに伊織の職場で開かれるレセプションパーティに招かれた楓は、美桜も誘ってパーティに参加することになる。パーティ当日、早めに伊織の仕事を見に来た楓と美桜は、偶然にも仕事で飾り花を会場内に配達していた春に遭遇する。そんな中、パーティの催しに参加するダンスチームが急に来られなくなってしまう。しかし、オーナーが楽しみにしていた「ハニワダンス」を踊らないわけにはいかず、責任者の伊織は一人でなんとかしようとする。それを見かねた春は、前に勤めていたイベント会社に連絡し、自らも加わってダンスチームを組み、ハニワダンスを成功させるために奔走する。
同居生活の始まり
蓮見伊織の職場で起こったトラブルをみんなの協力で乗り切ったことで、加賀屋楓たちの友情はますます深まり、気まずかった楓と青山春も自然と笑顔になっていた。すると気を利かせたホテルのオーナーのトメの提案により、楓はホテル内の豪華なスイートルームで春、伊織の三人で一泊することになる。まったく落ち着かない状況の中で、伊織は改めて楓への恋心を彼女と春に告げるのだった。転勤の返事を上司に伝えるまでの期限がせまる中、悩み続ける楓は転勤当日までに伊織に告白の答えを出す必要があった。さまざまな出来事を経て、楓は楓の父にも九州転勤を報告すると、父親から一人暮らしを始めた時の春の話を聞く。春が騎士としてずっと守ってくれていたことを改めて実感した楓は、伊織の告白は断ることを決める。伊織に直接思いを伝えた楓は、彼への強い罪悪感を覚えると共に、春とは微妙な形になってしまったことで、しばらくは新しい仕事に打ち込むことを決める。しかし転勤当日、本社が倒産していたことを到着後に告げられた楓は、いきなりとんぼ返りすることになってしまう。だが、住んでいたアパートの部屋は引き払ったばかりなうえに、実家には帰らないと断言したばかりだった楓は、帰る場所を失ってしまう。公園で一人途方に暮れていた楓に手を差し伸べたのは、偶然仕事帰りで通りがかった春で、楓に自分の部屋でいっしょに住まないかと提案する。最初は戸惑う楓だったが、春といっしょに過ごせることを素直に喜び、さらに春にずっとそばにいて欲しいと言われて有頂天になる楓だった。しかし、春に好意を寄せる立花恵からの指摘もあり、恋人でもないのに同居している状況に違和感を覚え始める。それぞれが不器用なすれ違いを繰り返す中、楓の誕生日がせまり、誕生祝として当日はなんでも聞くと春に言われた楓は、彼の帰りを待ちながらごちそうを準備していた。だが、職場で春の様子を見ていた恵は仮病を使って自宅に招き、春は彼女を介抱するために帰れなくなってしまう。
餃子のような幼なじみ
加賀屋楓への恋心を自覚した青山春は、彼女との楽しい同居生活を続けるもその仲は進展しないままだった。さらに立花恵の策略によって、春は楓の誕生日には帰宅できずに彼女の機嫌を損ねてしまう。そんな中、春は改めて誕生日を祝いたいから次の土曜日は予定を空けておいて欲しいと楓に告げのだった。やがて迎えた土曜日、恵と二人きりで話をすることになった楓は、彼女から唐突にシンガーソングライターを目指していると告げられる。すると次の瞬間、恵の協力を得た春の誕生日サプライズが始まる。めかし込んだ衣装にフラッシュモブといった手の込んだサプライズだったが、驚きと恥ずかしさのあまり楓はうまく対応できず、その場を離れてしまう。サプライズが空回りに終わってしまった春は酷(ひど)く落ち込み、これをきっかけに彼女とはただの幼なじみに戻ろうと決意し、自分用の寝具を用意して別々の布団で寝ようと楓に告げる。職場で落ち込んでいた春は小戸森美桜のアドバイスを受けて元気を取り戻し、楓とは餃子(ぎょうざ)のようなおいしい関係になろうと決意するのだった。その夜、楓が寂しがっているのをなんとなく感じ取った春は、再び彼女といっしょの布団で寝ることにする。微妙な関係が続く中、楓の職場だった弁当屋「よつばDELI」は、経営者が変わって営業が再開されることになり、彼女は職場復帰が決まる。さらに、楓が前に住んでいた部屋に引っ越して来た大学生の雪野が同僚となり、彼女のプライベートや仕事にもさまざまな変化が訪れる。クリスマスが近づく中、春との仲は大きな進展もなく、クリスマスの予定のない楓は例年どおり仕事に打ち込んでいた。そんな中、久しぶりに伊織に会った春は雪野の存在を忠告され、帰り道に雪野と親し気に話す楓を見かけ、二人の関係が気になって再び落ち込んでしまう。
二人の幸せのために
誕生日のサプライズが失敗に終わった青山春は、その挽回(ばんかい)のためクリスマスに車を借りて加賀屋楓をイルミネーションに誘う。高校生の頃、家の都合でみんなといっしょにイルミネーションを見に行けなかった時、春が人間イルミネーションを披露してくれた出来事を思い出した楓は、そんな思い出に浸りながら楽しいクリスマスを過ごす。大人の男女らしい関係の進展はなかったものの、距離が縮まった二人の同居生活は、その後も平穏な日々が続いていた。一方、楓にふられたあとも一途に彼女を思い続ける蓮見伊織は、小戸森美桜とクリスマスの夜に何かがあった様子で、美桜はそれ以来、黒歴史を抱えたかのようにいつもの明るさを失っていた。美桜のことを心配しながらも春との仲を進展させたいと願う楓は、春といい雰囲気になるも結局ははぐらかされてばかりいた。そんな中、立花恵が楓の職場に訪れたのをきかっけに、雪野は楓と春の仲を進展させるために協力すると言い出す。それぞれの恋心が動き出す中で年末を迎えた楓は春と買い物に出かけるが、スーパーの店員から夫婦みたいだと言われ、春はこの時から楓の彼氏ではなくいい旦那さんになると決意する。そんな春は勝手に楓との人生計画を考え始め、保険を見直そうなどと奇妙な発言を繰り返し、周囲を困惑させる。新たな目標を胸に、ノリノリで楓との同居生活を楽しむ春だったが、雪野はそんな彼をからかったり挑発するようになる。そんなある日、春が働くホームセンターに美桜が訪れ、いつものように春に呆(あき)れながらも助言を与える美桜は、クリスマスの夜に起こった出来事を話し始める。実はあの夜、伊織と遭遇していた美桜は元・彼氏にも遭遇しており、過去のことをネチネチと言われて仕事を馬鹿にされたことで、路上で大ゲンカになりかけたところを伊織に助けられていた。不覚にも伊織にときめいてしまった美桜は、それを忘れたくて酔いつぶれてしまうが、次の日から伊織のことがずっと忘れられずにいた。心配する楓の一言に励まされた美桜は、落ち込んだり悩んだりするのは自分らしくないと考え、思い切った決断をする。
幼なじみから彼氏へ
意を決して加賀屋楓に思いを伝えた青山春に、言葉を返そうとする楓だったが、春は、返事はいいから聞き流して欲しいと告げる。春はまだまだ自分を磨いてから楓の返事を聞きたいと願っており、一方の楓は自分の気持ちをちゃんと伝えたいと思っていた。そしていつもどおりいっしょに寝て、朝もいつもどおり春の出勤を見送るが、一人になった瞬間に楓は昨日告白されたことを実感する。一方、出勤した春も楓に告白したことを実感しながら、自分なりに頑張ったことを少し誇らしく思っていた。幼少期から長年すれ違い続けた二人の恋が一気に進展しようとする中、楓は蝶子の店で春に告白されたことを報告する。それを聞いた小戸森美桜は、蓮見伊織への積極的なアプローチを続けたことで、3回に1回は飲み会に付き合ってくれるようになったと嬉しそうに語る。楓は伊織との関係を意外に思いながらも、すっかりいつもの調子に戻った美桜に安心する。帰宅した楓は春に昨日の返事をしようとするが、部屋から雪野が出て来たたことで中断するも、部屋に戻ったあと春に思いを告げる。こうして楓の春への片思いは終わり、「おとなりの幼なじみ」同士でしかなかった二人は、やっと恋人同士となる。後日、春はトメに喜びの報告をすると、お祝いとしてテーマパーク「ハニワランド」のペアチケットをプレゼントされる。すると楓は、あえて待ち合わせをしてデートっぽくしたいと提案。いつもと違うデートにドキドキしながら、二人は当日に向けてそれぞれの準備を始めるのだった。デート当日、予定どおり待ち合わせをしてハニワランドに出かけた二人は、恋人になったのを実感しながら食事やアトラクションを楽しんでいた。そんな中、楓たちは偶然にもハニワランドに遊びに来ていた伊織と美桜に遭遇する。
実写映画
登場人物・キャラクター
加賀屋 楓 (かがや かえで)
弁当屋「よつばDELI」に勤務する女性。初登場時の年齢は24歳。濃い桃色のボブヘアで、生真面目な性格のがんばり屋で、涙もろい一面がある。口癖は「ばかやろう」。高校時代はサッカー部のマネージャーを務めていた。その頃からよつばDELIをよく利用しており、自分や幼なじみの青山春の大好物は唐揚げ弁当だった。実家がとなり同士の春とは家族ぐるみで仲がよかった。就職をきっかけに離れ離れになる予定だったが、春を心配して同じアパートのとなりの部屋に住んでいる。周囲から春、小戸森美桜、蓮見伊織の四人は「おさななじみーズ」と呼ばれていたことがある。幼少期に病死した母親に代わって家事を担っていたため、家事や料理が得意で面倒見がいい。そのため生活力のない春のことが放っておけず、昔のように彼の部屋に出入りしては身の回りの世話をしている。幼少期から春に恋心を寄せているが、高校時代はほかの女子と付き合っていたり、加賀屋楓のことを母親みたいに思っていると言われたりと、春には恋愛対象として見てもらえていないことで半ばあきらめている。昔からのアプローチにまったく気づいてくれない鈍感な春にあきれたり苛立(いらだ)ったりしつつも、いつもピンチを助けてくれる春のことをあきらめ切れずにいる。一度は春のことを忘れて人生初の彼氏を作るも、交際相手のマネージャーは不倫男だったために再び彼氏なしに戻る。そんな中で伊織に告白され、誠実でまじめな彼と春とのあいだで揺れ、自分のことを女性として見てくれる伊織と付き合った方がいいのではと考えるようになる。そして、新マネージャーに厳しくされたことや、美桜が独立を考えているのを知って以来、将来的に自分の弁当屋を開きたいと夢を抱くようになる。のちに仕事のがんばりが認められ、よつばDELI九州本社への転勤を打診され、春や伊織のことに悩みながらも転勤を決意する。実は雷が大の苦手で、BBQの時に大雨と雷に遭遇した時は大泣きしていた。また寝相がかなり悪く、いっしょに寝た相手は翌朝に顎や額にアザができていることがあり、美桜からは二度といっしょに寝たくないとまで言われている。家事全般をこなせるが特に料理が得意で、春からも料理の腕を高く評価されている。
青山 春 (あおやま はる)
加賀屋楓の幼なじみで、会社員の青年。初登場時の年齢は24歳。明るい茶髪の短髪で、子供っぽく能天気かつ天真爛漫(らんまん)な性格をしている。猫のサブロウを溺愛する猫系男子。素直で流されやすい一方で、正義感の強い熱血漢。実家がとなり同士の楓とは家族ぐるみで仲がよかった。小学校でも同じクラスで、昔からずっといっしょに過ごしてきた。大人になってからも楓と同じアパートで、となりの部屋に住んでいるが、だらしなく生活力は皆無に等しい。食事もおろそかにするために楓にしょっちゅう叱られており、部屋の掃除や食事の面倒を含め、世話を焼かれている。周囲から楓、小戸森美桜、蓮見伊織の四人は「おさななじみーズ」と呼ばれていたことがある。好きなタイプはかわいいゆるふわ系の女性。以前はイベント会社に勤めていたが、同僚のセクハラを助けたことで上司とケンカになって退職し、無職となる。好物は唐揚げで、特に楓の職場である弁当屋「よつばDELI」の唐揚げが大好き。高校時代はサッカー部に所属し、好みのゆるふわ系女子に告白され、楓の気持ちに気づかぬままに付き合っていたことがある。性別や年齢に関係なく、初対面の相手でも分け隔てなく接する明るさと、困った人は放っておけない面倒見のよさを持つ。無職になってからはさらに楓に世話をされる機会が増え、彼女を母親のように思っており、女性としては意識していないような態度が目立つ。のちに立花恵が紹介してくれたホームセンターへの就職が決まる。楓からは幼少期から思いを寄せられているがまったく気づいておらず、たびたび彼女を呆れさせている。恋愛経験はあるものの中身は子供のままで、伊織からはメンタルが小学生か幼稚園児並と評されることもある。楓に告白した伊織から宣戦布告されて以来、二人の関係ばかりを気にするようになると共に、昔からずっといっしょにいた彼女のことを異性として意識し始める。当初はそれでも極力気にしないようにしていたが、楓が九州本社への転勤を打診されたのをきっかけに、彼女にもう会えないかもしれないと悩むようになり、過去を思い返すうちに恋心を自覚した。しかし、楓本人を前にすると空回りすることが多く、以前と同様の態度を取ったりぎくしゃくしたりと、うまくいかない状態が続き、悩み事は新しい職場で出会ったトメに相談することが多い。
蓮見 伊織 (はすみ いおり)
加賀屋楓の幼なじみで、会社員の青年。黒髪短髪で、青山春とは対照的にクールで生真面目な性格をしている。つねに冷静で仕事もそつなくこなす大人っぽいイケメンで、幼少期から文武両道のため、周囲から頼りにされている。恋愛観は一途で誠実。周囲から楓、小戸森美桜、春との四人は「おさななじみーズ」と呼ばれていたことがある。帰国子女として楓たちと同じ小学校に転入したが、当時は太っていたために「帰国デブ」呼ばわりされていた。この時に同じクラスになった楓に一目惚(ぼ)れし、彼女の気を引くために痩せることを決意した。美桜には楓への思いを知られているが、彼女とは昔から気が合わず、顔を合わせるたびにケンカすることが多い。現在は新しくオープンする「ハニワホテル」の企画と営業を担うチームリーダーを務めており、忙しい日々を送りながらも楓のことを気にかけている。高校時代は春と同じサッカー部に所属し、練習もまじめにこなしていた。楓が春に長年片思いしていることを知りつつも、幼少期から楓に一途な思いを寄せており、春への片思いで悩む彼女を見るうちに思いが抑えられなくなり、食事に誘ったのをきかっけに思いを告げた。これで楓と過ごす時間が増えるが、彼女が春への思いで揺れていることにも気づいているため、いつまでも待つと宣言するなど誠実な態度で接している。その一方で鈍感な春に対しては、楓を渡さないとはっきりと宣戦布告しており、彼が楓のことを異性として意識し始めるきっかけを作っている。仕事上手で気遣いもスマートにできるが、他人には基本的に冷たく、楓以外の相手にはめったに笑顔を見せないため、職場では一部の同僚から恐がられたり敬遠されがちで、協調性のなさを指摘されることもある。楓に告白して以来、仕事を手伝ったり食事に誘ったりと、積極的なアプローチを繰り返している。楓に本社転勤のことを相談された際は、最終的には楓自身が決めるべきとアドバイスしつつ、離れてもいつでも会いに行くと告げた。楓を巡って春に悪態をついたり、小馬鹿にしたような態度を取ることもあるが、彼の誰とでも分け隔てなく接する明るさや人付き合いのうまさは昔から認めている。本社転勤の前日に楓には告白を断られてしまったが、一途に彼女のことを思い続ける中で、いがみ合っていた美桜との関係に変化が訪れる。
小戸森 美桜 (こともり みお)
加賀屋楓の幼なじみで、ネイリストの女性。メッシュの入った暗い灰色のロングヘアを姫カットにしている。快活なサバサバした性格で、時おり口調が粗くなる。小学校の頃から楓の友人で、よき相談相手でもある。周囲から楓、蓮見伊織、青山春との四人は「おさななじみーズ」と呼ばれていたことがある。よくも悪くも正直ではっきりした物言いが多く、湿っぽい空気は苦手で、春と同様に幼なじみグループのムードメーカー的な存在でもある。春に長年片思いをしており悩み事の多い楓に対し、冷静に鋭くツッコんだり助言を与えたりしている。何事も悩むことが好きではなく、考えるよりも先に行動するタイプ。伊織が小学校時代に転校して来た時から気が合わず、現在でも彼と顔を合わせるたびに悪態をつき、周囲にもはっきりと彼のことが嫌いだと公言している。ネイリストとしてネイルサロンに勤めているが、上司と気が合わないため、資金を貯めて将来的に独立することを考えている。やや優柔不断な楓と比べ、恋愛を含めた物事への考え方はさっぱりしており、かなりアグレッシブなところがある。付き合っていた男性がいたが、伊織の職場のレセプションパーティでイケメン男性と意気投合したために別れた。楓にふられて落ち込んでいる伊織のことをおちょくっていたが、仕事の都合でデートをキャンセルすることが増えたため、新しい彼氏とも別れる羽目になる。職場では指名も増えて絶好調ながら、そのことを店長に嫉妬され、残業を押し付けられるなど嫌がらせを受けている。はっきりとした物言いで、何かと悩みの多い楓や春のことは心配したり、叱咤(しった)激励やアドバイスを送っている。鈍感で思考が子供っぽい春には助言がおかしな形で伝わることもあるが、特に彼が楓との関係で悩みを抱えるようになってからは、頻繁に悩みを聞いている。楓とは小学校の頃、一人で本を読んでいた彼女に声をかけて友達になり、人見知りだった彼女が友達を増やすきっかけを作った。クリスマスの夜に元・彼氏に絡まれていたところを助けられてからは伊織に思いを寄せるようになり、当初はそれを認めようとしなかったものの、楓の一言に背中を押されて伊織にストレートな告白をした。
サブロウ
青山春が飼っている愛猫。白と黒の体毛を持つブチ模様の成猫で、「ミョアア」「にょあ~」など変わった鳴き声を上げる。高校時代に春に拾われ、彼がアパートで一人暮らしを始めたあともいっしょに暮らしている。愛称は「さぶちゃん」。加賀屋楓からもかわいがられており、彼女が疲れた時は腹などを中心に猫吸いされ、みんなにとっての癒し要員となっている。エサやりをはじめ楓に世話をされることが多いため、彼女にも懐いている。
立花 恵 (たちばな めぐみ)
青山春の元・同僚の女性。春と同じイベント会社に勤務していたが、上司のセクハラ被害に遭っていたところを春に助けられる。結果的に上司とケンカになった春が退職したため、彼には恩義と申し訳なさを感じている。実は以前から春に思いを寄せていた。ウェーブのかかったロングヘアで、愛らしい見た目を持つゆるふわ系女子。しかし内面は腹黒く、恋のライバルである加賀屋楓には容赦のない態度を取ったり嫌味を言うため、彼女や小戸森美桜からは「ゆるふわカス」呼ばわりされることがある。春が退職したあとも積極的に春にアプローチしているため、楓からは激しく警戒されており、彼女とマウントの取り合いをすることもある。のちに、春の新しい就職先として叔父(おじ)が勤めるホームセンターを紹介し、自らもその店に転職した。事務職のため接客担当の春とはほとんど会っていないが、以前にも増して春にアプローチを繰り返している。実はトメの孫で、肉食系女子な性格を彼女から引き継いでいる。家族同然の関係から進展しない楓のことは何かと見下し、絶対に春を落としてみせると情熱を燃やしている。キスにはかなり自信を持っており、仕事の休憩中に春にせまろうとしたが失敗し、幕の内弁当を奢(おご)られるだけで終わった。その後は楓の誕生日に仮病を使って春を自宅に連れ込んだが、看病をされるだけで終わったため、彼のことをあきらめることとなる。鈍感な性格の春を長年思い続けた楓の苦労を察しながら、二人の仲を応援する側に回り、彼を叱咤激励しながら楓の誕生日のサプライズに協力した。実はシンガーソングライターを目指している。
蝶子 (ちょうこ)
カレー店を営む男性。面倒見がよいことで知られている。時おり常連である加賀屋楓たちの相談にも応じている。濃いめのアイメイクが目立つ短髪のオネエで、三角形のピアスを両耳に付けている。悩みやトラブルの多い楓たちに呆れながらも、オネエ口調で愚痴を聞いたり心配もしている。店ではカップル割を採用し、カップルの客には5割引のサービスを行なっている。
店長 (てんちょう)
弁当屋「よつばDELI」の店長を務める中年の女性。加賀屋楓の上司。楓とは仲がよく、時おり悩み相談にも応じている。明るく優しい性格で、彼女の仕事ぶりも高く評価している。楓の退勤時には、余った唐揚げを渡すこともある。のちに楓の転勤が決まったあと、本社が倒産したために店を一時閉店する羽目になったが、経営者が変わって営業を再開することができた。この際に復帰が決まった楓と再会し、再びいっしょに働けるようになったことを非常に喜んでいた。
マネージャー
弁当屋「よつばDELI」のエリアマネージャーを務める男性。加賀屋楓の人生初の彼氏。仕事のできるまじめな性格のため、楓からの好感度も高かったが、実は妻のいる妻帯者で、そのことを隠したうえで楓と付き合っていた。これを妻の麻美に知られたことで、彼女に問い詰められた楓からはっきりと別れる意思を告げられる。しかし楓のことがあきらめ切れず、麻美に隠したままで交際を続けようとするも、駆けつけた青山春が楓を助けたことで関係が終わる。
トメ
青山春が勤めているホームセンターの常連客で、小柄な体型の老齢な女性。買い物中に困っていた際、春に助けられのをきっかけに友達になり、加賀屋楓のことで悩む春の恋愛相談をはじめさまざまな相談に乗っては、的確なアドバイスを送っている。昔はかなりの肉食系で、さまざまな男性と恋愛をして経験があり、春には事あるごとに狼になれと言い聞かせており、「えっち」という言葉を多用する。実は蓮見伊織が勤める「ハニワホテル」のオーナーであり、彼が責任者を務めるレセプションパーティにも参加していた。この時、もどかしい関係の楓、春、伊織の三人の仲に変化をもたらすため、三人で泊まれる豪華なスイートルームを提供した。のちに、立花恵の祖母であることが判明した。ハニワが大好きで、経営しているホテルもハニワモチーフを取り入れており、テーマパークの「ハニワランド」が大好き。春と楓がめでたく結ばれたことを喜び、ハニワランドのチケットをプレゼントした。長らく春には明かしていなかったが、実は手広く事業を展開し、彼の職場であるホームセンターの社長も務めている。
楓の父 (かえでのちち)
加賀屋楓の父親。黒髪短髪で家族思いな実直な性格をしている。かなりの子煩悩で愛妻家でもあり、妻(楓の母)が病死した時は楓の代わりに大泣きしていた。一人娘の楓を溺愛しており、なかなか子離れができずにいるため、彼女が帰って来ない時期が続くと寂しがり、そのたびに母親(楓の祖母)からあきれられている。その一方で、妻の病死以来、苦労をかけている楓にはなるべく自由に生きて幸せになって欲しいと願っている。楓の転勤が決まった時も大泣きしていたが、別れを惜しみながらも元気よく送り出した。この時に楓が青山春を幼少期から思い続けていることを話しながら、彼女が一人暮らしを始める前に春が言っていたことを伝えた。昔から春の親とも仲がよく、春のことを心から信頼しており、楓には春と結ばれて欲しいと思っている。
新マネージャー (しんまねーじゃー)
弁当屋「よつばDELI」のエリアマネージャーを務める中年の女性。黒のキノコヘアで両耳にイヤリングを付けている。生真面目で厳格な性格をしており、人を見る目をはじめマネージャーとしての能力は優れている。前のマネージャーが転勤になったため、加賀屋楓たちが勤める店舗の新しいマネージャーとなった。当初は店の売り上げが減っていることを指摘したり、楓には苦手な仕事を任せるなど厳しく接していた。だが、彼女の現場での仕事ぶりを見込んで本州本社への転勤を勧め、デジタル処理が苦手で転勤を悩んでいた楓に助言を与えたりフォローしている。のちに本社が倒産し、よつばDELIの経営者が変わったあとも引き続きエリアマネージャーを務めている。
雪野 (ゆきの)
男子大学生。同棲(どうせい)していた彼女と別れ、加賀屋楓が住んでいた部屋に引っ越して来た。短髪で左耳にピアスを付けている。楓が弁当屋「よつばDELI」に職場復帰後にアルバイトとして勤めるようになり、彼女の同僚となる。爽やかでまじめな好青年で、テキパキと仕事をこなしている。時おり楓の相談相手となっているが、蓮見伊織からは警戒され、青山春からは対抗心を抱かれている。楓と春の事情を知っており、二人の仲を応援しているようで、春をわざとからかったり挑発するような態度が多い。元・彼女は楓と同年代の社会人。別れる前の彼女にはいずれプロポーズをしようと考えていたが、まだ学生であるために伝えるのをためらっていたところ、彼女が別の男性との結婚を決めてしまった苦い過去を持つ。そのことを今も後悔しており、楓と春には同じような失敗をして欲しくないと願い、彼に挑発的な態度を取るのも二人の仲の進展を願っての行動だった。ふだんはクールだが元・彼女への未練は強く、酒に酔うと泣き上戸で寂しがり屋な一面を見せる。職場の歓迎会で泥酔した際に、介抱してくれた春にこれまでの経験した思いを伝え、感激した彼とすっかり意気投合した。