概要・あらすじ
三郷哲は母親の入院費を少しでも多く稼ぎ、良い治療を受けさせたいと考えていたため、高校を卒業したら働きたいと父に伝える。哲の父は、これに反対し、どうしても就職したければ、アルバイトをして社会人になる準備が出来ていることを証明しろという。父の経営する家政婦紹介所を介し、唐澤家に出入りするようになった哲。
彼はその屋敷の離れで、閉じ込められて育った少女・唐澤志津と出会い、恋に落ちる。志津は多重人格であるために閉じ込められていたとされていたが、実は霊媒体質であり、霊が入ることで人格が変わったかのように見えていたのだということ、危険な霊が入りこまないように、祖父の霊たちが彼女を守っていたということを知った哲。
哲に心を開いていく志津を見て、彼を娘専属の家政夫としてつける唐澤早苗。志津が、徐々に普通の人としての生活を取り戻していくかに見えた矢先、志津の父が帰国し、妻に対し、これまでと同じく、志津を離れから一生外に出さないようにと指示を下すのだった。
登場人物・キャラクター
三郷 哲 (みさと てつ)
進学について、高校を卒業したら働きたいと話し、父親と対立。社会人になれるかどうかを試すため、父の経営している家政婦紹介所を通して、家政夫としてアルバイトをする。ほかにも、新聞配達のアルバイトをしている。父たちには話していないが、これらの行動は、入院している母の治療費を稼ぐためのことであった。 家政夫として働いていた唐澤家で、同家の娘、唐澤志津と出会い交流を深めていく。ある日、屋敷に閉じこもっていた志津を連れ出し、一緒に流星群を眺めた際、無意識に告白。自分が恋に落ちていたことに気づく。家族構成は、父・母・妹が2人となっているが、母は入院している。料理が得意。手先が器用でクラスメイトの女子に頼まれ、有料(100円)で髪を編んだりしている。 志津を外に連れ出した際、彼女に憑依した霊により危害を加えられそうになるが、志津の意識により何とか難を逃れた。このことに怯え、また同じことが起こった場合、責任がとれないと、家政夫を辞職しようとする。だが、志津の母・唐澤早苗が、哲の母の治療に十分な金額を支払うことと引き換えに、志津専任の家政夫となることを引き受けた。 物語のスタート時点では17歳の高校2年生。オカルトや怪談に弱い。身長は162cm。
唐澤 志津 (からさわ しづ)
唐澤家の娘で広い屋敷の庭の奥にある小さな離れで、一人で住んでいる。反応が鈍く、ぼんやりとしており、感情の起伏が小さく、あまり表情の変化がない女性。死者の魂を呼び寄せる憑依体質であり、ハルミチらの依代となっている。このような体質であるため、家族からは多重人格と思われており、家の外へ出してもらえなかった。 ノートを使って、ハルミチらと交流をしている。ハルミチのほかに、祖父の唐澤志信、みれいらの霊が志津の体を使っている。憑依者たちは、志津の体で起こったことを見ることはできるが、その際にどう感じていたかまでは共有できない。不意に霊に体を奪われることがあるが、この際の撃退方法は「肉体に物理的な衝撃を与える」「心に精神的な衝撃を与えて志津の意識を呼び覚ます」の2つがある。 三郷哲より1つ年上であるため、18~19歳と思われる。
ハルミチ
唐澤志津の体に憑依する人物の一人。男性。何年も人と直接話たことがなかったため、三郷哲の来訪を喜び、また遊びに来てほしいと頼んだ。好奇心旺盛で、陽気で明るく笑う人物。この笑顔に、哲は心を動かされた。男性であるため、筋トレなどを好む。哲と仲良くなり、告白を受けたのはハルミチだった。 このため、自分が本当の志津ではないことをわかってもらうために、志津の人格の日に、ハルミチに訪ねてきてくれるよう頼む。志津のことで悩んでいた哲に、自分たちのことを詳しく説明し、彼を傷つけたことを謝罪し、また一時でも楽しい時間を与えてくれたお礼を伝えた。
唐澤 志信 (からさわ しのぶ)
唐澤志津の祖父で、二十年前に没している。志津の体を借りて、三郷哲に志津が憑依体質であるという秘密について語った。ハルミチらと協力し、志津が悪い霊に体を乗っ取られないように守っている。哲に対して、志津のことを嫌わないでやって欲しいと頭を下げた。園芸が好きで、志津の体に入っている時に、土いじりをする。
唐澤 早苗 (からさわ さなえ)
唐澤志津の母。娘の志津が多重人格であると思い、これの治療を受けさせるが、改善されなかったこともあり、離れに住まわせて彼女を保護していた。娘とどう接していいかわからないため、何年も直接会話をしたことはない。三郷哲が志津を外に連れ出し、問題が起こった際には、志津が哲のことを気にかけるというそれまでになかった反応を見せたため、これからも屋敷で働き、志津の相手をして欲しいと頼んだ。 これを拒否した哲に対し、哲の母の治療に十分な金額を支払うことと引き換えに、志津専任の家政夫となることを引き受けさせた。哲の父は、高校時代の先輩に当たり、哲の母とも友人だった。
みれい
唐澤志津の体に憑依する人物の一人。女性。志津の体を使って人生を再び楽しんでいるところがあり、オフ会などに参加している。おしゃれが好きだが、片付けが苦手なため、部屋に服を散らかしっぱなしにする。三郷哲とは折り合いが悪く、しょっちゅう彼をからかったり、意地悪をする。
カナト
小学生男子の幽霊。三郷哲が病院で、寝たきりの母に唐澤志津の話をしていた際、これを聞き、哲についてきて志津の体を乗っ取った。三郷鈴に出会い、一目惚れする。
熊田 (くまだ)
お屋敷で働いている家政婦の一人。人前に姿を現したことのない屋敷のお嬢様のことについて、オカルト仕立てで話をした。オカルト好きで、ホラー小説を書くのが趣味。
三郷哲の父 (みさとてつのちち)
三郷哲の父親。みさと家政婦紹介所を経営しており、所長を務めている。高校を卒業したら働きたいという哲の意見に反対し、社会に出れるかどうかを試すため、自分の家政婦紹介所を介してアルバイトをさせている。
千尋 (ちひろ)
三郷哲の友人。眼鏡をかけた男子高校生。サッカー部のチームメイトであり、部活動を辞めた哲を気にかけ、何度も戻ってくるように誘っている。
三郷 鈴 (みさと すず)
哲の小さい方の妹。朗らかで純粋な少女で、アルバイトを始めた兄の体を気遣っている。
三郷 涼 (みさと りょう)
哲の大きい方の妹。ややクールなところがあり、現実主義者。高校を卒業したら働きたいと言っている哲に対し、父と同じく進学の方が良いと反対している。哲の友人、千尋に好意を抱いている。
唐澤志津の父 (からさわしづのちち)
唐澤志津の父。娘の志津を邪魔な存在と考え、離れに閉じ込めさせている。仕事で海外に出ていることが多く、数ヶ月家に帰ってこないことがある。
モーリッツ
唐澤家で飼われている大型犬。三郷哲は「モッさん」と呼んでいる。モップにそっくりであり、モップ置き場で寝ていると同化してしまうほど。
書誌情報
おはよう、いばら姫 6巻 講談社〈KC デザート〉
第1巻
(2015-04-13発行、 978-4063658132)
第2巻
(2015-09-11発行、 978-4063658323)
第3巻
(2016-02-12発行、 978-4063658552)
第4巻
(2016-07-13発行、 978-4063658712)
第5巻
(2017-01-13発行、 978-4063658927)
第6巻
(2017-07-13発行、 978-4063659146)