世界観
現実の群馬県を誇張表現した「グンマ県」が舞台となっている。「グンマに来て生きて帰った者はいない」と言われるほどの秘境として描かれており、いかにグンマが関東圏内で異質な文化を持った土地かをユーモラスに描いている。グンマ県はトチギ県やイバラキ県など近隣県との小競り合いが絶えず続いている状態とされており、地元の学生達がご当地自慢をしつつ、郷土愛の強さと独自文化、地元に本拠地を構えている企業の強さで地元の勝敗を決している。
作品誕生のいきさつ
作者・井田ヒロトが別作品を連載中、本文後の1ページにおまけ漫画として描いていた群馬県の風物を紹介する作品が本文よりも人気だったため、単独で「群馬県を舞台とした漫画」として連載企画を作る事となった。ただし前例のない作品企画だったため、編集上層部から難色を示されたり、リスクヘッジのため県名をカタカナ表記にするなど、連載までにさまざまな苦難があった。また、最初のネーム時点では神月紀は女子高校生として設定されていた。
あらすじ
第1巻
チバ県に住む凡庸な男子高校生・神月紀は、両親の仕事の関係でグンマ県に転校する事になった。かつてグンマ県に転居していった小学校時代の友人・轟一矢と再会できる事を楽しみに連絡を取った紀だったが、一矢からの返信は「来るな」という予想外のものだった。そして実際にグンマ県の真中高校に転校した紀は、他県民を警戒したグンマ人達の異様なまでの郷土愛を前に、為す術もなく拘束されてしまう。
第2巻
神月紀は、真中高校に潜入していたトチギのスパイによって高崎白衣大観音へと拉致されてしまう。紀を救出するために泥輔三をはじめとした護邪兵9との戦いに挑む轟二矢達だったが、トチギ県の究極経口摂取物「しもつかれ」の過剰摂取によって出来損ないの「トチギ人改」となった包帯の男の暴走の前に倒れていく。その中で紀は、護邪兵9に協力する轟一矢と再会する。
第3巻
神月紀達は護邪兵9との戦いを終え、湯治のために草津温泉を訪れていた。しばし観光を楽しんでいた面々だったが、異常なまでの湯煙に囲まれたかと思うと、「時間湯」と言われる古い入浴法に赴く、ゾンビのような人間達に巻き込まれてしまう。一方その頃、真中高校の女子生徒達は湯質の柔らかな四万温泉で親交を深めていた。しかしその最中、篠岡京が紀を性的に意識している事を知った家城瑛南は、紀への憎悪を滾らせる。
第4巻
神月紀と轟二矢、轟一矢は赤城山を登っている最中、幕末の長州藩へとタイムリープしてしまう。過激思想の持ち主と判断された吉田松陰が斬首され、松下村塾塾生達が攘夷志士として過激な活動を始める様子を目の当たりにした紀達は、グンマ県の初代県令である小田村伊之助の思想、つまりグンマ県の根底が松蔭によって作られた事を知る。その後、それぞれタイムリープして古のグンマ人達に出会っていたクラスメイト達と、タイムリープ先から持ち帰ったグンマ名産で鍋をする事にする。
第5巻
ニイガタ県の尖兵として真中高校に潜入した相良シーナからグンマ県を守るため、生徒会長選挙に立候補した神月紀は篠岡京の協力を得て、選挙の決定打である上毛カルタを急激に上達させる。しかしシーナは、ニイガタ県の名産品でドーピングする事によって強靱な肉体を手に入れる。もはやグンマは敗北する他ないのかと紀が絶望した時、紀は精神政界に迷い込んでしまう。
第6巻
神月紀の従弟・実が、SNSで知り合ったイバラキ県の少年・陣目研によって洗脳されてしまう。しかし、実の郷土愛によって洗脳に綻びが出た事を知った研は、最終手段として牛久大仏を起動し、直接高崎白衣大観音を破壊しにかかる。だが研を友人と信じる実は、破壊されかかっている高崎白衣大観音の内部を駆け上がり、少しでも研に思いを届けようと奮闘する。そして紀もまた、実を救出するため高崎白衣大観音に突入する。
第7巻
睡眠中の神月紀は、巨人となった轟二矢が一心不乱に千手観音を作っている姿を夢に見る。しかし、その手元から絶えず小さな悲鳴が上がっていることに違和感を覚えて覚醒するが、数日後また同じ夢を見てしまう。やがて二矢の手にしているものが、標本に用いる針らしいと分かり、また千手観音像が小さな人間で作られたものである事に気づいて、飛び起きてしまう。
第8巻
アイチ県から転校して来た愛知伊代菜の願いで、神月紀はデートに伊香保温泉を訪れていた。途中ではぐれた篠岡京や轟一矢、家城瑛南が「命と性ミュージアム」で性と命を学ぶ中、温泉街の雰囲気を楽しむ紀だったが、伊代菜は二人きりの状況に舞い上がり、結婚を視野に紀と付き合う事を妄想し始める。
第9巻
神月紀と轟一矢はトチギのスパイの策略により、グンマの穴に偽装した「トチギの穴」に落とされてしまう。二人をトチギ県に忠実な人間に矯正するため、トチギ人の宿敵である野猿との戦いやしもつかれの摂取を強要されつつもトチギの穴脱出を目指す二人は、困難を乗り越えるごとに逆にグンマ県への郷土愛を深めていく。
第10巻
篠岡京と愛知伊代菜が神月紀に告白する権利を賭けて火花を散らす中、一向に帰郷する気配のない伊代菜を心配した伊代菜の兄達がグンマ県へと乗り込んで来た。そんな中、紀に好意を抱いている女子の一人と誤解されてしまった家城瑛南は、紀の殺害を決意する。伊予菜をアイチ県に返したい京と、紀殺害を企てる瑛南は積極的に伊予菜の兄達に協力し始める。
パロディネタ
作中の随所に『進撃の巨人』や『新世紀エヴァンゲリオン』、『ドラえもん』などのパロディが挿入されている。例として、轟二矢は水沢うどんと戯れた結果、『進撃の巨人』に登場する調査兵団が用いる立体機動装置と同様の機動を会得しており、その際に同作品がアニメ化した際のオープニングの歌詞をもじったセリフが用いられている。また、草津温泉の歴史を振り返る草津温泉育成ゲームでは、国内外に草津温泉の効能を宣伝した実在のドイツ人医師エルヴィン・フォン・ベルツが、『ジョジョの奇妙な冒険 Part 1 ファントムブラッド』に登場するキャラクター「ウィル・A・ツェペリ」の容姿で描かれている。
タイアップ
ザスパクサツ群馬
群馬県をホームタウンとする日本プロサッカーリーグクラブ「ザスパクサツ群馬」が2015年9月23日に行ったジュビロ磐田とのホーム戦において、「群馬マスコミ3社スペシャルマッチ」の一環として本作『お前はまだグンマを知らない』とのコラボが実施された。「お前はまだザスパを知らない」というオリジナルコラボポスターによる告知や、所属選手と本作のキャラクターが絡んだポストカードの配布が行われた。
セーブオン
本社を群馬県に置くコンビニエンスストア「セーブオン」で、2016年1月から3月にかけて「お前はまだセーブオンを知らない」というコラボ企画を開催した。対象賞品を含む500円以上の買い物をしたレシートを集めて応募すると、抽選で20名に井田のサイン入りポスターと本作『お前はまだグンマを知らない』の単行本セットや、3000円分の商品券が当たるというもの。その他、店内では作中の群馬ネタがプリントされたクッキーなど関連商品も販売された。なお、セーブオンは2018年8月を以て全店舗が「ローソン」に切り替わった。
スマーク伊勢崎
群馬県伊勢崎市にある北関東最大級のショッピングモール「スマーク伊勢崎」で、2016年9月17日から19日にかけて『お前はまだグンマを知らない』の展示イベントが開催された。会場には本作の原画約80枚や、巨大な漫画を用いたフォトスポットなども展示された。グッズの販売や専門学校生による漫画家体験教室なども開かれた。またスマーク伊勢崎のLINEアカウントから配信されるオリジナル画像を会場で提示すると、各日先着150名に本作のクリアファイルがもらえるキャンペーンが実施された。
メディアミックス
実写ドラマ
2017年3月7日より日本テレビの「ネクストブレイク」枠で『お前はまだグンマを知らない』が全4回で放送された。神月紀を間宮祥太朗、轟一矢を吉村界人、篠岡京を馬場ふみかがそれぞれ演じ、ナレーションを若本規夫が務めた。紀と京のラブコメディを主軸とした作品となっている。また、轟二矢は一矢と同一視されており、存在を抹消されている。
実写映画
2017年7月22日より『お前はまだグンマを知らない』の実写映画が公開された。2017年3月から放送された実写ドラマを再編集して制作されており、キャストは神月紀を間宮祥太朗、轟一矢を吉村界人、篠岡京を馬場ふみかがそれぞれ演じ、ナレーションを若本規夫が務めた。紀と京のラブコメディを主軸とした作品となっている。また、轟二矢は一矢と同一視されており、存在を抹消されている。
TVアニメ
2018年4月2日から6月18日にかけて群馬テレビでアニメ『お前はまだグンマを知らない』が放送された。単行本1巻までの内容を主軸としている。神月紀を梶原岳人、轟二矢を笠間淳、篠岡京を内田彩が務めている。またアニメでは、轟一矢は二矢と同一視されており、存在を抹消されている。
登場人物・キャラクター
神月 紀 (かみつき のり)
妄想癖のある男子高校生。両親の仕事の都合で転居を繰り返しており、チバ県からグンマ県に引っ越す事になった。女装し「紀子」と名乗っている時にブラック夫人から上毛カルタを学んだため、カルタ時には女装する。小学校時代にグンマに引っ越した轟一矢と再会する事を楽しみにしていたが、容姿がそっくりで初対面の轟二矢を一矢と勘違いしており、一矢から指摘されて初めて気づいた。真中高校への転校初日は別県の工作員と間違われ拘束されるなどし、グンマ県人の異様な文化に圧倒されている。しかしクラスメイト達からはのちに、リアクションとツッコミ担当としてなくてはならない存在だと認識された。一矢からはストーキングされたり、女装姿の際には幾度となく襲われかけているが、自分に向けられる好意に対してとことん鈍感なため、篠岡京や愛知伊代菜から淡い恋心を抱かれていた事も気づかなかった。だが一矢からストレートな告白を受けたあと、恋愛関係として付き合う事を承諾している。
轟 二矢 (とどろき おとや)
轟一矢の双子の弟。真中高校に通う男子高校生で神月紀達のクラスの委員長を務め、JKJにも所属している。チバ県に住んでいる頃は不登校だったが、その頃からなぜかグンマ県の事ばかり話していた。風で振り乱されたような赤い長髪に眼鏡をかけている。定期的にグンマ県の名泉を摂取しないとアレルギー発作を起こしてしまうため、つねにボトリングした名泉を持ち歩いている。かつては一矢と同じようにグンマ県に一切思い入れのないふつうの少年だったが、幼稚園時代、轟二二六によってグンマの穴に連れ込まれた結果、グンマ県に異常に執着する人格が形成された。習字が得意で非常に達筆であり、七夕の短冊には「世界がグンマになりますように」と願っている。自宅は一般家庭と同じような外観だがハリボテでできており、玄関以外は地下の核シェルター内にある。
轟 一矢 (とどろき かずや)
神月紀と小学生時代の幼なじみの男子高校生。当初は双子の弟である轟二矢と見分けのつかない容姿だったが、紀に二矢と間違われてしまう事を不快に思い、髪を短髪に切って眼鏡をコンタクトレンズに変更した。グンマ県に引っ越して来てからは自宅に引きこもっており、当初は真中高校へも不登校となっていた。二矢とは折り合いが悪く、家の中でもほとんど顔を合わせていない。紀を唯一無二の友人と考えているため、グンマに染まらせないためにという名目でストーキング行為を行っているうえ、紀の言動に興奮すると鼻血をはじめとする出血を見せる。また紀が女装した姿である「紀子」に一目惚れし、目の前にすると自制が効かなくなり所構わずキスをしたり、押し倒してしまう。紀の説得によって、紀と共にグンマで生きていく覚悟を決めた。吉井どろんこ祭りにおいて、紀と紀子が同一人物であるとは認識していない内に、紀に「恋愛的な意味でお前が好きだ」と告白した。
篠岡 京 (しのおか きょう)
真中高校に通う女子高校生。緑色のショートヘアのサイドのみを細い三つ編みにしている。JKJの団長を務めており、幼児の頃から上毛カルタの大会で優勝している、生粋のグンマ県人。家城瑛南からは「篠っち」と呼ばれている。グンマ県人以外を認めず排除しようと考えており、神月紀ばかりでなく、小学5年生の頃にグンマ県に転校して来た轟二矢の事もグンマ人とは認めていない。男嫌いだが、自分の容姿とそれに附随する女の武器の扱いは心得ており、必要とあれば積極的にハニートラップを使用する。紀の事を恋愛的に意識しており、素直に振る舞う事ができなかった。しかし、紀と瑛南が同時に窮地に立たされた際には紀よりも瑛南の方を心配していた自分に気づき、瑛南に告白して以降は二人で家族として生きていく人生設計を行っている。
家城 瑛南 (いえき てるな)
真中高校に通う女子高校生で、JKJの構成員。肩上で切り揃えられた青髪の上に、側頭部にはJKJ構成員の証でもある無表情の仮面をつけている。同性愛者で、篠岡京に恋している事からJKJにも所属している。京からは「イエティー」と呼ばれている。京が男性と濃い接触をすると嫉妬で憤死しそうになる。京を愛するあまり、いっしょに温浴施設に入る事ができない。京が神月紀を性的に意識していると認識して以降は、紀をグンマ県から追い出すべく孤立させるように仕向けるなどし、利害の一致からたびたび轟一矢と手を組んでいる。しかし、京からの告白で付き合うようになってからは、それまで紀に対して行った非道を謝罪している。また将来は一矢の精子をもらって人工授精し、京と二人で家族として生きていく人生設計を行っている。
木村 仁達 (きむら にたつ)
真中高校に通う男子高校生で、神月紀のクラスメイト。兄弟が多い事から面倒見がよく、顔面偏差値の高さからも女子に人気が高い。そのためファンクラブを作る計画が持ち上がったが、古頃康貴との仲がよすぎる事から、仮にファンクラブを作った場合の会長は古頃だと言われていた。料理上手で気配りもできる。伝説上の生き物とも言われる痴女に、不合意で身体的接触をされた事がある。
古頃 康貴 (こころ やすき)
真中高校に通う男子高校生で、神月紀のクラスメイト。つねに木村仁達といっしょに行動しており、木村家の家族パーティーにも参加しているため、女子生徒達からは「あいつ木村の事超好きだよね」「木村のファンクラブを作るなら会長は古頃康貴」などと言われている。赤城山登山中にタイムリープに遭った際には、水上山中から謎の野生キノコを持ち帰り大量に摂取したため、一時的にキノコの姿になってしまった。
相良 シーナ (あいら しーな)
ニイガタ県から真中高校に転校して来た女子高校生。金髪と黒髪が入り交じったツートンカラーの髪をツインテールにしている。セーラーワンピースをパンクロリータ風に着用し、鼻から下に黒い覆面をつけている。語尾に「のマジ」と付ける癖がある。上毛カルタをすべて暗記してグンマ県への愛をアピールしたが、篠岡京の前で読み札のカナを間違えた事から、ニイガタのスパイではないかと京に疑われる事となった。生徒会長選挙に立候補し、真中高校をニイガタの出先機関にしようと企んでいた。マメで大胆、かつ戦略的な選挙対策を繰り出し、轟一矢にも「生徒会長になった暁には酒に酔わせた神月紀をプレゼントする」と約束して籠絡した。焼きまんじゅうが大好物。両親が共働きで、かつて紀がニイガタ県三条市に住んでいた頃はいっしょに帰っていた。
実 (みのる)
神月紀の従弟で、小学5年生の男子。グンマ県生まれで生粋のグンマ人だが、ふつうにいい子で常識人。ポジティブな感情を正直に表現するので、周囲の人から愛されている。バレンタインデーにも大量のチョコレートを持って帰るため、紀が恋愛格差に涙していた。将来は自衛隊に入って、大きな設備でたくさんのご飯を作るのが夢。SNSで陣目研と知り合い、家にも招待している。一時は研によってイバラキ県に洗脳されかけたが、根強いグンマ愛で洗脳が完全にならなかった。牛久大仏を起動して高崎白衣大観音に攻撃を始めた研を止めるため、自ら高崎白衣大観音の手動戦闘モードのパイロットとして操縦した。研を心から友人だと思っているが、話の途中で乱入してはグンマ県の魅力や名産品の実力をひけらかす轟二矢によって、すれ違いが生じている。
陣目 研 (じんめ けん)
イバラキ県から派遣されたスパイの少年。中学1年生の男子で、目の下に濃い隈がある。つねにパーカーのフード部分をかぶり、紐もきつく絞っているため目だけしか見えない状態になっている。郷土愛の薄い仲間に絶望したが、他県民にもかかわらずイバラキを褒めてくれた実に心を開き、実を洗脳して二人で「新生天狗党」を発足させようとしたが、実の中にあった根強いグンマ県への郷土愛によって洗脳に失敗した。その後、一人で牛久大仏を起動した。また牛久大仏に取り込まれた際には、高校生くらいの背丈に成長している。牛久大仏が高崎白衣大観音に敗北したあとは、トチギのスパイによって匿われて徳川埋蔵金の発掘に協力させられており、それ以降SNSでトチギ県名産のイチゴ「とちおとめ」の宣伝ばかりしている。
愛知 伊代菜 (あいち いよな)
アイチ県から真中高校に転校して来た女子高校生。肩の辺りで外巻きに跳ねた黒髪で、つねに防災頭巾を身につけている。幼い頃から体が弱く、病院に世話になる内に医療の仕事にあこがれるようになった。その結果、医療先進県として知られるグンマ県に地域医療見学のため転校して来た。なにかと親切にしてくれる神月紀に好意を寄せており、トチギのスパイから襲われた際に紀達を助けたご褒美にと、デートもしている。天然の愛され系女子であり、三人の兄からも溺愛されている。しかし長期に渡ってアイチに戻らない伊代菜を過剰に心配した兄達と轟二矢達が交戦になった事を憂え、改めてアイチ県の事を勉強したうえでグンマ県を再訪すると約束した。
トチギのスパイ
真中高校で神月紀達のクラスに潜入していたトチギ県の諜報員を務める男性。キャッチコピーは、『ドラえもん』に登場するふしぎ道具の一つ「石ころ帽子」になぞらえた「エア石ころ帽子を自在に操る男」となっている。大きく左右に広がった髪型で、つねに口元がマスクで覆われている。トチギのゆるキャラである「さのまる」のキーホルダーを所持していたり、焼きまんじゅうに餡が入っていると誤解していたりと、詰めが甘い部分がある。非常に影が薄いため、紀以外のクラスメイトにはトチギ県人とは見抜かれていなかった。起動した高崎白衣大観音に敗北した陣目研を懐柔し、徳川埋蔵金の発掘に協力させるなどしている。紀達を複数回に渡って襲撃しているがすべて敗退しており、研と共にグンマ県打倒のための策を講じている。
泥 輔三 (でれ すけぞう)
高崎白衣大観音の中で真中高校の面々を待ち受けていた護邪兵9の一員で、トチギ県の男性。髪をポンパドールとリーゼントに固めており、改造した学ランを着用している典型的な不良学生。ダジャレを好んでおり、ダジャレに準じた攻撃を仕掛けて来る。サラシや鉢巻の代わりにかんぴょうを巻いて防具代わりに使用していたが、篠岡京の色仕掛けによってすべて奪われている。
かんぴょうの男 (かんぴょうのおとこ)
高崎白衣大観音の中で真中高校の面々を待ち受けていた護邪兵9の一員で、トチギ県の男性。ミイラ男のような姿をしており、全身を包帯の代わりにかんぴょうで巻いている。本来は高崎白衣大観音の最上階で待機しているはずだったが、空腹で我を忘れ、ほかの護邪兵9メンバーを倒しながら最下階まで降りて来た。しもつかれを大量に摂取し、トチギ人を超えた存在である「トチギ人改」になるよう肉体改造を施されたが失敗作となり、中毒症状を起こしている。食べているあいだはおとなしいが、中毒状態になると人語も解さなくなる。また体からは、「トチギ人改」と同じく黒い煙が発生している。
野汁先輩 (やじるせんぱい)
真中高校に通う男子で、神月紀達の先輩。肌が浅黒く、人との距離が異常に近い。2年留年しており、現在20歳なため車を所持している事からよく後輩の足代わりになっている。海が好きで、車の運転中は言動が荒くなる。非常に親切な先輩だが、その言動や通称が同性愛者のAV男優を思わせるため、当初は紀に非常におびえられていた。「エマ」という、アニメ作品に登場しそうな服装と髪型をしたフランス人美少女の彼女がおり、高校を卒業してから結婚する約束をしている。ちなみに本名は「マサル」。
大沢(姉) (おおさわあね)
真中高校に通う女子で、生徒会の副会長を務めている。黒髪をうなじでまとめており、オーバルタイプの眼鏡をかけている。妹である大沢(妹)と髪型以外瓜二つ。グンマ県の空っ風に逆らって自転車通学を続けた結果、ミニスカートが似合わない発達した大腿筋を持っている。神月紀が護邪兵9に拉致された際には高崎白衣大観音に偶然訪れており、上階にいた護邪兵9のメンバーを一蹴りで沈めた事で轟二矢達と知り合った。老紳士同士のふれあいに萌えるタイプの腐女子。
轟 二二六 (とどろき じじろー)
轟一矢と轟二矢の母方の伯父で、年齢は54歳。多くの場合「轟のおじさん」と呼ばれている。自販機店舗の一つを経営しており、グンマ県およびグンマ人が日本を背負う存在であると信じている。軍事的に過激思想の持ち主で、二矢からも「あの人は保護者としての任は果たさん」と言い切られている。弁舌が立つため、富岡製糸場でもボランティアガイドとして活動しているが、冷戦下のドイツとスイスで核シェルター建設のノウハウを学んで来たと語っている。轟兄弟の自宅を設計した人物でもあり、人目を欺くハリボテの外観を含め、強力な空気清浄システムや核爆弾の着弾にも耐える堅牢なシェルターとして建築している。親友に機矢部蔦郎がいる。
ブラック夫人 (ぶらっくふじん)
幼稚園時代の篠岡京に、上毛カルタの短期特訓を授けた師匠の女性。上毛カルタ最強の地である桐生市で上毛カルタのエリート達を大量に育て上げた、伝説のカルタ師。無類の男嫌いで、男性には決して指導をしない。かつての上毛カルタ大会で体のあらゆる箇所を損傷しており、右目は目蓋を縫われ、両手はすべて義指になっている。
吉田 松陰 (よしだ しょういん)
神月紀と轟二矢がタイムリープした際に出会った青年。松下村塾の主宰者で、ふんどし無しで黒船に密航し、アメリカへ密入国を企てた罪で引きこもりを強制されている。薄汚くみすぼらしい格好をしており、塾生を煽動して暴動を企てているとして政府から危険視されている。童貞を神聖視するあまり女性を蔑視しており、その過激さに当初は同調していた二矢もついていけなくなっていった。実在の人物である吉田松陰がモデルとなっている。
ゆもみちゃん
草津温泉の観光大使を務める、湯もみ衣装を着て湯もみ板を持った若い女性型のゆるキャラ。愛称として「ゆもみん」とも呼ばれており、ファンは「ゆもみんフレンズ」と自称している。Twitterでも観光情報などを発信しており、その仕草の愛らしさと女子力の高さで人気を集めている。
小田村 伊之助 (おだむら いのすけ)
神月紀と轟二矢がタイムリープした際に出会った青年。のちにグンマ県の初代県令となる「楫取素彦」でもある。吉田松陰の義理の弟であり、松陰の言動を危険視した藩の上司から彼を諫めるようにと指示されている。松蔭のフォローと使い走りに奔走する苦労人。実在の人物である楫取素彦がモデルとなっている。
大沢(妹) (おおさわいもうと)
真中高校に通う女子高校生で、神月紀のクラスメイト。背中まである黒髪を下ろしており、オーバルタイプの眼鏡をかけている。姉である大沢(姉)と髪型以外瓜二つ。お絵描きが好きで、目立つのが嫌いな文系女子。幼い少年同士の戯れに萌えるタイプの腐女子。
ぐんまちゃん
グンマ県を代表するゆるキャラ。7歳児で性別不詳という設定がある。グンマ県内でほぼ一強となっており、県庁前に石像が建てられ、工事現場の標識、握手会など、グンマ県ではどこを見てもぐんまちゃんが目に入る。2014年ゆるキャラグランプリで第1位を獲得した。
機矢部 蔦郎 (きやべ つたろう)
グンマ県嬬恋村にキャベツ料理専門店「Machiavetz(マキャベッツ)」を構えている、44歳の男性。轟二二六の親友である事から思考も似ており、軍事的に過激な面を見せる。客に提供する料理の仕上げパフォーマンスには大量に火薬を使用するため、毎日のようにキャベツを爆発させる事からよく警察に連行されている様子があるが、その際には影武者を使用している。昭和63年、当時26歳だった二二六が行き倒れているところを救ったのがきっかけで出会った。
集団・組織
JKJ (じぇいけいじぇい)
真中高校の中でも、上毛カルタの最高峰である県競技大会において成績が優秀だった者のみで構成された、上毛カルタのエリート集団。篠岡京が団長を務めている。また団長以外の構成員は全員が無表情の仮面をつける事になっており、家城瑛南も額に常備している。通りすがりに読み札を問う事があり、間違うと手酷い制裁を受ける。
護邪兵9 (ごじゃっぺいないん)
神月紀を誘拐し、高崎白衣大観音で真中高校の面々を迎え撃った集団。体格がよく強面なメンバーが多いが、その正体はトチギ県にあるビル・Festaでトチギのスパイに「グンマ県の奴らをいっしょにシメないか」と声をかけられた、ただ強そうに見えるだけのコスプレイヤーの団体である。メンバーのうち泥輔三だけは自分から率先して参加した。
場所
自販機店舗 (じはんきてんぽ)
グンマ県に集中して存在している、うどんやハンバーガー、飲料を含む自動販売機ばかりが置かれている店舗。非常に簡素な作りだが中には飲食スペースもあり、その場で購入した物を食べる事ができる。一店舗を轟二二六が経営しており、その存在理由を「有事の際の県民保護装置と軍事施設を兼ねた総合戦略基地」と語っている。
牛久大仏 (うしくだいぶつ)
イバラキ県にある、全高120メートルという世界最大のブロンズ像。内部にはエスカレーターや写経室などが備えられている。牛久大仏の前で「ボクの大好きな三大おかず、おかめ納豆くめ納豆しょぼろ納豆」と唱えると、唱えた人物を取り込み牛久大仏が動き出す。
グンマ県 (ぐんまけん)
日本の真ん中を自称している県。全国の龍脈が結集する最強のパワースポットであるため、グンマ県を制する者が日本を制するといわれている。その根拠として、台風が避ける、近隣県に警報が出ていてもグンマには発表がない、予想最高気温が唯一50度を超えるなどが挙げられている。また、最強パワースポットであるグンマ県を掌握しようとするトチギ県などと絶えず抗争が起こっている。郷土の風物から歴史までを網羅する上毛カルタを絶対の聖典としており、幼少期からグンマ人としての魂を作り上げていく。
草津温泉 (くさつおんせん)
高崎白衣大観音で行った護邪兵9との戦闘で疲れた真中高校の男子生徒達が、湯治のために訪れた場所。グンマ県の中でも数少ない、全国レベルで知名度のある名所。大量に噴き出す強酸泉の影響で、機械類がすぐ壊れる。効能重視で肌への刺激が強いため、女子生徒は四万温泉へ向かった。そのため女子がいない温泉旅行になり、男子生徒達は絶望していた。時間湯が始まる頃に大量に漂う湯煙にまかれると、いにしえの草津の幻覚を見てしまう。
グンマの穴 (ぐんまのあな)
グンマ県にある、入った者はグンマ、ひいては日本を背負って立つ人材に生まれ変わるといわれている伝説の場所。「スーパーグンマ人養成施設」ともいわれている。轟二矢は幼稚園時代、轟二二六によってグンマの穴に連れ込まれた結果、現在のようなグンマ県に対し変態的に固執する人格に変貌した。
真中高校 (まなかこうこう)
神月紀が転校生としてやって来た、グンマ県の高校。県外からの転校生が珍しいため、神月がグンマの号令である「起立・注目・礼・着席」の「注目」を飛ばした際には、他県の工作員かと疑い拘束するなど過剰な反応をした。「畳の部屋」と呼ばれる進路指導室兼懲罰房がある。校内ではJKJが権力を持っている。制服の背中に県章が大きく描かれている。
高崎白衣大観音 (たかさきびゃくえだいかんのん)
グンマ県の観音山山頂に建つ高さ41.8メートル、重さ5985トンの大観音像。昭和11年に井上保三郎が個人で建立し、当時は世界最大の大きさを誇った。第二次大戦時は大本営から破壊を命じられたが、現在も当時のまま残されている。トチギのスパイによって拉致された神月紀は、護邪兵9によって高崎白衣大観音の肩からかんぴょうに巻かれて吊るされた。また陣目研によって牛久大仏から攻撃を受けた際には、駆動システムが起動し、ラジコンのコントローラーのような物を用いての手動戦闘モードに切り替わって戦闘を行った。
トチギ県 (とちぎけん)
グンマ県の隣県で、つねに対立関係にある県。グンマ県のように拠り所とする物が存在しないため、トチギ県の人間はレモン牛乳やニラ、サメ、しもつかれなどの郷土食を体内に摂取する事によって肉体改造を行っている。
イベント・出来事
陸上自衛隊新町駐屯地創立祭 (りくじょうじえいたいしんまちちゅうとんちそうりつさい)
グンマ県の「新町さくらまつり」を兼ねたお祭り。グンマ県人は「花見」と称している。毎年桜の下で内容の濃い訓練演習や展示を行う事で知られる。災害や海外への出動があれば規模が小さくなる。グンマ県における桜の名所はすべて陸上自衛隊の駐屯地となっており同様の演習が行われる事から、花見において見る事のできるものは「兵器・兵器・兵器・ちょっと桜・兵器」といわれている。
小学校の運動会 (しょうがっこうのうんどうかい)
グンマ県の小学校の運動会。屋台が出る事が多いため、お祭り感覚で地域住民が参加する。組み分けは赤と白ではなく、「団分け」であり、その内訳は主に赤の「赤城団」、緑か黄の「妙義団」、青や黄などの「榛名団」となっており、グンマ県を取り囲む山々の名前を冠したものになっている。
吉井どろんこ祭り (よしいどろんこまつり)
グンマ県の高崎市で、田植え前の田んぼで開催される。当日自由参加型のイベントで、泥の中での障害物競走などが行われ、参加者は全身泥まみれになる事で知られているが、毎年6000人が参加する。また同時に写真大会も行われており、写真撮影可能な事が参加条件となる。この祭りの最中に轟一矢が神月紀に告白し、そのシーンを写真大会に参加しているカメラマンに撮影され、写真展に展示された。
その他キーワード
ひも川うどん (ひもかわうどん)
グンマ県桐生市の名物のうどん。うどんという概念を覆すほどに幅が広く、薄さが特徴で弾力がある。一見すると絹布のように見えるため、真中高校では工作員と思われる人間を拘束する際のロープとしても用いられるほか、つるつるとしなやかな肌触りから医療品としても用いられる。
しもつかれ
トチギ県の郷土食にして、究極経口摂取物といわれている料理。昔から食べられていたというのが信じがたいほど見た目と味にインパクトがあり、トチギ県人でもまともに食べられる者は少ないとされる。ただし大量に食べ続けるとごく稀に、トチギ人を超えた存在である「トチギ人改」が生み出される。またこのトチギ人改になった人間からは黒い煙が発生する。
草津温泉育成ゲーム (くさつおんせんいくせいげーむ)
ゆもみちゃんを草津温泉のアバターとして、さまざまな災害やイベントが襲いかかる中、選択肢を選びながら草津温泉を一大観光地へと育てていくアプリゲーム。スタートは明治元年から始まり、温泉街の全焼事件や度重なる白根山の噴火、第二次世界大戦の激化を経て、戦後の復興と共に草津温泉が急速に観光地として成長していく様子を学ぶ事ができる。
焼きまんじゅう (やきまんじゅう)
グンマ県名物で、幕末の頃からグンマ県人のソウルフードと知られるまんじゅう。一般的には餡の入っていない蒸しパンのようなまんじゅうに、甘くて濃厚な味噌だれを塗って火であぶり、焦げ目をつけた物。グンマ人以外が口にすると、甘い味噌への疑問と拒否反応で脳が壊死し、死に至ると言われている。ただし、もともとがグンマ県の飛び地だったニイガタ県三条市やチバ県銚子市出身の人間には美味しく感じられる。
上毛カルタ (じょうもうかるた)
グンマ県人なら誰しもが44枚すべてを暗唱できるといわれているカルタ。グンマ人の必須教養にして、歴史や風土を盛り込んだグンマ県の聖典とされる。グンマ県人は全員が幼少期に暗記を義務づけられているため、他県におけるグンマ人判別の暗号としても用いられる。相良シーナと上毛カルタ対決をする事になった神月紀は、ブラック夫人の特訓の際、夢の中で上毛カルタ作成の歴史を学んだ。
富岡日記 (とみおかにっき)
グンマ県にある富岡製糸場で働いていた、16歳の頃の和田英の生活を語り残した回想録。十代の少女の瑞々しい目線で、当時の生活や寄宿生活の出来事が綴られている。神月紀達が怪談話で盛り上がっていた際、轟二矢が「この話の最後まで正気でいられないだろう」と語りつつ、その一部を明かした。事実、その内容を聞いた紀達は萌え狂って頭を抱える事となった。
レモン牛乳 (れもんぎゅうにゅう)
黄色い牛乳で、爽やかな香りがする。トチギ人の細胞を構成する郷土食の一つで、レモン牛乳という名称に反してレモン果汁は一滴も入っていない。一時は歴史上から消滅したが、とある組織が再びこの世に甦らせた、トチギの陰謀を象徴する逸品とされている。神月紀が護邪兵9に拉致された際、協力していた轟一矢によって真中高校の窓ガラスに打ち込まれた。