あらすじ
一咲の前途多難な高校生活の始まり
両親を交通事故で亡くし、祖父で瀬名垣組の三代目組長・瀬名垣太助に引き取られ、大切に育てられてきた瀬名垣一咲は、これまで親しい友達が一人もいなかった。そこで一咲は、あえて遠方にある音羽(おとわ)高校に入学し、自分をヤクザの孫と知らない人たちと出会い、青春を満喫しようとしていた。また、一咲は幼い頃から瀬名垣組の若頭である宇藤啓弥に片思いをしているものの、実るはずのない恋だとあきらめ、高校生活では別の男性に目を向けようと決意する。そして入学式の日、一咲が教室に向かうと、同じクラスに啓弥が編入してくる。啓弥は太助に命じられ、周囲の男たちから一咲を守るためにボディーガードとして裏口入学をしていたのだ。学校では啓弥と距離を取ろうとする一咲だったが、なかなかうまくいかず、さらにトラブルでは彼に助けられてばかりいた。そんな中、一咲はクラスメートの田丸から連絡先を聞かれ、友達同士が集まるカラオケに参加しないかと誘われる。
一咲と啓弥の初デート
無試験で裏口入学した宇藤啓弥は、入学早々テストで赤点を取り、追試になってしまう。なんとか手助けしたい瀬名垣一咲は、いっしょに勉強しようと啓弥を誘う。放課後に一咲と啓弥が勉強していると、クラスメートの女子から二人は付き合っているのかと質問される。すると啓弥は自分にとって一咲は恋愛対象ではないと返したことで、一咲は望みのない恋だと理解していたが、あらためてショックを受ける。そんな傷心の一咲に対して啓弥は、追試でいい得点が取れたらキスしたいと突拍子もないことを言い出す。啓弥の考えていることがまったく理解できない一咲は、その申し出を断ると、その代わりにデートに行こうと提案される。そして啓弥はみごと追試で合格し、二人は動物園に行って楽しい時間を過ごす。しかし、帰り道で啓弥は別の組のヤクザとトラブルになる。
トラブル続きの臨海学校
瀬名垣一咲たちが通う音羽高校では、二泊三日の臨海学校が行われる。一咲は以前球技大会を通して親しくなった安藤と勝木から自分たちの班に入らないかと誘われ、期待に胸を膨らませていた。そして臨海学校がスタートし、一咲はひょんなことから、宇藤啓弥が一人で大浴場を利用している姿を目撃する。すると運悪く、ほかの男性グループが大浴場に入って来てしまい、一咲は啓弥と狭いスペースに隠れることになる。半裸の啓弥と抱き合うかたちになった一咲は、まだ彼をあきらめきれていない自分を再確認する。そして次の日、啓弥が目を離した一瞬のスキに、一咲は瀬名垣組と対立しているヤクザたちに誘拐される。
一咲の夏休み
高校生になって初めての夏休みを迎え、瀬名垣一咲はヒマを持て余していた。これまで一日中いっしょに過ごしていた宇藤啓弥が本来のヤクザの仕事を優先するようになり、一咲は寂しさを抱いていた。そんな一咲の様子に気づいた啓弥は一咲を夏祭りに誘い、二人は二回目のデートを行う。さらに一咲は、安藤と勝木からお泊まり会をしないかと誘われ、生まれて初めてのイベントを謳歌する。そしてお泊まり会で一咲は、安藤と勝木から本当は啓弥をどう思っているのかと質問される。
一咲と啓弥の関係を壊そうとする幹男
ある日、瀬名垣組の事務所兼住居に田貫組組長と、その孫である田貫幹男がやって来る。自分と同じヤクザの孫という境遇の幹男に対して、瀬名垣一咲は親近感を覚えるが、すぐに幹男の軽い言動に苦手意識を抱く。一方の幹男は初心な反応を見せる一咲と、その護衛を務める宇藤啓弥を面白い奴らだと認識し、ヒマつぶしのために音羽高校へ編入する。そして三人はクラスメートとなり、幹男はわざと二人を挑発する言動を繰り返し、その反応を楽しんでいた。そんな中、音羽高校では文化祭が催されることになり、一咲のクラスでは演劇『ロミオとジュリエット』を出し物にすることが決定する。周囲からの後押しもあり、ジュリエット役を演じることになった一咲だったが、ロミオ役はじゃんけんで幹男が演じることになる。その練習中に、一咲と啓弥の絆の強さを目の当たりにした幹男は、二人の関係を壊してからかいたいと思うようになる。こうして幹男は一咲と啓弥を拉致し、啓弥の目の前で一咲を犯そうとする。
啓弥に告白する一咲
文化祭も終わり、瀬名垣一咲は宇藤啓弥をあきらめようとしているのに、ますます啓弥に心惹かれていく。どうすればいいのかわからなくなった一咲は、以前名刺をもらっていた関谷香織に衝動的に相談してしまう。そこで香織から啓弥が自分をどれほど大切に思っているのかを聞いた一咲は、ついに啓弥に告白する。告白を受けた啓弥はすぐに一咲を押し倒し、一咲は体目当てなのかと不安を抱く。そして次の日、一咲は啓弥が別のクラスの女子から告白されている場面を目撃する。そして女子から付き合ってもらえないなら、せめてキスをしてほしいと言われた啓弥は、それに応じようとする。一咲は啓弥の考えていることがまったく理解できず、泣きながらその場を離れる。そんな中、一咲と啓弥の様子をうかがっていた安藤と勝木は我慢ができず、啓弥をファミリーレストランに呼び出す。そして二人から素直な意見を聞いた啓弥は、これまでの自らの言動に配慮が欠けていたと反省する。そして啓弥は一咲に対して、どれほど自分が彼女のことを大切に思っているのかを語り始める。
メディア化
テレビアニメ
2023年テレビアニメ化。9月28日よりTOKYO MXほかにて放送。監督は高本宣弘、アニメーション制作はproject No.9。主人公の瀬名垣一咲を鬼頭明里、宇藤啓弥を梅原裕一郎が演じる。
実写映画
2025年実写映画化。3月14日より公開。監督は小林啓一。キャストは瀬名垣一咲を福本莉子、宇藤啓弥をジェシー(SixTONES)が演じる。
登場人物・キャラクター
瀬名垣 一咲 (せながき いさく)
音羽高校に通う1年生の女子で、年齢は15歳。優しそうな雰囲気を漂わせた美少女で、金髪ロングヘアで胸が大きくスタイル抜群。瀬名垣組の三代目組長・瀬名垣太助の孫で、5歳の時に両親を事故で亡くし、太助に引き取られた。幼い頃からいっしょに過ごしている若頭の宇藤啓弥に片思いをしているが、啓弥には家族だと思われているため、なかなか告白できずにいる。小学生の時からヤクザの家の子だと周囲から避けられ、友達と呼べる存在が一人もいなかったことから、少々世間知らずなところがある。また、交際経験もないことから男性に対して免疫がなく、初心な反応を見せることが多い。
宇藤 啓弥 (うどう けいや)
瀬名垣組の若頭を務める男性で、年齢は26歳。5歳の時に瀬名垣組の三代目組長・瀬名垣太助に引き取られた瀬名垣一咲の世話係を任され、本当の家族のように接していた。一咲が自宅から1時間ほど離れた音羽高校に進学すると聞き、太助の力を使って裏口入学し、彼女と同じクラスに在籍している。幼い頃から一咲に好意を抱かれているが、まったく気づいていない。ただし宇藤啓弥も、一咲が成長していくにつれ、なんとなくほかの男性が近づくことが許せなくなっている。喜怒哀楽を表に出さないクールな性格で、何を考えているのかわからないミステリアスなところがある。また、頭の中で考えた物事の結末だけを口にするため、啓弥の発言によって周囲を困惑させることが多い。その言動から安藤と勝木には「超ド級の変人」と評されている。田貫幹男からは「けーちゃん」と呼ばれている。
安藤 (あんどう)
音羽高校に通う1年生の女子で、瀬名垣一咲のクラスメート。ボーイッシュな容姿で、サバサバした性格をしている。球技大会の時に一咲とバレーボールのチームメートになり、その縁で親しくなった。その後、学校では一咲や勝木の三人で行動するようになる。一咲にとっては久しぶりにできた友達のため、慕われている。また、一咲と宇藤啓弥がなぜ交際しないのかと不思議に思っており、彼女の背中を押すような言動も多い。中学時代に彼氏がいた時期があり、キスをした経験もあることから、一咲や勝木の三人の中では最も恋愛経験が豊富だと思われている。
勝木 (かつき)
音羽高校に通う1年生の女子で、瀬名垣一咲のクラスメート。球技大会の時に一咲とバレーボールのチームメートになり、その縁で親しくなった。その後、学校では一咲や安藤の三人で行動するようになる。一咲にとっては久しぶりにできた友達のため、慕われている。また、一咲と宇藤啓弥がなぜ交際しないのかと不思議に思っており、彼女の背中を押すような言動も多い。これまで交際経験がなく、恋人関係にあこがれている。
田貫 幹男 (たぬき みきお)
高校1年生の男子で、瀬名垣太助と兄弟関係にある田貫組組長の孫。のちに音羽高校に編入し、瀬名垣一咲のクラスメートになる。祖父に連れられて瀬名垣組の事務所兼住居を訪れた際に、一咲と知り合いになる。自分の軟派な発言に初心な反応を見せる一咲に対して興味を抱き、何かとちょっかいを出すようになる。からかったりヒマつぶしのために一咲と宇藤啓弥に近づき、反応を楽しんだりしているうちに、二人の関係を壊したい衝動に駆られていく。女の子が大好きで、かわいらしい容姿の女の子を見かけるとつい声をかけてしまう悪癖の持ち主。退屈することを嫌い、自分をワクワクと楽しませてくれる存在をつねに求めている。そのことから、両親に手が負えないほどの悪事を繰り返したため、田貫組組長の祖父の家で暮らすように命じられている。
田丸 (たまる)
音羽高校に通う1年生の男子で、瀬名垣一咲のクラスメート。入学してすぐに一咲のことを気に入り、自分から連絡先を交換した。一咲に積極的なアプローチを繰り返しているが、彼女のことが好きというよりも、自分の思いどおりにできそうなおとなしそうな女性という意味で目をつけている。そのため、宇藤啓弥からは敵対心を抱かれている。
関谷 香織 (せきや かおり)
会員制クラブのママを務めている女性。宇藤啓弥と仕事のつながりで親しくなる。華やかな雰囲気を漂わせ、明るく朗らかな性格をしている。音羽高校の文化祭を訪れたことで、瀬名垣一咲とも顔見知りになる。啓弥がヤクザであることも知っているため、一咲のよき相談相手になっている。啓弥に対して少なからず好意を抱いているものの、一咲には勝てないと思っており、二人の関係を温かく見守っている。ただし、過去に一度だけ啓弥と体の関係を持ったことがある。
瀬名垣 太助 (せながき たすけ)
瀬名垣一咲の祖父で、瀬名垣組の三代目組長を務める高齢の男性。5歳の時に両親を事故で亡くした一咲を引き取って育てている。一咲をかわいがっており、彼女が遠方にある高校に進学が決まった時には、ボディーガード役として宇藤啓弥を裏口入学させている。一咲が幼い頃から、啓弥に好意を抱いていることには気づいていない。
書誌情報
お嬢と番犬くん 9巻 講談社〈講談社コミックス別冊フレンド〉
第1巻
(2019-04-12発行、 978-4065151549)
第2巻
(2019-09-13発行、 978-4065170038)
第3巻
(2020-01-10発行、 978-4065182512)
第4巻
(2020-06-11発行、 978-4065197790)
第5巻
(2020-11-13発行、 978-4065213179)
第6巻
(2021-05-13発行、 978-4065233030)
第7巻
(2022-01-13発行、 978-4065258972)
第8巻
(2022-10-13発行、 978-4065291542)
第9巻
(2023-09-13発行、 978-4065329849)