かくしごと

かくしごと

愛する娘に漫画家であることを隠し通している主人公の、二重生活を描くコメディ作品。タイトルの『かくしごと』は、「隠し事」と「描く仕事」のダブルミーニングとなっている。また、作中に漫画業界や出版業界の「あるあるネタ」が頻出するのも特徴。「月刊少年マガジン」にて2016年1月号より連載。

正式名称
かくしごと
ふりがな
かくしごと
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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世界観

本作は作者の久米田康治自身の体験に基づく実話が数多く挿入されており、登場する地名などの多くは実在のもの。また、出版社や雑誌名などは架空の名称ではあるが、容易にオリジナルが特定できるネーミングとなっている。

作品誕生のいきさつ

「漫画家を描く漫画」という企画自体は、担当編集者によるもの。当初、久米田康治自身は「やり尽くされたジャンル」としてあまり乗り気ではなかったが、かつて「下ネタ漫画を描いてきたので蔑まれて職業を隠していた」という経験をもとに、「家族に本業を隠している漫画家」というアレンジを付け加えて企画を進行させた。

あらすじ

かつては『きんたましまし』という下ネタ漫画が人気となった、中堅漫画家の主人公・後藤可久士。現在も『風のタイツ』という同じ路線の漫画を執筆中だが、娘の姫が生まれたことをきっかけに「父親が恥ずかしい漫画を描いてると知れたら学校でいじめられる」ことを危惧し、娘には普通の会社員であるかのように振舞いながら、漫画家を続けることとなる。しかしその秘密主義と過剰なまでの娘への愛情がもとで、周囲を巻き込んだ様々な騒動を起こしてしまうのであった。

作風

各話はショートストーリー数本で構成されるのが基本。全体が週刊漫画誌のような体裁となっており、オチに連動して漫画誌の巻末にあるような「作者の1行コメント」が挿入される。また、ときおり欄外に「ハシラ告知」を模したネタが挿入されることもある。

作品におけるパロデイ・もじり

各話のタイトルは、序盤はきわめてシンプルなものであったが、次第に「多重人脈担当再呼」「やりくりサーカス」など、人気漫画作品のもじりが通例となっていく。また、作中には主人公と交流のある人物として、実在の漫画家をモデルとしたキャラクターが登場することもある。

劇中劇

作中に登場する『きんたましまし』は、ストレートな下ネタで一世を風靡した、後藤可久士の代表作。「キンタ 増し増し!」のフレーズは、当時の子供たちがよくマネして怒られたという描写がある。現在連載中の『風のタイツ』は「打ち切られもしないが、ヒットには至っていない」という程度の人気で、第1話の時点で最新刊が第9巻となっている。他にも『亀の雫』『夏子の豆』といった著作が登場するが、いずれの作品も『きんたましまし』同様に「けっこうH」な漫画であることが、作中の後藤可久士へのインタビューで触れられている。

単行本の装丁

各単行本の巻頭と巻末はフルカラーとなっており、18歳になった姫が父の❝かくしごと❞を知る物語が挿入されている。本編とは別の時間軸であるだけでなく、完全にギャグを排したハートフルなテイストが特徴となっている。

メディアミックス

2017年6月現在、かつて久米田康治の過去作品である『さよなら絶望先生』や『かってに改蔵』のアニメ化を手がけたシャフトによるプロモーション映像が公開されている。監督も、それらの作品と同じく新房昭之が担当。

登場人物・キャラクター

後藤 可久士 (ごとう かくし)

漫画家の男性。第1話の時点で、画業15周年を迎える中堅の作家。下品なギャグでヒットに至った『きんたましまし』が代表作。現在は「週刊マンガジン」で『風のタイツ』を連載中。娘の姫が生まれた際、病院の看護師に『きんたましまし』の作者であることを指摘された。これをきっかけに、自身が思っている以上に『きんたましまし』の知名度が高い現状を認識するとともに、そんな下品な漫画の作者が親だと知れると、娘が学校でいじめに遭うことを危惧するようになる。 その結果、娘にはサラリーマンであることを装って、目黒区の自宅からはスーツ姿で外出。渋谷区にある仕事場に行く途中にあるセレクトショップ「マリオット ランチマーケット」で、楽な服装に着替える、という二重生活を送るようになった。 娘に漫画家の正体を隠すことは、アシスタントたち周囲の人物にも徹底されている。そこで、仕事場には自作の単行本を置くことが厳禁されているほか、原稿はわざわざ遠く離れた鎌倉にある倉庫に保管されている。なお、現在は、執筆中の姿はTシャツに短パン、裸足というスタイルだが、かつては全裸でないと描けなかったことが、アシスタントによって証言されている。 そんな様々な決まり事の多さから、編集部には若干めんどうくさい作家だ、と思われているフシもある。性格は極度な心配症で、何よりも娘のことが最優先。何らかの事情で、現在はシングルファーザーとなっており、娘のためを思って行動したことがもとで、本人は無自覚のまま周囲の女性に好意を持たれてしまうことが多い。

後藤 姫 (ごとう ひめ)

後藤可久士の一人娘。小学4年生。父親の職業が何なのか、うっすらと疑問に思うことはあるものの、至って素直に育っており、非常に父親思いの性格。しかし、やや発想が突飛なところがあり、自宅に来てしまった新担当の十丸院五月には、「先生に似て、独特の解釈や決めつけが激しい」と言われている。また、なぜか「ワールド・ビジネス・サテライト」を好んで視聴しており、ときおり年齢とズレた用語を使うことがある。 学校での友人関係は良好で、東御ひなたちとめぐろ川たんていじむしょなる子供探偵団を結成しているが、今のところ活動は❝ごっこ遊び❞の範疇にとどまっている。なお、単行本の巻頭と巻末では、18歳になって父の秘密を知った物語が描かれている。

可久士の妻 (かくしのつま)

後藤可久士の妻。本編には写真のみで登場。姿ははっきりと描写されておらず、フルネームも不明。おそらく、すでに他界していることが示唆されており、かつて3人で暮らしていたときは、非常に家族仲は良好であった模様。娘のために、16歳になるまでに必要なものを年齢ごとに分けた箱を遺しており、可久士と姫はそれを大切に扱っている。

志治 仰 (しじ あおぐ)

後藤可久士が立ち上げたプロダクション・G PROで働くアシスタントの男性。最も古株で、チーフアシスタントを務める。可久士のもとで姫が生まれる前から働いており、何かとめんどうくさい決まりごとにも理解を示す。性格は「指示待ち」の傾向があるが、的確に与えられた仕事をこなす有能な人物。特に背景は何年も彼に任せられており、それゆえ腕をケガした際は、『風のタイツ』の進行に大きな支障が出てしまった。

芥子 駆 (けし かける)

G PROで働くアシスタントの男性。新人で、現在は消しゴムかけ担当。作業環境がPCに移行すると、自分の仕事がなくなってしまうのではないか、と危惧している。何かと不用意な発言が多く、結果的に後藤可久士に余計な精神的ダメージを与えたり、暴走のきっかけを作ることがしばしばある。そんなトラブルの多さから、周囲に無能扱いされているが、実は美大出身で日本画科出身。 しかし「マッチョキャラの参考にならない」と言われた悔しさをバネに、仕事を休んでまで体を鍛えるなど、努力の方向が常にズレている。

筧 亜美 (かけい あみ)

G PROで働くアシスタントの女性。アシスタント経験はそれなりにあり、現在は仕上げと服飾が主な担当。カケアミ(斜線で影の濃淡を表現する漫画特有の技法)を得意としている。慰安旅行で別荘に行った際、置いてあった9年前の「少年ジャンプ」を回顧しながら読みふけっており、読書傾向からかなりの漫画好きであることがうかがえる。 将来はホラー漫画家としてデビューするのが希望。すでにペンネームも考えているが、それが何であるのかは絶対に言わない。

墨田 羅砂 (すみた らすな)

G PROで働くアシスタントの女性。筧亜美とは対照的に、原稿に墨汁を垂らしてしまうなど、未熟な点も目立つ。漫画にはほとんど興味がなく、「代官山の職場でクリエイティブな仕事」という誘い文句につられて、G PROにやってきた。しかし、業界の慣習や上下関係にとらわれないゆえの鋭い発言も多く、デジタル環境の導入を提言したり、『風のタイツ』の登場人物の服装や語尾が一貫していないことを、サラッと指摘したこともある。

十丸院 五月 (とまるいん さつき)

若手編集者の男性。大手出版社・豪談社の発行する漫画雑誌「週刊マンガジン」で働いている。配置替えにより後藤可久士の新担当になったばかりで、それゆえに「娘には漫画家のことは絶対に秘密」であることを知らないなど、数々のトラブルの原因となる人物。後藤可久士と初顔合わせの際は、間違って仕事場ではなく、自宅のほうへ訪問したばかりか、好かれようとして『風のタイツ』のTシャツで参上。 娘にすべてが露呈する危機を作り出したうえ、「ボクだって(こんなはずかしいTシャツを着るのは)本当は嫌だった」などと、失礼千万なことを口にしている。また、褐色フェチであり、後藤可久士の家で家事を代行しているナディラに対して、ひそかな好意を寄せている。

六條 一子 (ろくじょう いちこ)

姫の通う小学校の女性担任。常にスポーティーな服装で、浅黒く日焼けした肌が特徴。校内に不審者が侵入した際に使う刺又を、なぜか普段から持ち歩くことが多い。生徒たちからはカレシがいないことをさんざんイジられている。後藤可久士が『きんたましまし』の作者であることを知っており、かつては作品のファンでもあった。 姫の家庭環境を理解し、非常に気にかけてくれているが、後藤可久士の言動をたびたび自分への恋愛的アプローチだと誤解して、一方的に思いを募らせている。なお、ネーミングは肌にスクリーントーンの61番が使用されていることに因むもの。作中で、いずれデジタル環境が進めば誰にも理解されない名前になることが、メタ的にネタにされている。

千田 奈留 (せんだ なる)

後藤可久士と知り合う女性のひとり。アイドルを目指す女子高生。そんな夢物語のような話を、作品のために真剣に聞いてくれた後藤可久士を「余裕のある大人の男性」と誤解し、好意を抱く。また、アルバイト先の絵画教室に後藤可久士が来た際も、自分に会いに来てくれたものと誤解して、さらに好意を深めていく。

汐越 羊 (しおこし よう)

クッキングアドバイザーの女性。後藤可久士が訪れた料理教室で講師をしている。娘が運動会で寂しい思いをしないよう、お弁当を作ろうと奮闘する可久士が発した「汐越先生がお母さんだったら子供は幸せでしょうね」という言葉を、プロポーズと勘違い。一方的に好意を抱くようになる。

城路 久美 (じょうろ くみ)

後藤可久士が娘と訪れたフラワーショップの女性店員。可久士の「お花好きなお母さんとかいいな」というつぶやきを勘違い。そのうえ、たまたま預けられたスプレーマムの花言葉が「あなたを愛しています」だったため、プロポーズと勘違い。一方的に好意を抱くようになる。

大和 力郎 (だいわ りきろう)

「週刊マンガジン」の編集長の男性。現場は部下に任せることも多いが、台割を自ら切ることだけは譲らない。様々な事情で、掲載される漫画のページ数が増減する中、やりくりがぴったりハマることに快感を見出している。

内木 理沙 (うちき りさ)

「週刊マンガジン」の副編集長。実質的に現場を仕切る有能な女性編集者。ときには作家に厳しい判断をくだすこともあるが、名前のような「打ち切り」という言葉は使わず、遠回しにソフトな表現を使うことを心得ている。編集者経験の浅い十丸院五月を諭すことも多い。

マリオ

代官山にあるセレクトショップ「マリオット ランチマーケット」の男性店長。本名は不明。後藤可久士とは付き合いが長く、彼が自宅と仕事場の途中にある自分の店で着替えることを容認している。普段から独特のファッションで、地元の小学生たちからは「おしゃぴー」なる魔物扱いをされたこともある。

ナディラ

後藤可久士と契約している家事代行サービスの女性スタッフ。フルネームは未登場。褐色の肌が特徴的なインド人。姫のことを「姫サマ」と呼び、業務とは別にかなり本格的な占いをすることもある。

不二多 勝日郎 (ふじた かつひろ)

後藤可久士と交流のある男性漫画家。「ダークファンタジーの巨匠」の異名を持ち、編集部からは大御所の扱いをされている作家。第2話で、描いてなくても売れてる感のある「漫豪」なるポジションの実例として挙げられ、その後もしばしば作中に1コマレベルで登場。モデルとなっているのは『うしおととら』『からくりサーカス』などで知られる漫画家の藤田和日郎、本人もネタにされていることを認識しているのが、ツイッターの書き込みなどから確認できる。

東御 ひな (とうみ ひな)

姫の通う小学校のクラスメイト。めぐろ川たんていじむしょのメンバーで、4人の中ではリーダー的なポジションの女の子。『さよなら絶望先生』に登場する日塔奈美に名前も顔もよく似ている。なお、めぐろ川たんていじむしょのメンバーは18歳になった姫の物語にも登場しており、長きにわたって友情を育んでいることが窺い知れる。

古武 シルビア (こぶ しるびあ)

姫と仲の良いクラスメイトのひとり。めぐろ川たんていじむしょのメンバー。おさげの髪型が特徴の女の子。『さよなら絶望先生』に登場する小節あびるに名前も顔もよく似ている。

橘地 莉子 (きっち りこ)

姫と仲の良いクラスメイトのひとり。めぐろ川たんていじむしょのメンバー。長い黒髪が特徴の女の子。『さよなら絶望先生』に登場する木津千里に名前も顔もよく似ている。

集団・組織

G PRO (ごとーぷろだくしょん)

後藤可久士が設立した漫画制作プロダクション。現在は4人のアシスタントが働いている。もし姫が来ても仕事がバレないように、いかにも漫画家の仕事場っぽい雰囲気は徹底して排除されている。所在地は、渋谷区代官山のエリアにあるマンションの一室。常に数人が集まって何らかの作業をしており、資料として多数のモデルガンなどを所有していたため、テロ組織なのではないかと誤解されたこともある。

その他キーワード

週刊マンガジン (しゅうかんまんがじん)

大手出版社・豪談社の発行する週刊少年漫画誌。後藤可久士の描く『風のタイツ』が掲載されている。他に『金大中少年の事件簿』『エリアの寿司』『七つのだっさい』などが連載中。

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