余の名はズシオ

余の名はズシオ

亡国の王子、ズシオが、母国を滅ぼして王権を奪った新王家を打倒するため、仲間とともに旅をしていくハイテンションギャグ漫画。木村太彦のデビュー作にして初連載作品で、「月刊少年エース」1997年12月号から2001年1月号にかけて掲載された。

正式名称
余の名はズシオ
ふりがな
よのなはずしお
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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概要・あらすじ

亡国の王子、ズシオは、姉であるアンジュと交わした「必ず王になる」という約束を果たすため、新王家打倒を目指して旅をしていた。そんな中、食い逃げをとがめられて行き倒れていたズシオは、男装した少女、瑠璃家に匿われ、看病してもらう。これによりズシオの仲間と見なされてお尋ね者となった瑠璃家をはじめ、ズシオは打倒新王家の旅を続ける中で、次々と新しい仲間を得ていく。

登場人物・キャラクター

ズシオ

大陸を治める帝国の第一王位継承者だった青年。アンジュと血の繋がっていない弟。帝国が滅亡し、現在は指名手配されている。後頭部の高い部分で髪を結っており、常に上半身裸、裸足で行動している。過去にアンジュと交わした約束のため、王家復興を目指して旅をしている。仲間たちからは「王子」と呼ばれている。脳が取れても生きているという特殊すぎる体質で、瑠璃家からは「どうやったら殺せるかを議論すべき」と提案されている。 瑠璃家の股間に男性器があって自分のモノより立派、という夢をよく見るため、瑠璃家は男ではないかと、ずっと疑い続けている。のちに謎の生き物の肉を食べた結果、ポヨを産み落として母親として接している。なお、実際には王家の血筋ではないことが明かされている。

瑠璃家 (るりいえ)

少年のような凜々しい容姿の少女。戦争で両親を亡くし、女であることを隠して生活していた。そこへ川を流れて来たズシオと遭遇、その後ずるずると行動をともにするようになった。アンジュから暗示をかけられており、「トコトコトコトコ男のコ!?ヅカヅカヅカヅカタカラヅカ!!」と唱えると、暗殺者、蛇隠や海賊たちを一蹴できるほどに戦闘能力が跳ね上がる。 またこの時は、女性に対して口説き文句を連発する人格に変貌する。

アンジュ

ズシオと血の繋がっていない姉。大陸を治める帝国の第一王女だった女性。長い黒髪で、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。置いていかれると、静かに苛烈な怒りを見せる。男性のような女性である「ヅカキャラ」が大好き。瑠璃家に本人の承諾なく暗示をかけて戦闘訓練を行い、特定のキーワードを口にすると、戦闘能力が高く、女性に対し口説き文句を連発する人格を植え付けた。 かつて王になりたくないと言ったズシオに対し、「王になれなかった時は私が殺してあげます」と発言したが、アンジュ本人は忘れている。

ポヨ

頭部に尾のようなものが生えている、星形に似た形態の謎の生き物。同形状の謎の巨大生物の肉を食べたズシオの腹を割いて生まれてきたため、ズシオは我が子として接している。「ポヨ」としか話せないが、人語を解している様子がある。またどんな動物とも話すことができ、ポヨが怯えて叫んだ際には、森に住む動物がこぞって助けに現れた。

汁婆 (しるばー)

ズシオの愛馬。馬のようだが、正確には未確認怪生物の総称「UMA(ユーマ)」であるとされる。名前の由来は「汁吐きかける婆さん」という意味。趣味で乗馬をたしなみ、ズシオよりも乗馬がうまいとされている。また二本足で走った方が速く、その際には走った道筋に炎が残るほど。人語を解し、酒もたしなみ、フリップに文字を書いて会話することもできる。

風雷 (ふうらい)

竜宮の王として君臨していた龍王。400年前に人界で暴れたため、棒の姿に変えられて封印されていた邪龍とされる。ズシオたちの訪れた海辺の岩に、突き立てられていた棒として出会ったため、ズシオにはたびたび「棒王」と呼ばれている。帰る場所がないため、ズシオに同行している。本来は神通力も強く、成人男性の姿だが、逆玉手箱の煙を浴びた結果、幼児の姿となってしまい、神通力も弱くなっている。

女神様 (ごっです)

遮光器土偶の仮面を被っている年齢不詳の女性。王家の使用人頭であり、ズシオの乳母も務めていた。常に風になびき続けるさらさらな金髪と、胸元が円錐形に尖っているのが特徴。その神々しさから女神様と呼ばれているが、本名は「チャタレイ夫人」。天使たちの集落を取り仕切る存在として尊敬されており、娘にアンジェレッタ、ジュリエッタがいる。

桐藤 (とうどう)

天使たちの集落で暮らしている男性。背中に翼の生えた全身白タイツに、針金で固定した天使の輪を身に着けている。もともとはズシオの家の使用人だった。眉間に縦長のほくろがあり、常に丁寧な口調を崩さず、冷静さを失わない人物。銀次から一目置かれている。

銀次 (ぎんじ)

天使たちの集落で暮らしている男性。背中に翼の生えた全身白タイツに、針金で固定した天使の輪を身に着けている。もともとはズシオの家の使用人だった。額の左側に傷を縫った痕があり、少々柄が悪く、言葉遣いも荒い。桐藤とはよく行動をともにしている。

アンジェレッタ

女神様の長女で、ジュリエッタの姉。天使たちの集落で暮らしている。背中に翼の生えた全身白タイツを身に着けた、体の凹凸がはっきりしたショートカットの成人女性。ズシオの王都奪還を諦めさせるため、女神様の指示により色仕掛けで迫ったが、アンジェレッタ自身が玉の輿を狙っている節がある。

ジュリエッタ

女神様の次女で、アンジェレッタの妹。天使たちの集落で暮らしている。背中に翼の生えた全身白タイツを身に着けた、体つきの幼い、2本の三つ編みの髪型が特徴の少女。ズシオの王都奪還を諦めさせるため、女神様の指示により、ズシオへの精一杯の気持ちとして「忌中」の花輪を自作して贈った。アンジェレッタが玉の輿に乗るためズシオを狙っていることを知っており、瑠璃家とズシオの関係を警戒している。

斑足 (はんそく)

ヴァルダーラ朝の王にして、ピヨピヨの弟。黒髪をオールバックにした美丈夫だが、華陽に骨抜きにされ、華陽のわがままを唯々諾々と受け入れた結果、国民に圧政を敷いていた。華陽がズシオに好意を抱いて出奔してからは、王位を退いて華陽の後を追う。

華陽 (かよう)

斑足の妻にして、ヴァルダーラ朝の王妃。斑足を骨抜きにするほどの美貌の持ち主だが、正体は黄金の毛並みを持つ九尾の狐。風雷とは数百年前から面識がある。王家の人間の肉を食すと不老不死になれるという理由から、ズシオ、アンジュを狙っていた。王妃としてわがまま放題に振る舞っていたが、ズシオに尻尾を叩かれたことによって「叱ってくれる男こそが理想」と気づき、ヴァルダーラ朝を出奔。 その後はズシオを振り向かせるために、強引なアタックを繰り返すようになる。

シモーデル

日照りが続く農地を治めている領主。禿頭の老人で、池の鯉の生命維持のために領地の水を独り占めしていた。しかしそれは飲尿療法を恥じて民を遠ざけていたためであり、農地が水不足に陥っていることを知ってからは門戸を開いている。かつて斑足と華陽の政治手法を諫めたため地方に飛ばされたが、ピヨピヨが新王に就任した際に新宰相に任じられた。

ピヨピヨ

ヴァルダーラ朝の大都、ヴァータリプトラの領主にして斑足の兄。長い黒髪を大雑把にバンダナで押し上げている。人生のほとんどを博打に費やしてきたと自負する博打狂で、本名は「バクト」。だが、ズシオとの賭け双六の過程でピヨピヨに改名させられ、同時に一度、全財産を失った。その後、ズシオとは友人関係となった。 王位を辞退していたが、斑足が華陽を追って退位したため新王に就任した。

侍従長 (じじゅうちょう)

ピヨピヨに仕える、頭頂部が禿げた老人。ズシオとピヨピヨの賭け双六において、書かれていることをすべて実行すると約束した。そのため、ピヨピヨが城郭を含めた全財産を失った後も、罵倒しつつピヨピヨに忠誠を誓っていた。

蛇隠 (だいん)

ズシオの命を狙う暗殺者。忍者装束を身に着けた長髪で初老の男性。愛用している武器の日本刀を舐める癖があり、そのせいで舌先が2つに切れている。瑠璃家からは「アホ」と評されているが、戦闘能力は高い。

おばさん

初老の女性。息子であるムスコの危機に駆けつける途中、ズシオたちと出会って行動をともにすることになった。華陽からアンジュを要求された際には、似ても似つかぬ変装をして、アンジュ本人だと言い張った。

ムスコ

おばさんの息子の青年。華陽の正体が狐であるということを知ったため、命を狙われていたが、ズシオたちに救われた。ピヨピヨが新王に就任した際に、華陽から国を守ろうとした功績が認められて、ヴァルダーラ朝の外相文官となった。

華陽の手下 (かようのてした)

華陽の手下で、常に狐を思わせる仮面を身につけている人物。性別や年齢は不明。真面目な性格らしく、ズシオの行動に頻繁に困惑している。華陽がヴァルダーラ朝を出奔してからも華陽に付き従っている。

ホーク

断崖絶壁の岩山、赤き城の走り屋連合「黄色い太陽」の頭(ヘッド)を務める青年。下り道でもほぼ減速しないことから、仲間たちからは「丘下りの白色彗星」という二つ名を付けられている。下り坂を全速力で下りて来るズシオと汁婆の姿を見て、勝手に勝負を申し込まれたと思い込んだ結果、ほぼ相手にされないまま敗北し、崖から転落した。

ラズベリー

ズシオの国を滅ぼした、現王家の王子。もともとは属国の王子で、ズシオとは幼なじみ。背中まであるロングヘアに丸メガネが特徴の青年で、髪を常にブラシで梳かしている。7歳の頃、女装したズシオに、それと知らず一目惚れした。それを告白した結果、ホモの塔を建立され、国を挙げての晒し者になったことを根に持っている。話している相手を「君(ちみ)」と呼ぶ癖があり、瑠璃家に好意を抱いている。 部下たちからは「ラズ様」と愛称で呼ばれている。

田舎領主 (いなかりょうしゅ)

アンジュを幽閉していた砦の主。簡略化したアロンジュヘアに、耳に向かって尖った口ひげが特徴の男性。アンジュを前王家敗北の印として、新王家であるラズベリーのもとへ献上する予定だった。10時間にわたってアンジュとズシオに砦を破壊され、2人に金銭を渡して「二度と来ないでくれ」と嘆願した。

オクトパス

海賊「青き蛸」の船長を務めていた筋骨隆々の男性。ゲイを公言しており、瑠璃家を船長室に呼び出して性行為に及ぼうとしたことがある。またラズベリーに一目惚れしている。谷に落ちたラズベリーを助け、命の恩人として行動をともにしながら、彼の貞操を狙っている。

人魚 (にんぎょ)

ズシオたちが海に行くと、必ず食用に捕縛される女性の人魚。人語を解するが、話すことはできず、フリップを使って会話する。逆玉手箱やパンドラの玉手箱などのアイテムを所持しており、助けてもらったお礼や、命乞いの際に差し出す。

亀丸 (かめまる)

風雷の部下だった巨大な亀。甲羅が山と同じほどに高く、本体もそれに準じて巨大なため、一歩歩くだけで周辺地域に地響きが起きる。ズシオを踏み潰すように風雷に命じられたが、暴力を嫌って逃亡した。

集団・組織

黄色い太陽 (いえろーさんず)

断崖絶壁の岩山、赤き城を走る走り屋連合。ホークをリーダーとして結成されている。構成メンバーは20人程度。ホーク以外のメンバーは大した実力はなく、ズシオと汁婆にあっさりと抜かれた後、彼らとホークのデスマッチを観戦していた。

青き蛸 (ぶるーおくとぱす)

オクトパスを船長とする海賊団。ズシオと瑠璃家は、内海を渡るため、オール漕ぎとして青き蛸の船に乗船したが、アンジュと汁婆は乗っていない。風雷によって船底に穴が開いて海に沈んだため、乗組員たちは海賊行為から足を洗うことになった。

ズシオ討伐軍 (ずしおとうばつぐん)

ズシオを狩るために編成された軍隊。ラズベリーが指揮を執っている。一個大隊規模だが、ポヨが呼んだ森の動物たちや、ズシオに加勢する華陽によって何度も壊滅の危機に陥っている。

場所

天使たちの集落 (てんしたちのしゅうらく)

ズシオの元家臣たちが隠れて暮らしている集落。王子だった頃のズシオの提案で、女神様以外の全員が、背中に翼の生えた全身白タイツに、針金で固定した天使の輪を身に着けている。半円形のテントがいくつも立てられており、主に狩猟で生計を立てている。

ヴァルダーラ朝 (ゔぁるだーらちょう)

斑足が王、華陽が王妃として治めていた隣国。王都、曲女城、大都、ヴァータリプトラなどを抱える大きな国。華陽が斑足と別れて出奔し、斑足が華陽を追ってからは、ピヨピヨが新たな王となっている。また、王城は岩山・赤き城を模して作られているため尖塔が多い。

ヴァータリプトラ

ピヨピヨが治めていたヴァルダーラ朝の大都。厳しく徴兵を行っており、ズシオは徴兵をやめさせるため、当時は「バクト」と名乗っていたピヨピヨのもとへ赴いて賭け双六を行った。結果、ヴァータリプトラの城郭を含むピヨピヨの全財産がズシオの所有となっている。

赤き城 (れっどきゃっする)

ヴァルダーラ朝の国土内にある、急角度に切り立った岩山。カーブが多く、また、カーブを曲がり損ねると即谷底に転落する、という危険な場所。ヴァルダーラ朝の王城のモチーフにもなっており、「赤銅色の自然の彫刻」と賛美されている。

曲女城 (かなうじ)

ヴァルダーラ朝の王都。王城を中心とした城下町と、さらにそれを取り巻く街に分かれて、二重円を描く形で城壁が築かれている。またその外側の2か所に、飛び出た半円形の街があり、上から見ると、簡略化したコアラの形にも見える。ヴァータリプトラから曲女城に入るには、赤き城を超えなければならない。

ホモの塔 (ほものとう)

7歳の頃、女装したズシオに一目惚れしたラズベリーが、ズシオと知らずに告白したところ建立された塔。塔の見晴らし台からは、「ホモの塔」と書かれた垂れ幕が下ろされており、建立時はラズベリーが塔に登らされて晒し者にされた。

イベント・出来事

賭け双六 (かけすごろく)

ヴァータリプトラにおいて、徴兵制度をやめさせるためにズシオがピヨピヨ(当時の名はバクト)に挑んだ博打。止まったコマにズシオ、ピヨピヨそれぞれに対するペナルティが記入されており、両者とも死ぬというコマも存在した。また、この賭け双六によって、バクトは「ピヨピヨ」と改名させられており、城郭を含む全財産をズシオに譲渡している。

その他キーワード

魔眼 (まがん)

アンジュが生来持っている能力。未来を見ることができる他、他人と目を合わせるだけで記憶を消したり、催眠状態にして思うままに操ることができる。アンジュはこの能力を用いて、瑠璃家にヅカキャラとしての人格を植え付けつつ、戦闘訓練を行っていた。

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