かくりよものがたり

かくりよものがたり

架空の日本を舞台に、人に災いをもたらす怨霊を鎮魂するために戦う特別な力を持つ姫と、姫の延命のために力を尽くす付き人の少年が、ともに戦う和風バトルファンタジー。「週刊ヤングジャンプ」2013年32号から2015年4・5合併号にかけて、「第一幕」と称して連作された作品。

正式名称
かくりよものがたり
ふりがな
かくりよものがたり
作者
ジャンル
和風ファンタジー
関連商品
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世界観

強い未練により成仏できず、生きている人間に危害を加える「怨霊」から人々を守るため、唯一怨霊を鎮魂する力を持つ姫のアメと、その付き人のサルタヒコが戦う姿を描く和風ファンタジー。卑弥呼や森蘭丸など、日本の歴史上の有名人をモチーフとしたキャラクターが多数登場し、彼らが繰り広げる大迫力の戦いも見どころの1つになっている。

あらすじ

人間の少年・サルタヒコは、幼なじみのアメとともに、人々に災いをもたらす「怨霊」の鎮魂活動を行っている。怨霊を鎮魂する特別な力を使うたびに加齢し、加速度的に死に近づいていくアメを、少しでも長く生き永らえさせるために手を尽くすサルタヒコだったが、怨霊は日々増加していく。さらにある日、2人の前に、亡くなったはずのアメの双子の姉・ワタが敵として立ちはだかるのだった。

単行本の装丁

本作『かくりよものがたり』は 「週刊ヤングジャンプ」に掲載された作品だが、コミックスのレーベルは「YJ ヤングジャンプコミックス」ではなく「JC ヤングジャンプ」となっている。そのため本のサイズは「YJ ヤングジャンプコミックス」において一般的なB6判ではなく、「週刊少年ジャンプ」のコミックスレーベル「JC ジャンプコミックス」と同じ新書判となっている。

関連作品

関連作品として「ミラクルジャンプ」2013年No12に掲載された『アメとサルタヒコ』がある。こちらは本作『かくりよものがたり』の原型となった作品で、本作のメインキャラクターであるサルタヒコアメとほぼ同じキャラクターが登場するが、一部の設定や展開は異なる。なお、この『アメとサルタヒコ』は、本作『かくりよものがたり』のコミックス8巻に収録されている。

登場人物・キャラクター

サルタヒコ

アメの付き人として、ともに怨霊の鎮魂をしている少年。前髪を目が隠れそうに伸ばしたショートカットの髪型に帽子を被り、学ランに似た服装にマフラーを巻いている。もとは普通の人間だったが、現在では怨霊との戦いによる怪我で、頭と心臓以外のほぼすべての身体をサイボーグ化した状態になっている。柴生富良夫には「サルくん」、ニギには「サル先輩」、咲夜には「豚野郎」、オロチからは「サーくん」と呼ばれている。 一見面倒くさがり屋なうえ、常に上から目線のサディスティックな人間に見えるが、実際は心優しく面倒見の良い性格。アメを誰よりも大切に想っており、怨霊の鎮魂活動にも、アメの寿命が縮んでしまう「黄泉返り」の力の行使にも消極的。 しかしアメの強い希望でともに戦い続けている。武器はオロチの身体の一部から作られた注連縄「蛇比礼(おろちのひれ)」。

アメ

零場カミツヨミドの姫。双子の姉としてワタがいる。年齢は11歳だが、容姿は17歳ほどに見える。和服を着て、前髪を左寄りの位置で斜めに分け、ブルーグレーのロングヘアを膝まで伸ばして頭の両サイドに花の髪飾りを付けている。胸が大きい。その立場から周囲からは「アメ姫」と呼ばれることが多い。明るくまっすぐで心優しい性格。カミツヨミドの姫のみに与えられた特別な「お力」として、怨霊の行動に巻き込まれて亡くなった人を蘇生させる「黄泉返り」の能力を持つ。 しかし「黄泉返り」をすると、加齢する形で自分の寿命が縮んでしまう。にもかかわらず、サルタヒコとともに積極的に人を救い続けている献身的な女性。また、実年齢より上に見えるのも「黄泉返り」の副作用。

ワタ

アメの双子の姉。怨霊収容所トヲツカムナビを統べる。零場カミツヨミドのもう1人の姫だが、故人。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、爪先につくほど伸ばしたブルーグレーの髪を、両サイドの耳の高さでまとめたツインテールの髪型をしている。まろ眉が特徴。その立場上、周囲からは「ワタ姫」と呼ばれることが多い。アメ同様「黄泉返り」の力を持ち、力の副作用で実年齢より加齢しており、サルタヒコと出会った頃にはすでに10代後半に見えた。 3年前に老婆の姿まで加齢して老衰で亡くなり、「黄泉返り」の力はアメに引き継がれた。しかしある日、すべての怨霊の未練が果たされる時代である「かくりよ時代」を目指すと宣言し、アメとサルタヒコの敵として立ちふさがる。 もとは「黄泉返り」の力を世のため人のために使う心優しく清らかな女性であったが、現在は亡くなった人間にしか関心がなく、怨霊を次々に黄泉返らせては、怨霊たちの気持ちを晴らそうとしている。怨霊たちを非常に大切に想っており、自分の命のすべてを使って怨霊たちの役に立ちたいと考えている。現在はタケミカヅチの手によって、ワタの亡骸に、タケミカヅチが声をかけた怨霊の童の魂が宿っているはずだが、その人格はワタでも童でもない別人となっている。 漫画を描くのが趣味で、同人誌を発行している。

タケミカヅチ

ワタの従者の若い人間の男性。前髪を目が隠れそうなほど伸ばしたふんわりとしたショートカットの髪型に、装束を着ている。かつては霊場カミツヨミドの神官だったが、現在はワタとともに怨霊収容所トヲツカムナビで暮らしている。3年前、ワタが亡くなった直後に「那古野に怨霊が出る」と聞きつけ、ワタの遺体を無断で持ち出す。 そして現れた童の怨霊に頼んで、童をワタに宿らせるという形でよみがえらせた。ワタを非常に大切に想っており、アメたち霊場カミツヨミドの御霊や人間たちと敵対する。

厩戸皇子 (うまやどのおうじ)

飛鳥時代の天才政治家。第33代天皇である推古天皇の時代の摂政。別名は「聖徳太子」。現在は怨霊収容所トヲツカムナビにおいて、ワタに次ぐNo.2の怨霊となっている。前髪を目が隠れそうなほど伸ばして、帽子を被った若い男性の姿で現れる。プライドが高く傲慢な性格だが、非常に高い知性を持つ策士。さらにワタの「すべての怨霊の未練が果たされる、かくりよ時代を目指す」という考えにも深く賛同しており、怨霊収容所トヲツカムナビにおける軍師的存在として機能している。 10人までの人間と同時に精神感応する力を持つ。精神感応した人間とは、双方向の通信を行ったり、精神感応した人間の脳を乗っ取り、身体を借りて行動することもできる。実在の人物、聖徳太子がモデル。

ニギ

怨霊使いの、11歳の人間の少女。爪先に届くほど伸ばしたドレッドヘアに帽子を被り、目の下に大きなクマがある。一人称は「ぼく」で、容姿も少年のようであるため誤解されがちだが女性。本来普通の人間に怨霊と戦うすべはないが、怨霊同士であれば戦えるという点から、「トト丸」「チャチャ丸」「サナダ丸」の3体の怨霊を使役して戦う。しかし、怨霊は清潔を嫌うため、生まれてから一切入浴できないというさだめにある。 そのため身体が非常に臭く、人を遠ざけてしまうことを気に病んでいる。ゆえに自分に自信がなく泣き虫だが、素直で正義感が強く、自分が怨霊使いであることに誇りを持っている。ある日、戦いに参加できないアメの代わりに派遣され、サルタヒコとともに千子村正の捕獲を行うことになる。 以降、その力を買われて仲間となった。サルタヒコからアメの事情を聞き、彼女を守りたいと考えている。

咲夜 (さくや)

恐山で「美人過ぎるイタコ」として活動している16歳の少女。前髪をバラバラの高さに房ごとに切りそろえ、肩につかない長さの緑色のボブヘアをしている。人間でありながら怨霊を退治できる芸能人としてテレビ出演している。テレビの前では可愛らしく振る舞っているが、実際は毒舌家。そのため、本性を知るサルタヒコからは「ダニ女」、咲夜もまたサルタヒコを「豚野郎」呼ばわりしている。 「口寄せ」により霊場カミツヨミドにいる御霊を呼び出して自らに憑依させ、その御霊の力を借りて戦うという能力を持つ。その力を活かして、怨霊出現までインチキ呼ばわりされていたイタコという職業と、先代である祖母の名誉回復のために戦っている。本人はそれを隠し、あくまで自分が有名になるために戦っているふりをしている。 戦闘においては強力な御霊を口寄せした方が有利になるため、特に沖田総司は呼び出されやすい。総司は気軽に応じているが、同じように強力な御霊である世阿弥は口寄せされるのを嫌がっている。ある日、その力を買われてサルタヒコにスカウトされるが、サルタヒコの傲慢な態度に腹を立てこっぴどく断る。 しかし、平賀源内を倒すため結果的に協力し、以降協力関係になっていく。武器は祖母から譲り受けた錫杖「奥津鏡(おきつかがみ)」。

世阿弥 (ぜあみ)

霊場カミツヨミドに住む御霊の1人。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、床につくほど伸ばしたストレートロングヘアをしている。不思議な力で宙に浮き、和服を着た若い男性の姿をして現れる。まろ眉。プライドが高く傲慢な性格だが、指揮官として非常に優秀。そのため怨霊鎮魂においては、霊場カミツヨミドから出ることはできないが、サルタヒコの帽子にカメラを仕込んで現場の様子を確認しながら、司令官としてサルタヒコとアメに指示を送っている。 御霊としても非常に強力で、大怨霊と互角に戦えるほどの力を持つため、咲夜に口寄せ対象として狙われがちだが、基本的には口寄せされることを嫌い、拒否している。実在の人物、世阿弥がモデル。

柴生 富良夫 (しぼう ふらお)

サラリーマンの若い男性。前髪を眉の高さで切り、癖のある刈り上げヘアに眼鏡をかけている。真面目で心優しい性格。ある日、街を歩いていたところ、「辻斬りをしたい」ためターゲットを探していた怨霊の岡部菊外に、突然殺されてしまう。しかしアメの「黄泉返り」の力により蘇生し、アメの力を知る。それがきっかけで世阿弥にスカウトされ、会社を退職して霊場カミツヨミドで働くことを決める。

卑弥呼 (ひみこ)

霊場カミツヨミドに住む御霊の1人。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、太ももまで伸ばした癖のあるストレートロングヘアをした若い女性の姿で現れる。目には目隠しをし、また常に水辺でみそぎをしているため、基本的に裸で登場する。予知能力があり、その力を活かして怨霊の出現タイミングをアメたちに教えることにより、怨霊鎮魂をサポートしている。 しかし、予知する際には突如大声を上げるため、周囲の人間は驚かされることが多い。予知能力の他に「鬼道」と呼ばれる呪術的な儀式を行いながら戦うことができる。戦闘時は目隠しを外し、チアリーディングに使うポンポンを用いて戦う。その際も全裸のままだが、なぜか長い髪で絶対に胸や性器は露出しない不思議な力がある。 実在の人物、卑弥呼がモデル。

沖田 総司 (おきた そうじ)

霊場カミツヨミドに住む御霊の1人。前髪を真ん中で分け、お尻まで伸ばしたストレートロングヘアをポニーテールにしている若い男性の姿で現れる。新撰組の隊服を着て、帯刀している。もともとは怨霊であったが、現在は浄化されて御霊となっている。おっとりとして面倒見が良く、子供好き。サルタヒコの修行の師匠でもある。しかし、愛刀「菊一文字」を手にすると、人が変わったように厳しい性格になる。 剣士として非常に優秀であるため、なにかと咲夜の口寄せ対象とされているが、沖田総司自身は特に気にもかけず、毎回あっさり引き受けている。実在の人物、沖田総司がモデル。

武蔵坊 弁慶 (むさしぼう べんけい)

平安時代末期の僧衆で、源義経の郎党。現在はワタの手により黄泉返り怨霊となっている。怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は大怨霊。前髪を上げて額を全開にし、髪全体をツンツンに立てて、背中にいくつもの武器を背負った若い男性の姿をして現れる。目の周りが黒い霧のようなもので覆われており、表情は見えない。忠義に厚く、ややキザな性格。 自分を黄泉返らせたワタを慕っており、生前の主君である義経がいないことも手伝って、ワタを心の寄る辺としている。ワタ自身も武蔵坊弁慶を気に入っているため、仲が良い。実在の人物、武蔵坊弁慶がモデル。

千子村正 (せんじむらまさ)

怨霊となった、室町時代・伊勢国桑名の刀工。怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は上級怨霊。前髪を眉上で切った短髪に、顔と身体中に切り傷の痕がある和服姿の若い男性の姿をして現れる。刀の切れ味にこだわり、江戸時代の将軍家である徳川家のために数々の刀を作った。それらが徳川家に災いをもたらしたと見なされており、千子村正の作った刀は「妖刀村正」と呼ばれている。 怨霊化した現在は、自身の刀で切った人間をみな強制的に怨霊化させる、という恐ろしい力を持っている。実在の人物、千子村正がモデル。

森 蘭丸 (もり らんまる)

戦国時代、織田信長の側近であった少年。「本能寺の変」において信長とともに死亡したとされるが、現在はワタの手により黄泉返り、怨霊となった。怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は大怨霊。青色の髪全体を前に向かって伸ばした髪に、黒いバンダナを巻き、上半身はほぼ裸、下半身に鎧をつけた露出度の高い服装をした少年の姿で現れる。 自身は怨霊になったのに対し、主君である信長はすでに成仏してしまったため、信長のいない今の世界に魅力を感じていない。そのため、何事にも関心を持たない、非常に冷めた性格をしている。しかし銃の腕は本物で、厩戸皇子の命により杉谷善寿坊、雑賀孫市、フェルナン・メンデス・ピントを従えた「蘭丸鉄砲隊」としてサルタヒコたちの前に立ちふさがる。 実在の人物、森蘭丸がモデル。

杉谷 善寿坊 (すぎたに ぜんじゅぼう)

1570年5月、織田信長を狙撃した男性。その後捕らえられ、のこぎりで少しずつ首を落とされるという「ノコ引きの刑」で亡くなった。現在はワタの手により黄泉返って怨霊となり、怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は上級怨霊。虚無僧のような恰好をしているため、顔は見えず、年齢も不明。語尾に「(笑)」「(怒)」といった感情を表現する漢字をつけて気持ちを表現する、独特の口調で話す。 戦闘中においても、常に遊んでいるような、ふざけた態度で敵に接する。ノコ引きの刑で首を落とされて死んだため、怨霊となった現在は、身体中の部位をバラバラにして行動することができる。信長を慕う森蘭丸にとっては憎いはずの存在だが、厩戸皇子の命により、蘭丸の配下として、雑賀孫市、フェルナン・メンデス・ピントとともに「蘭丸鉄砲隊」としてサルタヒコたちの前に立ちふさがる。 実在の人物、杉谷善寿坊がモデル。

雑賀 孫市 (さいか まごいち)

鉄砲集団「雑賀衆」の棟梁。1570年「石山合戦」において織田信長の敵として立ちはだかった男性。現在はワタの手により黄泉返って怨霊となり、怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は上級怨霊。前髪を真ん中で分けて額を全開にし、肩につくほどまで伸ばした癖のあるボブヘアに、ホンブルグ・ハットを被っている若い男性の姿で現れる。 帽子を被っているせいで、表情が見えないことが多い。信長を慕う森蘭丸にとっては憎いはずの存在だが、厩戸皇子の命により、蘭丸の配下として、雑賀孫市、フェルナン・メンデス・ピントとともに「蘭丸鉄砲隊」としてサルタヒコたちと敵対する。しかし戦闘中、生前に敵対していた蘭丸が突如孫市への怒りを爆発させ、殺されることとなった。 実在の人物、雑賀孫市がモデル。

フェルナン・メンデス・ピント (ふぇるなんめんですぴんと)

16世紀のポルトガル人冒険家。癖のあるショートカットの髪型に帽子を被り、カルサンを履いた若い男性の姿で現れる。「デース」「アリマセーン」といった、片言の日本語で話す。自伝に「1544年に鉄砲を初めて日本に伝えた人物の一人」と書いたことで知られている。現在はワタの手により黄泉返って怨霊となっており、怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は上級怨霊。 厩戸皇子の命により、森蘭丸の配下として、雑賀孫市、フェルナン・メンデス・ピントとともに「蘭丸鉄砲隊」としてサルタヒコたちの前に立ちふさがるが、アメを殺そうと独断で行動し、戦いを混乱させる。実在の人物、フェルナン・メンデス・ピントがモデル。

山田 一郎 (やまだ いちろう)

陸上自衛官の男性。作中では常にガスマスクを付けて登場するため素顔は見えず、年齢は不明。迷彩服の上に防弾チョッキを身に着け、その上にウサギの耳が付いたフード付きポンチョを被っている。寡黙で厳しい、落ち着いた性格。どんな不可能な任務でも必ず遂行して生還した「伝説の自衛官」として知られており、「不死軍曹(あんでっどぐんそう)」の異名を持つ。 サルタヒコとアメとは森蘭丸ら「蘭丸鉄砲隊」との戦いで知り合い、サルタヒコの代わりにアメを守る役割を果たす。

千利休 (せんのりきゅう)

戦国時代から安土桃山時代にかけての茶人。「茶聖」と称される。年老いた男性の姿で現れる。現在はワタの手により黄泉返って怨霊となり、怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は大怨霊。前髪を上げて額を全開にし、肩につかない長さのボブヘアに帽子を被り、和服を着ている。鼻が大きく、三白眼。怨霊の勢力を広げるために北加伊道(ほっかいどう)のサリ・ポロ・ペッ市にて台風を起こしていた際、咲夜に敗北し、弱体化して小さなぬいぐるみほどの大きさまで縮んでしまう。 以後、咲夜のペットのような扱いを受けることになる。実在の人物、千利休がモデル。

平賀 源内 (ひらが げんない)

江戸時代中期に活躍した発明家。前髪を目が隠れそうなほど伸ばし、胸まで伸ばしたぼさぼさのロングヘアに学帽を被り学ランを着て、歌舞伎のようなメイクをした若い男性の姿で現れる。現在はワタの手により黄泉返って怨霊となり、怨霊収容所トヲツカムナビでの階級は大怨霊。「すべての謎を解明したい」と考える好奇心旺盛な性格。 「爆薬の構造式」を宙に書いて叩くと、式が爆薬に変化して爆発するなど、宙に書いた式を現実にする力を持つ。研究以外のことには興味がなく「かくりよ時代」にも関心がない。そのため当初はサルタヒコたちに敵対の意志はないと見られていたが、のちに研究所でブラックホール発生機を作っていたことが発覚し、これを止めようとするサルタヒコたちと戦うことになる。 実在の人物、平賀源内がモデル。

清少納言 (せいしょうなごん)

第66代天皇である一条天皇の皇后、藤原定子に仕えた女性作家。平安時代の人間だが、なぜか『ショムニ』の坪井千夏にそっくりな、前髪を眉上で切り、腰まで伸ばしたストレートロングヘアに、OLの制服姿の若い女性の姿で現れる。思い込みが激しく攻撃的な性格。スマートフォンに和歌を打ち込み、打ち込んだ和歌を文字状のビームのように発射し、命中させると、当たった相手はその和歌の世界に閉じ込めることができる「歌会(うたかい)」という精神攻撃を得意とする。 実在の人物、清少納言がモデル。

大国主命 (おおくにぬしのみこと)

葦原中国の王。天皇家が降臨する前は地上世界の広い範囲を勢力下に収めていたとされる英雄。前髪を目の上で切ったふんわりしたショートカットヘアで、牛に乗った少年の姿で現れる。ワタには「大ちゃん」と呼ばれている。実存する怨霊の中でも、最古にして最強といわれており、埴輪兵団を指揮して戦う。しかし、少年の姿の時は未覚醒で、覚醒すると別人のような屈強な大男に変身する。

ホノカ

怨霊使いの14歳の少年。ニギの許嫁でもある。一房が太めのドレッドヘアにもみあげを伸ばし、顎髭を生やした色黒で筋肉質の容姿をしている。顔の真ん中に、バツ印の傷跡がある。日常的に幽界へのダイビングを行っているため、「かくりよダイバー」の異名を持つ有名人。ニギ同様、怨霊使いであるため入浴ができず、全身が臭い。見た目は屈強だがやや臆病な性格で、暴力には非常に弱い。 サルタヒコが、アメの遺体を回収するために幽界を通らざるを得なかったことがきっかけで、サルタヒコと知り合った。サルタヒコには冷たいが、ニギのことは大好きで、ニギにはまったく頭が上がらない。

ジョン・ドゥ (じょんどぅ)

幽界で、魂のスープをかき混ぜる仕事をしている年老いた男性。人間の身体にカラスのくちばしのようなマスクをつけ、カラスの羽のような服を着ている。語尾に「ダーヨ」と付ける独特の口調で話す。周囲からは主に「老師」、ニギからは「マスター・ダーヨ」と呼ばれている。非常に強く、大怨霊でさえたやすく倒せるのではと思えるほどの実力者。 その力を見込んだサルタヒコに頼まれて、彼に修行を積ませることになる。男性には厳しいが、女性には甘く、プレゼントには特に弱い。

オチカリーノ・アザビーノ・ギロッピング・ザ・ギン・450世 (おちかりーのあざびーのぎろっぴんぐざぎんよんひゃくごじゅっせい)

霊場カミツヨミドの歴代の姫たちに力を授けていた聖なる存在。とても小さな、殻のとれたカタツムリのような姿をしている。長い名前を略して「お力さま」と呼ばれている。可愛らしい女性が大好きで、世界中で一番可愛い女性に「お力」を授け、姫の資格を与えていた。非常にスケベでいやらしい性格。

オロチ

幽界の魂のスープの底に住む大霊獣の女性。サルタヒコの武器である「蛇比礼(おろちのひれ)」も、このオロチの身体の一部から作られた。サルタヒコには「ロチ」と呼ばせている。非常に巨大で、オロチにとっては人間は蟻程度の大きさ。蛍光イエローのラウンド前髪に、前髪から後ろは黒髪の、毛先が化け物となっているポニーテールヘアをしている。 一人称が「わらわ」、語尾に「ありんす」を付けるなど、花魁言葉で話す。オロチに認められれば「蛇比礼」が強化される。そのため、これまで多くの人間に利用されそうになっており、非常に疑り深い性格をしている。反面、恋愛と男性に強い憧れがあり、特に強引で強気な男性にはめっぽう弱い。

場所

幽界 (かくりよ)

霊の世界。対義語として人間の住む世界である「現界(あらわよ)」がある。人は死ぬと魂が現界から幽界へ沈んでいき、怨霊になるほどの未練がない限りは沈み続け、1か月ほどで幽界の底へ到達する。その後、幽界にある魂のスープに数百年かけて溶け込み、ある日スープの泡がはぜて、しぶきが幽界と現界の境界を越えて飛んでいき、妊婦の内にたどり着いた際に、新たな魂として生まれることになる。

怨霊収容所トヲツカムナビ (おんりょうしゅうようじょとをつかむなび)

ワタが「黄泉返り」させた怨霊たちを収容している町。ワタを頂点に厩戸皇子をNo.2とし、厩戸皇子の下に森蘭丸のような6人の大怨霊がおり、その下に千子村正などの上級怨霊、その下の最下層が、理性のない低俗霊というヒエラルキーを形成している。

その他キーワード

怨霊 (おんりょう)

生への強い執着により、人間の世界である「現界(あらわよ)」と「幽界」の間にある境界から離れられず、幽界へ落ちることに逆らっている魂。対義語として「御霊」がある。現界に強い未練のある魂が怨霊になる。怨霊は境界から現界へ偶然すり抜けてくることがあり、怨念の権化として超常的な力を振るい、人に災いをもたらす。また、怨霊の強さは知名度に比例し、有名人ほど強力な怨霊になる。 また、不浄を好んで清潔なものを嫌う。ニギのような怨霊使いが入浴できないのはこのため。

御霊 (ごりょう)

霊場カミツヨミドで暮らす清浄な霊。対義語として「怨霊」がある。幽界に暮らし、現界では数分と姿を保てないため、御霊たちは、咲夜に口寄せされるなどの特別な方法がない限り、現界に行くことはできない。御霊の中にはかつて怨霊だったものもあり、アメのような「お力」を持つ姫により浄化された結果、御霊となった。

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