あらすじ
異彩を放つ鬼との出会い
天保11年(1840年)、山間の集落・葛野に暮らす甚太は、巫女の白雪を鬼から守る巫女守として集落を警備していた。人間に化けて集落に侵入しようとした鬼を排除した甚太は、白雪や長たちに事態の報告をしたあと自宅に戻り、妹の鈴音と居られることに幸せをかみしめる。翌日、甚太は別の鬼の出現の知らせを受けて目撃場所に向かうと、これまで出会った鬼とは雰囲気がまったく違う鬼と出会う。戦闘力も別次元の鬼に対して甚太は互角以上の戦いを見せるが、最後の攻撃を仕掛けようとした瞬間、甚太の攻撃が防御されて新たな鬼が現れる。形勢が逆転して一転ピンチに陥る甚太だったが、二匹の鬼は自分たちが根城としている場所を告げて去っていくのだった。
鬼たちの目的
甚太が一匹の鬼と戦っている同時刻に、葛野ではもう一匹の鬼の襲来に備えていた。予想どおりに鬼は葛野にやって来るが、鬼の目的は巫女の白雪ではなく甚太の妹・鈴音だった。鬼の特殊な能力と話術によって鈴音は連れ去られ、鈴音は白雪の衝撃的な事実を知り、これまで抑えていた感情が爆発する。そして姿を鬼に変貌させた鈴音は、白雪に殺意を向けるようになる。一方、鬼を倒して葛野に戻ってきた甚太は鈴音がいないことを知り、鈴音が立ち寄りそうな社に向かう。社の中で甚太は、白雪に刃を向ける見知らぬ女から白雪を助けようとするものの、白雪は殺されてしまう。そして白雪を殺したその女こそが、鈴音だと知って激しく動揺する。
関連作品
小説
本作『鬼人幻燈抄』は、中西モトオの小説『鬼人幻燈抄』を原作としている。原作小説版は、中西モトオが「小説家になろう」に投稿していた作品で、双葉社から刊行されている。
登場人物・キャラクター
甚太 (じんた)
山間の集落・葛野で巫女守を務める男性。年齢は18歳。礼儀正しく生真面目な性格で、剣の腕が立つ。13年前に妹の鈴音が江戸の実家を追い出された時に共に家を出奔し、白雪の父親に拾われて葛野に住み着く。自分たちの生い立ちを深く追求せず、温かく迎え入れてくれた葛野の住人には深く感謝している。繊細な性格で、自らのことより他人を優先する。幼なじみの白雪とは両思いながら、巫女としての務めから別の男性と結婚しなければならない白雪を後押しする。高位の鬼との一騎打ちで致命傷を負いながらも勝利するが、鬼の策略で鬼の体になってしまう。
白雪 (しらゆき)
山間の集落・葛野で巫女を務める女性。年齢は17歳。周囲からは「いつきひめ」と呼ばれている。巫女の時は威厳のある冷静な人物を演じているが、幼なじみの甚太と鈴音の前では本来の明るく、少しいたずらっ子な年相応な振る舞いを見せる。葛野の住人のことを何よりも大事に思っており、住人のためなら自分を犠牲にすることも厭わない。両思いの甚太ではなく、次代の巫女を生むために葛野の人間と結婚することを決める。
鈴音 (すずね)
甚太の妹。年齢は17歳。右目が人間のものとは明らかに違うことで、4歳の時に父親から捨てられれてしまう。甚太と共に江戸の家を飛び出し、白雪の父親に拾われて山間の集落・葛野に住み着く。右目を他人に見せないように、つねに包帯で隠している。また体が成長していないため、17歳ながら見た目は非常に幼い。甚太のことを男性として好意を寄せているが、自分は妹だから結婚できないとの思いから、その気持ちを隠し続けている。幼なじみの白雪のことも好きなため、白雪なら甚太の結婚相手にふさわしいと考えていたが、白雪が別の男性と結婚すると知り、抑えていた気持ちが爆発して鬼へと変貌する。白雪を殺したあとに甚太からも拒絶されたことで、この世を憎むようになり、すべてを破壊することを決める。未来を予見することができる鬼から、170年後に鬼神となって世界を滅ぼす厄災となると予言されている。
その他キーワード
鬼 (おに)
人間と対立する異形の存在。人間よりもはるかに高い身体能力を誇り、1000年以上の寿命を持つとされている。それぞれ固有の特殊能力を持ち、通常は100年生き続けると目覚めるようになる。しかし生まれた時に目覚める者や、数十年で目覚める者もいる。頭を潰されたり、首を切り落とされたり、心臓を貫かれたりしないかぎりは死なず、これら以外の負傷なら自らで治すことができる。
クレジット
- 原作
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中西 モトオ
書誌情報
鬼人幻燈抄 7巻 双葉社
第1巻
(2021-09-09発行、 978-4575440041)
第3巻
(2022-09-08発行、 978-4575440249)
第4巻
(2023-03-15発行、 978-4575440348)
第5巻
(2023-09-13発行、 978-4575440416)
第6巻
(2024-02-29発行、 978-4575440478)
第7巻
(2024-09-11発行、 978-4575440607)