かわたれ時の箱者街

かわたれ時の箱者街

「箱」と呼ばれる特殊な鞄を所有する異能力者の箱者が、秘密裏に売買される世界。その箱者でありながら、一般人の行商人としてさまざまな街を歩くバルツ・カーが、箱者たちを解放し、箱者たちの集まる箱者街へと送り届ける姿を描く人情譚。『ASUKA』2018年6月号から連載の作品。

正式名称
かわたれ時の箱者街
ふりがな
かわたれどきのはこものがい
作者
ジャンル
ファンタジー
 
ヒューマンドラマ
レーベル
あすかコミックスDX(KADOKAWA)
巻数
全2巻完結
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世界観

特定の種類の物ならばどんな物でも取り出すことができる超常的な鞄のと、その箱を使ってさまざまな物を取り出す、箱者という異能力者たちが存在する世界。木樽型のビールジョッキなどが登場する近代的な世界観で、箱者を売買する奴隷商や見世物小屋などが存在する。

あらすじ

第1巻

雑貨を売り歩く行商人のバルツ・カーは、とある街で箱者をウリにした見世物小屋の話を耳にする。雑貨を買う客がすべて見世物小屋に流れていると聞いたバルツは、その真偽を確かめるために見世物小屋へと足を運ぶ。そこに居たのは、足枷をつけられたまま舞台でを使用する少女イナの姿だった。それを見たバルツは、一芝居打って見世物小屋の支配人に近づくことにする。

登場人物・キャラクター

バルツ・カー

箱者の男性。黒いハットと黒いスーツを身につけ、薄茶色の髪が外側にはねている。箱の中から世界中のありとあらゆる毒を取り出すことができ、箱の中の棚は十字架の形になっている。毒をそのまま使うことはほとんどなく、希釈して眠り薬にしたり、相手の武器を溶かしたりするなどして利用している。ふだんは箱を二重底に加工して雑貨を収納し、ふつうの人間であると偽っている。雑貨を売り歩く行商人として生活しているが、独特のセンスで仕入れた物ばかりなため、あまり売れ行きはよくない。ヘイカから箱者が売買されている情報を流してもらい、それを基に訪問する街を決めている。苦難に陥っている箱者には分け隔てなく助けの手を差し伸べ、箱者街への移住を勧めている。リズの兄だが、長年リズの前には姿を現していない。

イナ

箱者の少女。薄ピンクの長い髪に、質素なワンピースを身につけている。箱の中から加工不可能な素材でできた壺を取り出すことができ、箱の中の棚は東洋風の円形棚になっている。身寄りがなく、引き取ってくれた親戚夫婦によって見世物小屋に売り飛ばされた。足枷をつけられており、つねに鳥籠のような檻に入れられている。見世物小屋の支配人が客から受注した壺を毎日作らされ、疲労困憊していた。バルツ・カーによって救出され、箱者街に住み始めてからはリズが面倒を見ており、レフの店で修業している。

ヒルト

箱者の少女。黒髪のおかっぱで、中華風の衣装を身につけている。箱の中からありとあらゆる刃物を出すことができ、ギロチンも出せる。箱の中の棚は宝飾品用のショーケースになっており、いくつものケースを組み合わせて形作られている。ヒルトの取り出す刃物は切れ味も鋭く、ふつうのナイフでも皿まで切れてしまう。お金が大好きで、商売をしている時間やお金を数えている時間を何よりも大切にしている。刃物商として露店を開いていたが、武器商人のグループに誘拐され、拷問器具などを取り出せと脅されていた。バルツ・カーによって救出されてからは箱者街に住み、リズやレフに世話になっている。

リズ

箱者の女性で、バルツ・カーの妹。ストレートの長い黒髪を腰まで伸ばして、右側のもみあげだけをお団子にしてまとめ、ヒモ細工の髪飾りを付けている。また、スカート状の袴姿の上からエプロンを身につけている。箱の中から世界中の紅茶の缶を取り出すことができ、箱の中の棚は正方形の区切りがたくさん付いた陳列棚となっている。箱者街で紅茶店を営んでおり、門番を務めるセイに毎日決まった時間に差し入れを持って行っている。突然姿を消したバルツのことを心配しているが、イナやヒルトを箱者街に連れてきた謎の人物がバルツではないかと考えている。

セイ

箱者の男性。金髪のストレートで、長い前髪を八二で分けているために右目が隠れている。箱の中身や棚の形状などは不明。箱者街の門番を務めており、街を訪れる人間が許可証を所持しているかチェックしている。休憩と称してレフの店で昼寝をしたり、休みの日には浴びるように酒を飲んで二日酔いになるなど、問題も多い。バルツ・カーとリズを幼少期から知っており、バルツの行方を気に掛けている。

レフ

金属製のゴーグルが付いた巨大な丸い着ぐるみを着込んだ箱者。性別はもちろん、人間かどうかもわからない。箱の中からさまざまな照明機器を取り出すことができる。箱者街でランプ店を営んでおり、箱者街に灯っているランプのほとんどがレフの取り出したランプである。リズに頼まれ、イナを指導している。

ヘイカ

箱者の女性で、眼鏡を掛けている。薄茶色の背中までの髪を、ゆるく編んだ二本の三つ編みにしてまとめている。箱の中から個人の手記や子供の落書き帳を含めたすべての書物を取り出すことができ、箱の中の棚は本棚を一段ずつ分解した物となっている。もともと本好きで、箱者となってからは本をたくさん読める幸せを他者にも与えたいと考え、移動図書館を営んでいた。しかし、ヘイカの箱が公的機関の議事録も取り出すことができると気づいたネアンによって、「火災で焼失した資料を再現する手伝いをしてほしい」とウソの依頼をされ、結果的にセルツブルグのビゼルグの屋敷に軟禁された。バルツ・カーによって救出されてからは箱者街に住んでおり、図書館を営んでいる。

ネアン

箱者の男性。肩の下まである黒髪をうなじでまとめており、黒い軍服のような物を身につけている。箱がほかの箱者よりも小さく、中からは特定された個人の戸籍や住民票、カルテなどを取り出すことができる。元は箱者を売買する商人のもとにいたが、買い手がつかず、箱者としての能力に価値がないといわれていた。ただの奴隷として売り払われようとした時に自分を買い取ってくれた、ビゼルグに恩を感じ、忠誠を誓っている。また、ビゼルグからは箱者としての能力を差し引いても有能だと高く評価されている。

ビゼルグ

セルツブルグの領主を務める男性。白髪交じりの瘦せた体型で、精悍な顔つきをしている。セルツブルグを世界に誇れる一大都市にすることを目標としており、そのためなら残酷な手段もいとわないため、住民たちや行商人から恐れられている。有益な情報をもたらす箱者を買い取って利用し、必要なくなった者はまた別の人間に売り払っている。

場所

箱者街 (はこものがい)

世界中の箱者が集まっている街。自分の箱の特長を生かして商売をすることで成り立っている。大きな街だが断崖絶壁の孤島のような場所にあり、街への入り口は橋が架かった1か所しかない。おおよそ三層に分かれて構成されており、上層は住居、中層は住居兼店舗、下層は店舗のみとなっている。自分で店を持つには、まずほかの店で修業しなければならず、そこで接客や売買の仕組み、細かい細工などを教わる。箱者街へ入るためには、門番による確認証のチェックが必要となっている。

セルツブルグ

ビゼルグが領主を務めている都市。もともとは非常に小さな街だったが、数年前から次々に近隣の街を買収して領地を拡大し、一大都市となった。その方法がまるで独裁国家のようになりふり構わず手酷いらしいと、行商人のあいだでも噂になっている。

その他キーワード

箱者 (はこもの)

箱を所有している者。箱者になる条件は解明されておらず、ある日突然、手元に箱が現れることで箱者となる。箱者は高く売買される対象であり、買い受けた者に隷属させられていることも多いが、箱者の売買自体が重罪であるため、あまりおおっぴらにはされていない。また、箱から取り出した物に関する知識が頭に浮かぶといわれているが、完璧にわかるわけではなく、使いこなすためにはある程度の知識が必要となる。

(はこ)

箱者が持っている鞄。レトロな旅行鞄の形をしており、それが箱に見えたことから箱と呼ばれるようになったとされている。箱の中身は箱者によって違い、また一人の箱者につき一種類しか取り出すことはできない。しかし、取り出せる種類の物であれば、加工不可能な素材でできた壺、なんでも切り裂いてしまう刃物、個人の手記を含めたすべての書物など、どんな物でも取り出すことができる。ある日突然、箱者となる者のいる場所に現れる。箱者以外が開いても何も取り出すことができず、箱だけを盗んでも、いつの間にか所有者である箱者のいる場所に戻ってしまう。そのため、箱を盗むなら箱者ごと盗めといわれている。

書誌情報

かわたれ時の箱者街 全2巻 KADOKAWA〈あすかコミックスDX〉

第2巻

(2022-03-23発行、 978-4041124161)

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