純物拾い ピュアコレクター

純物拾い ピュアコレクター

天使があらゆるものを奪う世界。角をなくした悪魔の皮剥ぎヨハネが、天使の所業を憎む少女、マリカ=フロムスカイと共に、奪われたものを取り戻すため天使のもとへと旅立つ。人間の「ピュア」とは何かを追い求める冒険譚。

正式名称
純物拾い ピュアコレクター
ふりがな
じゅんぶつひろい ぴゅあこれくたー
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
Amazon 楽天

世界観

本作『純物拾い ピュアコレクター』の舞台は、天使と悪魔が存在する世界。かつてこの世界で、天使は、少しの酒やビーズや待針、談笑の笑い声など、あらゆるものを少量だけ人間界から盗るとされていた。対して人間は、こういった他愛のない無くしものを「天使の取り分」と名づけて、平和な日々を過ごしてきた。だがいつしか、天使は人間から目や首や足、満腹感や思い出など、大切なものを容赦なく盗るようになっていた。しかも何かを奪われた人間は、この天使の行いに怒りを覚える事もなく、その後も当たり前の日常を過ごしていた。マリカ=フロムスカイはそんな世界に疑問を感じる、数少ない存在である。

あらすじ

皮剥ぎヨハネとマリカ(第1巻)

ある日、マリカ=フロムスカイが在住している修道院に帰ると、いっしょに住む修道女や孤児、動物達の首がなくなっていた。家族に等しい人達が、得体のしれない何かに変わってしまった事にマリカは呆然とするが、彼らは首がないだけで、日々の生活にはいっさいの変化がなかった。そんな中、修道院に皮剥ぎヨハネがやって来て、首のない人達を目撃する。マリカはこうなった経緯と、自分も含めてみなが心穏やかに過ごしている事を告げるが、心の中は天使への憎しみにあふれている事を皮剥ぎヨハネに見抜かれ、感情に任せて彼を修道院から追い出してしまう。そんなマリカの前に、親友のラファエル・アルナイスが姿を現す。彼と話をするうちに、マリカはラファエルが天使に「距離」を奪われた事に気づく。動揺するマリカのもとに戻って来た皮剥ぎヨハネは、ラファエルの胸を切り開き、「人間の本質」を可視化して見せる。そして皮剥ぎヨハネは悪魔の姿を露わにし、悪魔の素質を持つマリカに対して、悪魔の取引を持ちかけるのだった。

落ちてきた少女(第1巻)

身近な人々から大切なものを奪った天使を憎むマリカ=フロムスカイは、角を奪われた皮剥ぎヨハネと共に、天使の暴走を止めるべく天界を探す旅に出た。その道中、二人は「幸せの町」と呼ばれる場所に辿り着く。この町では翼を奪われた元天使のシルキが、町から「悪口」を奪って争いや憎しみをなくしているという。シルキは天使同士の争いによって翼を奪われ、地上に落されたが、そこで人間の愛によって救われた、という自分の過去を皮剥ぎヨハネとマリカに語る。町への恩返しのつもりで、人々から悪口を奪っているのだと告げる。だがその翌日、悪口が膨らみすぎた事により、シルキが悪口を保管していた場所が決壊し、人々は争いを始めるようになってしまう。この状況を見たシルキは、喧嘩を鎮めるために、今度は人々の腕を奪い始める。

カッサンドラ(第1巻~第2巻)

シルキにかかわる一連の騒動を遠くから見ていたアーネストは、マリカ=フロムスカイ皮剥ぎヨハネが天使について詳しい事を知ると、姉のカッサンドラに関する相談を持ち掛ける。カッサンドラは天使に「静寂」を奪われたために、「助けて」という声をひっきりなしに耳にしており、目の前にいる人の言葉すら聞こえにくくなっているという。カッサンドラに助けを求められたマリカは、皮剥ぎヨハネに対し、自分からも「静寂」を奪うように頼み、カッサンドラに話しかけてくる声の主を探し始める。

煙草屋ペテロとメアリー(第2巻)

皮剥ぎヨハネと共に旅を続けていたマリカ=フロムスカイは、次の町へ向かう道中、突然誘拐されてしまう。マリカを誘拐したのは煙草屋ペテロメアリー=コントラリーの二人であり、彼らの目的は、悪魔の契約を交わしているマリカを皮剥ぎヨハネから引き離す事にあった。煙草屋ペテロはさらに皮剥ぎヨハネを足止めし、連れ去られたマリカは、メアリーによって犬に姿を変えられてしまう。

登場人物・キャラクター

マリカ=フロムスカイ

修道院で育った孤児の少女。長い黒髪と黒い瞳を持つ。心優しい性格だが、修道女や孤児達、そして友人のラファエル・アルナイスが天使から大切なものを奪われた事で、天使に対して強い憎しみの気持ちを抱くようになった。そして天使の暴走を止めるべく、悪魔の皮剥ぎヨハネと共に天界を探す旅を始める。現状、マリカ=フロムスカイが天使に奪われたものは何もない。 皮剥ぎヨハネからは悪魔の素質を見出され、他人が前向きになる事すら許さない事を認められている。そして悪魔の取引をした事により皮剥ぎヨハネの力を借りてトラブルを解決する事が可能となる。

皮剥ぎヨハネ (しんだーはんねす)

悪魔の男性。本来はワニのような姿をしている。しかし、普段は肩までの長さのウェーブがかった白い髪に、赤い目を持つ青年の姿をしている。親しい人には、「ヨハネ」と呼ぶよう求めている。天使に角を奪われ、その復讐をするために、天界を探す旅をしている。また、天使に対抗する力を得るため、マリカ=フロムスカイの中に眠る憎悪を育てようとしており、マリカにさまざまな助言をしたり、人間の本質を可視化させて見せたりもする。 さらには悪魔の取引により、マリカの望む助力をする事もある。過去に煙草屋ペテロと悪魔の取引をした事があり、彼からは「よはねん」という愛称で呼ばれている。だが皮剥ぎヨハネ自身は、煙草屋ペテロの事をあまり快く思っていない。

ラファエル・アルナイス (らふぁえるあるないす)

マリカ=フロムスカイと同じ町に住む少年。癖毛の短髪で、鼻の上にそばかすがある。マリカの友達で仲よくしていたが、天使に「距離」を奪われた事でマリカの前に突然現れるようになってしまった。ラファエル・アルナイス本人にその自覚はないが、突然現れる事でマリカに驚かれ、避けられるようになってしまう。

シルキ

短髪でグラマラスな若い女性。元天使であり、背中には翼がもぎ取られた跡がある。天使同士の抗争の末に翼を失い、人間界へと落ちてきた。そこで心優しい人間に助けられた事に感謝しており、恩返しのために町から「悪口」を奪って、争いのない幸せな町を作り上げていた。

アーネスト

カッサンドラの弟。ショートボブの髪型をした青年。「助けて」という声がひっきりなしに聞こえてうるさい、と悩む姉を心配している。シルキにかかわる騒動をおさめたマリカ=フロムスカイと皮剥ぎヨハネが、天使の事に詳しいと知ると、カッサンドラを助けるため相談を持ちかける。

カッサンドラ

アーネストの姉。天使に「静寂」を奪われた若い女性。長い髪を高いところで結いあげ、眼鏡をかけている。何処からともなく「助けて」という声がひっきりなしに聞こえてくるために、周囲の人が何をしゃべっても聞こえない状態になっている。そのせいで家から出る事も拒むようになったが、マリカ=フロムスカイと皮剥ぎヨハネの助力によって、声の正体を知る事になる。

煙草屋ペテロ (たばこやぺてろ)

マリカ=フロムスカイを誘拐した青年。髪を短く逆立てにした髪型で、額には白毫(びゃくごう)のような模様があり、つねに煙草を手に持っている。過去に皮剥ぎヨハネと悪魔の取引をした事があり、皮剥ぎヨハネの事を「よはねん」と呼ぶ。過去の自分と同じように皮剥ぎヨハネと取引をしているマリカ=フロムスカイが、これ以上憎悪を膨らませないように、メアリー=コントラリーと協力して誘拐。 メアリーがマリカを説得しているあいだ、皮剥ぎヨハネを足止めする役を担う。天使に「老化」「痛覚」「第六感」を奪われている。

メアリー=コントラリー

マリカ=フロムスカイを誘拐した若い女性。くせ毛のロングヘアで、真ん丸の瞳をしており、そばにはいつも動物を連れて歩いている。天使から「逆杯」の天恵を授かっているため、手に触れた人間を動物に変える特殊能力を使う事が可能で、この力によってマリカを犬に変えた。皮剥ぎヨハネと悪魔の取引をしているマリカ=フロムスカイが、悪魔を信じ、天使を憎むようになった心を、変えさせようと考えている。

その他キーワード

悪魔の取引 (あくまのとりひき)

悪魔である皮剥ぎヨハネが、マリカ=フロムスカイや煙草屋ペテロに持ちかけた取引。皮剥ぎヨハネが古くから生業として行っている事で、悪魔の力を使って手助けしたり救済をする代わりに、取引相手からは「お礼」という対価をもらう。マリカがカッサンドラと同じように、自分からも「静寂」を奪うよう頼んだのも、悪魔の取引の一つの例である。

SHARE
EC
Amazon
logo