きょうの猫村さん

きょうの猫村さん

家政婦として人間の家で働くことになった猫・猫村さんの日常や、さまざまな人々との出会いや交流を描くハートフルコメディ。シンプルなえんぴつの線画で描かれるほのぼのとした世界が人気となる。「@NetHome」および「猫村.jp」で2003年7月から配信の作品。2020年実写ドラマ化。

正式名称
きょうの猫村さん
ふりがな
きょうのねこむらさん
作者
ジャンル
レーベル
マガジンハウス
巻数
既刊10巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

子猫の頃に心優しいぼっちゃんに拾われて大切にかわいがられていた猫村さんは、ぼっちゃんの両親の離婚が原因で、大好きなぼっちゃんと離ればなれになってしまった。宿無しになった猫村さんは、ふと立ち寄った家政婦紹介所「村田家政婦」の求人に応募し、村田に事情を話して自立のために新人家政婦として雇って欲しいと頼み込む。当初は断られたものの、猫ながら家事の腕を認められた猫村さんは村田家政婦に住み込みで働くようになり、同僚の山田菅井ともすぐに仲良くなった。こうして家政婦になった猫村さんは、いつかまたぼっちゃんに会うことを夢見ながら、一生懸命に働くのだった。1か月後、すっかり家政婦としての技術を身につけた猫村さんが初めて奉公先として紹介されたのは、由緒ある家柄の「犬神家」だった。さっそく犬神家に向かい、犬神冴子と面談した猫村さんは、採用されて家事に励むこととなる。しかし、犬神家は裕福な家であったが、家族同士の人間関係はあまりよくない様子だった。特に不良娘でほとんど家にいない犬神尾仁子は完全に孤立しており、家族との食事や団らんに参加することもなかった。尾仁子のことが心配になった猫村さんは、彼女に積極的に話しかけ、何度断られても部屋に食事を持って行くようになる。こうして猫村さんは、家庭崩壊状態にある犬神家の人々の関係を修復しようと奮闘し始める。そんな中、猫村さんは多くの人や動物との出会いや交流を重ね、さまざまなことを学びながら、忙しくも楽しい日々を送っていく。

第2巻

猫村さんの奉公先である犬神家の屋敷には、犬神冴子が猫村さんに頑なに入るのを禁じている謎の部屋があった。廊下の奥にあるその部屋からは時おり犬の声が響き、猫村さんは気になって仕方ない。そして、その部屋の近くでは、犬神尾仁子に似た謎の老婆が出現することもあった。その老婆の正体は尾仁子の祖母であり、犬神金之助の母親であった。さらに、部屋から聞こえていた犬の声は、尾仁子が拾ってきた子犬のステテコのものであった。詳しい事情を聞いた猫村さんは、尾仁子は祖母と仲がよく、食事もこの部屋で食べていたこと、祖母は冴子と嫁姑問題を抱えていること、息子夫婦を見限ってこの改造部屋に引きこもるようになったことなどを知る。犬神家に隠されていた複雑な事情を知った猫村さんだったが、それでも尾仁子が夕食をしっかり食べていたことに、心から安堵するのだった。それからは、猫村さんは時々祖母の部屋に立ち寄るようになり、彼女にお茶を出してもらったりステテコと遊んだりと、仕事の合間に楽しい時間を過ごすようになる。そんな猫村さんは、祖母やステテコと過ごす中でぼっちゃんのことを思い出し、彼にまたいつか会える日を夢見ながら、ひたむきに仕事を続けていた。しかし猫村さんは、冴子から奥の部屋に近づいていることを怪しまれてしまい、家政婦をクビになることを恐れて祖母やステテコに会うのを我慢するようになる。そんな中、犬神邸に突如現れたのは、金之助の知り合いを名乗る謎の女性・スケ子だった。

第3巻

村田に銀行口座を作ってもらい、新しいリュックサックももらった猫村さんは、ぼっちゃんとの再会を夢見ながら、ますます日々の仕事に力を入れていた。しかし奉公先の犬神家は相変わらず夫婦仲が微妙な状態で、親子関係や嫁姑関係など、全方向に問題が山積みだった。さらに不良娘の犬神尾仁子は少しずつ猫村さんに素直な態度を見せるようになったものの、自らが率いる不良グループの集会を企んでいた。一方、スケ子との不倫問題が解消したはずの犬神金之助は、美容整形やエステに力を入れる犬神冴子に冷たい様子で、二人の夫婦仲を見守る猫村さんの心配事はますます増えていく。そんな中、犬神たかしの就職先が決まり、その報告を受けた猫村さんはたかしの就職活動の成功を喜ぶ。しかし、金之助や冴子が就職をお祝いしようと誘っても、たかしは当然のことだからと、みんなのお祝いの誘いを断ってしまう。そんなある日、商店街に買い物に出かけた猫村さんはいつも行っている肉屋に立ち寄り、店を手伝っている肉屋の息子が、いつの間にか就職活動をしていたことを知る。肉屋の息子とアイドルの森コリスの話や就職活動の話で盛り上がり、ご機嫌な猫村さんは犬神家に戻り、金之助にたかしの就職先が決まったことを報告する。その夜の夕食時、金之助はたかしの就職について冴子と話すが、ちょっとしたすれ違いで彼女とまた険悪な雰囲気になる。猫村さんがその様子をヒヤヒヤしながら見守る中、金之助の態度に傷ついた冴子は席を立ち、自室にこもってしまう。

第4巻

ずる休みするためにカゼを装って寝込んだ犬神金之助だったが、そうとは知らない犬神冴子は慣れない料理をして彼の看病をしようと奮闘していた。だが、料理が苦手な冴子は玉子酒の作り方を失敗してしまい、金之助の体調を悪化させる事態になりかけていた。金之助の苦悩を察しながらヒヤヒヤする猫村さんは、冴子がこれ以上料理をしないよう、やんわりと言い聞かせることに成功。それでも金之助のために慣れない料理に挑戦しようとする冴子を見た猫村さんは、冴子の抱く金之助への思いに感動しながら、二人を見守るのだった。金之助が仮病から回復した頃、冴子は週末の刺繍展覧会に向けて準備を始める。猫村さんからドレスを見た感想を聞いた冴子は、ドレスに合わせてふだんはまとめている髪を下ろして出かけることにする。そんな中、知り合いから地図帳をもらった猫村さんは地図を見て海外についての勉強を始めていた。村田山田の話を聞いて外国語に興味を持った猫村さんは、いずれぼっちゃんに会いに行くためには外国語の勉強も必要だと考えたのだった。週末の展覧会当日、冴子はいつもと違う髪型を金之助にアピールするが、彼の反応はふだんとあまり変わらないものだった。そんな金之助に不満を抱いた冴子が展覧会の途中で出会ったのは、見知らぬ好青年の岸カオルだった。カオルに何度も話しかけられた冴子は、今までにないような高揚感とときめきで心が揺らいでしまう。カオルのことが気になったまま一人で帰宅した冴子はそのまま自室にこもるが、猫村さんはその様子を見て、冴子は誰かと禁断の恋をしていることを察する。

第5巻

いつものようにエステサロンに行った犬神冴子は、エステティシャンから肌が急にきれいになったことを指摘される。冴子が恋のフェロモン効果で、より美しくなるほどに気になる相手は、以前美術展で出会った岸カオルであった。カオルに再会した冴子だったが、彼の何気ない言葉で不機嫌になりその場を去ってしまう。怒りながら帰宅した冴子は猫村さんに対し、他人に犬神家の情報を安易に話すのをやめるよう叱る。冴子が怒るのはもっともだと反省した猫村さんは、少し落ち込みながら廊下を掃除していたが、尾仁子の祖母にお茶に誘われ、久しぶりに彼女の部屋を訪れる。祖母を通して不良グループ「五月雨が丘連合会」の集会が近いことを知った猫村さんは、公園でふつうの猫のフリをしながら集会を覗けばいいとアドバイスを受ける。そんな中、集会の準備を進める犬神尾仁子は、近日中に公園で集会をすることをたちに伝える。集会当日の夜、どうしても気になってしまった猫村さんは、村田たちが寝静まったのを確認してこっそりと公園に向かう。猫村さんはそこで尾仁子や強たちを発見し、しばらくは遠くから眺めていたが、ついもう少し近くで見ようと近づき過ぎて尾仁子たちに見つかってしまう。そこに尾仁子のライバルであるが現れ、彼の率いる不良グループと五月雨が丘連合会は乱闘状態になる。思わぬアクシデントに巻き込まれた猫村さんは乱闘に割り込み、尾仁子を必死に守ろうとする。

第6巻

犬神尾仁子たちの集会中に起こったとの乱闘が終結し、対決に敗れて失意の五月雨ヶ丘連合会は、解散の危機に陥っていた。そんな中、家政婦としての技術と爪を磨き続ける猫村さんは、ぼっちゃんといつか会える日を夢見ながら、家事のレベルアップに邁進していた。一方、夫婦仲が冷え込む中でスケ子との思い出が忘れられない犬神金之助は、彼女が小料理屋「助湖」で一部の客にのみ販売している高級佃煮に強い興味を持つ。金之助にお遣いを頼まれた猫村さんは助湖に向かい、そこでアルバイトをしている矢代狛と出会う。女将のスケ子は不在で、代わりに狛に話を聞く猫村さんだったが、狛もスケ子の過去はよく知らないと語る。佃煮を買って帰りさっそく金之助に渡した猫村さんは、その日の夜に再び助湖に向かう。そこで狛と再会した猫村さんは店に入ってスケ子と会うよう誘われるが、金之助や冴子への気遣いから断り、スケ子が元気そうなのを聞いて安心しながら、村田家政婦に戻る。村田たちにスケ子の話をした猫村さんは、一流の女性として頑張っているスケ子のように、一流の家政婦を目指そうと決意するのだった。次の日、反省会のために犬神邸に集まったたちだったが、尾仁子は五月雨ヶ丘連合会の解散を彼らに告げる。ほかのメンバーに反対されながらも、強は久に敗北した無念から解散に同意。集会で大切なピチ夫のキーホルダーを守れなかったことを悔やみながら帰ろうとする強は、見送りに来た猫村さんにキーホルダーを託すのだった。

第7巻

久しぶりに話をした犬神尾仁子の言葉に傷ついた犬神冴子は、尾仁子の振る舞いについて犬神金之助に相談をする。尾仁子に悪影響を与えているのは尾仁子の祖母だと主張する冴子をなだめる金之助だったが、またもやすれ違いが生じ、冴子は煮え切らない態度の彼にイライラしてしまう。そんな冴子を前に、家政婦のプロとしての「ちょうどいい気遣い」について悩む猫村さんは、主人に気遣いをすべきタイミングについて、改めて考え込むのだった。そんな中、小料理屋「助湖」を切り盛りするスケ子矢代狛のことが気になった猫村さんは、街中で再会した狛に、助湖に食事に来るよう誘われる。断り切れずに店で久しぶりにスケ子と再会するも、縮こまったような態度を取る猫村さんだったが、スケ子の出した料理に思わずうっとりしてしまう。常連客やスケ子たちとの会話で盛り上がり、絶品の料理と心温まる時間で満足した猫村さんは、上機嫌で犬神家に戻るのだった。後日、犬神家ではまたも小さな事件が発生し、ステテコが庭に出現したことで冴子が大騒ぎしていた。猫村さんはステテコを抱きながらごまかそうとするが、ステテコはそのまま外に飛び出してしまう。犬嫌いの冴子をなだめた猫村さんは、外に出たままのステテコが心配になり、街の人から情報を得て草むらでステテコを発見する。その場に偶然帰宅中の尾仁子が通りかかったことでステテコも無事保護されるが、犬神邸に戻った猫村さんは、ステテコの件を尾仁子の祖母に相談しようと部屋に向かう。

第8巻

犬神家で起こるドタバタの数々に追われながらも、猫村さんは海外に住むぼっちゃんに会いに行くために、さらに英語の勉強に励んでいた。問題の多い犬神家で一難去ってまた一難の日々を送る中、働き者の猫村さんの評判は近所でも広まっていき、がんばり屋の家政婦として多くの人々から慕われるようになっていた。そんな中、スーパーハウスマザーのキャシー・マクラレンにあこがれる猫村さんは、山田の協力を得てキャシーのハンドブックを入手。ずっと欲しかったハンドブックに夢中な猫村さんは、珍しく夜更かしをしたうえに、職場にハンドブックを持ち込もうとする。村田に止められてハンドブックを彼女に預けた猫村さんは、気を引き締めながら出勤し家政婦の仕事に励む。一方、犬神金之助は「月刊紳士」の取材を受けるが、彼はこの取材をきっかけに記者の表奈美から、強烈な片思いを寄せられるようになる。奈美の一方的な思いは次第にエスカレートしていき、ついには金之助の妻の座を狙おうと目論むようになる。奈美は犬神邸にしつこく電話をしてくるようになり、金之助に頼られた猫村さんは彼女の電話を毅然とした対応で断る。これをきっかけに猫村さんを逆恨みするようになった奈美は匿名で犬神冴子に手紙を送り、猫の家政婦を雇っていることを執拗に非難する。手紙を読んだ冴子は犬神たかしたちの反対を押し切って猫村さんを一方的に問題視するようになり、彼女に冷たくされることが多くなった猫村さんは、失望と混乱で落ち込んでしまう。

第9巻

邪魔者の猫村さんを犬神家から引き離そうとする表奈美の策略どおり、犬神冴子は猫村さんにいじわるを繰り返すようになる。見かねた犬神金之助犬神たかしは猫村さんを励まそうとするが、それでも冴子の考えは改まることなく、猫村さんへの嫌がらせは終わることはなかった。冷たくされる理由がわからない猫村さんはますます悩みが増えていくが、それでも彼女は犬神家を守るために、あらゆる困難に立ち向かおうとする。そんな中、金之助に付きまとい彼の妻の座を狙い続ける奈美は、エステサロンで遭遇した冴子に近づくようになる。しかしその裏では、冴子や猫村さんを金之助から分断させようと目論む、奈美の恐ろしい計画が持ち上がろうとしていた。言葉巧みに冴子をそそのかした奈美は彼女とメールを交わすようになり、猫駆除業者に依頼して猫村さんを排除させるよう進言する。冴子を騙すことに成功した奈美は部下の月野に連絡し、彼に業者のフリをして猫村さんを排除するよう命令。猫アレルギーを持ちながらも、訳あって奈美の命令を断れない月野は、買い物帰りの猫村さんを尾行しながら、魚やちくわを道に置いて釣ろうとする。しかし、猫村さんは食べ物で釣られたりはせず、頭を抱えた月野は迷いながらも次の作戦に出る。月野は近づいてきた猫村さんを騙してバッグに入れることに成功するが、道に置き去りにしたままにしてしまう。このバッグを発見した岸カオルは、猫村さんを連れ去ろうとした月野を追って止めようとする。

関連作品

漫画

本作『きょうの猫村さん』のスピンオフ作品として、ほしよりこの『カーサの猫村さん』がある。『カーサの猫村さん』はカーサブルータス編集部を舞台とするハートフルコメディで、猫村さんがカーサブルータス編集部に派遣され、個性的な編集者たちと共に働く様子を描いている。

メディアミックス

実写ドラマ

本作『きょうの猫村さん』の実写ドラマ版が、2020年4月9日からテレビ東京で放送された。内容は本作と同じく、家政婦として犬神家で働くことになった猫村さんの日常や出会いを描いている。キャストは猫村さん役を松重豊が、ぼっちゃん役を濱田岳が演じている。

登場人物・キャラクター

猫村さん (ねこむらさん)

家政婦をしているメスの成猫で、年齢は4歳。フルネームは「猫村ねこ」。見た目はふつうの猫だが二足歩行で移動し、人間の言葉を話せる。がんばり屋の働き者で、少々おせっかいなところもあるが、明るく前向きで素直な性格をしている。子猫時代、親猫とはぐれて迷子になった時に、下校中のぼっちゃんに拾われる。数年間はぼっちゃんの家で大切に育てられていたが、彼の両親が離婚したことで、最愛のぼっちゃんと離ればなれになってしまう。その後、自立して貯金をするために家政婦紹介所「村田家政婦」の求人に応募して住み込みで働くようになり、犬神家に奉公する家政婦となった。家政婦となったあともぼっちゃんに再会することを夢見ており、彼からもらった「neco」の刺繍が入ったピンクのエプロンを何よりも大切にしている。家政婦として家事を万能にこなすが、猫舌で爪とぎが必要だったり、魚が好きだったりと、猫らしい習性を持つ。料理は幅広く作れるが、特にオリジナルの「ネコムライス」を得意とする。人間の生活や文化、常識などには無知なところもあるが、誰に対しても純粋な気持ちで行動しているため、それが功を奏することもある。趣味はテレビドラマの鑑賞で、特に刑事ドラマや人情ドラマを好み、買い物や帰り道などは好きなドラマの主題歌を歌っている。手先が器用で裁縫などもこなすが、エプロンの紐やリボンを縦結びにする癖がある。雇い主の村田からは「猫の家政婦だと重宝されているからそれを活かして欲しい」と言われており、自分が猫であることを活かしながら、幅広い交友関係を築いていく。これらの努力の結果、村田家政婦では一番人気の家政婦として、高い評価を得ている。

ぼっちゃん

小学生男子で、猫村さんの最初の主人。猫村さんが子猫の頃に、親猫とはぐれてしまった彼女を下校中に拾い、大切に育てながらかわいがっていた。猫村さんのことは「ねこちゃん」と呼び、世話をしたりいっしょに遊んだりと、どんな時でもいつもいっしょに過ごしていた。猫村さんと遊ぶだけでなく食事などで世話を受けることもあり、裁縫を覚えた彼女にカバンを作ってもらうこともあった。また、猫村さんに文字や歌を教えた人物でもあり、彼女の歌好きに大きな影響を与えている。家は裕福だが両親が不仲気味で子供にも興味がなかったため、両親からは放置されがちだった。このため家では一人ぼっちで過ごすことが多く、猫村さんが話し相手や相談相手を務めていた。ピアノやそろばんなど稽古事を多く習っているが、猫村さんに付き添ってもらえるようになるまでは、つまらないからとサボることもあった。猫村さんと共に楽しく平和に暮らしていたが、両親が離婚したことで母親に引き取られて引っ越したために、猫村さんとは生き別れになってしまう。現在は海外に住んでいるが、具体的な所在は不明。猫村さんが家政婦になったあとも大切にしている刺しゅう入りのエプロンは、ぼっちゃんがプレゼントしたもの。好奇心旺盛で多趣味だが特に落語が好きで、よく猫村さんといっしょに落語ごっこをして遊んでいた。

犬神 冴子 (いぬがみ さえこ)

猫村さんの奉公先である犬神家の女主人で、犬神金之助の妻。スレンダーな体型の美女ながら整形を何度も重ねており、胸にはシリコンが入っている。ヒステリックで情緒不安定なところがあるが、本当は寂しがり屋な性格をしている。研究者の妻であることに強いプライドを持ち、頻繁にエステサロンやネイルサロンでメンテナンスを重ねては、若さと美貌を磨く日々を送っている。一方で料理や裁縫などの家事全般が苦手で、食事や掃除などは家政婦として雇った猫村さんにすべて任せている。現在では夫の金之助との夫婦仲は冷え切っているが、内心では彼のことを一途に愛している。髪型を変えるなどさまざまな方法で金之助の気を引こうとしているが、大半は空回りしている。金之助と付き合っていた時や、彼と結婚したばかりの頃は貧乏だった時期があり、彼が初めての給料で買ってくれた赤い着物を非常に大切にしている。また、金之助に腰をマッサージしてもらったこともあり、猫村さんにマッサージしてもらった時に、それらの出来事を思い出していた。娘の犬神尾仁子が反抗的で、彼女との対話や関係改善はほとんどあきらめている。また、尾仁子の祖母とは昔から不仲で、深刻な嫁姑問題を抱えている。基本的に家族や猫村さんに優しく接するが、時おり夫婦関係や嫁姑関係に悩んでイライラしては、猫村さんに八つ当たりしたり、拗ねて自室にこもってしまうことがある。金之助への信頼が揺らいだ頃に美術展で出会った、岸カオルのことが気になっている。好きなものは紅茶で、特にハーブティーやアイスティーを好む。

犬神 金之助 (いぬがみ きんのすけ)

猫村さんの奉公先である犬神家の主人で、犬神冴子の夫。大学教授を務めており、主に歴史と風俗を専門に研究している。温厚で理知的ながら少々鈍感で優柔不断なところがあり、ミドルエイジクライシス、いわゆる中年の危機に陥っている。勤務先の大学では、恋愛サークルの顧問を務めていた。母親である尾仁子の祖母からは犬神財閥の復興を期待されていたが、帝王学を学ばずに学者となり、彼女と仲の悪い冴子と結婚してからは、長年確執を抱えている。過去に愛人を囲っていたことがあり、その時の不倫トラブルで悪化した冴子との夫婦仲は、現在もあまり良好ではない。不倫の相手は恋愛サークルで知り合ったスケ子で、彼女への未練があったもののきっぱりフラれたことで、関係は解消されている。それでもスケ子に対する未練や思い出を捨てきれず、時おり彼女のことを思い出している。その後も冴子との関係はなかなか改善されず時おりケンカをしているが、根はまじめで優しいため、内心では彼女のことも家族のことも大切に思っている。のちに「妻」というテーマで研究を始め、雑誌の取材なども受けているが記者の表奈美に熱烈な片思いを寄せられて付きまとわれ、新たな悩みに頭を抱えている。

犬神 たかし (いぬがみ たかし)

犬神冴子と犬神金之助の息子で、大学4年生。とてもまじめで優秀な頭脳を持つ好青年で、日々の勉強と就職活動に励んでいる。猫村さんからは「たかしぼっちゃん」と呼ばれて慕われている。就職や将来のことを気にしているが、両親のコネなどで就職することを嫌い、ほとんど自力で就職活動を進めていた。世の中のインチキや出鱈目なことが嫌いで、かなりシビアな考え方の持ち主。テレビをはじめとするメディアを信用していないが、猫村さんがドキュメンタリー番組の話に夢中になっていた時は、興味を持っていた。昔は家族全員との仲が良好だったが、現在では両親に対してもドライに接することが多く、妹の犬神尾仁子や尾仁子の祖母との交流はほとんど途絶えている。特に奔放な尾仁子とは考えが合わず、たまに会話してもケンカばかりしている。のちに一流商事「九十九商事」に内定が決まるが、偶然にも肉屋の息子の就職先と同じだった。権威や将来への野望が強く、周りを見下しがちなところもあるが、大学の就職サークルの先輩である岸カオルのことは尊敬している。当初は猫村さんのことを不審に思って意見が合わないこともあったが、いくつかの出来事を経て彼女の努力家な一面を高く評価して信頼するようになる。また、猫村さんが冴子に八つ当たりやいじわるをされている時は、率先してかばっている。

犬神 尾仁子 (いぬがみ おにこ)

五月雨が丘中学校に通う中学2年生の女子で、犬神冴子と犬神金之助の娘。昔風のツッパリやスケバンにあこがれる不良で、両親や兄の犬神たかしからは見離されている。反抗期の真っ只中だが、根は優しく芯の強い性格の持ち主。猫村さんからは「尾仁子お嬢様」などと呼ばれ、家族から孤立しがちなことを心配されている。家族や猫村さんには反抗的な態度ばかりでなかなか素直になれないが、猫村さんに対しては絆創膏を渡したり村田家政婦まで送ったりなど、さりげない優しさを見せることがある。「尾仁子」という名前は尾仁子の祖母の命名で、「尾の先まで仁義を通す子」という意味が込められている。不良グループ「五月雨が丘連合会」(通称五月連)のリーダーを務め、強をはじめとする不良メンバーを束ねている。かつてリーダーを務めていた蘭子を心から敬愛しており、彼女から引き継いだ信念をつねに大切にしている。家族の中では祖母と、拾った愛犬ステテコにのみ気を許しており、両親とは食事をしない代わりに、夕食はいつも祖母の部屋で食べている。祖母の前では素直な態度や笑顔を見せることが多く、彼女の作る料理が大好き。強たちと共に開いた五月雨が丘連合会の集会に乱入した久との戦いに敗れてしまい、苦悩の末にケジメをつけるためにチームを解散した。解散してからは強たちともほとんど会っておらず、一人で行動することが増えている。

尾仁子の祖母 (おにこのそぼ)

犬神金之助の母親で、犬神たかしと犬神尾仁子の祖母。犬神冴子と深刻な嫁姑問題を抱えており、彼女と結婚した金之助とも確執を抱えている。髪を下ろした時の見た目は孫の尾仁子とそっくりで、いつも和服を着用している。少々頑固で厳しいところもあるが、芯が強く大らかで自由奔放な性格をしている。ある日を境に屋敷の奥にある部屋を改造し、家族とは別居同然の暮らしを送っている。唯一、尾仁子のことはかわいがっており、家族から孤立しがちな彼女を部屋に招いて夕食をいっしょに食べている。また、尾仁子が拾ってきたステテコの面倒も代わりに見ている。冴子から奥の部屋に近づくことを禁じられていた猫村さんが、好奇心に負けたのをきっかけに彼女と出会い、家族の留守中にこっそり招いて茶菓子を出したり、ステテコのおやつをもらったりなど交流を続けている。かつて財閥を率いる大富豪だった犬神家の復興を目論んでおり、そのために跡継ぎである金之助が大学教授になったことに強い不満を感じている。また冴子のことを快く思っておらず、二人の新婚時代から小言や悪口を言うなど嫌がらせをすることもあった。一方で窮屈なことを嫌うため、奔放な性格の尾仁子とは意気投合し、彼女や強の特攻服に刺繍なども施している。時おり老人会などにも出ているが、老人と話すよりも尾仁子やその友人、猫村さんとの交流の方が楽しいと思っている。しばらくは犬神夫妻のトラブルなどで猫村さんと会えていなかったが、時おり外出先や廊下で会った時などに部屋に招いては、悩みの多い彼女の相談に乗っている。

ステテコ

犬神尾仁子が雨の晩に拾った白い子犬。犬嫌いの犬神冴子に飼うのを反対されたため、尾仁子の祖母に引き取られ、彼女の部屋でこっそり飼われている。このため、ステテコが飼われている事実は尾仁子と祖母、猫村さんしか知らない。昼間は祖母が面倒を見ているが、尾仁子と散歩に行ったり、夕食のあとにいっしょに遊んだりしている。猫村さんからも非常にかわいがられており、時おりパンの耳やジャーキーなどのおやつをもらっている。額の毛には猫村さんがプレゼントしたリボンを結んでいる。

村田 (むらた)

家政婦紹介所「村田家政婦」を営む中年女性で、家政婦たちの元締め。求人を見て面接に来た猫村さんのことを一度は追い返そうとするが、彼女の事情を知り家政婦としての腕を見込んで雇うようになり、犬神家に派遣する。猫村さんからは「村田の奥さん」と呼ばれ、頼りにされている。つねに頭髪にカーラーを巻き、仏頂面のような表情が多いが、非常に面倒見がいい性格をしている。頑固で厳しいところもあるが、猫村さんの悩みにアドバイスをしたり、彼女のための預金口座を用意したりと、しっかり面倒を見ながら指導している。また、猫村さんが移動しやすいよう、彼女のサイズに合わせたリュックサックを手作りした。悩みの多い猫村さんをはじめとする家政婦たちに的確な助言をしており、家政婦としてはもちろん女性としても人生経験豊富で、たびたび格言を言っている。また、猫村さんにとっては一番の相談相手でもあり、一番の理解者でもある。町内の行事などにも積極的に参加しており、貢献する地域の顔でもある。洋服は実用性重視で、おしゃれは二の次。テレビドラマや雑誌が好きで、芸能界のゴシップにも詳しい。

山田 (やまだ)

家政婦紹介所「村田家政婦」に所属する女性で、猫村さんや菅井の同僚であり親友。優しく気配りもできる性格で、猫村さんのよき相談相手となっている。猫村さんたちと共に村田家政婦に住み込みで働いており、出戻りの娘とその子供がいるにぎやかな家に、家政婦として派遣されている。猫村さんたちと同様にテレビドラマが大好き。

菅井 (すがい)

家政婦紹介所「村田家政婦」に所属する中年女性で、猫村さんや山田の同僚であり親友。猫村さんたちと共に、村田家政婦に住み込みで働いている。猫村さんたちと同様にテレビドラマが好きで、特に韓流ドラマを好む。ミーハーだがこだわり派で、好きな韓流スターのために韓国語を勉強していたこともある。

いじわるな奥さん (いじわるなおくさん)

猫村さんが買い物中によく遭遇する中年女性で、噂好きの主婦。犬神家の近所に住んでいる。猫村さんからは「怖がりの奥さん」などと評されている一方で、猫村さんのことは「猫の家政婦」などと小馬鹿にしている。猫村さんとは会うたびに張り合ったりケンカをしたりするライバルのような関係で、互いに嫌味を言い合ったり競争したりしている。しかし、猫村さんの元気がなかったり落ち込んだりしている時は、心配してさりげなく気遣うなど、優しさを見せることもある。近所の噂やスーパーの安売り情報にも敏感で、猫村さんと情報力を競うことも多い。数々の悪い噂から犬神家を快く思っておらず、犬神冴子のことは整形ばかりのいじわるな女性と認識している。

(つよし)

五月雨が丘中学校に通う男子で、犬神尾仁子の不良仲間。尾仁子が率いる不良グループ「五月雨が丘連合会」のメンバーの一人。時おり尾仁子の部屋に遊びに行っているが、猫村さんと初めて会った時に彼女の得意料理「ネコムライス」を振る舞われて以来、彼女の料理を気に入っている。尾仁子と同様に、五月雨が丘連合会の集会を楽しみにしながら、イケイケで準備している。尾仁子の祖母とも知り合いで、彼女に特攻服の刺繍を依頼している。幼少期に手に入れた食玩のレアアイテム「ピチ夫」のキーホルダーがお気に入りで、いつもカバンに付けて持ち歩いている。気合を入れて集会に参加するが、乱入した久とのケンカに敗れたことで意気消沈し、苦悩の末に五月雨が丘連合会解散に合意する。久とのケンカ中に大切なピチ夫のキーホルダーを守れなかったことを悔やみ、キーホルダーは猫村さんに託した。

スケ子 (すけこ)

犬神金之助が勤務する大学に通っていた女性。学生時代は恋愛サークルに所属し、顧問を務める金之助と不倫をしていたことがある。現在でも金之助に対しては未練を抱いていたが、さまざまな事情や思いからけじめをつけるべく、久しぶりに再会した彼にきっぱりと別れを告げた。犬神邸を訪れた際に猫村さんと知り合い、傘を貸してくれた彼女とは時おり交流を続けている。料理には自信があり、金之助と別れたあとは心機一転して小料理屋「助湖」を開いた。その後は女将としてアルバイトの矢代狛と共に店を切り盛りしているが、複雑な過去のことは極力誰にも話さないようにしている。しばらくは猫村さんと会っていなかったが狛と共に彼女を助湖に招き、絶品の料理を振る舞って交流を深めた。

肉屋の息子 (にくやのむすこ)

猫村さんがよく買い物をしている商店街にある肉屋の次男坊で、大学生。ふだんは家業の肉屋の手伝いをしており、常連の猫村さんにはコロッケをサービスしてくれるなど仲がいい。明るく陽気な性格で、いつもヘッドフォンで音楽を聴いている。猫村さんからは「肉屋のぼっちゃん」などと呼ばれている。アイドルの森コリスをこよなく愛する大ファンで、そのファン活動でも忙しい。教授とケンカして大学を退学させられたが、まじめに就職活動を始め、「森コリスの事務所のとなりだから」という理由で努力を重ねたことで、一流の商事「九十九商事」に就職が決まった。悩みの多い猫村さんの相談に乗ったりアドバイスをしたりすることも多く、よき相談相手の一人となっている。

岸 カオル (きし かおる)

犬神たかしの就職サークルの先輩で、現在は会社員をしている。礼儀正しい性格の頭脳明晰な好青年で、たかしからも尊敬されている。宿命や運命を信じており、女性に対しては紳士的でキザなセリフが多い。美術展で偶然出会った犬神冴子に好意を抱き、積極的に話しかけては彼女を惑わせている。大学の研究などを通して犬神金之助とも面識があり、知的で優秀な若者として一目置かれている。冴子やたかしに会うために犬神邸を何度か訪れるうちに、猫村さんとも親しくなった。その後も猫村さんから情報を得ながら、何度か冴子に会いに行っている。ある出来事で冴子の機嫌を損ねてしまいしばらくは距離を置かれていたが、彼女の前髪にガムテープがくっ付いた際に器用に前髪を切って助けるなど、再び彼女へのアプローチを繰り返すようになる。金之助を通してスケ子に興味を持ち、彼の友人に連れられて小料理屋「助湖」に行き、スケ子や矢代狛と知り合った。

矢代 狛 (やしろ こま)

スケ子が女将を務める小料理屋「助湖」でアルバイトしている娘で、愛称は「コマちゃん」。お遣いを頼まれて助湖を訪れた猫村さんと知り合い、親友になった。少々おっちょこちょいなところもあるが、気の利く性格のがんばり屋で、スケ子と二人で店を切り盛りしている。スケ子のことは心から尊敬し慕っているが、昔のことをあまり話してもらったことがないため、彼女の過去や細かい事情をあまり詳しく知らない。ふだんはアルバイトをしながら、スケ子に紹介してもらった茶道教室に通っている。最近の小さな悩みは、誰かに褒められることにあまり慣れないこと。店に魚を届けている魚屋の青年が気になっている。

(ひさし)

麦が丘中学校に通う男子で、犬神尾仁子が率いる「五月雨ヶ丘連合会」と対立する不良。猫村さんからは尾仁子の友人と思われており、たびたび彼女を通して五月雨ヶ丘連合会の情報を得ていた。猫村さんのことは「ミケ村さん」と呼ぶ。ケンカには自信があるが、動物や女性には手を出さないことを信条としている。尾仁子たちが公園で開いた集会に自らが率いるグループと共に乗り込み、彼女や強たちと乱闘騒ぎを起こす。

表 奈美 (おもて なみ)

大手代理店に勤務する女性で、月刊誌「月刊紳士」の編集長を務める。「今月の紳士コーナー」で犬神金之助を取材したのをきっかけに、彼に熱烈な片思いを寄せるようになる。執拗にせまってくるため金之助からは嫌がられているが、彼に近づくために何度か犬神邸に電話をしたりいきなり訪問したこともあり、毅然とした態度で断った猫村さんの対応に逆恨みをするようになる。それでも金之助への熱烈な思いをあきらめられず、あらゆる手を使って邪魔者の猫村さんと犬神冴子を排除しようと目論むようになる。エステサロンで出会った冴子を巧みに騙し、月野を使って猫村さんを排除しようと目論むが、岸カオルに妨害され失敗に終わった。

月野 (つきの)

大手代理店に勤務する青年で、月刊誌「月刊紳士」の編集者。表奈美の部下だが、女性関係でいくつか問題を抱えており、奈美に浮気をした情報をはじめとする弱みを握られている。このため、奈美から手下のような扱いを受けているが、婚約者との関係を守るために彼女にはなかなか逆らえない。猫アレルギー持ちで、猫に近づくと咳やくしゃみが出る。猫村さんの排除を決意した奈美の依頼で、猫駆除業者として猫村さんを犬神家から引き離そうとする。猫村さんをバッグに入れて誘拐しようとするが、猫アレルギーの症状が出てしまい、偶然通りかかった岸カオルに妨害されて失敗に終わった。

書誌情報

きょうの猫村さん 10巻 マガジンハウス

第1巻

(2005-07-14発行、 978-4838715954)

第1巻

(2008-10-01発行、 978-4838770052)

第7巻

(2020-05-07発行、 978-4838771042)

第8巻

(2023-02-02発行、 978-4838771103)

第10巻

(2023-05-01発行、 978-4838732401)

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