こぐまレンサ

こぐまレンサ

「愛」に飢える人たちが、苦しみもがきながらも生きるさまを描いたサスペンス。前半は一話完結型だが後半は連続した物語となり、さらに合間に「チチェ」にまつわる過去のエピソードが挿入される。これにより、独立したエピソードだと思われていたそれぞれの話が、読み進めていくごとに繋がっていくという構成をとっている。「ヤングマガジン」2003年49号から2004年28号にかけて連載された作品。

正式名称
こぐまレンサ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
ヤングマガジンコミックス(講談社)
関連商品
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概要・あらすじ

売れない小説家である垣内有作は、自分が死んでも後世に残る名作を書きたいと考えていた。そんなある日、有作は黒魔術の本に書かれていたこぐまを呼び出すことに成功し、自らの命と引き換えに、後世に残る作品を書けるようにと願う。その直後、有作は自販機の横のゴミ箱に捨てられていた「チチェ」と題されたノートを発見する。

有作は、日記風に書かれたそのノートの内容をもとに、小説「チチェ」を脱稿。この小説は瞬く間にベストセラーとなり、「チチェ」の名は広く世間に知られることとなるのだった。小説「チチェ」のもととなった日記の謎が紐解かれることにより、過去と現在を繋ぐ連鎖の糸が明らかになっていく。

登場人物・キャラクター

こぐま

垣内有作により現世に召喚された少女で、見る者によって天使にも悪魔にも見える、不思議な存在。街に近い山の中にある洞窟に居を構えている。外見年齢は高校生くらいで、可愛らしい顔立ちをしており、スタイルも良い。普段は服の中に隠しているが、背中には羽が生えており、これを使って空を飛ぶことも可能。相手が純粋な想いを持つ者であれば、死者の魂とコミュニケーションを取ることもできる。 趣味は花とにらめっこをすることで、現在の戦績は30戦16勝。ある日、たまたま立寄った八百屋の主人に家出娘と間違われ、スイカをもらう代わりに学校へ行くよう諭される。その後、偶然通りがかった高校に立入ると、学校側の勘違いでガボンガ共和国からの留学生「小熊美智子」と間違われ、編入することとなった。 常識知らずで社会性も皆無だが、編入の面接を担当した教師からは「純白のバカ。言い換えれば天使にでも悪魔にでもなれる」と評されている。日本語があまりうまくないがチチェ語は堪能で、感情が高ぶった時などは無意識にチチェ語で話す。高校への編入時、野波千波に目を付けられて不良男子3人をけしかけられたが、座ったまままとめて殴り倒すなど、人間とは思えないほどの身体能力を誇る。 成り行きながらも何かと世話を焼いてくれている水島を頼りにしており、彼とともにいることで、人間らしい感情を育んでいく。なぜかコグマと同じタッチで絵を描き、コグマの父親・伊澤聡の描いた絵画「花」を見て涙するなど、何らかの関連性をうかがわせている。

伊澤 聡

ゲイの画家で、現在の時系列ではすでに事故により亡くなっている。髪型は短髪のV字カットで、顎ひげを生やしている。27歳の時に絵画「花」を発表しており、「絵画を超えた新しい創造」として世間から絶大な評価を得ている。9歳の頃、母親が再婚した義父に日常的に性的悪戯をされる環境で、愛情を受けずに育った過去を持ち、大学1年の時に両親が亡くなり、莫大な遺産と屋敷を受け継いだ。大学入学時より、同期の三宅をライバル視しており、才能や実績の差に嫉妬と憎悪を抱いている一方で、彼のことを愛してもいた。そのため、絵のタッチはもちろん、外見も三宅の影響を受けており、顎ひげも三宅の真似である。さらに三宅の発言を録音したりノートに書き留めておき、それらを見聞きしながら自慰行為に耽っては自身の感情に折り合いを付ける日々を送っていた。また、「花」の授賞式におけるスピーチすら、三宅の言葉の盗用であった。絵の修行のため「町村ミル」というペンネームで漫画「モンキーレンチ」を描いていた時期があり、三宅のアドバイスを受けて、自身の漫画の内容にリンクした「不幸のページ」というホームページを作っている。 ある時、三宅の発言から着想を得て、新世界「チチェ」を創造することを決意。岩下みどりを拉致し、自宅の地下に足枷を付けて監禁したうえで、彼女にチチェ語を覚えるよう強要していた。当初はみどりのことを創作の道具としか見ていなかったが、ともに過ごす内にみどりを愛するようになり、のちに娘コグマももうける。それでも、みどりの足枷は死ぬまで外すことはなかった。「チチェ」内では、伊澤聡自身の名前は「グマンキ」。みどりを拉致した直後からノートに記録を付けており、友人が家に来る際には銀行の貸金庫に移そうとするほど極秘としている。

岩下 みどり

伊澤聡の創作のため、拉致された女子高校生。当時の年齢は16歳だが、現在の時系列ではすでに亡くなっている。伊澤の作った新世界「チチェ」に足枷を付けて監禁され、チチェ語を覚えるように強要された。この時、伊澤によりチチェ語で「大きな果樹」という意味の「コルカ」という名前を付けられる。伊澤に出された食物を警戒して死の寸前まで断食していたが、これをきっかけに選択することから逃げるように生きていた岩下みどり自身の過去と向き合い、生きることを決意する。 「チチェ」で暮らす内にストックホルム症候群にかかり、伊澤に同調していくこととなり、のちに娘コグマを産む。拉致から死ぬまでチチェ内に足枷を付けられ生活していた。ちなみに伊澤が作ったホームページ「不幸のページ」内にて「この世で最も不幸な人」という項目の68位に載せられている。 家族から捜索願が出されていたが、拉致後半年で父親が死亡し、母親と弟は事故で意思疎通が困難な障害を負ったため探す者がいなくなり、最期まで警察に発見されることはなかった。コグマの妊娠中に妊娠中毒症にかかった際、伊澤にスイカを食べさせてもらったが、そのスイカは「チチェ」に来てから口にした唯一の固形物である。

垣内 有作

売れない小説家の中年男性。結婚はしているが子供はいない。自分が死んでも後世に名作を残したいという夢があり、悪魔を呼び出す儀式を行ってこぐまを召喚した。こぐまに自分の願いを叶える代わりに命を対価として提供することを提案するが、返事を聞く前にこぐまは消えてしまう。その後、タバコを買いに行った際に自販機横のゴミ箱に「チチェ」と題されたノートを発見。 そのノートの中身に魅了され、盗作覚悟で小説化すると瞬く間にベストセラーとなり、社会現象になるまでにヒットした。だが、のちにセスナの墜落により親しい人たちの命を一瞬にして奪われ、垣内有作のみが1人で生き残されることとなった。この出来事を「対価として自分以外の命を取られた」と考え、やはりこぐまは悪魔だったと確信。 この事故以降、消息不明となる。

コグマ

伊澤聡と岩下みどりの間に生まれた娘。伊澤が作品に込める「愛」のため、まったく新しい言語・文化・環境の中で創り上げられた子供で、肩甲骨が隆起して羽となっている。新世界「チチェ」という特殊な環境に生まれ育ち、伊澤に完全に同調したみどりにより愛情をたっぷり受けて育てられていた。実は伊澤名義で世に評価された絵画「花」を描いた本人。 伊澤が事故死したことで、「チチェ」に食料が供給されなくなったため、最終的には母親であるみどりを食べて飢えを凌いでいた。警察により発見された時には、壁面に自らの便で絵画が描かれていた。現代の医療をまったく受け付けない体質で、保護搬送された病院で治療のしようもなく死亡した。医者の推定では、亡くなった時点で6歳。

野波 千波

高校1年生の女子で、こぐまが編入した高校のクラスメイト。同じクラスメイトの水島のファンで、「水様」と呼び慕っている。いつも取り巻き2人と行動をともにしており、水島が気にかけているこぐまを敵視し、嘘の学校のルールを教えたり服を剥ぎ取って放置したり、不良をけしかけたりしている。それでも何かと自由に振る舞うこぐまに対し、日本の学校のルールに従わせようとなぞなぞ対決を挑む。

三宅

伊澤聡と大学で同期だった男性画家。眼鏡をかけ、顎ひげを生やしている。幼少期より天才と評され、大学在学中から数々の賞を受賞しプロとして活動していた。大学入学時から、三宅に対し強烈なライバル意識を持つわりに創造のための努力をしない伊澤に腹を立てているが、友人として心配し、アドバイスを送るなど親身な一面もある。実は伊澤に恋愛感情を抱かれているが、三宅本人はそのことにまったく気付いていない。 伊澤が「町村ミル」として活動していた漫画に目を通しているなど、伊澤の創作活動は一応気にかけていた。

水島

高校1年生の男子で、こぐまが編入した高校のクラスメイト。イケメンかつ運動神経抜群で、1年生にしてテニス部の代表の座を勝ち取っている。女子にも高い人気を誇り、一部の熱狂的な女子ファンからは「水様」と呼ばれている。子供の頃は家が貧乏で、母親にプレゼントを買うために伊澤聡のカバンを引ったくり、現金だけを抜いて他は捨てた過去がある。 すぐに母親にバレて警察に自首したが、伊澤からは被害届が出されておらず、すぐに釈放となった。当時の警察署内に飾られていた伊澤の絵画「花」を見て感銘を受けており、また担当官を務めた東堂に「すばしっこさがテニスに向いてる」と言われたことがテニスを始めるきっかけとなった。今でも絵画「花」を見ると、当時を思い出して背筋が伸びる想いを抱く。 こぐまのことは最初は疎ましく思っていたものの気にかけており、彼女がピンチだと思えばすぐ駆けつけ、またこぐまが糾弾された際にも庇っている。不良を一瞬で倒したこぐまを見て「天使だ」と評し、こぐまの描いた絵画を見て感動すると同時に、それが伊澤のタッチと同じものであることに興味を持つ。

東堂

捜査一課に勤める男性刑事。常にハンチング帽を被っている。過去に引ったくりをしたことで自首して来た水島に対して「テニスに向いている」と励まし、彼をテニスの道に導いた人物。伊澤聡が事故死した後、伊澤邸地下の「チチェ」が発覚。その後に発表された、事件と内容が酷似している小説「チチェ」との関連を調べるため、小説の授賞式に民間のセスナを飛ばしたが、操縦士が操縦を誤って授賞式会場に突っ込み大惨事を招いた。 その後、事態が明るみに出ることを恐れた警察上層部からの圧力により、伊澤や垣内に関する捜査資料一切が闇に葬られ、伊澤の犯行を追うことができなくなってしまう。

場所

チチェ

伊澤聡が自宅兼アトリエの地下にある核シェルターに創造した世界。床、壁、天井のすべてが真っ白に統一され、「現世」、すなわち1Fの部屋に通じる扉以外には、排泄するバケツしかない部屋。伊澤自身が創った言語「チチェ語」を公用語としている。拉致した岩下みどりを監禁して子供コグマを産ませ、まったく新しい文化・言語・環境にて、愛情を注いで育てた子供に絵画を創作させることを目的に作られた。 「チチェ」とはチチェ語で「部屋」「世界」という意味であり、世界はこの核シェルターで完結しているという伊澤の想いが込められている。みどりやコグマの食事と衣類の用意は伊澤が担当している。食物は肉や野菜などをすり潰して1つの皿にまとめたもので、見た目や味はともかく栄養のバランスは良い。 みどりを拉致した直後からの記録を綴った「チチェ」と題されたノートを偶然にも垣内有作に拾われ、それをもとに小説化されたことにより、フィクションとして世間に広く知られることとなる。なお、垣内が拾ったノートの内容は、伊澤が絵画「花」を発表するまでの記録となっている。

その他キーワード

チチェ語

伊澤聡が創造した「チチェ」での公用語。言葉の一例として、「チチェ」は「部屋」「世界」、「バンガミ」は「スイカ」、「コルカ」は「大きな果樹」という意味を持つ。「チチェ」自体の規模が1部屋分しかないうえに物がほぼ何もないため、名詞が極端に少なく、固有名詞はほぼ存在しない。垣内有作により小説「チチェ」がベストセラーになった際には、「公式チチェ語辞典」も発売され、フリークの間では浸透している。 特に「バンガミ」は小説「チチェ」の作中で重要な意味を持つアイテムとして扱われており、フリークであれば一発でチチェ語だと認識できるほどの知名度がある。

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