概要・あらすじ
ミッション系の名門校聖オトワ女学院に必死の受験勉強の末に入学した吉田めぐみ。しかしクラスでは彼女以外は付属中学からの移行組ばかりで友達が作れずにいた。ある時、誤って万引きをしてしまった化粧品をクラスメイトが羨ましがったことから、「姉が化粧品会社に勤めていていくらでも手に入る」と嘘を吐いてしまう。小遣いなどで買えない品々を要望されためぐみは万引きをしようする。
登場人物・キャラクター
吉田 めぐみ (よしだ めぐみ)
洒落た施設に様々な伝統行事、そんなミッション系の名門校聖オトワ女学院に憧れて入学したものの、友達が作れず悩む女子高生。間違って化粧品を万引きしてしまったことをきっかけに、万引きグループチーム・イリュージョンのリーダー的存在である山根梓(アズ)と出会う。何故か彼女は、友達欲しさに買えもしない化粧品をあげるとクラスメイトに安請け合いしてしまっためぐみに協力して、万引きを繰り返してくれる。 やがて、ものをあげることで友達のフリをしていただけのクラスメイトと、何の見返りも求めず化粧品などを万引きしてくれるアズたちとを比べたとき、めぐみはアズたちの仲間に入ることを望んだ。それは万引きの常習犯になることだった。 鄙びた食堂を経営する父母に素朴に育てられた冴えない女子高生。アズたちと付き合うようになって徐々にあか抜けて行く。長い黒髪にぱっちりした瞳をしていて、もとから素材は良かった。
山根 梓 (やまね あずさ)
万引きグループチーム・イリュージョンのリーダー的存在で、吉田めぐみが困っているのを率先して助ける。歳はめぐみの1つ上。高校でいじめに合っていた過去があり、高校を中退した。それがきっかけで万引きを始め、万引きを続けるうちに他のメンバーであるキョーコやゆまっち、リンと出会う。 万引きを成功させ仲間を増やすたびに一つ一つ階段を上って行くような気がしており、当初めぐみにとっても万引きがいいことだと思っていた。だが、めぐみに万引きをやめるように言い出したのもアズだった。それを跳ね退けためぐみが一人単独で突っ走った結果、アズはリーダーとして資質を疑われ、めぐみや他のメンバーとも袂を分かつことに。 長い茶髪をウェービーヘアにして派手な化粧と派手な衣装に身を包んでいる少女。口は悪いが度胸も気風もいい姐さん肌。いじめの件で道を誤ったが、自ら身の振りを考え直すことのできる強い意思も持っている。めぐみを過去の自分と重ねて見て、他人事とは思えなかった。
ゆまっち
万引きグループチーム・イリュージョンの一人。母親が万引きの常習犯ゆえに、自分もその血を受け継いだ。根っからの万引き常習犯だと思っている。アズを中心にチーム・イリュージョンの万引き行為が上手く行っている間は調子よく付き合っていたが、アズが万引きGメンを警戒して活動を控えるようにと忠告するとそれに反発。 同じように反発しためぐみが万引きGメンをやり込める活躍を見せると、今度はめぐみをリーダーに盛り立てて万引き行為を続けようとする。美少女とは言い難い、ギャルと言われる服装や髪型や化粧を好み、いつもダイエットに失敗している。自ら更生しようとしているめぐみに万引き行為で挑んだり、過去に犯した罪を盾に取って強請り行為をしたりする。 万引きを辞めて幸福に暮らしているめぐみに嫉妬している。
キョーコ
万引きグループチーム・イリュージョンの一人。本当の両親に施設に預けられ、「来月には一緒に暮らそう」と言われながら5年が過ぎてしまった頃にアズと知り合う。彼女にとって万引きは中毒のようなもので、それを禁止されたら禁断症状が出る。ゆまっちと共に、万引きから足を洗っためぐみの前に現れ、万引きで挑んだり、過去の罪を盾に強請りを掛ける。 町の不良に絡まれた時には、ゆまっちを見捨てて逃げる薄情な人物。くるくるの髪をツインテールにするなど可愛い系のファッションや髪型を好み、調子の良さではゆまっちより上。
リン
万引きグループチーム・イリュージョンの一人。アズが最後に見つけた仲間だが、万引きグループの中では多勢の流れに乗るだけの少女。アズが万引きGメンを警戒して活動を控えるように忠告した時は、ゆまっちやキョーコと共に反発し、めぐみをリーダーに活動を再開。めぐみが万引きから足を洗うと知った時にもゆまっちやキョーコと共にめぐみを恐喝する態度を見せる。 ショートカットの黒髪に帽子とメガネがトレードマーク。
波多野 ユウ (はたの ゆう)
たまたまカラオケ・ボックスでめぐみたち万引きグループチーム・イリュージョンの面々と一緒になったことで、めぐみと付き合う事になった少年。実家は本屋で、万引きに泣かされている経営者の気持ちがわかる立場である。それを知っためぐみが下手な芝居を打って別れることになったが、その後もめぐみのことを想い続けていた。 「店の手伝いをしろ」と叱られながらも本屋を経営する両親の苦労を汲んで、協力を惜しまない。めぐみの可愛さ、素直さを、そのままストレートに好きになった純朴とさえ言える高校生。
めぐみの父
お客様の笑顔が見たくて包丁を持たなかった日はなかったという庶民的な味よし食堂を経営する頑固オヤジ。めぐみが私立の聖オトワ女学院に通うことになったため、営業時間を伸ばし、それまで拒否して来た出前を取るようになった。また、大好きなタバコをやめてめぐみの小遣いをアップしたりも。食堂が繁盛して忙しくはあったが、娘のために己の身を削ることを厭わない立派な父親。 角刈りの頭でファッションにはこだわらない。めぐみが万引きを繰り返していたことを告白した時も叱ることはせず、店を売り払った大金を謝罪の慰謝料に全て注ぎ込んで、めぐみと共に迷惑を掛けた一つ一つの店に頭を下げて歩いた。10年後、アズが結婚して子供を育てる頃になると、福島で経営を続ける味よし食堂の噂を聞くことになる。
めぐみの母
味よし食堂を経営する夫を支え、娘のめぐみの夢を叶える手助けをする優しい母親。だからこそ、めぐみが万引き常習犯だったと知って、自分がもっと気をつけていればと自分を責めてしまう。めぐみと父親が万引きをした店一軒一軒に謝りに行くのに同行する。福島で一からやり直した時も家族一緒だった。
吉田 さえみ
主人公めぐみの姉。普通の会社のOLで一人暮らしをしていた。両親が味よし食堂の経営に苦心しているのを見て店の手伝いに入るなど、長女としての責任感の強さを窺わせる。めぐみの万引き行為を知った時、非難ごうごうと騒ぎ、世間体や常識などに敏感。めぐみのせいで実家の食堂も自分の人生もむちゃくちゃにされたと言って罵ったさえみだったが、店を畳んで引っ越すことになった時には妹を許していた。 こうして家族4人、福島の片隅で味よし食堂は再スタートを始めることになった。
花丸ストア店長 (はなまるすとあてんちょう)
めぐみたち万引きグループチーム・イリュージョンが常習的に万引きしていたローカル・スーパーマーケット。万引きのために経営難に陥り、本部から従業員の削減を求められたがそれが出来ず、万引き犯を減らすことでこの難局を乗り切ろうとしていた。だが、せっかく雇った万引きGメンも失敗、負債を増やしただけだった。 最後の手段として自殺を図り入院する。これを知っためぐみが、万引きがどれほど罪深いのかを痛感することになる。禿げた頭髪はいわゆるバーコード頭で、くたびれた壮年男と言った外見。従業員をクビにすることが出来ない気弱さと優しさのために経営難から逃れられなかったが、万引きという行為を憎んでも、己の罪を自覚し反省しているめぐみに対して恨み辛みを吐くことはなかった。
さくら
北町商店街にあるさくら書店の店長。夫が病気で入院しており、一人で書店を切り盛りしていた。主人公のめぐみは味よし食堂の出前でさくら書店にやって来て、そこで行なわれた万引きとレシートを使った巧みな詐欺行為を目撃する。万引きから足を洗って真面目に更生に勤めようとしていためぐみは、万引きに悩まされ、一人で苦労しているさくらと、さくら書店を万引き犯から守ろうと決意する。 めぐみがバイトとしてさくら書店にやって来てから、さくらも万引きに対処する方法を率先して学ぶようになった。そのことを巡ってめぐみと意見の対立をすることもあったが「めぐみが大好きだ」と言い切った。 ふくよかでお人好しそうなつぶらな瞳。多少の損を被っても、めぐみには「人を見たら犯罪者と思え」と言うような人間になって欲しくないと思っている。
場所
聖オトワ女学院 (せいおとわじょがくいん)
主人公吉田めぐみが通う高校で、100年の歴史を誇る名門ミッションスクール。付属中学があり、近々完全中高一貫教育になる予定だが、めぐみの年では高校受験を経て入学して来た「高校募集」の生徒は、めぐみを入れて15人ほどいた。「高募」または「外部」と言われ、中学からそのまま高校に上がって来た大半の生徒たちにとってめぐみは異分子だった。 学園標語の「マリアさま、嫌なことはわたしがよろこんで」は、めぐみに対しては全く適応されない。食堂は「カフェテリア・モナリザ」と言うパリのカフェのような作り。大聖堂、大ホール、一年中泳げる温水プール、茶室、使い放題のネットルーム、「ローズガーデン」と呼ばれる英国風の庭園、その向こうに「友情の池」など、魅力的な施設の他に、様々な伝統行事が行なわれる、魅力的な女学院ではあるが、めぐみは理想と現実のギャップを思い知ることになる。
花丸ストア (はなまるすとあ)
万引き犯に食い物にされ、その店長が自殺に追い込まれるほどの経営難に陥っていたスーパー。何かに取り憑かれたかのように万引きを続けようとするめぐみと、経営難を打破するための最後の切り札である万引きGメンとの対決の場でもあった。これに勝利しためぐみは、店長の自殺未遂、残された家族の遣る瀬なさを目撃して、軽い気持ちで始めた万引きが人の人生や命までもを奪ってしまうことを知った。
さくら書店 (さくらしょてん)
店長である夫が入院している間、妻のさくらが一人で切り盛りしていた北町商店街にある書店。万引きから足を洗って、実家の味よし食堂の手伝いをしていためぐみが、出前を届けていた場所でもある。万引き行為をしていた経験を生かして、さくら書店を万引き犯から守ろうと、めぐみはバイトを始める。 それを見つけたゆまっちとキョーコが「更生など出来ると思うな」と言って万引きを仕掛け続けてくる。自分がいることで却って万引きのターゲットにされてしまうことに、めぐみはいたたまれず、意地でも妨害しようとする。だが、自分の過去がゆまっちによって明るみに出されそうになると、結局は庇ってしまう。
味よし食堂 (あじよししょくどう)
主人公めぐみの両親が切り盛りする創業30年の庶民的食堂。しょうが焼き定食が人気商品。ごちそうさまのお客様の笑顔が見たくて、一日たりとて店主が包丁を握らなかったことはなかった。野菜の値段の高騰にも関わらず価格を上げることなく、また食事の量を減らすこともなく、来てくれるお客様のために誠実に経営していた。 更には、営業時間を伸ばし、それまでやっていなかった出前を始め、姉からの仕送りもめぐみの学費にあてながら、両親が欲しいものを買わずに我慢して、めぐみを聖オトワ女学院に通わせるための大事な店でもあった。娘が万引きの常習犯であることを知っためぐみの父は、自分が持っているもの、築き上げて来たもの全てを手放すことによって、万引きの被害に合った店舗への謝罪とした。