概要・あらすじ
骨董店「爛漫堂」を営む、欄間美衣子と母親の欄間真衣子、そして祖母の欄間亜衣子の3人は、騒がしくも華やかな毎日を過ごしていた。美衣子は柔道部の王子といわれる框との恋に夢を見ており、真衣子は骨董店を洒落た雑貨屋とカフェにするのが夢である。ロマンチストの亜衣子は、店によく訪れる西阿立楼を見ると一日幸せな気分で過ごすことができる。
個性がバラバラの3人は、骨董とそれに関わる不思議な人間関係を発展させていく。
登場人物・キャラクター
欄間 美衣子 (らんま みいこ)
15歳の高校1年生。欄間家の一人娘で母親と祖母と一緒に骨董店「爛漫堂」を手伝っている。結婚に失敗した2人を見ているため自分こそは失敗すまいと、軽い女が好きと言う框にノリノリで猛アタックする。当初はロングヘアだったが、近所の床屋・菊池に10センチ切ってくれと言ったら、髪の毛を10センチにすると思われて、ベリーショートにされてしまう。 西阿立楼を頼って日本に来た金髪碧眼の骨董好きアメリカ人、アレックスに好意を抱く。
欄間 真衣子 (らんま まいこ)
欄間美衣子の母親で、39歳のバツイチ。最近、別れた美衣子の父親が20代前半の若い女性と再婚することになり苛立っている。古臭い骨董屋を辞めて、洒落た雑貨とカフェの店にしたいと考えているため、叔母の障子が持ちかけてきた蔵の物を500万で買い取るという話に乗り気である。眼鏡をかけ、長めの黒髪をいつもひっつめており、恋愛ごととは程遠い風体。 欄間亜衣子と戸次郎の娘で、皆は悪口を言うが真衣子には優しかった父親の戸次郎が好きだった。西阿立楼とうっかり寝てしまったせいで彼を気にし始める。
欄間 亜衣子 (らんま あいこ)
69歳のバツ2だが、欄間家で最も美人で最もロマンチスト。いつも着物をしとやかに着こなしている。最初の夫の窓一を愛しており、窓一に少し似ている西阿立楼が店に訪れると幸せな気持ちになる。それに対して2番目の夫である戸次郎は、酒と女と博打と暴力の挙句に愛人宅で腹上死したという経緯があり、仏壇に飾る遺影は窓一の方が戸次郎よりも10倍近く大きい。
框 (かまち)
欄間美衣子の高校の先輩で彼氏。柔道黒帯のハンサムで男女共に憧れの存在で、王子扱いされている。硬派だと思われているが実は軽い女が好きで、ノリのいい美衣子を軽い女だと思って彼女にした。
障子 (しょうこ)
欄間亜衣子の2番目の夫である戸次郎の妹で、欄間真衣子にとっては叔母にあたる派手めな太ったおばさん。骨董店「爛漫堂」の蔵に目をつけ、数億の価値があると知りながら全部で500万で買うと持ちかけている。真衣子には信用されているが、亜衣子からは窓一の残した物だから売らないと断られている。
戸次郎 (とじろう)
欄間亜衣子の2番目の夫で婿養子となっていた。結婚10年目にして一人娘の欄間真衣子を授かったが、42歳の時に愛人宅で腹上死した。酒と女と博打好きで借金だらけの遊び人で暴力もふるったが、一人娘の真衣子にだけは優しい父親であった。
窓一 (そういち)
欄間亜衣子の最初の夫。とても端正な顔立ちをしていて、亜衣子は仏壇に戸次郎より10倍も大きな写真を飾っている。さらには押入れにも大きな写真がたくさん入っている。軍人で、戦争に行く前に亜衣子に対し自分が戻らなくても店とこの国の美しい物たちを守ってくれるようにと言い残した。
西阿 立楼 (あずまや たつろう)
窓一にどことなく雰囲気が似ている骨董商で、骨董店「爛漫堂」で安く買い叩いた骨董品を金持ちに高く売りつけている、詐欺師のような男性。爛漫堂で5万で買った茶碗が1千万で売れ豪遊している時に、欄間美衣子、欄間真衣子と出会い真衣子と寝てしまう。政治家の生垣大三郎の愛人である離宮七青子と付きあっている。 秘密にしているが、実は父親は政治的にも力を持つ新興宗教「万寿聖会」の教祖である。
小納戸 明子 (こなんど あきこ)
欄間真衣子の高校時代の同級生。高校生の時は目立たない存在だったが、金持ちと結婚して以来、真衣子が行かれないような高級スーパーでいつも買い物をしている。久しぶりに高級スーパーで買い物していた真衣子と同窓会以来5年ぶりに再会する。真衣子を表向きは「骨董交換会」、その実態は「秘密の不倫同好会」に誘う。
離宮 七青子 (りきゅう なおこ)
衆議院議員・生垣大三郎の愛人を20年やっているゴージャス美人。「秘密の不倫同好会」の主催者。彼氏が骨董商の西阿立楼のため、カムフラージュとして「骨董交換会」と偽っている。偶然見つけた骨董店「爛漫堂」の花嫁のれんを欲しがったが、欄間亜衣子に断られた。生垣と別れてからは新興宗教「万寿聖会」に入信し、大幹部になった。
アレックス
日本の骨董が大好きな金髪碧眼のアメリカ人。5歳の時から10年間、父親の仕事の都合で日本に住んでいた。父親の骨董好きから影響を受け、アレックス本人も古きよき日本を愛するようになった。父親のもとに骨董商として出入りする西阿立楼と親しくなり、彼を頼って来日した。欄間美衣子に好意を寄せられているが、彼はマヤや欄間亜衣子の方がお気に入り。 金髪碧眼なのに日本語がぺらぺらということで、美衣子には違和感を覚えられている。
マヤ
西阿立楼の隣に住む女性で、立楼を訪ねてきたアレックスといきなりセックスし始めるなどエキセントリックな性格。自称、詩人で書道家で画家で小説化で料理研究家で映画評論家。自由を愛するあまり、アレックスに求婚されるが断る。見かけは20代に見えるほど若いが実は42歳で、20歳のハンサムな息子がいる。
生垣 大三郎 (いけがき だいざぶろう)
元閣僚の大物政治家で、離宮七青子を20年も愛人にしている。七青子には荘厳な日本家屋を与えて好きにさせている。七青子が西阿立楼と付き合っていることは知っているが、立楼の父親が政治に大きな影響力を持っているので、見て見ぬふりをしている。七青子には本人のいないところで「ハゲオヤジ」と呼ばれている。
菊池 (きくち)
骨董店「爛漫堂」の隣の床屋「BARBER KIKUCHI」の店主を務める親父で、前髪がやや後退している。欄間美衣子は昔からこの店の常連。10センチ切って欲しいと言われた美衣子のロングの髪を、勘違いで全部で10センチのショートヘアにしてしまう。
門前 菊江
骨董店「爛漫堂」の近所にあるタバコ屋のおばあさんで、欄間亜衣子の幼なじみ。亜衣子に輪をかけたロマンチスト。50年以上タバコ屋の看板娘をやっており、理想が高すぎて彼氏いない歴は70年に及ぶ。好みのタイプはブラッド・ピット、キアヌ・リーヴス、レオナルド・ディカプリオ。昭和30年代に発行された、若い女の子向けのマニア垂涎のファッション誌「サブリナマガジン」を全号持っている。
タカ
質屋の店主で、目利き。家族には邪魔にされているが、その物を見る目はかなり信頼され、頼られていた。門前菊江に60年片思いしている。今でも菊江を諦めておらず、菊江が倒れた時も真っ先に駆けつけた。
納屋 草次 (なや そうじ)
22歳と若くしてレトロショップオーナーを務める優しげなハンサム。欄間美衣子に惚れられている。「サブリナマガジン」を求めているが古書市でも手に入らず、美衣子に「サブリナマガジン」を持っている門前菊江を紹介して貰った。店を始めるために多額の借金をしていて、借金を一緒に返してくれている彼女の摩子がいる。
摩子 (まこ)
納屋草次の恋人。茶髪巻き髪にピンヒールのケバい美人だが、実はキャバクラと工事現場を掛け持ちアルバイトしていて、草次の借金を返済している。工事現場で働いている時のお弁当は門前菊江に作ってもらっている。
遊 (ゆう)
西阿立楼と欄間真衣子の娘で、立楼が命名した。新興宗教「万寿聖会」の教祖の血を引く子供として追われないために、立楼の子ではないとされている。美人の系譜の真衣子にも、端正な立楼にもあまり似ていないゲジゲジ眉毛の赤ちゃん。立楼は最初、男の子だと思っていた。
集団・組織
万寿聖会 (まんじゅせいかい)
信者数500万人の新興宗教で、政界にも強い影響力を持つ。教祖は西阿立楼の父親。聖会長(教祖)が死亡した際には後継者問題に揺れ、幹部たちは立楼を追い回した。更に強引な資金集めなどで、元信者から訴えられ刑事事件にまで発展する。
場所
爛漫堂 (らんまんどう)
女ばかり三代の欄間家が営む骨董店。欄間亜衣子は気に入った物だけを店に飾っているが、蔵には国宝級のお宝がざくざく眠っている。その価値を西阿立楼は知っていて何度も訪れているし、亜衣子の2番目の夫である戸次郎の妹の障子は、本来数億の価値があるお宝を全部で500万で引き取ると再三申し入れている。
幽霊屋敷 (ほーんてっどまんしょん)
築60年の豪邸だが、今は老朽化し幽霊屋敷と呼ばれている古い賃貸アパート。西阿立楼とマヤが住んでいる。敗戦の時、責任を感じた陸軍の大将が奥方と自決したという、いわくつきの屋敷。
その他キーワード
花嫁のれん (はなよめのれん)
花嫁のために婚礼の日から7日間だけ掛けられる艶やかなのれん。欄間亜衣子の母親が加賀から嫁いで来た時に飾っていたものだが、亜衣子は骨董店「爛漫堂」にいつも飾っている。非売品としていたが、偶然店を訪れた離宮七青子が気に入って欲しがる。
サブリナマガジン
昭和30年代の女の子向け雑誌。今でいうところの「non・no」のような雑誌で、当時の女の子の趣味や生活が解る。門前菊江の家には創刊号から最終号まで、4年分にも及ぶ全冊がそろっているが、大事なコレクションだから絶対に人には譲らないと公言している。納屋草次はこれが欲しくて菊江の家に通い始める。
曜変天目茶碗 (ようへんてんもくちゃわん)
爛漫堂の蔵で最も価値のある骨董品。欄間亜衣子の話によると、亜衣子の父親が戦前に貰い受けたもの。亜衣子はもとより、欄間麻衣子と欄間美衣子にも変な模様だからと嫌われている。亜衣子は猫の器に使っていた。しかしこの茶碗ひとつで博物館が建つと言われるほどの値打ちもので、値はつけられないほどの高価な茶碗。麻衣子は皆あまり気に入ってないからと、帰国するアレックスに餞別としてあげてしまう。