あらすじ
第1巻
伊崎藍子は、10年以上も付き合っていた彼氏にふられてしまった。これを機に一人で贅沢でもするかと考えた藍子は、知人の子安宝に寿司店通いを勧められる。そこで藍子は、会社の近くにある四谷三丁目の「鮨わたなべ」を訪問し、その味に感銘を受けるのだった。(一軒目「鮨わたなべ」)
元彼に、すでに自分より圧倒的に若い新しい彼女がいると知った藍子は、ヤケを起こして通りすがりに見つけた寿司店に飛び込む。そして蔵前の「幸鮓」の、シャコやアジの「二種の食べ比べ」に舌鼓を打つのであった。(二軒目「幸鮓」)
藍子は、口コミサイトレビュアーのよだれ5リットルに絶賛されていた、牛込神楽坂の「すし北野」にやって来た。そこで毛ガニとアナゴを食べて感動すら覚えた藍子は、店からの帰り際に宝と偶然遭遇する。(三軒目「すし北野」)
藍子がお勧めの店を聞こうとしたところ、何か勘違いした宝に「寿司は一人で食べる主義なので」と突っぱねられてしまう。藍子はくじけず、よだれ5リットルのレビューを信じて、今度は銀座の「鮨 太一」を訪れ、話好きの大将を相手に銀座の寿司を堪能する。(四軒目「鮨 太一」)
根津の「鮨かじわら」に行ったところ、藍子はまた偶然に遭遇した宝と、今度は店内でとなりの席に座る事になった。そこで、宝が大の寿司通で、本人が自称するには「スシオタ」であるという事実が判明する。(五軒目「鮨かじわら」)
第2巻
久しぶりに仕事でミスをしてしまった伊崎藍子は、気分を上げるために自宅近くの寿司店、西荻窪の「鮨しら澤」を訪れる。寿司屋のいい仕事っぷりに感銘を受けた藍子は、自分も心を入れ替えてしっかりしようと心に誓う。(六軒目「鮨しら澤」)
上司にセクシャルハラスメントを受けた藍子は、気分転換のため、いつものように寿司屋に向う。今度は湯島の「鮨 真菜」である。寡黙な店主が一人で営んでいる店だったが、藍子はとなりに座った渋い寿司通の中年男性と意気投合。藍子は、一口に中年男性といっても、自分の上司のような人間ばかりではない事を悟るのだった。(七軒目「鮨 真菜」)
ひょんな事から、藍子は仕事上で知り合った人物に紹介された、西麻布の「鮨 麻葉」を一人で訪問する事になった。しかし、西麻布というお洒落な町に気後れがしてしまう。店も非常にファッショナブルな雰囲気だったが、その鮨の味は「欲望をそのまま寿司にしたが如きもの」だった。(八軒目「鮨 麻葉」)
東日本橋の「鮨 一條」の前で、藍子は子安宝とばったり出くわす。宝が寿司は一人で楽しむポリシーの持ち主である事を知る藍子は気まずく思うが、いざ店に入ってみると、宝は饒舌であった。(九軒目「鮨 一條」)
例によってよだれ5リットルのレビューを参考に、藍子は銀座で休日寿司ランチをやっている「鮨 鈴木」を訪れる。ランチにしては値が張ったものの、その寿司の味に大満足する藍子だったが、その帰りに妙な事に気づく。先日行った「鮨 一條」のよだれ5リットルのレビューが更新されていたが、その内容に見覚えがあったのである。(十軒目「鮨 鈴木」)
第3巻
子安宝がよだれ5リットルその人なのではないかと疑いを持った伊崎藍子は、それとなくカマをかけてみるが、反応は薄かった。今回は浅草の「鮨 久いち」に行ってコストパフォーマンスのよさに感激した藍子は、珍しく同じ店をまたリピートするのだった。(十一軒目「鮨 久いち」)
仕事にかこつけて、藍子は都心から1時間以上もかかる神奈川県の「鮨 裕」にやって来た。土地のもの、つまり相模湾のネタを中心とした寿司に、藍子は「来たかいがあった」と深い感慨を覚える。(十二軒目「鮨 裕」)
不動前の「鮨りんだ」を訪れた藍子は、たまたま店で出会った謎の美少女に、ジェスチャーで「店の名前の由来を聞いて」などのよくわからない頼みを受ける事になる。その後、店から出た藍子は、その美少女に声を掛けられる事になる。(十三軒目「鮨りんだ」)
美少女は立浪ちぐさと名乗り、藍子に対し「寿司友達になってほしい」という。それを快諾した藍子はちぐさと友人になるが、中野の「鮨 峯八」に行った帰り際、ちぐさの正体が元子役の芸能人であったという事を思い出すのだった。(十四軒目「鮨 峯八」)
ちぐさと友達になったという話を宝にする藍子であったが、上野御徒町の「鮨處 寛八」の話をすると、そこは一人で行った方がいいと宝に言われる。その助言を受けた藍子は一人で店を訪れる。確かにいい店であったが、なぜ一人で行った方がよかったのかは、行ってみてもよくわからない藍子であった。(十五軒目「鮨處 寛八」)
登場人物・キャラクター
伊崎 藍子 (いさき あいこ)
31歳のOL。10年以上付き合っていた恋人にふられ、貯め込んでいた結婚資金を使って新しい趣味を始めようとしていた。そんな中、子安宝の入れ知恵で、いわゆる「回らない」寿司屋通いにはまるようになった。これまでは、高級寿司店へ行った経験はほとんどなかった。
子安 宝 (こやす たから)
健康食品会社、イキスコ食品の営業を務めるサラリーマン。年齢は29歳。「スシオタ」を自称するかなりの寿司通。伊崎藍子とは仕事上の顔見知り程度の関係でしかないが、たまたま藍子が恋人にふられた直後に、「贅沢といえば寿司」という話をしたため、それをきっかけに藍子は寿司屋通いにはまるようになった。
よだれ5リットル
正体不明のネット上の人物。口コミサイトに寿司店のレビューを投稿している。伊崎藍子はその審美眼に深い信頼を寄せている。レビューしている店は銀座の寿司店が多い。藍子は子安宝こそがよだれ5リットルの正体なのではないかと疑っている。
立浪 ちぐさ (たつなみ ちぐさ)
若い女の子。不動前の「鮨りんだ」で伊崎藍子と出会い、寿司友達になった。藍子に美少女と評される美貌の持ち主。「スシオタ」であり、アルバイトを掛け持ちし、コツコツ金を貯めてお寿司を食べ歩いていると自分では語っているが、その正体は元子役の芸能人。
クレジット
- 原作