あらすじ
第1巻
沖友也は、河童を目撃した事で噓つき呼ばわりされてしまった弟の沖伸也のために尻湖までやって来て、きゅうりをエサに河童釣りを開始。そして、一投目で河童の少年、天ケ崎可愛太郎を釣り上げてしまう。まさかの釣果(ちょうか)に半信半疑で近づく友也を、優しい人間だと認めた可愛太郎は、友也の肛門から手を突っ込み尻子玉を抜いてしまう。いきなりの出来事に大いに困惑する友也に対し、可愛太郎は尻子玉が優しい人からのみ取れる「純潔エナジー」だと説明する。その現場に、友也の弟を噓つき呼ばわりした不良グループの地獄滅が出現。河童の実在を信じない地獄滅から攻撃されそうになった可愛太郎を、友也は必死でかばう。その姿に感激した可愛太郎は、友也の尻から特大級の尻子玉を抜き、地獄滅のリーダーのお尻に「しりこダンク」で叩き込む。尻子玉のエナジーでデトックスされた地獄滅のリーダーは魂を浄化され、改心してその場を立ち去る。友也は可愛太郎に礼を述べ、彼の友達になるのだった。(第1話「カッパの可愛太郎」。ほか、6エピソード収録)
第2巻
女子小学生の高瀬強子は、カツアゲをしている不良を得意の格闘技で撃退するなど、日々弱い者いじめをする人間に鉄槌を下していた。下校途中に天ケ崎可愛太郎が、沖友也の尻子玉を抜いているのを目撃してしまう。とんでもないいじめの現場を見たと勘違いし、可愛太郎を止めようとする強子に対し、友也は可愛太郎が河童である事を伝え、なんとか誤解を解こうとする。しかし、可愛太郎が人間に悪さをする妖怪であると、より誤解を深めてしまった強子は、自慢の体術で可愛太郎を叩きのめそうとする。強子の強さに感嘆し、彼女と相撲を取ろうと裸になった河愛太郎は、股間をさらした事で思い切り強子に蹴り飛ばされてしまい、ひとまずの決着を見るのだった。そのあと、報復に来た不良グループを叩きのめしていた強子は、倒れて来た巨木の下敷きになりかけるが、友也によって助けられる。腕力に頼らない強さを初めて知り、いたく感動した強子は、友也の舎弟になるのだった。(第8話「つよい少女 強子ちゃん!」。ほか、5エピソード収録)
登場人物・キャラクター
天ケ崎 可愛太郎 (あまがさき かわたろう)
頭に皿を乗せている河童の少年。御毛津市伝武町にある「尻湖」という小さな湖に住んでいる。明るく素直な性格で、優しい人間が大好き。弟のために河童の実在を証明しようとした沖友也に好物のきゅうりで一本釣りされ、紆余曲折を経て友人同士になった。会話した人間をすぐに優しいタイプと判断し、肛門に手を突っ込んで尻子玉を取ろうとする厄介な習性を持つ。寿命が人間より遥かに長く、昔から人里周辺に頻繁に出没し、地域の住人と交流していたため、人間の友達も多かった。しかし、いつの頃からか人間が尻子玉を取られるのを恥ずかしがるようになり、友達がどんどんいなくなった事から、長い間尻湖で寂しい思いをして来た。そのため、友也となかよくなったのきっかけに、再び人間の友達作りにチャレンジするようになる。友也の一挙手一投足を優しい人間の行いだと判断して激しく感動し、そのたびに「しりこだま!」と叫びながら友也の肛門から尻子玉を抜いていた。集めた尻子玉をほかの人間に与える事で活性化させる事ができ、悪人を一時的に改心させたり、人知を超えた新たな力を与える事ができる。得意技は相手の肛門に尻子玉を叩き込む「しりこダンク」。手足がぬるぬるしており、地上を滑る事で高速移動ができる。相撲には目がなく、湿度が高い6月になると盛んに相撲を取っていた。他人に肛門を見られる事を、死ぬほどの屈辱と思っているが、股間を見られるのは平気。弱点は乾燥する事で、水分を奪われると力が出なくなってしまう。
沖 友也 (おき ともや)
短髪の男子小学生。他人を労わる事ができる、心優しい少年。老人を背負って横断歩道を渡ってあげるなど、困っている人を見ると放っておけない正義感の強い性格。しかし本人は、いたってふつうだと思っている。河童を目撃した事で噓つき呼ばわりされた弟のため、尻湖で河童を探していた際に天ケ崎可愛太郎と出会い、友達になった。優しい人間のみが体内に宿す尻子玉を無尽蔵に取れるため、事あるごとに可愛太郎から尻子玉を取られていた。可愛太郎に尻子玉を取られる事を恥ずかしがっているが、本気で嫌がってはいない。もともとが善良なため、その身に尻子玉を受けて活性化すると、通常とは真逆の荒々しい性格に変貌を遂げる。争い事は苦手で喧嘩も決して強くないが、危機的な状況では自分を犠牲にしてでも他人を守ろうとする。可愛太郎から優しい人間であると指摘され続けた事でうんざりしてしまい、いい人を止めて不良を目指した事もあった。高瀬強子からは「師匠」と呼ばれ、尊敬されていた。
高瀬 強子 (たかせ きょうこ)
格闘技をマスターしている女子小学生。正義感が強く、弱い者いじめが許せない性格。ブロック塀を拳の一撃で破壊できるほどの腕力を誇る。とある日の下校中に天ケ崎可愛太郎が沖友也の尻子玉を抜いている場面を目撃し、酷いいじめをしていると思い込んで、可愛太郎に勝負を挑んでいた。友也から助けられた事がきっかけとなり、彼の舎弟になった。友也の事を「師匠」と呼んで尊敬しているが、可愛太郎の事は「尻から手を入れる人はムリ」と思っており、友達と認識していない。
ブラック・バス夫 (ぶらっくばすお)
尻湖に住んでいる半魚人。性別はオス。もともとはふつうのブラックバスだったが、尻子玉を食べた事で人間と魚が合わさったような姿に変化した。イケメンになってモテるために尻子玉を欲しており、天ケ崎可愛太郎に尻子玉を要求する。しかし、下心があるという理由で可愛太郎に存在を認められず、ひたすら尻を叩かれ続ける。人里できゅうりを盗んで可愛太郎を懐柔しようと試みるが、魚屋に捕まって捌かれそうになってしまう。沖友也に助けられて反省した事で優しい心が芽生え、自らの体内に尻子玉を宿すようになった。のちに尻子玉を食べてイケメンになるが、人間に近い容姿のため、ブラックバスのメスからはまったくモテなくなってしまう。
大俵 太 (おおたわら ふとし)
相撲が大好きな男子小学生。沖友也のクラスメイトで、将来は横綱になる事を夢見ている。道端で稽古をしている時に可愛太郎と知り合い、こども相撲大会に出るためにいっしょに特訓する事になった。高い実力の持ち主で、こども相撲大会では準決勝まで勝ち進み、前回優勝者の丸ノ内利壱と対戦するが、数々の卑怯な手段によって試合を妨害され、敗北してしまう。相手が卑怯な手を使ったとしても、負けは負けであると認めていた。
丸ノ内 利壱 (まるのうち りっち)
相撲が大好きな、目つきの悪い男子小学生。実家が超大金持ちで、前回のこども相撲大会の優勝者。相撲の実力は大した事はないが、対戦者に金銭などを渡して懐柔し、不正な勝利を繰り返して優勝を果たしていた。こども相撲大会の準決勝で大俵太の懐柔に失敗し、手下に土俵をひっくり返させるという荒っぽい不正をして勝利を収めるが、決勝戦で天ケ崎可愛太郎に敗れる。
カゲ太郎 (かげたろう)
尻子玉を取り込んだ事で活性化した天ケ崎可愛太郎の影。影だが、自分の意思で自由に動く事ができる。いたずらが大好きで、人里で盗み食いを繰り返したり、ブラック・バス夫を焼いて食べようとしていた。可愛太郎とは一心同体の存在で、カゲ太郎が遠くに行くと、可愛太郎は意識を失ってしまう。尻子玉を取り込んで活性化した可愛太郎の「しりこだマウンティング」を食らい、ふつうの影に戻った。
芦谷 樹久 (あしや きっく)
サッカーが大好きな少年。サッカーのクラブチームである御毛津FC-U12の一員で、公園を独占してサッカーの練習をしている。サッカーには真剣に取り組んでいるが、レギュラーにはほど遠い3軍メンバー。練習場所が見つからない焦りから暴走気味になっており、公園で遊んでいた天ケ崎可愛太郎達を追い出したり、可愛太郎が新たに作ったサッカー場を奪い取ろうとするなど、乱暴な所業を繰り返していた。根は悪い人間ではないため、可愛太郎のチームにサッカーの試合で負けた際は、可愛太郎の力を素直に認めて反省していた。
柴山 (しばやま)
河童を探し、成敗しようとしている謎の少年。「札使い」を自称しており、お札を投げて対象を切り刻む事ができる。先祖の「柴山護千造」が天ケ崎可愛太郎に尻子玉を抜かれ、国中の笑い者になって職を失ったという恨みを受け継いでおり、時代を超えて河童退治に執念を燃やしている。河童に対抗するための「柴山流」と称する体術を習得しており、尻子玉を取られるのを防ぐ「しりこだま封じ」という奥義もマスターしている。手持ちのお札には高い吸水力があり、これを可愛太郎の体に張りつけて水分を奪い、命を取ろうとしていた。可愛太郎の「河童刀」で心に巣くった「因縁」を斬られた事で、因果を鎖から解き放たれる。
怒布 リョウ (どふ りょう)
小学5年生の男子。トゲの付いた首輪をしている巨漢で、悪い事をなによりも好むいじめっ子。周囲から「優しい人」扱いされる事にうんざりし、不良になってしまった沖友也を仲間に引き入れ、不良としてふさわしい格好や立ち振る舞いを教えていた。弱い者からカツアゲをしていたのを友也に見咎められ、激高して友也をボコボコにする。そのあと、天ケ崎可愛太郎の「しりこダンク」で活性化した友也に敗れ去った。
五里羅 (ごりら)
小学校の教師をしている中年の男性。体格がよく、ゴリラによく似た風貌をしている。子供達の風紀が乱れないように厳しく監督しており、竹刀を振り回して威圧していた。職員室には子供達からの没収品が大量に積んである。没収品はコレクションして決して返さず、私物扱いにして遊んでいた。生徒達のためと称して厳しい指導をしていたが、天ケ崎可愛太郎が五里羅の体内から抜いた尻子玉は、ハナクソサイズの大きさだった。
沖 伸也 (おき しんや)
背の低い男子小学生。沖友也の弟。尻湖で釣りをしていた時に、河童を目撃してしまう。友人に目撃談をしていたが、その過程で不良グループの地獄滅に目をつけられてしまい、噓つき呼ばわりされた挙句、舌をベロベロに延ばされてしまう。
友也の父親 (ともやのちちおや)
沖友也の父親。眼鏡をかけた中年の男性。息子思いの優しい性格をしており、安全運転第一をモットーにしている。友也とドライブしている時に天ケ崎可愛太郎に出会い、人知を超えた可愛太郎の能力に驚愕していた。
メダカ
尻湖に住んでいる小魚。天ケ崎可愛太郎が隠していた尻子玉を食べて活性化し、会話ができるようになった。可愛太郎の事を先生と呼んで慕い、相撲や家庭科など、可愛太郎からさまざまな教えを受けていた。のちに近くにある小尻湖へ引っ越してしまい、可愛太郎を悲しませる。
集団・組織
地獄滅 (へるめっつ)
五人の男子小学生で構成された、自転車に乗った不良グループ。尻湖で河童を目撃した沖伸也を噓つき呼ばわりし、それを口実に陰湿ないじめを繰り返す。尻湖まで様子を見に行き、現地にいた伸也を叩きのめそうとするが、天ケ崎可愛太郎に返り討ちに遭う。
その他キーワード
尻子玉
桃のような形をした美しい珠。人が優しい時に生まれる「純潔エナジー」を、河童が結晶化する事によって完成する。河童が尻子玉を取る時は、手を人間の肛門から突っ込んで引き抜く。優しい人間からは無尽蔵に取る事ができ、体を傷つける事もない。優しさが大きいほど、尻子玉のサイズも大きくなる。特大級の尻子玉を人間の体内に叩き込むと、腸内環境のCapaシティ(潜在能力)を活性化させる事ができ、にごった心と体をデトックスできる。これにより悪人は一時的に善人となり、善人は反対に荒々しい性格へと変貌する。