50代にして大いに惑う、優作のときめきと悲哀をしみじみ描く
本作の主人公・北見優作は52歳のバツイチ男性。ドラマや映画でよく見かける顔だが、名前はあまり知られていない脇役俳優である。仕事が終われば酒場へ繰り出し、大好きな酒と肴を嗜むという気ままな一人暮らしを楽しんでいる。枯れるにはまだまだ早い50代の優作は、行きつけの小料理屋の女将や、酒場で同席する女性の言動に、戸惑ったりときめいたりするが、なかなか男女の壁は越えられない。そして、元妻や大学生の息子と過ごす時間に、複雑な心情になってしまうこともある。本作はそんな優作の悲哀と色気をしみじみと描いている。また、作者が「短編マンガというより断片マンガ」というとおり、必ずしも1話完結ではなく、余韻を残して終わることも多い。
酒と肴を通じて描かれる人情ドラマ
題材となるグルメは、掲載誌「たそがれ食堂」の「主役は海苔」「ステーキ祭り」といった特集に準じている。バラエティに富んだ酒と肴をきっかけに繰り広げられる人情ドラマが本作の見どころである。古い付き合いのベテラン映画監督と行く鰻屋、有名作家を気取って一人で飲み食いする蕎麦屋、隠れ家のようななじみの居酒屋など、和食店が多めだが、洋食屋やラーメン店、おしゃれなワインバーもしばしば登場する。また、新幹線で隣の女性が食べる崎陽軒のシウマイ弁当に心奪われたり、友人が送ってきた藁焼き鰹たたきを自分で料理したりするといったエピソードもある。
登場人物・キャラクター
北見 優作 (きたみ ゆうさく)
主に脇役俳優として活躍している52歳の男性。黒縁メガネが特徴。高校時代は野球部に所属していた。バツイチで、元妻の松田久美との間に、大学生になる息子・優一がいる。仕事が終わると酒場に繰り出し、うまい酒と肴をいただくことを楽しみにしている。
松田 久美 (まつだ くみ)
北見優作の元妻。優作との間に、大学生になる息子・優一がいる。優作とは、学生時代に居酒屋のバイトで知り合って結婚した。優作が役者として売れない頃に苦労したことから、優一が役者を目指すことに反対している。優作の大ファンだという男性と婚約している。