小樽を舞台にしたパン職人のグルメ奮闘記
主人公のほしの聖樹は、北海道の小樽市にあるベーカリーを併設したペンション「雪の森」のパン職人。ペンションの経営問題や周囲の人々の悩みを、豊富な知識と天才的な手腕で解決していく。メインヒロインの雪森羽咲のほか、「ほしの聖樹ガールズ」とも称される、魅力的なゲストヒロインが数多く登場するのも本作の特徴で、ラブコメ要素もふんだんに盛り込まれている。また、物語の途中からは料理バトルも始まり、日本や世界各国のパン職人とのパン対決が繰り広げられる。
天才的なパンオタクによるレシピの数々
本作はパンオタクとも称されるほしの聖樹が作ったパンの数々が登場する。北海道の食材をふんだんに活かしたパンや地元エピソードは、現地に足を運びたくなるような魅力にあふれている。また、作中で登場したパンの製法や歴史の解説はもちろん、パンのレシピも掲載されているので実際に自分でパンを製作することも可能となっている。クロワッサンやフランスパンなどお馴染(なじ)みのパンが登場するほか、日本ではあまり知られていないヨーロッパの田舎のパンも登場するなど、パン作りの奥深い世界に触れられる。
小樽市の魅力を発信
本作は、舞台となる北海道小樽市の詳細な描写がふんだんに盛り込まれている。魅力的な食材とそれを作り出す農家や酪農家の人々、彼らの抱える後継者問題や北国で農家を営む苦労など、地方ならではの問題に目を向けている。表紙にもなっている美しい小樽の情景や、そこに暮らす心優しい人々の営みを、パンとペンションというフィルターを通して情感たっぷりに描いており、小樽の地域活性化に一役買っている。
登場人物・キャラクター
ほしの 聖樹 (ほしの まさき)
パン職人の青年で、黒髪短髪に眼鏡をかけている。年齢は22歳。伝説的なパン職人として知られた星野聖司の息子。幼い頃に父親を事故で亡くして以来、母親の百合子と暮らしている。パン学校卒業後に東京のパン屋で働いていたが、親の七光りと同僚からやっかみを受けたことが原因でパンが焼けなくなり休職する。そんな中、父親の友人だった雪森徳三の紹介で、パン職人が必要になったベーカリーペンション「雪の森」の採用試験に合格して働くようになる。父親に匹敵する才能の持ち主で、「人に生きる力を与えるパン」をモットーに、同業者からもパン業界に革命をもたらすと噂されている。また、パンオタクと揶揄(やゆ)されるほどパンに造詣が深く、欧州各地のマイナーなパンの存在からその製法まで知識の幅が広い。
雪森 羽咲 (ゆきもり うさぎ)
小樽のベーカリーペンション「雪の森」の支配人を務める女性。赤髪をロングヘアにしている。年齢は25歳。伝説のパン職人として知られる雪森徳三の娘で、雪森桔音(きつね)という妹がいる。幼い頃に母親を亡くしており、父子家庭で育つ。親子三人でペンションを営んでいたが、長年の労苦の積み重ねで父親が入院したため、代わりのパン職人としてほしの聖樹を雇うことにした。当初は覇気のない聖樹に苦手意識を持っていたが、パン職人としての才能と、パンに対する真摯な姿勢を目の当たりにして、次第に思いを寄せるようになる。だが、意図せず多くの女性から慕われる聖樹に嫉妬心を抱くことも多く、素直に好意を伝えられない恋愛に奥手な性格も相まって、聖樹の一挙一動に振り回されている。
クレジット
- 原作
書誌情報
聖樹のパン 全12巻 スクウェア・エニックス〈ヤングガンガンコミックス〉
第1巻
(2016-04-25発行、 978-4757549678)
第12巻
(2021-10-25発行、 978-4757575394)