オメガバースを舞台にしたBL
本作の舞台となるのは、α(アルファ)、β(ベータ)、Ω(オメガ)という3種の人間が存在する「オメガバース」と呼ばれる架空世界。急激な人口減を補うために人類が進化した世界で、男女問わず全員が妊娠できる点が大きな特徴となっている。各種の特徴と人口分布は以下の通り。αはあらゆる面で優秀なエリート層で、人口の約20パーセントを占め、Ωのフェロモンに反応し、ヒートという突発的な発情期がある。βは一般的な中間層で、人口の約70パーセントを占め、Ωのフェロモンには反応しない。Ωは生殖率が低いことからαやβに劣るといわれている層で、人口約10パーセントを占め、大量のフェロモンを放出する発情期がある。また、αがΩのうなじを嚙むと歯型が残り、二人は「番(つがい)」となって、Ωは他の人間とのセックスが困難になる。本作に登場する夫婦、藤吉弘と藤吉真生はαとΩの格差婚をした男性同士の番である。
家族を愛するスパダリ×コンプレックスを持つ美人妻
弘は、α家系に生まれたαの男性で、家族命のエリートサラリーマンである真生は、Ωであることにコンプレックスを持つ男性で、自分に自信が持てない専業主夫。差別反対が叫ばれてはいるが、異種間結婚は珍しく、まだ偏見も少なくないのが現実である。弘の父、浩司は古い考えの持ち主で、二人の結婚に反対し続けていた。反対を押し切って一緒になった弘と真生は、浩司とは微妙な関係だったが、その間を取り持ったのが、まもなく2歳になる二人の息子の輝である。浩司は、二人の仲をすでに認めていたが、それを態度で示せないでいた。しかし、輝に「ごめしゃちーて!(ごめんなさいして)」と言われ、浩司は素直に反省して二人に謝った。こうして孫に教えられた浩司は、弘・真生夫婦と和解することができた。
健気な子どもたちにほのぼのするホームドラマ
劣等種と蔑まれてきたΩである専業主夫の藤吉真生は、自分に自信がもてずにいたが、イケメンの夫・弘と可愛い息子の輝に支えられ、少しずつ前向きになっていく。そして真生と弘の間には、第2子の陽も誕生する。本作最大の魅力は、子どもたちのキュートな姿であり、彼らの健気(けなげ)な働きで、絆(きずな)を深めていく家族の姿である。また、輝によって変われた弘の父、浩司や、隣人の大学生、平井祐樹と、弘の幼馴染、松尾知泰のじれったい恋愛など、周囲の人々の成長や変容も見どころの一つである。
登場人物・キャラクター
藤吉 真生 (ふじよし まさき)
美しい容姿を持つ茶髪の男性。藤吉弘の妻で、種別はΩ。亡くなった両親はΩではなく、真生をΩに生んでしまったことを謝っていた。弘と運命的に出会い、結婚して専業主夫になる。うなじには番の証(あかし)である弘の歯型がある。第1子の藤吉輝、第2子の藤吉陽に恵まれ、幸せな毎日を送る。輝からは「まあちゃ」と呼ばれている。
藤吉 弘 (ふじよし ひろむ)
αの家系に生まれた容姿端麗な男性。種別はαで、藤吉真生の夫で番である。家族をこよなく愛するエリートサラリーマン。父の浩司の反対を押し切り、Ωである真生と結婚する。そのため、実家とは関係が良くなかったが、第1子の藤吉輝のお陰で、浩司と和解する。真生からは「ひろさん」と呼ばれている。
藤吉 輝 (ふじよし ひかり)
藤吉家の長男。種別はαで、黒毛の天然パーマが特徴。カタコトながら言葉を話し、カエルのぬいぐるみがお気に入り。両親と妹のことが大好きで、家族をいじめる人は許さない、健気で可愛らしい男の子。あだ名は「ひかりん」。自分のことは「ひーくん」と呼ぶ。
藤吉 陽 (ふじよし ひなた)
藤吉家の長女で、藤吉輝の妹。母譲りの茶髪が特徴で、お兄ちゃんのことが大好きな女の子。あだ名は「ひなちゃん」。