舞台の一端を担うのはVR-MMO「プラネット」
グリーム社が開発した世界初のVR-MMO「プラネット」は、1000万人以上のユーザーを有している。サーバーから発信された電気信号がプレイヤーの脳波にアクセスし、あたかも本当に仮想世界で生活しているような体験が可能で、人間関係もそれに付随してより密に感じられるという特徴がある。特に「赤羽一家」はその感覚に浸っている傾向があり、ギルドすら作成せずに仲間としての疑似家族を楽しんでいる。しかし、現実の赤羽一家は全員が血のつながった「有間一家」で、かつて長女の有間綾が変質者に殺害されて以来、家庭としての機能が崩壊しており、彼らは赤羽一家のメンバーが誰なのかも知らずにいる。
すべての始まりは有間家の長女、有間綾の死
有間一家の崩壊のきっかけは、有間太一郎と有間明日真の姉である有間綾が変質者によって殺害された事件にある。ほかの子供に比べて愚鈍で忘れっぽい性格の綾は、父親の有間小次郎と相性が悪く、頻繁に叱責されていた。ある日、小学校の連絡帳を学校に忘れてきた綾に激昂した小次郎は、深夜であるにもかかわらず一人で学校に取りに行かせる。その後、綾の遺体が公園に放置されたダンボールに詰められる形で発見され、これを機に長男の太一郎は引きこもり、母親の有間雅は綾の死を認めようとせず、幻覚と話すようになった。
プレイヤー、そして人類を脅かす「黒い鳥」
ネットゲーム「プラネット」の配信当初、まともしやかに語られ都市伝説とも言える「黒い鳥」は、のちにプラネットにおける最終標的であり、討伐した者には現金3億円が支払われるとの公式発表がされる。これを受けて多くのプレイヤーが黒い鳥討伐に気炎を挙げるが、黒い鳥にゲーム内で殺害されたプレイヤーは現実世界でも即死し、精神だけが肉体から引き剥がされたうえでデータ化され、現実でもプラネットでもない世界で永遠に殺され続けるという事実が確認されている。
登場人物・キャラクター
有間 太一郎 (ありま たいちろう)
崩壊した有間家の長男。VR-MMO「プラネット」における最強疑似家族「赤羽一家」の構成員の一人。現実世界では、妹の有間綾の殺害事件をきっかけに、世間から遮断された引きこもりとなったネトゲ廃人。長い前髪を真ん中分けにしてアンダーリムの眼鏡をかけている。だが、プラネットでは最強のプレイヤー「イチ」として特徴的なコスチュームにハットを被(かぶ)っている。「クソのクソのクソ」など「クソ」を連呼する口癖があるものの、口ゲンカは恐らく世界最弱だと評されている。綾の葬式において、その原因を作った父親の有間小次郎が放った心ない言葉に絶望し、父親への思慕や尊敬を捨てて引きこもるが、小次郎を嫌いになりきれない矛盾に苦悩している。現実ではガリガリの体型で体力も運動神経も皆無ながら、「プラネット」内では知らぬ者のいないほどの強プレイヤーとして名を馳(は)せている。弟の有間明日真が、赤羽一家のメンバー「あああああ」であることを知った際には、明日真がネット廃人である有間太一郎自身を見下しながらゲームをしていたのかと思い込み、なかなか自らが「イチ」であることを言い出せずにいた。
有間 小次郎 (ありま こじろう)
崩壊した有間家の父親。VR-MMO「プラネット」における最強疑似家族「赤羽一家」のリーダーを務めている。現実世界では黒縁眼鏡をかけたくたびれた中年男性で、IT企業・グリーム社の元エンジニア。だが、プラネットではプレイヤー「赤羽士郎」として屈強な老紳士の姿をしている。人工知能開発において天才的な才能を見せるが、完璧主義者で無意識に他者を見下すところがあり、家族にも完璧であることを押しつける。娘の有間綾が人一倍愚鈍なことに苛立ち、深夜であるにもかかわらず一人で小学校まで行かせた結果、綾が変質者によって殺害される。その後、葬式の場で「交通事故と同種の不測の事態であり、一概に私の失態とは結論づけられない」と発言したことで、長男の有間太一郎との溝が決定的なものになった。部下の神室花と特別な関係にあることが匂わされている。
書誌情報
グッド・ナイト・ワールド 5巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2016-04-12発行、 978-4091272263)
第2巻
(2016-07-12発行、 978-4091273567)
第3巻
(2016-10-12発行、 978-4091273901)
第4巻
(2017-02-10発行、 978-4091275295)
第5巻
(2017-03-17発行、 978-4091275523)