概要・あらすじ
魔球を投げる富士高校野球部エース二宮光とキャッチャーの久保田吾作は、地区予選でライバル校の謀略で出場辞退となってしまう。しかし、プロ球団からスカウトされ、読売巨人軍に入団。最初の魔球から新魔球、第三の魔球と3種の魔球を編み出し、ライバルたちと戦っていくプロ野球漫画。
登場人物・キャラクター
二宮 光 (にのみや ひかる)
静岡県浜松市出身。母親と別居し、叔父の家で働きながら学校へ通う。富士高校のエースとして甲子園を目指すが、その夢はライバル校の謀略に敗れる。その後、プロ球界からのスカウトで、昭和36年、巨人軍へ入団。左投げ左打ち。背番号14番。開幕投手として先発。オールスター戦にも選出され、最高殊勲選手となる。 魔球に続く新魔球、第三の魔球を編み出すが、それら魔球は体を酷使するために二宮自身の体へのダメージが大きい。特に第三の魔球は、謎の老人が「1試合に3球以上投げてはいけない」という約束で教示するが、完全試合達成のためにその禁を破り致命傷を負う。日米戦で来日中のデトロイト・タイガース戦で先発し、完封勝利。 その後引退し、帰郷。母校、富士高校野球部の監督となる。
久保 田吾作 (くぼ たごさく)
富士高校野球部で、二宮光とバッテリーを組むキャッチャー。甲子園の夢が絶たれ、二宮の後を追って、巨人軍に入団する。右投げ右打ち。背番号は119番。短気でおっちょこちょいな性格。大飯食らい。オープン戦で落ちこんでいた柴田勲選手に自信をつけるため、綿を抜いたミット(受けると大きな音がする)で受けるなど優しい一面をもつ。 対デトロイト・タイガース戦の後、辞表を出して退団。
ヘンリー中川 (へんりーなかがわ)
二宮光と同時期に大洋ホエールズに入団。優れた脚力をもち、ゴロであっても出塁する。大洋ホエールズのホームグラウンド川崎球場で二宮光の魔球を打った。これはピッチャーゴロだったが、魔球を打たれ動揺した二宮は一塁へ暴投。ヘンリー中川は、その瞬足でランニングホームランとした。 その後に編み出された、二宮の第三の魔球は打つことが出来ず、悔し涙を流している。
大田原 一郎 (おおたわら いちろう)
50メートル先に走っている車が蟻を轢いていくのを見るほどの驚異的な視力を持つ。裕福な家庭に育った。阪神タイガースの内野手。背番号4番。既に阪神への入団が決まっていたことを隠し、川上監督の指令でスカウトに来た二宮光に、今魔球を投げて勝負をしたら巨人と契約するという嘘をつく。 ずる賢い性格。二宮光、久保らとの背番号を賭けた戦いでは、新魔球を打って勝利。その後の戦いで、第三の魔球に敗れるものの、その年阪神タイガースはセントラル・リーグ優勝を果たす。
寿楽寺 陣内 (じゅらくじ じんない)
大田原一郎を読売巨人軍にスカウト出来なかった二宮光、久保田吾作が川上監督の指令を受けてスカウトした。町内草野球チーム「釜崎マタ負ケターズ」の投手。しかし、キャンプに向かう急行「西海」の食堂車で、二人が目を離した隙に謎の男が差し出した中日ドラゴンズとの契約書にサインをしてしまう。 事実を知った中日の濃人渉監督は巨人のキャンプ地を訪れ、川上監督にその契約は無効であると認める。寿楽寺陣内は尊敬する前年の新人王、権藤博のチームへの入団を希望し、中日ドラゴンズへと入団。背番号119番。剛速球を投げるものの、守備はゴロしか取れないことから投手失格、捕手としてデビューする。 その試合で二宮が投げたシュートをスタンドに叩き込んだ。
寿楽寺 ミサ (じゅらくじ みさ)
寿楽寺陣内の妹。寿楽寺陣内が巨人ではなく中日に入ったことを知り、二宮光につかみかかる。その後、合宿所を訪れ久保とも喧嘩するというおてんば娘。合宿所に勝手に入ってきたミサを見て、別所コーチは二宮の彼女だと思い、川上監督に耳打ち。その時のミサは顔を真っ赤にしており、初心な一面を持つ。 大阪までの交通費を稼ぐため合宿所で働き、帰郷。
謎の老人 (なぞのろうじん)
二宮光が第三の魔球を編み出そう悩んでいた際、雪子が手紙でその存在を教えた。老人の投げた球は二宮が編み出そうとしていた第三の魔球だった。謎の老人に第三の魔球を教えてもらうことをけしてあきらめない二宮に、老人は「魔球は一試合に3球以上投げないこと」を条件に教える。
川上 哲治 (かわかみ てつはる)
実在の人物、川上哲治をモデルとしている。読売巨人軍の監督を昭和36年より勤める。背番号16番。二宮光をスカウトし、その後もいろいろと気にかけていく。第三の魔球を投げ過ぎて再起不能となった二宮光に、来日した対デトロイト・タイガース戦を先発させ、引退への花道を飾らせる。
長嶋 茂雄 (ながしま しげお)
実在の人物、長嶋茂雄をモデルとしている。読売巨人軍三塁手。背番号3番。明るい性格で、二宮光、久保とドライブへ行くなど、公私ともに面倒を見ている。肩を故障した二宮に、対デトロイト・タイガース戦で投げてみろと発奮させる。その試合は二宮最後の試合とわかっていながら説得しており、その後、川上監督の前では泣き崩れてしまった。
別所 毅彦 (べっしょ たけひこ)
実在の人物、別所毅彦がモデル。読売巨人軍コーチ。川上監督をささえる鬼軍曹だったが、昭和37年に退団。原因は川上監督の「きみがいなくてもゲームは勝てる」という暴言だった。二宮光が第三の魔球を謎の老人より教えてもらえたのは、かつて謎の老人に投法を教えてもらった別所コーチから老人宛への手紙があったからだった。
雪子 (ゆきこ)
二宮光の従妹。光を慕っている。光が高校野球予選の時に小学6年生。プロ入りした翌年には中学生となるが、勝気な性格で家出して花売り娘をしていたこともある。川上監督より「初代合宿ガール」へと任命され合宿所で働く。
二宮光の母 (にのみやひかるのはは)
何か訳あって、二宮光と離れて暮らしている。巨人対大洋最終戦前に、光の元に届いた故郷のじいやからの手紙では、夏に倒れ、白血病という診断がされている。対デトロイト・タイガース戦を観戦しており、試合後に光と再会した。
その他キーワード
二宮光の魔球 (にのみやひかるのまきゅう)
『ちかいの魔球』に登場する技。二宮光の魔球は、全編を通して、魔球、新魔球、第三の魔球の3種類がある。高校時代からの魔球は、投げた球がピタリと一度止まり、その後ふわりとキャッチャーミットにおさまるという軌道を描く。ピッチングフォームはアンダースロー。新魔球は、球が4、5個に見えるもの。ピッチングフォームの変化は魔球と同じ。 第三の魔球は、投げた後に球が消えて見えなくなる。ピッチングフォームもまた変化し、大きく足をあげたフォームから、全身をバネにして投げる。この魔球を生み出したヒントは、魚のハヤの動きによるものであった。第三の魔球は、キャッチャーにも見えなくなるため、久保以外は取り損ねてしまう。 久保は、最初から目をつぶり、風をきって飛んでくる球の音を聞き分けて球の位置を捉えるという方法で捕球している。
クレジット
- 原作
-
福本 和也