神と人間、妖怪がふつうに共存する世界
本作の舞台は、神と人間、妖怪が共生する世界。その昔、八百万(やおよろず)の神と人間の交わりの間に、不可思議な姿と力を持った妖怪が生まれたが、彼らに心があったことから人々に受け入れられた。それ以来、多くの神が天に帰ったあとも妖怪は人のとなりに在り続けている。妖怪の種類は、天狗(てんぐ)や猫又、河童(かっぱ)といったおなじみのものから、「つくも神」や「学校怪談」に属するものまで様々であり、人間同様に妖怪専用の戸籍や健康保険制度が整備されている。なお、「縁ヶ森町」は、作者の出身地である静岡県の西部地域(遠州)をモデルにしており、天狗を山の守り神とする天狗信仰や、お盆のときにキュウリの馬を「おしょろ様」という風習などが描かれている。
人間と妖怪のほのぼのした日常
大石家で飼われていたオス猫のぶちおは、20歳で尻尾が二つに分かれ、猫又として新たに生まれ変わる。人間の言葉を話し、化け学を学び始めたぶちおを、大石家は家族として受け入れる。人間の少女、杉本睦実は、父が行方(ゆくえ)不明になったことを受け止めきれずにいるが、となりに住むカラス天狗の縁火山次郎坊(ジロー)に優しく見守られている。縁ヶ森小学校5年生で河童の中川虹はクラスメートのりょうが好きになり、トイレの花子さんに恋愛相談をする。本作は、こういった、人間と妖怪たちの日常をほのぼのと描いた物語である。
平和な「縁ヶ森町」に起きる不穏な事件
平和な日々が続く「縁ヶ森町」だが、ある日を境に不可思議な現象が起こり始める。空の裂け目から雷獣が小学校に落ちる事件や、工事中の作業員が来るはずのない電車と遭遇し、妖怪を怖がる女性に出会う事件などが発生したのだ。また、化け狐の立花百合は、突然のめまいで倒れた後に、行方不明になっているはずの睦実の父と出会う、不思議な体験をする。こうした不思議な現象は全国で相次いでいるようで、「時空間研究所」という組織が、本格的な調査を始めることになる。
登場人物・キャラクター
杉本 睦実 (すぎもと むつみ)
縁ヶ森小学校3年生の少女。元気いっぱいで明るく、好奇心が旺盛。小さい頃、突然父がいなくなってしまったことを受け止めきれないまま過ごしている。じつは睦実には、黒いモヤモヤした影が見えており、父がそれにのみ込まれたのではと考えている。隣に住む縁火山次郎坊(ジロー)と仲が良く、次第に恋のような感情を抱くようになる。あだ名は「むーちゃん」。
縁火山 次郎坊 (ふちびやま じろうぼう)
縁ヶ森の山と村を守るカラス天狗。縁火山にある大杉から生まれ、年齢は500歳程度。優しくて穏やかな性格だが、様々な神通力を持つ。師匠である鼻高天狗縁の火山太善坊と暮らしている。隣家の杉本家とは大昔からの付き合いで、小学生の杉本睦実を優しく見守っている。通称は「ジロー」。
大石 ぶちお (おおいし ぶちお)
小さい頃、トンビにつつかれていたところを助けられ、大石家に飼われることになった猫。20歳の長寿猫だったが、尻尾が二つに分かれて猫又として生まれ変わる。優しく真面目でシャイな性格をしている。自分がなぜ猫又になったのかわからず、とりあえず化け狐の立花百合に弟子入りし、化け学を学ぶ。
書誌情報
となりの妖怪さん 4巻 イースト・プレス
第1巻
(2018-07-12発行、 978-4781616728)
第2巻
(2019-07-12発行、 978-4781617923)
第3巻
(2020-10-17発行、 978-4781619248)
第4巻
(2022-04-07発行、 978-4781620541)