世界観
日本の八百万の神様たちが題材。主人公の猫神繭をはじめ、稲荷神のような身近な神様から、神話に登場する天照大神や建速須佐之男命などバラエティ豊かな神様が多数登場する。また、その多くが美少女の姿を成して現れ、華やかな雰囲気となっているのも本作『猫神やおよろず』の特徴。
あらすじ
とある町の古美術店「八百万堂」には、日々たくさんの神様が集まる。故郷である高天原を追い出され地上で暮らす猫神の繭と、「八百万堂」の店主古宮柚子の人柄に惹かれ、遊びに来るもの、問題解決の協力を願い出るもの、なんとなく引き寄せられるものなど、様々な来客が絶えないのだ。そんな彼女たちのもとにある日届けられたのは、謎の大きな壺。何やらいわくありげな逸品だが、用途の見当のつかない繭は、うっかりそれを処分してしまう。
作風
コメディーと美少女ものの体裁をとりながら、日本の神様たちについて詳しく学べるのが『猫神やおよろず』の特色。作中での解説はもちろん、単行本のカバー等にも各キャラクターについての神様としての背景、作中で加えた独自設定と解釈が書かれている。そのため、本作を足がかりにして神様への関心を深め、学びを発展させることもできる内容になっている。
メディアミックス
TVアニメ
2011年7月から9月にかけて桜井弘明監督によるTVアニメ版が放映され、主人公の繭役を戸松遥、古宮柚子役を堀江由衣が演じた。シリーズ構成は待田堂子、キャラクターデザイン・総作画監督は渡辺敦子が担当している。また、2012年3月には、同キャスト・スタッフによるOVAも発売された。
ドラマCD
ドラマCD版としてEDGE RECORDSから2009年6月よりリリースされた『神饌音盤』シリーズがある。掲載誌の「チャンピオンREDいちご」の付録としても展開され、全3枚が発売されている。キャストはアニメ版とは異なり、主人公の繭役を釘宮理恵、古宮柚子役を中原麻衣が演じた。また、アニメ版と同キャストのドラマCD『春夏秋冬スラップスティック』も存在する。
オンラインゲーム「メビウスオンライン」とのコラボレーション
2011年7月、オンラインゲーム「メビウスオンライン」とのコラボレーション企画が開催された。企画内容は、ゲーム上で繭や古宮柚子たち『猫神やおよろず』のメインキャラクターに近い容姿になれるアイテムを販売・配布するというもの。同年8月末まで行われた。
登場人物・キャラクター
繭 (まゆ)
古美術店「八百万堂」で暮らす猫神。古物と記憶を守護している。肩より短いオレンジ色の髪の毛に和服を着た、猫の耳と2本のしっぽが生えた少女の姿をしている。普段は自堕落にゲームばかりしているが、問題が発生すると即座に駆けつける頼れる存在。少年のような雰囲気のためか、時折男性と間違えられる。
古宮 柚子 (こみや ゆず)
繭と共に古美術店「八百万堂」で暮らす少女。薄紫色の髪の毛をハーフアップにし、和服風にエプロンをつけている。普段は穏やかだが、怒ると非常に怖い。幼い頃に両親を亡くし、以降1人で「八百万堂」を取り仕切っている。料理が得意な家庭的な人物だが、「八百万堂」のぎりぎりの経営状況にはいつも悩まされている。なぜか、人ならざる者にとても好かれる。
正倉院 笹鳴 (しょうそういん ささな)
繭の許嫁の猫神。長い黒髪を三つ編みにし、鈴のついた髪留めでまとめた少女の姿をしている。猫の耳は黒く、しっぽは2本になっている。繭とは7歳の頃に出雲で知り合い、父親同士が性別を確認せずに許嫁の証文を作成してしまったため、女性同士であるにも関わらず婚約関係にある。有事の際には、神剣である巨大木剣「めかじき」を扱って戦う。 繭を巡る関係上、メイ子とは仲が悪い。
メイ子 (めいこ)
財物を司る大黒天の孫娘。金色の長い髪をツーサイドアップにし、黒いゴシックロリータファッションをまとった少女の姿をしている。幼い頃から繭を慕っていたが、正倉院笹鳴との関係を知り、素直に気持ちを表現できずにいる。破壊神の直系に当たるためすさまじい神力を持ち、戦闘の際は「打ち出の小槌」をふるって戦う。
芳野 (よしの)
桜神。春を司る季節神の一柱として存在している。桜色の髪の毛をツインテールにし、桜の花びらのような髪留めで留めた、露出度の高い服装の神様。少女の姿をしており、敬語で話す。祖父が繭の家に誤送付した「花咲の灰」を求めて「八百万堂」を訪れて以降、入り浸るようになる。
大宮道主命 (おおみやみちぬしのみこと)
稲荷神。狐の耳としっぽを生やし、長髪を1つにまとめた和服の少年の姿をしている。町に問題が起きると、たびたび繭を頼ってやってくる。古宮柚子に想いを寄せており、賢明にアプローチを続けているが、古宮柚子はまるで気づいていない様子。本名が長いため、誰も正しく呼んでくれないことが悩み。
天之狭霧神紗蒙 (あめのさぎりのかみしゃもう)
繭たちの町に現れた貧乏神。ふんわりした肩までの薄紫色の髪の毛に、一房の丸まった「アホ毛」があるのが特徴の神様。幼い少女の姿をしており、ある目的で繭たちの町を訪れたところに古宮柚子と知り合う。語尾に「~なの」「~の」をつけて話す独特の口調をする。実は、神様としての位は非常に高い。
枕木 夕楽々 (まくらぎ ゆらら)
神獣。人の悪夢を食べる獏であり、獏のぬいぐるみに乗った少女の姿をしている。紫がかった茶色の髪の毛をおさげにし、くるりと巻いて留めた髪型に、星の髪飾りがトレードマーク。他人の夢に入り込み、1人で抱えるには持て余す思い出を優しいものに変える手助けをしている。
鎮葉御前 (しずはごぜん)
天界の大妖狐で、大宮道主命の母親。天照大神と証文を交わし、天界に住むことを許されている。証文があるために極端な悪さをすることはないが、本来の大ざっぱでわがままな性格が直っているわけではない。天界では業突女丈夫(ごうつくじょじょうふ)と畏れられている。
白崎 蓮美 (しらさき はすみ)
台風を司る颶風神(ぐふうしん)。幼い少女の姿をしており、真ん中で分けた髪を三つ編みにした髪型と、まろ眉が特徴の神様。気象を司る神様の中でも最も神力が強く、生半可な神様では太刀打ちできない。毎年担当の台風の育成・運行に余念がないが、桜神同様彼女にとっての晴れ舞台は年に一度なため暇な時期も多い。繭とは気が合い、よく一緒にゲームをしている仲。
セシリア
新教イスカリオテ派の福音機関に所属する霊能力者。金髪のショートカットの若い女性で、シスターセシリアと名乗っている。天之狭霧神紗蒙を悪霊と認識しており、彼女を追って「八百万堂」を訪れる。戦闘時は巨大な十字架を振るって戦う。
ツクヨミ
月と夜、そして記憶を司る神。月で暮らしているが、時折人間のサラリーマンに姿を変えて地球を訪れている。月での根津魅の大量発生を重大な問題と受け止め、繭に協力を要請する。繭を月の蔵守にし、いずれは蔵菊理姫神の助手、ひいては後継者候補にしたいと考えている。
天倉守灯媛 (あまのくらのもりあかりのひめ)
繭の母親で、猫神の頭領を務める存在。前髪を斜めに分け、ストレートロングヘアを手前に持ってきた2房だけ結んでいる神様。猫神は女系相続なため跡取りは一人娘の繭にあたるのだが、彼女は不真面目でやる気に欠けるためいつも頭を悩ませている。名前が非常に長いため、縮めて「アカリ」と呼ばれている。
蔵菊理姫神 (くらくくりひめのかみ)
蔵守を務める猫神。猫神の中でも最も武勇と神力に優れる者が選ばれる月の蔵守を担当している。普段は穏やかな性格だが戦う姿は苛烈そのもので、弟子の天音とともに、津波のように押し寄せる大量の根津魅たちから月の蔵を守っている。急増する根津魅たちに脅威を感じ、手助けがほしいと考えている。
賀茂 雪那 (かも ゆきな)
売れっ子漫画家であり陰陽師も務める女性。少年誌で連載中の「せらみこ」などの原稿を式神たちを使役して制作していたが、彼らとトラブルになり天之狭霧神紗蒙を頼る。式神を強制的に従わせる方法はあるが、本人はそれを使いたくないと考えている。
篠崎 茜 (しのざき あかね)
賀茂雪那の担当編集者を務める女性。前髪を斜めに分けて1つに結び、スーツを着ている。いつも原稿の提出が危うい雪那のもとに訪れ執筆を見守っている。雪那とは違い普通の人間なため、根津魅たちに狙われ体調不良に陥ってしまう。
天音 (あまね)
蔵菊理姫神の弟子で、彼女の守猫を務める少女。長い髪を3つに分け、そのうち2つを三つ編みにし、残りを1つに束ねる独特の髪型をしている。蔵菊理姫神とともに根津魅たちから月の蔵を守っていたが、あることがきっかけで「八百万堂」を訪れる。
呼夜罹 (こより)
繭と天音が出会った不思議な少女。伸ばしっぱなしの長い髪の毛に、ワンピースを着ている。一見普通の人間だが根津魅を手懐ける力を持ち、「人の記憶を集めれば人間になれるだろうか」という旨の不可解な発言をしている。古宮柚子のことを気に入り、親しくなっていく。
お鈴 (おすず)
4年前に繭が知り合った、地域を統べる猫又。周囲の猫には「親分」と呼ばれている。三白眼の大きな猫で、テレビゲームで遊ぶのが好き。人の姿になる時は、赤茶色のストレートロングヘアの少女になる。当時の繭が危険な状態にあると気づき、地上でも暮らせる方法を教える代わりに使いっぱしりにする。
龍造寺 可奈子 (りゅうぞうじ かなこ)
古宮柚子の友人。長めの前髪にボブヘアの、楽天的な雰囲気の人物。4年前、猫神が家にいるという柚子の話を即座に信じ、繭とすぐに親しくなるという柔軟な思考を持つ。祖母の思い出の品である茶碗を家の蔵から見つけだすため、繭に協力を願い出る。柚子のことは、「柚子っち」と呼ぶ。実はゲーム上級者で、8ビットゲームのすばらしさを全世界に広めるのが夢。
篠塚 祐二 (しのづか ゆうじ)
ゲームショップ「浦島太郎」の店長を務める男性。ふんわりとした髪の毛の眼鏡をかけた柔和な雰囲気の若い男性で、お鈴とは仲がよく、商品を値引きしてくれることも。お鈴は彼を「篠」と呼び慕っているが、篠塚祐二本人は彼女の想いには気づいてない様子。
黒次 (くろじ)
お鈴の父親の猫又。三白眼に左耳が削れた、大きな猫の姿をしている。昔悪さをしていたところを退魔巫女の桧森美代子に調伏されたが、彼女のことが気に入りそのまま神社に封じられ共に生活した。美代子のことを愛していたが、彼女の幸せを第一に考え親身に接していた。
桧山 美代子 (ひやま みよこ)
かつて繭たちの町にある神社で暮らしていた退魔巫女。斜めに分けた前髪にボブヘアの、凛とした雰囲気の少女。弓と呪術を得意としており、その力で多数の妖怪を祓ってきた。彼女の弓は悪魔祓いの力を持つ桃弓で、一般的な神事に用いられる梓弓とは違うもの。神社の主祭神は祓いを司る女神・瀬織津姫(せおりつひめ)であったが、桧山美代子は調伏した妖怪を別宮に神として封じており、黒次もそれに該当する。 賢明に勤めをこなしていたが、神社の今後について悩んでいた。
桧森 小夜子 (ひもり さよこ)
桧森美代子の娘。切りそろえた前髪にストレートロングヘアの、気の強い少女。巫女として豊かな才能を秘めていたが本人に美代子の跡を継ぐ意志はなく、たびたびその件で彼女と揉めていた。この町を出て、獣医になりたいと考えている。幼い頃は黒次によくなついていた。
淡雪 (あわゆき)
雪女。繭の友人で、雪深い山奥に化けタヌキのタヌ吉と一緒に暮らしている。斜めに分けた前髪をピンで留め、ストレートヘアを長くのばしている。雪女だが温泉が大好きで、周囲の湯を冷やすという方法で湯に浸かっている。繭と鎮葉御前とは博打をして遊ぶ仲だが、素直で気持ちが顔に出やすいため、3人の中では一番弱い。
宇迦之御魂神 (うかのみたまのかみ)
穀物と農耕の女神で、大宮道主命の上司に当たる存在。長い髪の毛を両サイドでお団子にし、残った髪を垂らした髪型をしている。神使として狐を用いることで有名で、使いの狐が稲荷神と呼ばれることもあるが、本来は彼女こそが稲荷神。「大宮道主命」という神名も、彼女が与えたもの。
建速須佐之男命 (たけはやすさのおのみこと)
嵐と海原の王。天照大神、ツクヨミに次ぐ3貴神の末弟でもある。長髪の若い男性の姿をしており、高天原で暴虐を働いた荒ぶる神としての側面と、天界を追放された後に地上の人間を守護した英雄神としての側面を併せ持っている。記憶喪失状態で倒れていた呼夜罹に声をかけた、彼女の名付け親でもある。ある目的を果たすため、呼夜罹と組んで画策している。
根津魅 (ねづみ)
根の国、つまり黄泉の国に暮らす鼠のこと。人間が眠っている際に落とす些末な記憶をかじる生き物で、生きた人間に危害を加えるほどの力はない。しかし、月の蔵にある持ち主を喪った記憶は非常に無防備なため、蔵菊理姫神や天音が守らなくては食い荒らされてしまう状況にある。1体1体はたいしたことがないが、数が多いため地上でも各地の猫神が駆除している。
場所
八百万堂 (やおよろずどう)
繭と古宮柚子が暮らす古美術店のこと。前店主の牧太郎が亡くなってからは、娘の柚子が店主を務めている。骨董品店という店の性質上いわくつきの品が持ち込まれることも多く、思わぬトラブルが起きることも。常連客もいるが、経営はいつも苦しい。
その他キーワード
幻夢万華鏡 (げんむまんげきょう)
4年前、お鈴が編み出した幻術のこと。ゲーム世界内部に霊体を移すことで、怪我などを気にせずに空間内で修行ができるという利点がある。以前お鈴が白崎蓮美を訪問した際「ゲーム画面の中に入りたい」と熱望したことで誕生した。当時の彼女の力では、32ビット機を再現することは難しく、8ビット25色PSG音源の世界に入るのが限界とのこと。