概要・あらすじ
天正一八年某日、織田信長の天下統一事業を引き継いだ豊臣秀吉は、最後の抵抗勢力北条氏を下すため小田原討伐を発令。秀吉は側近の石田三成にも武功を挙げさせようとし、合力を合わせ二万もの兵を彼に授けて館林城、並びに忍城の攻略を命じた。対する北条家は小田原城に兵力を集めての籠城戦を決意、傘下の支城に出兵を促す。
忍城・城主の成田氏長は秀吉いち早く帰順の意を示すものの、 北条家への義理も示すために自ら総兵力の半分を率いて小田原城へと向かう。やがて、忍城に館林城を落とした三成以下二万の兵が来襲。無念ながらも降服することに決めた忍城だが、病に伏す城代・成田泰季の代わりに豊臣側の使者、長束正家と対峙した泰季の息子・成田長親は、徹底抗戦を宣言してしまう。
そんな長親の覚悟に心を動かされた諸将も同意し、戦いを決意。かくして、二万の兵を率いる三成対、農民を併せて三千にも満たない忍城との戦いの火ぶたが切って落とされるのだった。
登場人物・キャラクター
成田 長親 (なりた ながちか)
忍城・城主、成田氏長の従兄弟。聡明さに欠け、武器も使えず馬にも乗れない程不器用であり、農民達にさえでくのぼう、略してのぼうと呼ばれている。しかしながら、誰にでも分け隔てなく接し、畑仕事を手伝おうとするなど、愛嬌のある性格であり、馬鹿にされつつも慕われている。同時に人並み外れて誇り高い所もあり、父・成田泰季に代わって石田三成からの使者・長束正家と対峙した際は豊臣側の態度や降服の条件に反発し、抗戦を決意した。 城代・泰季の死後は、忍城側の総大将となる。
甲斐姫 (かいひめ)
忍城・城主・成田氏長の娘で、容色並び無しと評されるほどの美貌の持ち主。また、武芸の腕にも秀でており性格は非常に勝気。農民の妻に乱暴を働いた武将をその手で切り捨てたこともある。成田長親に惚れており、言い寄ることもあるが、ののらりくらりと相手にされていない。
石田 三成 (いしだ みつなり)
豊臣秀吉の側近であり、官吏として非常に有能な男。しかし、普段の態度が横柄な故に武将達からは「武才が無い癖に」と陰口を叩かれている。それを案じた秀吉から、北条征伐の際に二万の兵を預けられて館林城、並びに忍城の攻略を任されることになる。戦に対して憧れを抱いており、特に天正十年に秀吉が行った備中高松城の水攻めのような戦をしたいと思っている。
正木 丹波守 利英 (まさき たんばのかみ としひで)
忍城の武将。成田家の家老であり、成田長親とは幼い頃からの親友。武に長けるだけでなく、冷静沈着な性格の持ち主。普段はのんびりしている長親に手を焼きつつも、どこか非凡な所があると勘付いている。
柴崎 和泉守 (しばさき いずみのかみ)
忍城の武将。成田家一の武辺者であり、血気盛んな人物。忍城が最初無血開城を決めた際、手勢だけで豊臣軍に攻め込もうとした。自尊心が強いが、相応の能力も持っている。
酒巻 靱負 (さかまき ゆきえ)
成田家に仕える若武者。戦の経験はなく武芸も今一つだが、軍略に精通しており、自らを毘沙門天の化身と称している。忍城での戦いでは老兵を率いて石田家の猛将・貝塚隼人を打ち取る働きを見せた。甲斐姫に思いを寄せている。
成田 泰季 (なりた やすすえ)
成田長親の父親であり、忍城・城主・成田氏長の伯父。 成田氏長が小田原城に入場した際は、城代を務めた。老年ながら血気盛んな武辺者であり、豊臣軍との徹底抗戦を主張。しかし、その後すぐに病に伏せてしまい開戦を待たずして死亡してしまう。
成田 氏長 (なりた うじなが)
北条家傘下の、忍城の城主。成田長親の従兄弟で、甲斐姫は娘。先見の明があり、北条家の敗北を予期して家を残すためにいち早く豊臣秀吉に誼を通じた。
かぞう
忍城の城下に住む農民。妻のちよが成田家の武将に乱暴されたことがあり、それ以来武将に対する恐怖心から反発する気持ちが強い。石田三成の忍城攻めに対して、成田家に助力せずに豊臣側に協力した。
大谷 吉継 (おおたに よしつぐ)
豊臣秀吉子飼の武将で、人好きする性格の持ち主。卓越した戦略眼を持つ。石田三成の朋友であり、彼に正面切って苦言を呈する数少ない人物。
長束 正家 (なつか まさいえ)
豊臣秀吉子飼の官吏。計算には明るいが、強い物には追従し弱い物には威張り散らす器の小さい性格。降服勧告の使者として忍城を訪れるが、その居丈高な態度から開戦のきっかけを作ってしまう。
北条 氏政 (ほうじょう うじまさ)
北条家の四代目当主であり、息子の北条氏直に当主の座を譲った後も実験を握っている。天下の堅城・小田原城を頼り切っており、二十万もの豊臣軍を相手にしても籠城の構えを崩さない姿勢を貫く。
豊臣 秀吉 (とよとみ ひでよし)
時の関白であり、天下を統一すべく最後の抵抗勢力北条家の討伐を諸大名に命じる。攻城の天才で、水攻めや一夜城など様々な策を繰り広げる。側近の石田三成を重用しており、彼に武功を立てさせるために二万の兵を預けて館林城、忍城の攻略を命じた。
場所
忍城 (おしじょう)
成田氏長が城主を務める、関東地方・武州に位置する城。湖の中に有り、浮き城とも呼ばれることがある。
その他キーワード
水攻め (みずぜめ)
『のぼうの城』に登場する用語。攻城の際に、城の近くにある川を上流にて堰き止め、水量が溜まった所で決壊させることで、城を水に沈める戦法。攻城戦の名人・豊臣秀吉が中国地方の堅城・備中高松城を落とす際に使用しており、その戦に参加していた石田三成に強い影響を与えた。
クレジット
- 原作