ばくだん

ばくだん

極道の長と大財閥の総帥――双方の血をひく少年が、破天荒な行動で世間を騒がせる生き様を描く。「週刊少年ジャンプ」誌上で、1984年52号から、1985年30号まで連載された。

正式名称
ばくだん
ふりがな
ばくだん
作者
ジャンル
マフィア・ギャング・ヤクザ
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概要・あらすじ

朝市軍平は、ケンカっぱやい性格と、加減を知らない暴れっぷりから、周囲の人々に「ばくだん」と呼ばれ恐れられていた。軍平は誰の手にも余るほどの暴れん坊に育ってしまうが、そんな彼が、祖父である堂島竜造から、北西グループの跡取りに指名される。しかし本人がそれを知るより早く、堂島美和の手により霊平寺へと入山させられる。

本能のみで生きてきた軍平は、高仙国師との修行により、新たな自我に目覚めるのだった。

登場人物・キャラクター

朝市 軍兵 (あさいち ぐんぺい)

勝尾第二中学に通う2年生の少年。関東朝市一家の一人娘である朝市和江と、北西グループの御曹司である堂島康太郎の息子。勝尾市の海臨寺に住んでいる。見た目は小柄だが、崖から飛び降りて船の上に落下しても無事という、常識外れに強靭な肉体を持っている。喫煙飲酒は当たり前で、幼い頃から他者を巻き込んだ事件を方々で起こしている。 その傍若無人な姿勢と、すぐに怒りに火がつく性格から「ばくだん」と呼ばれている。祖母である堂島美和に霊平寺へと入山させられ、数年間の修業を課せられる。その結果「自分は飽くまで自分である」と自らを結論付け、北西グループの跡取りではなく、関東朝市一家を継ぐ道を選ぶ。

朝市 (あさいち)

関東朝市一家の組長で、朝市軍平の母方の祖父。老いつつも貫禄は衰えておらず、構成員たちは深く慕われている。しかしある時群狼会による奇襲を受け、負傷。側近の川津に、軍平を極道の世界に入れないよう頼み、意識を失ってしまう。なお、軍平を極道に関わらせまいとしたのは、身を案じるという理由以上に、軍平が持つ危険性を危惧してのことである。

川津 (かわづ)

関東朝市一家の構成員を務める中年男性で、朝市の側近の1人。大岩からは兄貴と呼ばれ慕われている。朝市の孫である朝市軍平とも面識があり、軍平ぼっちゃんと呼んでいる。若い頃は朝市和江に憧れていたが、彼女と朝市の会話を偶然聞きつけてしまい、軍平の父親が堂島康一郎であることを知ってしまう。

大岩 (おおいわ)

関東朝市一家の構成員で、朝市の側近の1人。加減の利かない性格で、朝市に気合を入れてくれと頼まれたところ、気絶させるまで殴ってしまうことがある。誇り高いが大人げない面があり、勝尾市に訪れた際に、見知らぬ顔ということで悪態をついた岡田に、本気で激昂してしまうこともあった。

堂島 竜造 (どうじま りゅうぞう)

北西グループの会長で、朝市軍平の父方の祖父。息子の堂島康一郎を既に亡くしており、後継者について悩んでいた。実の孫であるという軍平の存在を知り、北西グループの次の会長に据えることを決める。軍平の何も恐れぬ姿を高く評価をしている。

岡田 (おかだ)

勝尾第二中学に通う3年生の少年。朝市軍平を激しくライバル視しており、幾度も徒党を組んで挑みかかっているが、いつも敗れ去っている。しかし心底嫌っているわけではなく、黒田理絵の手によって崖に吊るされた軍平を密かに助け、海臨寺に送り届けることもあった。

万知子 (まちこ)

北西グループに連なる名家の令嬢。のちに北西グループの会長となる朝市軍平との婚約を、祖母より勧められる。しかし万知子自身は考えなしに暴れる軍平を「エテ公」と呼び嫌っており、更には作者である本宮ひろ志に対して「こんな主人公しか考えつかないのか、あのアホ漫画家は」と罵倒している。

黒田 (くろだ)

房総地方最大の実力者と名高い政治家の男性。御前と呼び慕われている。かつては書生として堂島美和に仕えていた。勝尾市に別荘を建てて、娘である黒田理絵を住まわせている。理絵を襲うために別荘に攻め込んだ朝市軍平を痛めつけて、崖の下に吊るしたこともある。しかし軍平が北西グループの跡取りに指名されると、その暴挙をすぐさま美和に詫びており、美和からも知らなかったから、ということで許されている。

黒田 理絵 (くろだ りえ)

黒田の一人娘。勝尾市に新しく建てられた別荘に住んでいる。偶然遭遇した朝市軍平に交際を持ち掛けられ、応じたふりをして家に誘い込むと、父親の部下を使って袋叩きにさせる。その頃は、軍平をただの本能に忠実な愚か者としか思ってなかったが、霊平寺での修行を終えた軍平と再会した時は、ある程度見直したような発言をしている。

朝市 和江 (あさいち かずえ)

朝市の一人娘。朝市軍平の母親。極道の娘とは信じがたい器量と性格の持ち主。山崎十道や川津など、多くの人物に憧れを抱かれていた。19歳の時、堂島康一郎と交際して子供を儲けるが、相手との身分差を慮って自ら身を引く。十道を頼って勝尾市に赴き、息子となる軍平を出産。その後若くして命を落とした。

山崎 十道 (やまざき じゅうどう)

海臨寺の住職を務めるひげ面の中年男性。朝市和江に頼まれ、父親代わりとなり朝市軍平を育てている。酒を好み、腕っぷしが強い破戒僧のような人物。軍平をヤクザには関わらせないよう頼まれるが、自由奔放になることを望んだために、軍平は今の破天荒な性格を形成してしまっている。策を弄して生きながらえるより、ありのままの自分を貫くことをよしとしており、この気質は軍平にも確実に受け継がれている。

堂島 康一郎 (どうじま こういちろう)

堂島竜造の一人息子で、朝市軍平の父親。若い頃朝市和江と交際していたが、子供ができたことを知った彼女が身を引いたため破局。北西グループの事業の一環として、石油コンビナート建設プロジェクトの総責任者として中近東に渡る。3年前に死亡。このため、軍平の存在が明らかになるまで、竜造には子孫がいない状態が続いていた。

校長 (こうちょう)

勝尾第二中学の校長の男性。学生を人間としての型にはめることが、教師の必須だとして、力づくでもそれを遂行しなければならないと語る。屈指の問題児である朝市軍平を、力づくでも矯正させようと目論んでおり、そのための手段として、黒田に直談判することで戸塚塾の人員を招く。

戸塚 (とつか)

戸塚塾の塾長を務める小柄な男性。校長の計らいで、勝尾第二中学に招かれた。見かけによらず腕っぷしが強く、倉本を倒した朝市軍平の前に単身立ちはだかり、体罰を加えるため鞭を手に襲い掛かる。だが、鞭による攻撃を逆手に取られ、動きを封じられたところを滅多打ちにされてしまう。最終的には「あんな人間見たことがない」と、軍平に対して降参の意思を示す。

倉本 (くらもと)

戸塚塾の副塾長を務める大柄な男性。勝尾第二中学に招かれ、暴力による教育を率先して行う。喫煙をしていた岡田をグラウンドに引きずり出し、全校生徒の前で暴行を加え、学生たちに恐怖を植え付ける。朝市軍平にも暴行を加えようとするが、火のついた棒を叩き込まれて返り討ちにあってしまう。

堂島 美和 (どうじま みわ)

堂島竜造の妻で、朝市軍平の父方の祖母。旧華族の名門で、戦前二度にわたり内閣を持った実力者「綾小路高麻呂」の一人娘。現役の総理大臣ですら頭が上がらないという。北西グループが一大コンツェルンにまでのし上がったのは、竜造の力以上に堂島美和の存在が大きいとされている。孫の軍平には、愛憎入り混じった感情を抱いており、自分を超えうる器かどうかを確かめるため、独断で霊平寺へと入山させる。

江島 竜 (えじま りゅう)

神奈川を地元とする財閥の跡取り。強い野心を持っている青年で、俗世から離れてもその野心を持続できるか試すために、自ら霊平寺への入山を希望して100日の修業を行う。しかしその結果、胸に灯された野心は消え去るどころかさらに燃え盛り、霊平寺の住職からは、巨大な悪と表現される。傘下の組織であった群狼会を、関東朝市一家の仇として襲撃され、さらにはその黒幕と見なされたことで、軍平と激しい衝突を繰り広げる。

高仙国師 (こうせんこくし)

霊平寺で最も格の高い老人。朝市軍平に興味を抱き、食事もままならない密室・餓鬼寮で、3週間あまりを共に過ごした。その際に、後半の11日間をただひたすら眠ることで過ごした軍平の資質を、持って生まれたものであると語り、自らの遺体が自然と風化していく様を1000日かけて見守らせる。その結果、軍平は「仏は自分の中にこそある」という真理を体得するに至った。

集団・組織

関東朝市一家 (かんとうあさいちいっか)

浅草に本拠を置く極道組織。朝市が頭目として君臨しており、川津や大岩がその脇を固めている。構成員は15人前後と比較的小規模だが、古い時代から続いており、結束は非常に固い。しかし、近年は群狼会との抗争に押されがちで、さらには放たれた刺客によって朝市が怪我を負い、窮地に立たされている。

群狼会 (ぐんろうかい)

愚連隊からのし上がったと言われている暴力団組織。関東朝市一家と熾烈な縄張り争いを続けている。そのバックには江島竜が支配する財閥があり、江島のたくらみにより、他の組織と連動して日本そのものを作り替える計画が進められている。

北西グループ (ほくせいぐるーぷ)

日本有数の複合企業。ホテル、デパート、鉄道、不動産、建設など、さまざまな会社を持っており、北西グループだけで国家が成り立つとすら言われている。堂島竜造が会長を務めているが、竜造自身は、近いうちに孫である朝市軍平に、会長の座を譲り渡すと発言している。

戸塚塾 (とつかじゅく)

校内暴力を消滅させるという組合。手の付けられない校内暴力で悩む中学校に出張する。朝市軍平を大人しくさせるため、勝尾第二中学に招かれた。学校や国の規則を遵守させ、それを破る者には容赦のない暴力で制裁する。いわば子供を恐怖で屈服させることを目的とした集団である。

場所

勝尾市 (かつおし)

千葉県にある小さな都市。海に面しており、漁船が停泊している。治安がよいとは言えず、飲食店では中学生が平然と飲酒している。無論まともな住人もいるが、彼らは朝市軍平の暴れっぷりに辟易しており、関わり合いにならないよう暮らしている。

勝尾第二中学 (かつおだいにちゅうがく)

勝尾市の中学校。朝市軍平と、それに対抗する戦力が常に争い合っており、その混乱を避けるべく軍平の通学を禁止していた。戸塚塾の介入で、軍平を大人しくさせるために停学を解除するが、その日に戸塚塾と軍平の衝突が発生。抗争の最中に大火事が発生し、校舎のほとんどが焼け落ちてしまう。

海臨寺 (かいりんじ)

山崎十道が住職を務めている寺。朝市軍平の家でもある。廃墟と見まごうほどにボロボロで、時には食事にありつけないこともある。かつては朝市和江もこの寺を頼って、十道や軍平と暮らしており、今でも和江の写真が飾られている。

霊平寺 (れいへいじ)

禅光宗と呼ばれる密教の総本山。修行が非常に厳しいことで知られており、あらゆる苦行や荒行を乗り越えた先にある、という即身仏を最終目的としている。外の世界からの入山は許されていないが、江島竜は財閥の権力を用いて自ら入山し、堂島美和もまた、裏取引によって朝市軍平を入山させている。

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