あらすじ
世話係
極道「桜樹組」で若頭を務める霧島透は、何事も暴力で解決しようすることから「桜樹の悪魔」と称され、その筋の人々から恐れられていた。その傍若無人な振る舞いは、行動を共にする舎弟頭・杉原恵もあきれるほどで、やりすぎに注意してくださいと、杉原から釘を刺されたその日、霧島は帰るなり組長・桜樹一彦に呼び出される。一彦は桜樹組を束ねる立場のため、霧島の行動や態度に問題があると考えていたが、同時に桜樹組がまとまっているのは霧島の存在が大きいと、その実力を認めてもいた。そんな中、自由奔放な霧島に足りないのは責任感であると考え、一彦は一人娘・桜樹八重花の世話係を霧島に任せることを決めるのだった。一彦からの突然の申し出に動揺しながらも、霧島に選択肢があるはずもなく、言われるがままに目の前に現れた小さな少女・八重花の世話係を引き受けることになる。まだ7歳の八重花は、突然世話係になった霧島に簡単に心を開くことはなく、目を合わせようともしない彼女に、霧島はこの先の苦労を想像してひきつった笑顔を浮かべるのだった。翌日、霧島が登校前に八重花の髪を結んであげようとしたものの、経験のない霧島にはうまく結ぶことができない。さらに、八重花から部屋に入ることを禁じられた霧島は、自分は八重花にとって家族ではなく、他人なのだと思い知らされる。しかし八重花が、部屋に授業参観のお知らせを隠していたことを知った霧島は、黒崎香菜美のアドバイスを受け入れ、急いで学校へと向かう。一方の八重花は、教室に保護者が増えていくのを尻目に、自分には保護者は誰も来ないだろうとあきらめ、寂しそうにうつむいていた。しかしそんな中、八重花は不意に声をかけられる。そこにはヤクザであることを感じさせない、ふだんとは全然違うカジュアルな霧島の姿があった。
再会
霧島透は、桜樹美幸の見舞いに同行して病院を訪れていた。そんな中、桜樹八重花がおなかをすかせたため、売店に向かった霧島は、そこでお菓子を買ってほしいと騒ぐ少年とその父親に遭遇する。そして霧島は、その二人が以前極道「桜樹組」にいた葵塔一郎とその息子・葵洸輝であることに気づく。塔一郎は霧島を教育する兄貴分であり、桜樹組の組長・桜樹一彦を支えていた元若頭だった。二人は数年ぶりの再会を喜び、八重花の世話係となった霧島は、現在の状況を報告する。塔一郎は、自分が組を抜けたことで一彦に迷惑をかけたと思っており、きちんとした別れのあいさつもできていないことを気にしていた。その話を耳にした八重花は、塔一郎と一彦がケンカ別れをしたのかと疑問を持つが、塔一郎が組を抜けた一部始終を霧島から説明され、二人の関係が元に戻ることはないのかと悲しい顔をする。しかし一彦は常々、塔一郎を気にかけていることを霧島から聞き、八重花は二人が元通りなかよくなれると確信し、安堵の表情を浮かべる。そして八重花は、「おとうさんは怒ってないからなかよしにもどれるよ」と塔一郎に声をかける。すると塔一郎は、その言葉に涙を流しながら、土産を持って会いに行くことを伝えてほしいと、八重花に頼む。後日、塔一郎は約束どおり手土産を持ち、洸輝と共に桜樹組を訪れる。威圧感のある門をくぐるのに思いのほか時間がかかったが、二人を出迎えたのは黒崎香菜美の優しい笑顔だった。洸輝を香菜美に預け、塔一郎は霧島と共に組長の部屋へと向かう。緊張の面持ちで部屋に入るものの、一彦の顔を直視することができず、うつむく塔一郎だったが、そんな彼に一彦は情けない顔をするなと声をかけ、久しぶりだなと塔一郎に優しい笑顔を向けるのだった。
悪魔
ある日、霧島透が桜樹八重花をいつもどおり迎えに行こうとすると、通学路の途中で見知らぬ二人の男性・亥川、矢野に声をかけられる。二人は自分たちの組が霧島に潰されたことを恨んでいると話すが、まったく覚えていない様子の霧島を見て逆上しそうになる。さらにそこに姿を現したのは、八重花と手をつないだ辰本だった。八重花は、霧島の友達だという辰本の言葉を信じてついて来てしまったのだ。辰本もまた、過去に自分の組を霧島に潰された恨みを持っていた。最近、霧島が八重花の世話係になったことを知った辰本は、自分と同じ境遇の亥川や矢野と手を組んで、八重花を利用して霧島で恨みを晴らそうと画策していた。八重花を気遣うあまり、身動きが取れない霧島をあざ笑うかのように、亥川と矢野は二人がかりで霧島を痛めつけようとする。しかし、霧島を悪く言う辰本に反論した八重花は、辰本から一撃を加えられ、意識を失って倒れてしまう。さらに、頭に銃を突き付けられた八重花の姿を見た霧島は、自分を見失って暴走する。その姿は霧島が世話係になって以来、すっかり失われたと思われていた「桜樹の悪魔」そのものだった。八重花の声で我を取り戻した霧島は、八重花を連れて病院へと急ぐ。そして、駆け付けた桜樹一彦に対して謝罪し、けじめはつけると頭を下げる。一彦は霧島が報復に向かうことに気づき、彼を制止する。そして一彦は、八重花に手を出した時点で、これは桜樹組全体の問題になったとして、すべての後始末は一彦自らが行うと宣言する。そのうえで一彦は、霧島に世話係としての責任を果たすべきだと言い残し、病室をあとにする。しかし一彦のあとを追うように、霧島は八重花の病室から姿を消してしまう。
大切なもの
桜樹組に日常が戻った頃、霧島透の発案で桜樹八重花やサラ、レオンを誘って、組員総出で花火をすることになった。ひとしきり楽しんだあと、少しだけ残った線香花火を手にした八重花は、またいっしょにやろうと霧島と約束を交わして花火を終える。深夜、いつもの癖で目を覚ました杉原恵は、珍しく霧島からメールが送られてきたことに気づく。そこには「お嬢を頼む」の一言だけが記されていた。翌朝、組長・桜樹一彦から、霧島が出て行ったことを聞かされた杉原は、霧島が言い残した「お嬢や組にとって迷惑をかけるだけ」「大切なものを失う前に離れるのを許して欲しい」という身勝手な言葉に怒りすら感じていた。一方の一彦は、思いつめた様子で家を出て行った霧島が、自分のせいで八重花を危険な目に遭わせてしまった今回の件について、気持ちの整理のつけ方がわからなかったのだろうと理解を示し、霧島が帰って来ることを信じて待つと決める。霧島が突然しばらく休むことになったと知らされた八重花は、それ以来すっかり元気をなくしてしまう。あとを任された杉原も、そんな八重花をどうやって元気づけたらいいかわからず、困惑していた。そんな中、玄関で霧島が帰って来るのを待つと言って聞かない八重花を目の前にして、杉原は霧島が家を出て行ったことを明かし、いっしょに捜しに行こうと八重花を外に連れ出す。その頃、近所の冬月公園にいた霧島は偶然通りかかった葵塔一郎に声をかけられ、霧島は適当にやり過ごそうとするが、霧島の異変に気づいた塔一郎は、何か悩んでいるなら捨てるのをためらってる方を選べとアドバイスを送る。するとそこに、八重花と杉原がやって来る。八重花は霧島に抱きつき、杉原は身勝手な霧島に怒りをぶちまける。そんな二人の姿に、霧島はあらためて大切なものに気づかされることになる。
入れ墨
霧島透の背中には、悪魔をイメージした入れ墨が彫られていた。ある日、霧島は杉原恵に友人の彫師・北条零を紹介することになり、二人は零が営むタトゥーの店を訪れる。杉原はオネェキャラの零に驚き、本当に彼に入れ墨を任せて大丈夫なのかと心配しながらも、自分の背中にトカゲの入れ墨を彫ってほしいと依頼。そんな中、同行した霧島が席を外したのをきっかけに、杉原と零は昔の霧島について話を始める。もともと杉原が霧島から聞いた話では、霧島の背中の入れ墨は、零から練習台になってほしいと頼まれ、彫られたものだということだった。しかし、零が語った話はまったく違っており、実は練習台というのは口実で、零が霧島との関係をつなぐ鎖になればいいと考え、デザインして彫ったものだったのだ。当時の霧島はいつ命を落としてもおかしくないような無茶な生き方をしていた。中学を卒業後に偶然再会した霧島はボロボロで、心配する零に対して、お前には関係ないと何も語ろうとしなかった。しかし、自分にとって霧島は唯一の親友であることから、霧島がたった一人で死んでしまうことを恐れた零は、霧島を説得して入れ墨を彫らせてもらうことにしたという。もし霧島がどうなっても自分が霧島を見つけるという、強い思いを具現化したものが悪魔をイメージした入れ墨だったのだ。だが、桜樹八重花の世話係になったことで、ずいぶんと丸く柔らかくなった霧島の変化を見て、霧島の居場所が桜樹組にあるあいだは、その心配はないと安堵する。零は霧島の心のよりどころが自分ではないことに複雑な思いをにじませながらも、霧島の現在の環境に喜ぶのだった。事情を知った杉原は、零のもとに通っているあいだ、霧島のことをもっと教えてほしいと零にさまざまなエピソードをねだる。そして杉原は、桜樹組がこの先ずっと霧島の居場所であることを誓うのだった。
花言葉
桜樹八重花といっしょに花屋に行った際、霧島透はカランコエの鉢植えを目にする。カランコエは霧島の母親が大好きだった花で、霧島が子供の頃はいつもカランコエが家にあったことを思い出す。それを聞き、買って帰ろうと提案した、八重花に言われるがまま、霧島は鉢花と花束を購入して帰路につく。翌日朝早く、霧島は一人で墓地へと向かう。両親が眠る墓にカランコエの鉢花をそなえると、霧島は幼い頃のことを回想。母親は花を愛する人だったが、特に花言葉が好きだった。霧島が幼い頃、母親からよく花言葉について教えられたことがあったが、母親が一番好きなカランコエの花言葉だけは、霧島が大人になったら自分で調べてみてほしいと、決して教えてくれなかった。父親を失い、その後に母親をも失った霧島が、学校の図書室でカランコエの花言葉を調べると、「あなたを守る」との言葉だった。霧島は、先立った二人にやりきれない思いを抱き、くやしさを滲ませる。自暴自棄になったこともあった霧島だが、現在の自分は不思議な縁で八重花の世話係を務めていると、墓前に報告。そして、こんな毎日も悪くないと笑顔を見せ、これからの人生を自分なりに生きていくから、天国から見守っていてほしいと両親に手を合わせるのだった。
獅子間組
極道「桜樹組」の組長・桜樹一彦は、兄弟分である桃山組組長の桃山秀成に夜分に呼び出され、会いに行く。そこで一彦が告げられたのは、7年前、脅しと称して桜樹美幸を車で轢(ひ)いた極道「獅子間組」の生き残りを見つけたという衝撃の事実だった。一彦は美幸が事故に遭ったあと、獅子間組の人間を自らの手で一人残らず始末したと思っていたが、まだ残党が残っていた。つい最近、桃山が別件で追っていた者の中に、元獅子間組の人間がおり、組は解散したものの、組の名前を変えて人を集めていることを白状したという。まだ詳細はわからないものの、妻の仇である獅子間組の人間が生き残っていることは確実だった。しかし、今は桜樹八重花という存在もあり、一彦は身動きが取れないだろうと考えた桃山は、それを利用して相手が動く可能性を考慮に入れ、一彦に話を通すことを決めたのである。何があっても美幸と八重花をこれ以上傷つけるわけにはいかないと荒ぶる一彦を桃山は制止し、湧き続ける蛆虫をその場で一匹殺したところできりがないと言い、確実に殺すなら巣穴ごと一匹残らず殺す必要があると、獅子間組殲滅(せんめつ)に向けて一彦に代わって動き出すことを決意。そして一彦も、桃山にすべてを託すことを決める。
メディア化
テレビアニメ
2022年7月から、本作『組長娘と世話係』のテレビアニメ版『組長娘と世話係』が、TOKYO MX、BS日テレほかで放送された。監督は川崎逸朗、シリーズ構成は大知慶一郎が務めている。キャストは、霧島透を細谷佳正、桜樹八重花を和多田美咲、杉原恵を石川界人が演じている。
登場人物・キャラクター
霧島 透 (きりしま とおる) 主人公
極道鷹松組系列「桜樹組」の若頭を務める男性。年齢は28歳。物事をすぐ暴力で解決しようとすることから「桜樹の悪魔」の異名を持つ。組長の桜樹一彦からは、桜樹組がまとまっているのは霧島透のおかげだとその実力... 関連ページ:霧島 透
桜樹 八重花 (さくらぎ やえか)
極道鷹松組系列「桜樹組」の組長を務める桜樹一彦の一人娘。年齢は7歳。引っ込み思案で、おとなしい性格をしている。母親・桜樹美幸が倒れて以来、叔母・黒崎香菜美のもとで暮らしていたが、再び父親といっしょに桜樹家で暮らすことになった。それ以来、世話係として任命された霧島透といっしょに登下校するなど、何かと行動を共にすることになるが、初めは霧島に対して壁をつくり、よそよそしかった。しかし、霧島が学校の授業参観に来てくれたことをきっかけに、少しずつ心を開くようになり、霧島を家族として受け入れ、信頼関係を築き始める。霧島には「お嬢」と呼ばれている。母親のことが大好きで、事故で意識を失って以来、寝たきりの状態になっていることに大きな不安を感じている。3歳の頃までは父親と共に見舞いに行っていたが、目を覚まさない母親を見るたびに泣いてしまうため、父親の判断で見舞いに行かなくなった。香菜美と生活を始めたのもその頃で、それ以来母親の顔を見ていなかったが再び父親から見舞いの同行を求められ、その際にずっと寝てるお母さんなんて知らない人だと発言し、母親に会うことを拒絶した。その後、霧島から母親の人柄を聞き、現状に至った経緯も知り、自分が放った言葉を後悔した。そして霧島の「美幸さんは夢の中で神様と戦っている」との言葉に励まされ、母親に会いに行く勇気を出すことができた。もともと学校では仲のいい友達がいなかったが、となりの家に引っ越してきたサラとは、近所の冬月公園で声をかけられ、それ以来家族ぐるみでなかよくしている。その後、クラスメートの明石楓にクレヨンをあげたことがきっかけで友達となり、三人でなかよくしている。ある日道端で、箱に入れられて捨てられている子猫を発見して飼うことになり、黒猫ということで「おはぎ」と名づけた。
桜樹 一彦 (さくらぎ かずひこ)
極道鷹松組系列「桜樹組」の組長を務める男性。年齢は45歳。「弱気を助け強きを挫く」を組の信条としている。背中には桜の花の入れ墨が彫られている。昔、霧島透が自暴自棄になっていたところ、当時若頭だった葵塔一郎が拾ってきたことをきっかけに、桜樹組で引き取ることになり、家族として養っている。しかし桜樹組でも、すぐ暴力行為に走るなど問題行動が多いために頭を痛めているが、桜樹組がまとまっているのは若頭となった霧島のおかげでもあると認識している。そんな霧島に足りないのは責任感であると考え、実の娘・桜樹八重花の世話係を任せることにした。若頭だった塔一郎は、自分の支えとなる重要な存在だったが、大切な存在ができたことで桜樹組を抜けると決断した塔一郎を黙って見送った。のちに、塔一郎があらためて桜樹組にあいさつに訪れた際にも、うつむく塔一郎を笑顔で受け入れた。生真面目な性格で、人に頼るのが苦手で不器用なところがある。見た目は強面ながら、かなり子煩悩で、八重花を溺愛している。妻の桜樹美幸は事故で入院しているが、意識がないまま7年ものあいだ寝たきりの状態にある。時折見舞いに訪れながら、いつか目を覚ますことを信じている。最近、兄弟分である桃山組組長・桃山秀成が別件で追っていた者の中に、極道「獅子間組」の生き残りがいることが判明した。獅子間組は脅しと称して美幸を車で轢(ひ)いた加害者で、7年前に桜樹一彦自身の手で始末したはずだったが、生き残りがいることがわかったために獅子間組を根絶させるべく、秘密裏に動き始めた。若かりし頃、生け花が趣味で生花を買いに行った花屋で美幸と出会っため、背中には桜の花模様の入れ墨を入れている。
杉原 恵 (すぎはら けい)
極道鷹松組系列「桜樹組」の舎弟頭の男性。年齢は23歳。若頭の霧島透や構成員の金平、武内と行動を共にすることが多い。「桜樹の悪魔」と恐れられる霧島の無謀な行動に、半ばあきれていたが、霧島を慕っている様子がうかがえる。つねに肩の下まで伸ばした長い髪をまとめているため、霧島から桜樹八重花の髪をうまく結べるようにと練習台にされた。また黒崎香菜美からは、八重花と過ごす日に一日中付き合わされたりしている。もともと子供の頃から何をしても親から否定され続けた結果、非行に走った。その頃、唯一褒められたのが万引きの技術だった。骨董品店から15万円相当の蓮の柄の湯飲み茶わんを盗んだのがきっかけで、霧島に出会い、緑茶を淹れる腕を褒められたことで霧島の舎弟となり、現在に至る。映画好きで、自室には洋画や邦画、子供向けアニメまで、ジャンルを問わず大量のDVDなどの映像ソフトを所有している。泣ける系の映画では、強面な外見に似合わず人目をはばからず号泣するため、よく霧島と映画を見るときにうるさいと怒られている。背中に二匹のトカゲの入れ墨が彫られている。昔、窃盗グループのリーダーとして君臨していた時期があり、捕まりそうになると必ず手下を一人置き去りにしていた。その手法がトカゲのしっぽ切りのようだと噂されるようになり、それが通り名となった。のちに、霧島の紹介で北条零にトカゲの入れ墨を彫ってもらうことになった。ふだんは霧島の下にいるために無能に見られがちだが、実はかなりの実力の持ち主。また眠いときに仕事を任せると、毒舌になってふだんよりうるさくなるが、その分仕事が異様に早くなる。
黒崎 香菜美 (くろさき かなみ)
桜樹美幸の妹で、桜樹八重花の叔母にあたる。年齢は33歳。明るく優しい性格で、料理屋「ごはんやくろさき」を営んでいる。美幸が事故に遭って入院して以来、しばらくのあいだ八重花を引き取り、母親代わりとなっていっしょに暮らしていた。しかし桜樹一彦が、再び八重花といっしょに暮らすことを決め、八重花と離れることになった。その後も時折、八重花の様子を見るために、好物の卵焼きを作って桜樹家を訪れている。それは同時に、八重花の世話係となった霧島透の様子を見るためでもあり、当初は二人の関係性を心配していた。その後も、授業参観に参加する霧島の服装を当たり障りないようにコーディネートしたり、花火大会に行くために浴衣を着つけたりしている。八重花をはじめ、霧島や杉原恵の世話も焼いており、何かと桜樹家に出入りして、姉の留守を守るかのように桜樹組を支え続けている。のちに八重花と買い物に行った際、道端で偶然出会った北条零とは、共通の友人・霧島がきっかけで、親しくなって互いを認め合える友達となった。
桜樹 美幸 (さくらぎ みゆき)
極道鷹松組系列「桜樹組」の組長を務める桜樹一彦の妻で、桜樹八重花の母親。年齢は36歳。人間的な器が大きく、いつも笑顔で優しい性格の持ち主。7年前に事故に遭って病院に運び込まれ、霧島透に八重花と一彦をお願いねという言葉を残し、意識を失った。それ以来、目を覚まさないまま寝たきりの状態となり、冬月総合病院に入院している。実は単なる事故ではなく、極道「獅子間組」によって、脅しと称して車に轢(ひ)かれてしまっていた。もともと学生時代に親を亡くした苦労人で、隣町から花屋にアルバイトに通っていた。その花屋で一彦と出会い、生け花という共通の趣味をきっかけに親しくなった。
花田 歩 (はなだ あゆむ)
冬月高校に通う3年生の女子。現在家出中で、年齢は17歳。受験生ながら、勉強ができなさすぎて母親に叱られ続けたため、居心地の悪さを感じて家を飛び出した。その後道端で、箱に入れられて捨てられている子猫を発見し、子猫に餌を買ってやったところ、自分の食べ物を買うお金がなくなってしまう。空腹に耐えかねていた際に、子猫に気づいた桜樹八重花と霧島透と知り合いになり、霧島が持っていた大量のドーナツを分けてもらって事なきを得た。一時は空腹がつらすぎて家に帰ろうと思ったこともあったが、子猫に対しての責任感から、子猫を放って帰れなかった。霧島と八重花の会話を聞いた時、二人がヤクザのお嬢様とその世話係であることを知り、その関係が萌えると興奮気味に写真を撮ろうとするなど、オタク気質な一面がある。食べることが大好きで、主な関心事は食べ物のことばかり。のちに桜樹家を訪れた際、落とし物を拾ってくれた金平に一目惚れして、恋に落ちた。その後、金平からもらった名刺を頼りにメッセージのやり取りをしているが、かなり一方的で突拍子もない質問ばかりを投げかけている。クラスメートの鈴森文香と後輩の丸本あさひと仲がよく、いっしょに行動している。
北条 零 (ほうじょう れい)
霧島透の旧友で、彫師の男性。年齢は28歳。がっしりした体格で、長めの髪をひとまとめにしたイケメン。だが、女性言葉で話すいわゆるオネェで、恋愛対象は男性。出張先で偶然霧島に遭遇し、久しぶりの再会を果たした。中学時代から霧島と親しく、なんでも言い合える関係。昔の霧島を知っているため、毒気の抜けた今の霧島の様子に驚きながらも、心地いい場所にいることがわかると霧島の変化を喜んだ。その後、偶然霧島が桜樹八重花といっしょにいるところを目撃し、組長の娘の世話係を任されていることを知る。霧島の変化が八重花との出会いにあったと理解し、八重花に霧島のことをよろしくと伝えた。のちに、霧島と同じ町に引っ越してくることになり、何かとかかわりが増えていく。また、当時同じ中学の速水雅也は、校内で浮いた者同士、三人で仲がよかった。幼い頃から性に違和感を感じていたが、ふつうの男として接する両親や、周囲から嫌われたくない気持ちから、学生時代は自分の性質を必死に隠して生きてきた。しかし霧島と初めて話した際に、自分が自分を認めていないことに気づかされた。それ以来、女性的な自分を隠すことをやめ、すべてをオープンにすると決めた。好きなタイプは、顔立ちがはっきりした、クールで口数が少なくて一筋縄ではいかなそうな男性。実は、霧島の入れ墨を彫ったのは北条零で、彫師として練習台になってほしいと頼み込んで彫ったものだった。しかしそれは口実に過ぎず、当時の霧島はいつ命を落としてもおかしくない生き方をしており、つねに心配が尽きなかった。自分にとって唯一の親友である霧島がいつかどこかで死んでしまうのではないかと思い、もしその時は自分が霧島を見つけるという覚悟を持って彫ったものだった。そのデザインは悪魔をイメージしており、のちに「桜樹の悪魔」と呼ばれることなど想定していなかった。また、手首に彫った鎖は、簡単に壊れないようにとの思いを形にしたもの。黒崎香菜美とは八重花を介して知り合い、自分を褒めてくれたことがきっかけで意気投合し、互いを認め合える友達になった。
葵 塔一郎 (あおい とういちろう)
葵洸輝と陽奈の父親。年齢は35歳。現在はパレット広告の営業部に所属している。以前、極道「桜樹組」の若頭を務めており、組長・桜樹一彦を支える人物であり、霧島透に教育を施す兄貴分的な存在だった。しかし、自分にとって沙苗という大切な女性ができたため、彼女を守るために組を抜けた。当時は苦渋の決断であり、組を抜けたことで一彦には迷惑をかけたと認識している。それ以来、一彦にはきちんとした感謝の言葉を伝えられなかったことを心残りに感じている。だが、その後二児の父親になり、息子たちの予防接種のために病院を訪れた際、桜樹美幸の見舞いに来ていた霧島、桜樹八重花と偶然の再会を果たした。その際、八重花から一彦は怒っていないからと言葉をかけられ、思わず涙した。この場でかわした八重花との約束どおり、のちに手土産を持って再び桜樹組を訪れた。緊張のあまり門をくぐるまでに時間を要したが、一彦と笑顔で再会を果たすことができた。すべてはきっかけをつくってくれた八重花と霧島のおかげだと感謝している。実は自分が組を抜けたことで、「桜樹の悪魔」と恐れられている霧島を野放しにしてしまったのではないかと気にしていた。しかし数年ぶりに会った霧島が、八重花のおかげで丸くなったことを確認し、安堵した。沙苗とケンカになったときには、沙苗が大好きなケーキを買って帰るのがお決まりのパターンとなっており、それを知った霧島からは、事あるごとに「仲直りケーキ」といじられている。
葵 洸輝 (あおい こうき)
葵塔一郎と沙苗の息子。年齢は6歳。予防接種を受けるため、塔一郎といっしょに病院に行き、売店でお菓子を買ってほしいと駄々をこねていた際、霧島透と桜樹八重花に遭遇した。近くに同じ年頃の友達がいないため、友達との接し方がよくわかっておらず、初対面の八重花におもちゃをプレゼントしてデートに誘うなど、子供らしからぬ行動に出た。八重花と遊んだ日は、妹の陽奈に必ず話して聞かせ、大きくなったら陽奈もいっしょに遊ぼうと誘っている。体の大きなガキ大将からチビといじめられた際に、仲直りしろと諭す両親に反発した。酒に酔った塔一郎から、霧島の昔の武勇伝を聞かされたことを機に、霧島にケンカの仕方を教えてほしいと頼み込んでガキ大将に勝利し、自信を付けた。しかし幼くして将来が心配になるほど、ブラックな一面が垣間見えるため、霧島が心配することとなる。
沙苗 (さなえ)
葵塔一郎の妻で、葵洸輝と陽奈の母親。もともと体が弱かったが、塔一郎と知り合った当時、塔一郎が極道「桜樹組」の構成員だと知り、心労でさらに衰弱する。しかし、塔一郎が組を抜けてからは体調も安定して子宝にも恵まれ、現在は幸せな家庭を築いている。好きなものはケーキで、夫婦ゲンカしたときに、塔一郎が決まって買ってくるケーキで機嫌を直すことが多い。
金平 (かねひら)
極道鷹松組系列「桜樹組」の構成員で、強面スキンヘッドの男性。物静かで口数が極端に少なく、ほとんどしゃべることはない。猫好きのため、こっそりと黒猫「おはぎ」をかわいがっている。八重花といっしょに公園で遊ぶこともある。ある時、桜樹家に遊びに来た花田歩が落としたケーキを拾ってあげたことがきっかけで、歩から慕われることになる。また歩に名刺を渡したことから、メッセージが送られてくるようになり、一方的な質問ばかりだったが生真面目に答えを返していた。ただ、なぜ質問攻めにあっているのかはわかっていない。
武内 (たけうち)
極道鷹松組系列「桜樹組」の構成員の男性。金平といっしょに桜樹一彦の私物を片付けていた際、黒猫「おはぎ」が乱入したことで、一彦が大切にしていた陶器の茶碗を壊してしまう。その時は、責任を感じた桜樹八重花によって事なきを得たが、臓器売買の話をちらつかされ、一彦から次はないぞと脅されている。金平同様に、八重花とはいっしょに公園で遊ぶこともある。
柳 (やなぎ)
極道「草上組」の構成員の男性。組長の会合に付き添った際、霧島透と顔を合わせた。霧島が「桜樹の悪魔」と恐れられていることを知っていたが、組長の娘の世話係を任されていると聞き、バカにしたような態度を取った。その時は脅されるだけでなんの被害も受けなかったが、それに気を大きくし、桜樹組のシマにある飲食店「一七」で店主を殴り、草上組の収入源にしようとした。その後、そのまま店で酒を飲んでいたところ、霧島に酒を強引に飲まされたあげく、気を失うまで暴力を受けた。この際に柳は、霧島の本当の恐ろしさを知ることとなった。
レオン
極道「桜樹組」のとなりに引っ越してきた外国人で、サラの父親。高校で英語の講師を務めている。日本びいきで、日本文化を感じられるものが大好き。隣人がヤクザだとは思っておらず、桜樹家を訪れた際、ここには和の心が詰まっていると、感動をあらわにした。和装で登場した桜樹一彦に対しても、和の象徴のような人物だと興奮気味に写真撮影をしようとした。また、桜の木に強い思い入れがあり、妻と初めて日本に来ていっしょに見たのも桜だった。その美しさに魅了され、日本に住むことを決めた。そのため、名前に桜の字を持つ一彦と出会う運命にあったと勝手に盛り上がり、一方的に懇意にしている。底抜けに明るい性格で、いつもテンションが高い。
サラ
レオンの娘。最近桜樹家のとなりに引っ越してきた。無邪気な明るい性格で、ちょっと強引なところがある。ある日、近所の冬月公園で遊んでいた桜樹八重花にいっしょに遊ぼうと声をかけた。それがきっかけで八重花となかよくなり、桜樹家にも出入りするようになった。その後、八重花と同じ小学校に転入し、八重花とはクラスメートになった。転校初日から持ち前の明るさとコミュニケーション能力の高さで友達をたくさんつくったが、八重花と明石楓とは特になかよくなった。
柿原 洋二 (かきはら ようじ)
極道鷹松組系列「柿原組」の組長を務める男性。年齢は50歳。穏やかな性格で、何事もマイペースところがある。極道「桜樹組」や「桃山組」とは、同じ系列の組同士のために友好関係を築いており、潮海明忠をはじめ、桜樹一彦や桃山秀成とも良好な関係を築いている。特に一彦がお気に入りで、彼の娘・桜樹八重花もかわいがっている。構成員の速水雅也に目をかけているが、速水が霧島透に病的な執着を見せることに少々手を焼いている。以前、一彦に娘がいることを羨ましく思い、一日だけ貸してくれと頼んだことがあったが、その発言で危うく一彦の怒りを買いそうになった。
速水 雅也 (はやみ まさや)
極道鷹松組系列「柿原組」の構成員の男性。年齢は28歳。気性が激しく、怖いもの知らずでケンカっ早い単細胞。霧島透に敵対心を抱いており、霧島を潰すことを生きがいにしていると豪語している。霧島を探して暴れ回ったことで刑務所に入っていたが、つい先日服役を終えた。出所して組長の柿原洋二のもとに顔を出し、おつとめご苦労さんと労う柿原の言葉にも聞く耳を持たず、これから霧島を殺しに行くと言い放つ。さらに霧島が、幼女の世話係を任されていると聞いて勝手に腹を立てた。実は13年前、霧島や北条零とは同じ中学に通っており、かかわると殺されると噂されていた霧島に自らケンカを売り、たった一撃で霧島の強さを理解した。それ以来、霧島を最高で最悪の標的として、霧島を潰すことだけを生きがいにしている。のちに柿原組に入ったのも、霧島がヤクザになったことを知ったからであり、額から顔の中心にかけて大きな傷跡があるが、それは霧島に返り討ちに遭った際に負ったもの。その後、極道「二宮組」の組長の息子・二宮蓮の一日世話係を任されることになる。最初は全力で拒絶したが、洋二が霧島と比べる発言をしたため、頭に血が上って勢いで引き受けることとなった。
進条 龍馬 (しんじょう りょうま)
極道鷹松組系列「柿原組」で若頭を務める男性。年齢は35歳。物静かで穏やかな性格をしている。速水雅也が霧島透を見るや見境がなくなり、何かと暴走しがちなことに頭を痛めている。また、何かとマイペースに行動する組長・柿原洋二にいつも翻弄されており、人知れず組員の後始末に走ることも多く、柿原組一の苦労人といえる。
辰本 (しんもと)
元極道「天谷組」の構成員の男性。10年前、霧島透に天谷組を潰されたことで恨みを持っている。最近霧島が組長の娘の世話係を任されていることを知り、亥川や矢野と手を組み、桜樹八重花を誘拐することで霧島を誘い出そうとした。学校に直接八重花を迎えに行き、誘拐した実行犯でもある。その後、八重花に暴力を振るったことがきっかけで、霧島から暴行を受けて腕を使えなくされたうえに、拳銃で殺されそうになった。結局撃たれることはなかったが、その場で血まみれになって気を失ってしまう。
亥川 (いがわ)
元極道「白河組」の構成員の男性。丸坊主で二本の剃りこみが入っている。10年前、霧島透に白河組を潰されたことで恨みを持っている。最近霧島が組長の娘の世話係を任されていることを知り、辰本や矢野と手を組み、桜樹八重花を誘拐することで霧島を誘い出そうとした。その際に一度はキレた霧島から逃げるものの、三人の集合場所だった廃工場で霧島に見つかり、暴行を受けた。その場は桜樹一彦に収められたが、八重花に手を出したことにより、楽に死ねると思うなと脅され、恐怖心とともに桜樹組から制裁を受けることとなった。
矢野 (やの)
元極道「白河組」の構成員の男性。ツーブロックヘアにしている。10年前、霧島透に白河組を潰されたことで恨みを持っている。最近霧島が組長の娘の世話係を任されていることを知り、辰本や亥川と手を組み、桜樹八重花を誘拐することで霧島を誘い出そうとした。その際に一度はキレた霧島から逃げるものの、三人の集合場所だった廃工場で霧島に見つかり、暴行を受けた。その場は桜樹一彦に収められたが、八重花に手を出したことにより、桜樹組から恨みを買って制裁を受けることとなった。
明石 楓 (あかし かえで)
桜樹八重花のクラスメートの少女。よく一人で絵を描いている。以前、八重花が上手に絵を描いている姿を目撃し、いっしょに遊びたいと思っていたが、言い出せずにいた。そんな中、うっかり落としたクレヨンを八重花が拾ってくれ、絶好の話す機会を得たが、恥ずかしさのあまり逃げてしまう。その後、再びクレヨンを落とした時に青色が折れてしまうが、八重花が青色のクレヨンを二本持っているからとクレヨンを一本くれたのをきっかけに、友達になりたいと言い出すことができた。それ以来、サラも含めた三人で遊ぶようになった。おとなしい性格で、家でも口数が少ない。父親の明石悠騎からは、今日一日にあった出来事を聞かれるが、それが事情聴取のような口調のため、いつもあまり話せないでいる。
桃山 秀成 (とうやま ひでなり)
極道鷹松組系列「桃山組」の組長を務める男性。同じ系列の「桜樹組」「柿原組」とは同じ系列の組同士のために友好関係を築いており、潮海明忠をはじめ、桜樹一彦や柿原洋二とも良好な関係を築いている。特に一彦がお気に入り。子供嫌いながら、一彦の娘・桜樹八重花のことだけはかわいがっている。最近、極道「獅子間組」の生き残りがいる情報を得て、一彦に連絡を取った。獅子間組は桜樹美幸を脅しと称して車で轢(ひ)いた加害者で、7年前に一彦によって組ごと始末されたはずだったが、生き残りがいることが判明したため、獅子間組を根絶させるべく、一彦と共に秘密裏に動き始める。
真白 悠莉 (ましろ ゆうり)
極道鷹松組系列「桃山組」の若頭を務める男性。明るく人当たりがよさそうに見えるが、実はかなりの曲者。キツめの香水を付けており、特に霧島透から嫌われている。一方の真白悠莉自身は、残虐で冷酷な霧島に執着しており、桜樹一彦の娘・桜樹八重花の世話係を任されたと聞いて失望するが、八重花が襲撃された際に霧島が残虐で冷酷な姿を見せたと聞き、喜びをあらわにした。子供はうるさくて汚いという理由で嫌っている。
潮海 明忠 (しおみ あきただ)
極道「鷹松組」の若頭を務める男性。極道鷹松組系列の桜樹一彦、柿原洋二、桃山秀成とは仲がいい。特に一彦がお気に入りで、一彦の娘・桜樹八重花のこともかわいがっている。中学生の娘がおり、組長の鷹松恭介にかわいがってもらっている。
鷹松 恭介 (たかまつ きょうすけ)
極道「鷹松組」の組長を務める男性。鷹松組系列で組長を務める桜樹一彦、柿原洋二、桃山秀成をかわいがっているが、特に一彦がお気に入り。子供が大好きで、一彦の娘・桜樹八重花に会いたがっているが、未だ会えていない。強面で圧倒的な威圧感を放っているが、人とコミュニケーションを取ることに長けている。そのため、初めて八重花と会った際にも、人見知りのはずの八重花ともすぐに打ち解けた。
鈴森 文香 (すずもり ふみか)
冬月高校に通う3年生の女子。花田歩、丸本あさひと仲がいい。ある時、歩が興味を抱いている男性が気になり、あさひと共に歩のあとをつけた。ヤクザの桜樹家に入ろうとするのを見て動揺するが、歩が世話になっていることを知ると、深々と頭を下げた。歩の女子力の低さを心配しており、歩があまりにも適当な服ばかり身につけているので、かわいい服を着ればいいのにと思っている。最近恋をしたことで楽しそうな様子の歩を見て、ほっとしている。
丸本 あさひ (まるもと あさひ)
冬月高校に通う2年生の女子。花田歩、鈴森文香とは学年が違うものの仲がいい。自由な生きざまがかっこいいという不純な理由で、中学生の頃から歩を慕っている。ある時、歩が興味を抱いている男性が気になり、文香と共に歩のあとをつけた。ヤクザの家に入ろうとするのを見て動揺するが、出てきた霧島透に食って掛かった。見た目で霧島を悪人と判断し、警察を呼ぼうとしたが、自分のカンちがいであることを知って謝罪した。
郷野 (こうの)
株式会社「郷野」の社長を務める男性。極道「桜樹組」が自社の後ろ盾になっているため、霧島透と誓約を交わすことになった。しかし、あらためて誓約書を交わす段になり、自社に都合のいいように誓約書の内容の変更を願い出た。すべては真白悠莉からの入れ知恵で、契約時に霧島は来ないだろうと予想して、下っ端の杉原恵なら丸め込めると踏んでいた。しかし、状況を把握していた杉原から返り討ちに遭ってしまう。そもそも真白からも、情報を得るために利用されていただけであり、この状況になるまで騙されていることにも気がついていなかった。実は、桜樹組のテリトリー内で、カタギを狙った詐欺や強引な地上げなどの汚い商売を行っていたため、目を付けられていた。
明石 悠騎 (あかし ゆうき)
明石楓の父親。現役警察官で、冬月二丁目交番に勤務している。生真面目な性格の絵に描いたような堅物。いつも真剣な表情で、ほとんど笑わないため、楓からは決められた時間に正確に動く警察ロボットと嫌みを言われたこともある。楓のことが大好きながら、会話が取り調べのようになってしまうため、妻にもよく怒られている。楓と仲のいい桜樹八重花や、学校の参観日で顔を合わせた霧島透がヤクザであることは知らず、霧島とは子育てについて共感したということもあり、親しくしている。霧島から煙たがられていることはまったく気づいていない。
二宮 蓮 (にのみや れん)
極道「二宮組」の組長の息子。小学3年生ながら、非常にしっかりしている。柿原洋二に預けられたことで、一日中、速水雅也と過ごすことになった。これまで出会ったほとんどの大人は父親のことを怖がっていたが、怖がるどころか殴られたら殴り返すと言った雅也に驚く。人を脅したり殴ったりするヤクザを嫌悪しており、自分はしっかり勉強して、父親とは違う人生を歩んでしっかりした大人になろうと考えている。しかし、自分に不都合なことがあると、父親の名前を出そうとするなど、その言動は一貫していない。雅也からは何を言っても大人げなく言い返され、言い負かされてしまうために最初は嫌っていたが、その後オセロ勝負をきっかけに、親しくなった。
平岡 (ひらおか)
冬月二丁目交番に勤務する警察官で、巡査部長を務める男性。明石悠騎の直属の上司でもある。昇進に興味がないため、あえて交番勤務を続けており、町を守り続けていることを悠騎からはリスペクトされている。悠騎が明石楓に警察ロボットと言われたことに対して、機敏に動くさまはロボットさながらだと絶賛し、そこが悠騎のいいところだと力説した。さらに窃盗事件が起きた際には、犯人を素早くロックオンして確実に捕まえる正義のヒーロー「警察ロボット」と称えた。
大西 (おおにし)
小学校で教師を務める女性。桜樹八重花やサラ、明石楓のクラスを担任している。八重花の家がヤクザであることは知らない。子供たちをいつも笑顔で見守っているが、時折八重花の物騒な言葉に言い知れぬ不安を抱いている。
鹿島 実 (かしま みのる)
パレット広告企画部に勤務する男性。陰キャで自己肯定感が低く、頼まれた仕事はどんなに忙しくても断ることができない。同じ会社の営業部に所属する葵塔一郎は先輩にあたるが、塔一郎はイケメンで妻子持ちの人生の勝ち組であり、自分とは正反対だと負い目を感じていた。ある時、企画会議で進行役を務めた際に部長の小熊から、陰気臭いと罵声を浴びせられることとなる。鹿島実はただただ黙って耐えるしかなかったが、同席していた塔一郎が、自分の代わりに小熊に立ち向かってくれたことを嬉しく思っている。塔一郎の言動が、時折ヤクザっぽくなることに疑惑を抱いているが、塔一郎を慕うようになる。
小熊 (おぐま)
パレット広告企画部の部長を務める男性。社内では嫌みな人物と知られており、小熊が担当する企画会議はみんな進行役をやりたがらない。ある日の企画会議で、企画にケチをつけたうえに、進行役を押し付けられた鹿島実に対し、顔が陰気臭いと理不尽に罵声を浴びせた。話の途中で葵塔一郎がキレて、鹿島への言葉を撤回しろと今にも殴りかかりそうな勢いでつかみかかったことで、その場は収まったが、塔一郎のヤクザのような振る舞いに心底恐れをなしている。
捨て駒くん (すてごまくん)
極道「獅子間組」の構成員の男性。実は8年前、極道「桃山組」の構成員だった。組員を捨て駒としか考えない組長・桃山秀成に恨みを持っており、当時桃山の命令である組に突撃させられるが、一人も殺すことができなかった挙句、返り討ちに遭って逃げ帰ってきたことがある。おでこには、その時に真白悠莉から付けられた大の字の傷跡がある。この傷は、なんの役にも立たず逃げ帰ってきたことに腹を立てた真白が、次はもっと大きなことができるようにという意味で、直接傷つけたもの。その後桃山組を去り、獅子間組の組員になった。その際、極道「桜樹組」の組長・桜樹一彦を脅すため、桜樹美幸を車で轢(ひ)いた張本人。これは桃山に恨みを持ち、桃山と盃を交わした一彦の大切な人を襲うことで、桃山と桜樹の関係性を壊すことが目的だった。
書誌情報
組長娘と世話係 12巻 マイクロマガジン社〈コミックELMO〉
第1巻
(2018-12-24発行、 978-4896378498)
第8巻
(2022-07-11発行、 978-4867163016)
第9巻
(2023-01-11発行、 978-4867163795)
第10巻
(2023-07-10発行、 978-4867164433)
第11巻
(2023-12-11発行、 978-4867165034)
第12巻
(2024-07-10発行、 978-4867166024)