囀る鳥は羽ばたかない

囀る鳥は羽ばたかない

幼少期から性的虐待を受けていたため、男から手酷く抱かれることを快感だと刷り込まれたヤクザの若頭である矢代は、元警察官でインポテンツの百目鬼力を用心棒として雇った。無自覚に惹かれ合いながらも、純粋な恋心に葛藤する二人の姿を描くBL作品。「HertZ band.」2011年45号から掲載の作品。

正式名称
囀る鳥は羽ばたかない
ふりがな
さえずるとりははばたかない
作者
ジャンル
マフィア・ギャング・ヤクザ
 
BL
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あらすじ

第1巻

ヤクザ組織の道心会の傘下である真誠会で若頭を務める矢代は、情報収集のためなら警察官にも自ら股を開く、ドMの変態で淫乱として知られていた。そんな矢代のもとに、刑務所から出所したばかりの元警察官の百目鬼力が用心棒としてやって来る。ある事件を境に、インポテンツを患っている百目鬼を、矢代はなぜか気に入り、そばに置いてかわいがるようになる。そんな中、真誠会のフロント企業である真誠興業の事務所の前に、毎日一人の女性が座り込むようになっていた。それを目にして血相を変えた百目鬼に矢代が詳細を聞くと、彼女は百目鬼の義妹で、かつて百目鬼の実父から性的虐待を受けた被害者であることが明かされる。

第2巻

矢代の部下である七原祐輔が、矢代と仲の悪い兄弟分である竜崎篤士の部下と諍いを起こしてしまう。その件で竜崎が矢代のもとを訪れると、矢代は竜崎が道心会で禁じられている麻薬売買に手を染めているのは、何者かに利用されているのではないかと問い掛ける。一方、百目鬼力は七原に付き添って矢代の旧友である影山莞爾が経営する病院に訪れていた。影山と影山の恋人の久我に気に入られた百目鬼は、矢代に惹かれていることを暗に二人に打ち明ける。そんな中、新装開店したポルノ映画館に視察に訪れた矢代が拳銃で撃たれ、重傷を負う事件が起きる。責任を取って小指を切り落とした百目鬼だったが、その頃、七原は真誠会の組長の平田から竜崎が犯人ではないかと聞かされる。

第3巻

矢代たちは姿を消した七原祐輔の行方を追って、七原の情婦の家を訪れる。そこで、七原が竜崎篤士を狙っていることを知り、矢代たちは竜崎が組長を務める松原組の事務所に向かう。ただその直後、矢代は高熱を出して影山莞爾の病院に担ぎ込まれる。そこで不意に性欲が刺激された矢代は、手淫で自分の性欲を発散しようとするが、百目鬼力が自ら矢代に口淫を始め、その姿にとまどう。一方で事務所から離れた場所で姿を隠していた竜崎は、矢代と出会った頃のことや、平田に麻薬売買を持ち掛けられたことを思い返していた。そんな竜崎も、平田から依頼された矢代の殺害を故意に失敗したことが露見し、平田の私兵である甘栗たちから命を狙われるようになってしまう。

第4巻

竜崎篤士の居場所をつき止めた七原祐輔は、矢代を襲撃するように仕組んだのはすべて平田であることも知ったうえで、竜崎に洗いざらい話すように脅迫する。平田がなぜ矢代を敵視しているのかも知り、矢代に連絡を取る七原だったが、その最中に平田の私兵である甘栗たちに刺され、拉致されてしまう。薄れる意識の中で、七原は矢代と出会った頃のことを回想し、矢代のために命を懸ける覚悟をあらためて固める。一方、警察から七原が連れ去られた場所を聞き出した矢代は、百目鬼力を伴って救出へと向かう。そして、無事に七原を奪還し、甘栗たちをも寝返らせた矢代は、その興奮を抑えることができず、やがて自らの意思で百目鬼を誘惑してしまう。

第5巻

百目鬼力の自宅を訪れた矢代は、百目鬼の真摯な告白を受けたことで、自分もまた百目鬼を恋愛対象として見ていることを自覚するが、同時に優しく愛されることを恐れていた。そんな中、行為に及んだ矢代と百目鬼だが、これまでのように自分を痛めつけることもせず、壊れ物を扱うかのように愛撫する百目鬼に、矢代は初めてのとまどいを覚えていた。しかし、その行為中に義理の父親から「痛くないと快感を感じない」と刷り込まれた、幼少期がフラッシュバックする。百目鬼が眠りに落ちたあと、矢代は百目鬼を置いて、平田に殺されそうになっている竜崎篤士のもとへと向かう。

第6巻

矢代の消えた自宅の中で、百目鬼力は矢代に捨てられたと感じつつも、矢代を守るために彼のあとを追うことを決意する。そんな中、三和会では、道心会にかかわる揉め事にかかわるなという命令が下されていた。平田に三和会での役職を約束する代わりに、麻薬の売買を任せて資金を調達させていた仲本は、すべてを平田のミスだと責め、ケジメとして金だけを払わせようと画策したため、怒った平田によって殺害されてしまう。そして平田は、仲本殺しが矢代の犯行であると道心会の幹部に報告し、矢代をかわいがっている道心会の若頭である三角隆仁の立場まであやうくなるように仕向ける。そんな中、矢代は甘栗たちを使って平田を拉致する。

メディアミックス

劇場版アニメ

2020年2月に、本作『囀る鳥は羽ばたかない』の劇場版アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』が全国で公開された。矢代百目鬼力の出会いのシーンからストーリーが始まり、二人の不器用な恋愛模様が描かれている。レーティングはR18+となっており、性的なシーンも多く含まれている。矢代を新垣樽助、百目鬼を羽多野渉が演じている。

ドラマCD

本作『囀る鳥は羽ばたかない』を原作としたドラマCDシリーズ『囀る鳥は羽ばたかない』がフロンティアワークスより刊行されている。ドラマCD一巻につき、原作コミックス一巻分の内容が収録されている。矢代を新垣樽助、百目鬼力を羽多野渉が演じている。

登場人物・キャラクター

矢代 (やしろ)

ヤクザ組織である道心会傘下の真誠会の若頭を務める男性。真誠会のフロント企業である真誠興業の社長も務めており、資金繰りも順調で道心会にも多くの上納金をおさめている。色素の薄い髪で、華奢な体型をしている。銃撃を受けて以降は右腕に感覚がなく、動かすことができない。七原祐輔や杉本のように命懸けで矢代を慕う組員もいる反面、一部の組員からは「ドMで変態、淫乱ネコ、幹部の公衆便所、笑っているようでキレているから気をつけろ」と陰口を叩かれているが、その噂を知っていながらも否定することはない。幼い頃から母親の再婚相手による性的虐待を受け続けた結果、男との痛みを伴うセックスこそが快感だと刷り込まれ、本来の愛情を感じるセックスを「自分を否定するもの」として恐れている。かつては道心会の若頭である三角隆仁の愛人をしていた。矢代が正式なヤクザとしての地位を得てからは、能力の高さを妬んでいる人間も多い。百目鬼力を非常にかわいがっているが、真摯な愛情を向けてくる百目鬼を恐れてもいる。百目鬼たちからは「頭」と呼ばれている。

百目鬼 力 (どうめき ちから)

矢代の用心棒を務める男性。屈強な肉体を誇り、目つきが鋭いために矢代からは「面構えと雰囲気だけでヤクザになったような感じ」と評されている。血のつながらない妹がいるが、現在は時折手紙のやりとりをする程度で、離れて暮らしている。もともとは警察官だったが、巡回ついでに自宅に立ち寄った際、父親が妹を強姦している現場を目撃し、父親を殴ったために傷害罪で4年間服役していた。また、その時のショックからインポテンツになってしまう。ヤクザ組織である道心会傘下の真誠会のフロント企業である真誠興業を、金融会社とカンちがいして入社した。矢代に強く惹かれているが、彼から「本気の愛情を孕んだセックスを自分にした人間はクビにする」という話を聞いており、矢代相手に勃起することを隠している。

影山 莞爾 (かげやま かんじ)

矢代の学生時代からの友人で、「かげやま医院」という小さな内科医院を経営する医師の男性。非常に手先が不器用ながら、矢代や七原祐輔がケガをするたびに駆け込んでくるため、一応銃弾の摘出くらいはできる。闇医者のような扱いを受けることを嫌っているが、矢代に対してはなぜか強く言うことができない。ケロイドや縫い跡に興奮するフェチシズムの持ち主で、体にタバコを押しつけられてできたやけどの痕が大量にある久我と恋人関係にある。ちなみに実際は鈍感な性格ながら、影山莞爾自身はカンが鋭いと思っている。

久我 (くが)

影山莞爾の恋人の男性。華奢な体型ながら腕っぷしが強く、幼少期から親の虐待を受けており、体中にタバコを押しつけられてできたやけどの痕が大量にある。矢代が部下に欲しがっていたが、久我自身は矢代を嫌っており、絶対にヤクザにはならないと誘いを断り続けていた。矢代にカードや現金をすべて奪われてからは影山宅に居候を続けているが、キャバクラの黒服やバーテンダーのバイトをしている。百目鬼力を気に入っており、友達として純粋に彼の恋心を応援している。

七原 祐輔 (ななはら ゆうすけ)

ヤクザ組織である道心会傘下の真誠会の構成員で、矢代の部下である男性。元ボクサーで、腕っぷしが非常に強い。事務所内で矢代が情報提供者らと、性行為に及ぶ姿を覗き見や盗み聞きしており、矢代から時折注意を受けている。かつては酒巻を兄貴分として慕っていたが、真誠会の組長である平田の金を盗んで逃げた酒巻の罪を着せられ、殺されそうになったところを矢代に救われて以降、矢代に忠誠を誓っている。杉本からは「兄貴」と呼ばれている。

杉本 (すぎもと)

ヤクザ組織である道心会傘下の真誠会の構成員で、矢代の部下である男性。百目鬼力の兄貴分で、人当たりがよく面倒見もいい。とっさの機転もきき、ノリもいいために兄貴分である七原祐輔からもかわいがられている。

三角 隆仁 (みすみ たかひと)

ヤクザ組織である道心会の若頭で、会長代理を務める男性。天羽静馬はかつて三角隆仁が籍を入れた女性の連れ子で、義理の息子にあたる。優しく面倒見がいいことから組員にも非常に慕われているが、道心会の跡目を継ぐだろうと目されていることから、一部の幹部の中には三角を排斥したがっている者もいる。麻雀荘で矢代が竜崎篤士らに輪姦されているのを目撃し、矢代を野良猫を拾うように拾い上げた。以降、矢代を特にかわいがっており、矢代に危害を加えそうな人間や入れあげそうな人間に対しては威嚇するような態度を見せる。もし自分が道心会会長の跡目になった際には矢代を幹部にしようと考えているが、矢代には固辞されている。

天羽 静馬 (あもう しずま)

三角隆仁の腹心の男性。三角がかつて籍を入れていた女性の連れ子で、義理の息子にあたる。大学を卒業しているが、金銭的に三角の世話になったことはなく、授業料などはすべて自分で支払った。義理の父親である三角を人間的に慕っており、三角の役に立つためにヤクザの世界に足を踏み入れた。三角が矢代を盲目的にかわいがっていることを黙認しながら、あまり入れ込まないようにと助言もしている。

竜崎 篤士 (りゅうざき あつし)

ヤクザ組織である道心会傘下の松原組の組長を務める男性。矢代とは杯を交わした兄弟分だが、基本的に仲が悪いように見える。シノギを稼ぐ手腕がないため、平田から麻薬売買を持ち掛けられ、組の掟に反すると罪悪感を抱きながらも仕方なく麻薬取り引きを行っていた。矢代がヤクザになる前から密に思いを寄せており、麻雀荘での矢代の輪姦にも参加していた。

平田 (ひらた)

ヤクザ組織である道心会傘下の真誠会の組長を務める男性。出世欲の強い野心家で三角隆仁を慕っており、矢代を邪魔者だと考えている。一方で、三和会傘下の仲本とつながっており、秘密裏に麻薬の取り引きを行っている。

黒羽根 謙 (くろばね けん)

かつて三角隆仁の右腕とも呼ばれていた男性で、故人。三角に心酔しており、組のためではなく三角のために生きることを願って、三角の後継者になることを辞退していた。腕っぷしも強く機転もきくうえに、他人に好かれる人当たりのよさで多方面から三角を支えたため、周囲からの信頼も厚かった。

酒巻 (さかまき)

かつてヤクザ組織である道心会傘下の真誠会の構成員だった男性。七原祐輔の兄貴分にあたる。陽気で面倒見がいいフリをしていたが、非常に腹黒く、平田の情婦と共謀して平田の財産を盗み、その罪を七原になすりつけようとした。

甘栗 (あまぐり)

「掃除屋」と呼ばれる平田の私兵団に所属する男性。背は低いが恰幅がよく、いつも天津甘栗を食べている。退屈を嫌って日々スリルを求めているが、誰に対しても忠誠心を持たず、より暴力的な人間に味方する傾向にある。平田からの命令で、竜崎篤士の脅迫や七原祐輔の監禁を行った。つねにサングラスと共に行動している。

サングラス

「掃除屋」と呼ばれる平田の私兵団に所属する男性。背が高く華奢な体型で、いつもサングラスを掛けている。甘栗の立てた作戦どおりに動くしか能がないと評されているが、実際は自らの考えで臨機応変に行動できる判断力を持つ。平田からの命令で、竜崎篤士の脅迫や七原祐輔の監禁を行った。つねに甘栗と共に行動している。

(くじら)

三角隆仁の私兵団に所属する男性で、プロの殺し屋。坊主頭の太った体型で、報告の際にはいつもきまってよけいな一言を付け足してしまうクセがあるため、いつも三角を苛立たせている。矢代が発砲を受けてから、三角の命令でひそかに矢代を警護していた。つねに鮫と共に行動している。

(さめ)

三角隆仁の私兵団に所属する男性で、プロの殺し屋。オールバックの華奢な体型で、いつもサングラスを掛けている。情報の取捨選択に長け、報告も簡潔に行う。矢代が発砲を受けてから、三角の命令でひそかに矢代を警護していた。つねに鯨と共に行動している。

仲本 (なかもと)

ヤクザ組織である三和会傘下の豪多組の組長を務める男性。近々本家直参の幹部になるといわれており、そのために多額の資金を必要としている。シノギを稼ぐ手腕がないため、ひそかに麻薬を仕入れては平田に卸しており、マージンで懐を潤していた。

綱川 (つなかわ)

ヤクザ組織である三和会の本家幹部で舎弟頭を務める男性。仲本が本家直参の幹部になることを反対しており、反対派を取りまとめると同時に仲本を引きずり下ろすための情報を探していた。天羽静馬とはゴルフ仲間で、旧知の仲でもある。

集団・組織

道心会 (どうしんかい)

多数の傘下組織を持つ巨大ヤクザ組織。ガンで入院中の立木会長に代わり、三角隆仁が会長代理を務めており、跡目と目されている。麻薬の取り扱いを禁止しているが、平田曰く、決まりを守っている組は少ないらしい。

真誠会 (しんせいかい)

道心会の傘下であるヤクザ組織。平田が組長を、矢代と竜崎篤士が若頭を務めている。矢代は消費者金融などを経営してシノギを組織に上納しているが、竜崎はシノギを稼ぐ手腕がないために平田にそそのかされ、麻薬を売りさばいている。

三和会 (さんわかい)

多数の傘下組織を持つヤクザ組織。三枝が会長を、綱川が舎弟頭を務めている。道心会傘下の組とは末端同士でたびたび抗争を繰り広げているが、三枝が道心会の立木会長と30年前に杯を交わしていることから、会長同士は懇意にしている。近々、仲本が本家直参の幹部になるといわれている。

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