カラオケ行こ!

カラオケ行こ!

カラオケがうまくなりたいヤクザの成田狂児と、美声を持ちながらも変声期を迎えるという悩みを抱える男子中学生の岡聡実。住む世界のまったく異なる二人の奇妙な交流を描く、極道カラオケコメディ。和山やまが同人誌で発表した作品で、2020年9月12日にKADOKAWAよりコミックスが発売。刊行にあたり描き下ろしのエピソードが追加されている。「このマンガがすごい!2021」オンナ編で第5位を獲得。2024年1月実写映画化。

正式名称
カラオケ行こ!
ふりがな
からおけいこ
作者
ジャンル
マフィア・ギャング・ヤクザ
 
部活動
レーベル
ビームコミックス(KADOKAWA)
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あらすじ

3年生として参加した最後の大会の合唱コンクールで、部長の岡聡実率いる森丘中学校は銀賞を受賞した。だが聡実は歌っている最中、ずっと重々しい視線を向けられているような、妙な違和感を覚えていた。その後、コンクールを終えて控室を出た聡実は、目の前に現れた一人の男に、有無を言わさずカラオケ屋へと誘われる。聡実が感じていたのは、「成田狂児」と名乗るその男の視線であった。狂児は、自らがヤクザであることを明かしたうえで、森丘中学校合唱部の歌声を褒め、組長が主催するカラオケ大会を前に自分が窮地に陥っていることを赤裸々に語ると、聡実にカラオケのコーチになってほしいと願い出る。こうして聡実は合唱部の練習が休みになる火曜日と木曜日、近くのカラオケ屋で狂児に歌を教えることになった。そんな聡実は、最後の晴れ舞台となる夏の合唱祭を前に、一つの悩みを抱えていた。それは、変声期によって自分の思ったような歌声が出せないという、聡実にとっては大きすぎる問題だった。そしていよいよ合唱祭が翌日にせまったある日、変声期の悩みに押しつぶされた聡実は、マイペースな狂児に対し、感情のままにひどい言葉をまくしたて、そのまま狂児の前から立ち去ってしまう。迎えた合唱祭当日、この日は狂児の組でカラオケ大会が行われる日でもあった。合唱祭の会場へ向かって歩く途中、聡実は車同士の大事故が起こった場所に差し掛かる。横合いからぶつけられ、街路灯とのあいだにはさまってぺしゃんこになっている被害車両は、明らかに狂児の車であった。さらに聡実は現場の噂話から、ヤクザがかかわった事故であること、そして警察がついた頃には現場には重体のケガ人が一人残されていたことを知る。いても立ってもいられず、聡実は合唱祭を投げ出して、狂児から聞いていたカラオケ大会の会場である、組長の愛人が経営するというスナックへ向かう。そして聡実は、ヤクザ者たちがカラオケに興じるその会場で、組長の口から「狂児が死んだ」という衝撃の言葉を聞くこととなる。

実写映画

2024年実写映画化。1月12日より公開。監督は山下敦弘。岡聡実を齋藤潤、成田狂児を綾野剛が演じる。

登場人物・キャラクター

岡 聡実 (おか さとみ)

森丘中学校に通う3年生の男子で、合唱部の部長を務めている。2005年4月1日生まれ、血液型はO型。黒髪を七三に分けて眼鏡を掛けた地味な雰囲気の持ち主で、まじめながら少々毒舌家なところがある。部長を務めるだけあって合唱部でもその実力は高く評価されており、3年生として参加する最後の大会となった合唱コンクールでは、みごと銀賞を受賞した。さらに、中学生最後の活動となる夏の合唱祭では、男女一人ずつ選別されるソリを任せられたほど。岡聡実本人も歌うことは大好きで、ソリに選ばれたことを光栄に思っているが、実は変声期に差し掛かる頃でこれまでのような高音が思うように出せなくなり、悩みを抱えている。合唱コンクールを見に来ていたヤクザの成田狂児にその実力を見いだされ、歌のコーチをしてほしいと要請を受けたことで彼との不思議な交友関係を持つようになる。聡実自身が悩みを抱えていることもあって、当初は狂児の歌のコーチにも乗り気ではなかったが、交流を深めるうちに彼の気さくな人柄にほだされ、流されるままにほかの多くのヤクザともかかわりを持つようになっていく。だが、夏の合唱祭と同日に行われた狂児の組のカラオケ大会の日を最後に、狂児と会うことはなくなった。のちに立石高等学校に進学。高校の卒業文集に当時の狂児とのことを記したが、誰にも信じてもらえなかった。

成田 狂児 (なりた きょうじ)

四代目祭林組若頭補佐を務めるヤクザの男性で、年齢は39歳。1980年5月5日生まれ、血液型はA型。黒髪を七三オールバックに整えたイケメン。ひょうひょうとしたところがあり、何事にも動じずに軽く受け流してつねに余裕のある態度を崩さない。組長の道楽であるカラオケ大会と、そこで執行される罰ゲームを何より恐れており、カラオケがうまくなるためのコーチを探していた。中学生の合唱コンクールを見に行った際、銀賞に終わった森丘中学校の歌声を気に入り、そこの部長ならば一番歌がうまいはずと、岡聡実にカラオケのコーチを願い出る。非常に気さくな性格で聡実にはうっとうしがられているが、カラオケ屋でどんなに食べ物を頼んでも文句を言わない太っ腹なところは、聡実にもいたく気に入られている。一方で、一度敵とみなした相手には冷酷で容赦がない。実は生まれたばかりの頃、もともとは「京二」という名前になるはずだったが、出生届の名前の欄に祖父がタバコの灰を落として汚してしまい、それをごまかすために書き直した結果「狂児」という名前になった経緯がある。この一件が原因で、成田狂児自身も幼い頃から、いつかどこかで自分の人生の歯車が狂うのだろうと、半ば覚悟しながら生きてきた。20歳の時、アルバイトをしていたカラオケ店で、不本意ながら自分が原因でヤクザの抗争が勃発。この時、一方のヤクザが組長であったことから、なりゆきで彼にスカウトされ、そのまま組長の組に入ることとなった。徹夜のアルバイト明けで思考力が鈍っていたことも一因ではあるが、狂児自身は、この時こそが自分が予期していた「人生の歯車が狂う瞬間」だったと確信している。この抗争の時、狂児は「カラオケ屋にいるんだからカラオケで勝負したらいい」という旨の発言をしており、これが組長主催のカラオケ大会の発端になったのではないかという説がある。ちなみに下戸で、酒を飲めない。

組長

四代目祭林組組長を務めるヤクザの中年男性。髪をオールバックにし、サングラスを掛けた強面で、その立場上、本気になるとすさまじい迫力を見せるが、ふだんは気さくに振る舞っている。また、ちゃめっ気があり、いたずら好きなところがある。何よりカラオケが好きで、2月、5月、8月、11月と年に4回、組長自らの主催で組総出のカラオケ大会を開いており、組員の歌唱力をチェックしている。ちなみに二番目に好きなのは刺青で、最近は自分で彫ることにもハマっており、カラオケ大会で最も歌唱力が低いと評価された者には、組長自らの手で刺青を彫られるという罰ゲームがある。刺青を彫るといっても、組長自身はまだ素人の毛が生えた程度の技術しか持たないため、「ダラダラ時間をかけてジワジワ激痛が続く」「加減を知らないからグサグサ刺す」「絵心が死んでいるのでクソみたいな絵」「痛いところをわざと狙って彫る」、さらには「彫られる当人が嫌いなものをわざわざ彫る」と、成田狂児をはじめとする組員たちからは非常に恐れられている。ちなみに絶対音感の持ち主で、カラオケ大会においては非常に的確な評価を下す。

和田 (わだ)

森丘中学校に通う男子。合唱部の部員で、岡聡実の後輩にあたる。まじめな性格で、合唱部の部長にして実力者でもある聡実のことを慕っている。一方で、変声期によって声が出にくくなっている聡実の異変にも気づいており、苦しそうに歌っている彼のことを心配している。和田自身も合唱においてはかなりの実力者で、夏の合唱祭では聡実に何かあったときのため、ソリの予備メンバーに選出されている。

書誌情報

カラオケ行こ! KADOKAWA〈ビームコミックス〉

(2020-09-12発行、 978-4047361515)

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