引きこもりの吸血少女が将軍に就任
本作の主人公であるテラコマリ・ガンデスブラッドは、血を吸えないため本来の力を発揮できず、過去に受けたいじめによって引きこもりの日々を過ごしていた。そんな中、テラコマリはムルナイト帝国の皇帝であるカレン・エルヴェシアスから、帝国最上位の将軍「七紅天」に抜擢される。小説家を志していたテラコマリは、いかに高位の立場であろうと、目立つことになると本末転倒であると考え、七紅天になることを拒否しようとする。しかし、拒めば即座に死が待っていることを知り、血が吸えないことを隠しつつ、七紅天として活動することを余儀なくされる。
七紅天のテラコマリに従う第七部隊
七紅天となったテラコマリ・ガンデスブラッドが率いる「ムルナイト帝国軍第七部隊」は、下克上が当たり前のアウトロー揃いの荒くれ部隊。部隊には、女性ながらセクハラじみた発言を繰り返すヴィルヘイズや、幼女誘拐の前科を持つカオステル・コント、宮殿を爆破しようとしたことで左遷されたメラコンシーなど、常軌を逸した人物ばかりで、テラコマリはたびたび彼らの奇行に辟易(へきえき)させられる。しかしテラコマリは、持ち前の知識と運のよさを活かして彼らを上手く統率し、やがて名実共に七紅天として高い評価を得ることとなる。
テラコマリを憎むテロリスト
七紅天として躍進するテラコマリ・ガンデスブラッドの前に、かつて学生時代の彼女に卑劣ないじめを繰り返し、引きこもりに追いやったミリセント・ブルーナイトが現れる。彼女はテロ組織「逆さ月」に身を落としており、新たにテラコマリを追い込むためにヴィルヘイズを人質に取るなど、現在も悪行を重ねている。ただし、ミリセント自身はもとから悪人だったわけではなく、父親から心ない言葉を浴びせられて育ったうえ、逆さ月の幹部である天津覺明から洗脳に近い教育を受けたことで、歪んだ感情を持つようになった。また、テラコマリに残虐な仕打ちを行う理由の一つに、彼女から何気なく「可哀想(かわいそう)」と言われたことで、自らをつなぎとめていたプライドを打ち砕かれたことにもある。
登場人物・キャラクター
テラコマリ・ガンデスブラッド
吸血種の少女。ムルナイト帝国の名家「ガンデスブラッド家」の次女にあたる。年齢は15歳。家族やヴィルヘイズからは「コマリ」の愛称で呼ばれている。ムルナイト帝国随一と言われるほどの美貌を誇るが、吸血種の力の源である血が飲めず、種族としての力をほとんど発揮できないでいる。3年前、この欠点を見抜いたミリセント・ブルーナイトが率いるグループからいじめを受け、その時のトラウマから自室に引きこもるようになった。それからは小説家を目指していたが、ムルナイト帝国皇帝と父親の推薦によって帝国の将軍である「七紅天」に半ば無理やり任命され、ヴィルヘイズやカオステル・コント、メラコンシーなど、多くの吸血種を率いて戦うことを余儀なくされる。しかし、血を飲めないという欠点を変えられず、七紅天としての実力が欠如していることを悟られないよう周囲を欺きながら生きながらえてきた。そんな中、「逆さ月」の暗殺者となったミリセントにヴィルヘイズを誘拐され、さらにテラコマリ・ガンデスブラッド自身も殺害予告される。これにより以前のトラウマがよみがえるが、自分を信じてくれる人たちのことを思い出すことで克服し、ミリセントと決着をつける決意を固める。やがて戦いの中で血を飲めるようになり、他者の血液を摂取することでその相手の種族に応じた力を発揮する「孤紅の恤(ここうのとむらい)」を使いこなせるようになる。
ヴィルヘイズ
吸血種の少女。テラコマリ・ガンデスブラッドの専属のメイドと、七紅天の補佐役を務めている。仲間内からは「ヴィル」の愛称で呼ばれている。なんでもそつなくこなす一方でデリカシーに欠けており、唐突にテラコマリの衣服をめくりあげるなどの粗相を働いたことから「変態メイド」と呼ばれるようになる。テラコマリに対する忠誠心は非常に高く、ゆくゆくは彼女がムルナイト帝国の次期皇帝になることを望んでいる。かつて学校でミリセント・ブルーナイトからいじめらを受けていた際、テラコマリに助けられたことに恩義を感じているが、テラコマリ自身はこのことを知らない。メイドとしての業務以外に、テラコマリが血を吸えない事実を隠ぺいしたり、七紅天となった彼女をサポートするなどの役割を担う。しかし、のちにテラコマリの殺害を目論むミリセントに捕らえられ、テラコマリをおびき出すための人質として利用される。
クレジット
- 原作
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小林 湖底
書誌情報
ひきこまり吸血姫の悶々 3巻 スクウェア・エニックス〈ビッグガンガンコミックス〉
第1巻
(2022-06-23発行、 978-4757579866)
第2巻
(2023-01-25発行、 978-4757583634)
第3巻
(2023-11-25発行、 978-4757589193)