みいちゃんが殺されるまでの12か月間の物語
本作は、新宿・歌舞伎町のキャバクラ「Ephemere」で山田とみいちゃんが出会ってから、みいちゃんが殺害されるまでの12か月間を描いたヒューマンドラマ。物語の冒頭でみいちゃんが殺害されることが明かされるため、読者は彼女がどのような人生を歩み、なぜそのような結末に至ったのかを、山田との交流を通して見届けることになる。
みいちゃんの問題行動と歪んだ価値観
みいちゃんは、小学校低学年レベルの漢字も読めず、水商売の基本である「源氏名と本名の使い分け」という意識すら持っていない。そのため、枕営業をした客に対して本名や住所を簡単に教えてしまう。さらに、万引きをしても「相手が男性ならセックスで許してもらえる」という歪んだ考えを持っており、罪の意識はまったくない。しかし本人は、自分のことをふつうだと主張し、福祉や警察などの公的な支援を頑なに拒んでいる。山田は、彼女の底知れぬ問題に戸惑いながらも、深入りせずにあくまで「よき同僚」として表面的な関係を保ち続けている。
みいちゃんとの出会いが導く山田の夢の再燃
山田は、母親の期待に応えようと努力してきた反動から、自立後は無気力なモラトリアム状態に陥っていた。しかし、みいちゃんと真剣に向き合ううちに、彼女の価値観は大きく変わっていく。かつては、母親に否定されたゲームや服を買うたびに罪悪感を抱いていたが、ゴミ捨て場から自分の好きなものを集めて宝物にするみいちゃんの生き方に触れ、その罪悪感は徐々に和らいでいく。そして、自分の絵を見て無邪気に喜ぶみいちゃんの笑顔が、幼い頃から抱いていた「漫画家になりたい」という夢を再び胸に抱かせるのだった。
登場人物・キャラクター
山田 (やまだ)
キャバクラ「Ephemere」でキャストとして働く女子大学生。年齢は21歳。源氏名は「マミ」で、「山田」という名前は、新人キャストのみいちゃんに本名を尋ねられた際、とっさに付けた偽名である。ウェーブのかかった金髪をロングヘアにしている。母親からの過干渉や教育虐待がトラウマとなり、自己肯定感が極めて低い。そのため、「無能」といった言葉に敏感で、他人が同じように責められているのを見ると、いても立ってもいられずに庇ってしまう優しさを持つ。得意な絵も、母親から「勉強以外は無価値」と否定され続けた影響で、素直に楽しめずにいる。大学にはほとんど通わず、キャバクラの仕事も生活費のために仕方なく続けているだけで、あまりやる気はない。みいちゃんに障がいがあることには気づいているが、どう接すればよいかわからず、指摘できずにいる。それでも、キャストの中で唯一みいちゃんに真摯に向き合おうとしており、周囲からは仲がいいと思われている。
みいちゃん
キャバクラ「Ephemere」でキャストとして働く女性。年齢は21歳。源氏名は「みいちゃん」。茶髪のショートボブヘアで、どこか幼さを感じさせるアンバランスな服を身につけている。山田が読んでいた小説のタイトル「青い花」すら読むことができず、間違いを指摘されると癇癪を起こしてパニックに陥ってしまう。漢字を教わっていた同僚のココロとの教習は、この癇癪が原因ですぐに中止となった。一方で、「バカにされたくない」という強いプライドと承認欲求を持ち、自分の至らなさを認められず、他人のせいにしがちな思考に陥りやすい。その歪んだプライドは「性行為でしか人と対等になれない」という考えにつながり、客との枕営業を繰り返すだけでなく、店の男性スタッフとも安易に関係を持ってしまう。稼いだお金はすべて彼氏のマオに搾取されている。両親は実の兄妹であり、彼女の存在自体が家族内でタブー視されている。山田と出会ってから12か月後、何者かによって命を奪われてしまう。本名は「中村実衣子」。
書誌情報
みいちゃんと山田さん 4巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2024-12-23発行、978-4065379431)
第2巻
(2025-03-21発行、978-4065387498)
第3巻
(2025-06-23発行、978-4065397305)
第4巻
(2025-09-22発行、978-4065406427)







