あらすじ
ホーツクおばあとだんご先生~さすらいの旅路
母親が亡くなり、身寄りのない花村ひな子は一人汽車に乗り、父親の花村善六を探すために東京へと向かっていた。すると向かいに座っている男性のカバンがひったくりの被害に遭い、ひな子は車中で犯人を追う。ひな子は犯人と揉み合いの末に殴られ、汽車の外へと落とされてしまい、意識を失う。そして、道に倒れていたひな子を田舎の村で農業を営む男性・五作が発見する。村人たちはひな子を心配し、祈禱師のホーツクおばあと医師のだんご先生を呼び出す。ひな子はホーツクおばあから「明日は東京の友達に会いにいくので、自宅に泊まれば朝一番の汽車で連れていってあげよう」と言われ、心から感謝をする。ほかの村人も子供のお古をひな子に着させ、温かいご飯を提供するなど手厚くもてなす。しかし、夜中にふと目を覚ましたひな子は、実はホーツクおばあが宗教を立ち上げるため、このままひな子をさらって巫女として働かせようという魂胆であった事実を知る。その計画を知ったひな子はこっそりホーツクおばあの家を抜け出し、だんご先生から譲り受けた子犬のペロと共に、見知らぬ土地をひたすら東京方面へと向かう。
幸せはどこに
ホーツクおばあのもとから逃げ出してから1か月、一心不乱で東京へと向かっていた花村ひな子は、ついに限界に達し、道端で倒れてしまう。そこに島村トモ子が乗る車が通りかかり、ひな子はトモ子の家で世話になる事となった。トモ子やトモ子の父は優しく接してくれるものの、ひな子はそれを妬んだおトラたちから激しい嫌がらせを受けることとなる。こうしてひな子は、トモ子とトモ子の父との幸せな記憶をかみしめながら、ひっそりと屋敷を出るのだった。
上野公園の人々~ペロよさようなら
島村トモ子の屋敷を出た花村ひな子はやっとの思いで東京の上野公園へと辿りつく。高知から一人でやって来たひな子に対し、上野公園にいた人々は食べ物や宿泊先を提供するだけでなく、ひな子の父親である花村善六の捜索にも協力するのだった。その甲斐あって、ついにひな子は善六と再会。だが善六は、建築現場での作業中に怪我を負ってしまい記憶を失っていた。善六からもらった宝物のオルゴールの音を聴かせれば記憶を取り戻すのではないかと考えたひな子であったが、汽車で紛失した事に気づく。そこにひな子の事情を知った新聞記者が駆けつけ、全国紙でオルゴールを探してほしいと呼び掛けるのだった。
登場人物・キャラクター
花村 ひな子 (はなむら ひなこ)
母親を亡くし、父親・花村善六を探しに高知から東京へと向かう男装の少女。生まれは大阪であるが、幼少期に善六の仕事のために高知へと引っ越している。正義感が強く、困っている人は放っておけない性格。かつて善六からもらったオルゴールを宝物として大事にしている。だんご先生から犬のペロを託されて以来、いっしょに行動している。
ペロ
ヨークシャーテリアの子犬。だんご先生が東京に住む知人から譲り受けたもののまったく懐かず、病気になる寸前の状態にあった。花村ひな子が東京に行く事を知っただんご先生が、親犬に返してほしいとひな子に託した。それからはひな子に非常に懐き、いっしょに行動している。
花村 善六 (はなむら ぜんろく)
花村ひな子の実父。妻子を高知県に残して大阪で働き、送金をしていた。だが、妻が亡くなったあとに送金が途絶えてしまう。身寄りもなくお金もないひな子が大阪を訪ねていくと、東京に行ったと聞かされ、さらに行方不明になっている事を知る。
五作 (ごさく)
田舎の村で農業を営んでいる男性。既婚者で子だくさん。汽車から落ちて意識のない花村ひな子を道端で見つけ、村人たちに助けを求めた。
だんご先生 (だんごせんせい)
五作の住む田舎の村で医師をしている男性。村人からの評判はいま一つであり、「ヤブ医者」と陰口を叩く者もいる。五作から汽車から落ちた少女がいると助けを求められ、花村ひな子に処置をした。東京の知り合いから子犬のペロを譲り受けたものの自身にはまったく懐かなかったため、東京に着いた際に親犬に返してほしいとひな子に託した。
ホーツクおばあ
五作の住む田舎の村で祈禱師をしている高齢の女性。だんご先生をヤブ医者扱している者たちからは、医者よりも優れていると頼りにされている。友達に会うついでに東京まで連れて行ってやると、花村ひな子を自宅に宿泊させた。しかし、実際は自身の宗教を立ち上げる計画があり、ひな子を巫女として働かせるためにさらおうとしていた。 偶然その事実を耳にしたひな子が逃げ出した事で、計画を断念する。
島村 トモ子 (しまむら ともこ)
行き倒れていた花村ひな子を見つけ、自分の住む屋敷へと連れて帰った少女。普段は芸能人として活動している美少女で、実家も大金持ち。心優しく穏やかな性格で、同じ年頃のひな子を友達として温かく迎え入れた。
トモ子の父 (ともこのちち)
島村トモ子の父親で大金持ち。トモ子が連れて来た花村ひな子を、娘のいい友達になってくれそうだと気に入り、「いつまでもいてくれていいんだよ」などと優しく声をかけた。
山田 (やまだ)
島村トモ子の家で、運転手として雇われている男性。倒れていた花村ひな子を見つけ、声をかけようとしたトモ子に対して放っておくよう進言するなど、冷たい性格の人物。トモ子の家に受け入れられ、豊かな生活をしているひな子が気に入らない。
おトラ
島村トモ子の家で家政婦として働いている中年の女性。花村ひな子がトモ子と仲よくしているのが気に入らず、意地悪をして追い出そうとする。