あらすじ
第1巻
酷い訛りにコンプレックスを抱えている山田美古都は、有頂天高校に入学したものの友達が一人もできないでいた。居場所のない美古都は、有頂天神社の巫女として過ごしていたところを猫崎蓮に目撃される。しかしそれをきっかけに、美古都と猫崎は友達になる。猫崎は生徒会の権限を巧みに利用し、美古都のために巫女部を設立する。美古都に恋心を寄せる猫崎は、たびたび巫女部に立ち寄って幸せな時間を過ごしていたが、新たな部の設立をもくろむ辺銀律、獅子丸愛莉、熊倉タクヤ、兎田夜空も有頂天神社に集うようになる。そして猫崎以外のメンバーは有頂天部を立ち上げ、巫女部は統合されることとなる。そんな中、猫崎は教師の人員不足から顧問に任命され、部員に交じって活動を開始することになった。個性豊かなメンバーがそろう有頂天部はトラブル続きであるが、部員同士の友情は確実に深まっていく。そして美古都は、猫崎に友情ではなく愛情を抱いている事実に気づいてしまう。そんなある日、部屋のエアコンが故障したため、美古都と猫崎は一時的に同じ部屋で生活することになる。
第2巻
夏休み、有頂天部のメンバーは海に遊びに行くことになった。そこで山田美古都は猫崎蓮の水着姿に動揺しつつも、楽しい時間を過ごす。一方の猫崎は、日に日に美古都への愛しさを募らせ、美古都との時間を楽しく感じる一方で、いつか自分の前からいなくなってしまうのではないかと、不安を覚えるようになる。美古都への執着を自ら恐ろしく感じた猫崎は、冷静になるためにわざと彼女から距離を置くようになっていく。そんな中、美古都は残りの夏休みを楽しむため、実家の神社に泊まりに来ないかと有頂天部のメンバーに声を掛ける。猫崎も参加はしたものの、悩みすぎたために美古都の実家で発熱をし、そのまま寝込んでしまう。そんな猫崎に美古都は優しく寄り添うが、猫崎は美古都を手放したくないあまり本音をぶつけられない。
登場人物・キャラクター
山田 美古都 (やまだ みこと)
有頂天高校に在籍する1年生の女子で、出身は京都の山奥。代々神社を守ってきた家系に育ち、境内で巫女として奉仕しているときが一番落ち着く。少々天然気味で人を疑うことを知らない、まっすぐで素直な性格の持ち主。関西弁の訛りをコンプレックスに感じており、田舎者だと思われたくないために学校内では極力人とかかわらないようにしている。唯一心が落ち着く場所である、有頂天神社に勝手に出入りしているところを猫崎蓮に目撃され、以降友情を育む。入学式の際、猫崎に一目惚れされていることには気づいておらず、過度なスキンシップをして無意識に猫崎の心をかき乱している。また、巫女部を学校側に承認させるため、猫崎が尽力した事実にも気づいていない。有頂天部として活動していくうちに猫崎の人柄に触れ、いつしか恋心を抱くようになる。入学してから猫崎以外の友達がいなかったが、有頂天部の発足とともに辺銀律、獅子丸愛莉、熊倉タクヤ、兎田夜空とも親しくなる。寮では部屋割りの都合で一人部屋。
猫崎 蓮 (ねこざき れん)
有頂天高校に在籍する1年生の女子で、山田美古都の同級生。生徒会書記を務めており、周囲からの信頼は厚い。文武両道なクールビューティーで、周囲からは近寄りがたいと距離を置かれている。また、中学生の時に父親が家を出て行き、母親からのプレッシャーから逃げたいという気持ちから、全寮制の有頂天高校に進学した過去を持つ。入学式で美古都に一目ぼれをし、そのあとに偶然迷い込んだ有頂天神社で巫女姿の美古都と再会したことにより、さらに恋心を募らせている。素直になれない性格で、美古都と親密な雰囲気になっても、なかなか本心を打ち明けられないでいる。美古都の居場所を守るために学校と生徒会に根回しをし、巫女部を承認させる。猫崎蓮自身は生徒会に所属しているために部活動には参加していないが、美古都をほかの人に取られたくない思いから有頂天部の顧問として活動している。寮では小林椿と同室。
辺銀 律 (ぺんぎん りつ)
有頂天高校に在籍する1年生の女子で、山田美古都の同級生。明るくポジティブな考えの持ち主で、難しいことを考えるのが苦手。昭和歌謡曲を好み、「昭和歌謡レコード部」を獅子丸愛莉と共に設立しようとしているものの部員が集まらず、非公式の部として活動をしていた。活動拠点となる場所を探していたところで有頂天神社を見つけ、間借りする形で巫女部に入り浸るようになり、のちに有頂天部と統合する。愛莉とは昭和歌謡が好きという共通点があるものの、それ以外はそりが合わずにケンカばかりをしている。しかし表には出さないものの、愛莉のことは親友だと認識している。中学生時代は黒髪ロングの正統派美少女だったが、有頂天高校に入学する際に髪をツートンカラーにするなど、ロック風にイメージチェンジをしている。寮では愛莉と同室。
獅子丸 愛莉 (ししまる あいり)
有頂天高校に在籍する1年生の女子で、山田美古都の同級生。昭和歌謡曲を好み、「昭和歌謡レコード部」を辺銀律と共に設立しようとしていたが部員が集まらず、非公式の部として活動をしていた。活動拠点となる場所を探していたところで有頂天神社を見つけ、間借りする形で巫女部に入り浸るようになり、のちに有頂天部と統合する。表情を変えずに破天荒な行動をするタイプで、個性的な面々がそろう有頂天部の中でも一番のトラブルメーカーである。ただし、わざと周囲をかき乱す行動を繰り返しているところもあり、真剣な相談事にはまじめに対応する。律とはそりが合わずにケンカばかりをしているが、実際は強い友情を感じている。実家は資産家だが「金さえ渡しておけばいい」といった教育方針のため、強い孤独感を抱きながら育った。中学時代にはこれによって自殺を考えたが、寸前で偶然耳にした昭和歌謡曲に救われ、なんとか思いとどまった過去を持つ。寮では律と同室。美古都からは「まるちゃん」と呼ばれている。
熊倉 タクヤ (くまくら たくや)
有頂天高校に在籍する1年生の女子で、山田美古都の同級生。東京の最新ファッションに強いあこがれを抱いており、服飾の研究をする「TOKYO(とうきょう)ファッション部」を設立したいと考えている。しかし、なかなか部員が集まらず、とりあえず非公式の部として活動をしていた。活動拠点となる場所を探していたところ、辺銀律、獅子丸愛莉と出会って意気投合。その後は巫女部に間借りする形で有頂天神社に入り浸るようになり、のちに有頂天部と統合する。兎田夜空とは幼なじみで、周囲には公表していないが恋人関係にある。病弱で点滴を打ちながら移動したり、興奮をすると吐血したりすることも多いが、口が悪くてすぐに暴力に走る傾向にある。美古都曰く、「体力のステータスをすべて気力に振り分けてしまった性質の持ち主」。成績は優秀だが、ふだんの発言は一般常識とずれたものが多い。夜空からは「タッくん」と呼ばれている。
兎田 夜空 (うさぎだ よぞら)
有頂天高校に在籍する1年生の女子で、山田美古都の同級生。可能な限りはずっと眠っていることを望んでおり、何もしない部活「ひきこも部」を設立したいと考えている。ただし、兎田夜空自身が勧誘活動をいっさいせずに寝てばかりいるため、とりあえず非公式の部として活動をしている。活動拠点となる場所を探していたところ、辺銀律、獅子丸愛莉と出会って意気投合し、巫女部に間借りする形で有頂天神社に入り浸るようになり、のちに有頂天部と統合する。熊倉タクヤとは幼なじみで、周囲には公表していないが恋人関係にある。基本的に寝袋に入って移動をしているが発言は常識的なため、周囲のツッコミ役に回ることが多い。また、寝袋に入っているときは正体不明の虫のような容貌で描かれているが、脱ぐと清楚な雰囲気の美少女になる。
小林 椿 (こばやし つばき)
有頂天高校に在籍する1年生の女子で、生徒会で会計を務めている。つねにテンションが高くやや横暴な言動が目立つものの、生徒会の仕事は的確にこなす実力者。ショートカットの髪型で、私服もボーイッシュなファッションを好む。寮では猫崎蓮と同室。猫崎が山田美古都に好意を抱いていることには気づいているものの、あえて知らないふりをしている。また、相手は明かしていないが小林椿自身も恋愛をしており、休日にはデートを重ねている。
集団・組織
巫女部 (みこぶ)
有頂天高校にある部活動の一つ。有頂天神社を拠点とし、巫女として活動をしている。本来は四人以上を集めることができなければ部活動として認められないが、生徒会書記の猫崎蓮の根回しにより、山田美古都のみで構成されている。のちに有頂天神社が辺銀律、獅子丸愛莉、熊倉タクヤ、兎田夜空のたまり場になったことをきっかけに有頂天部と統合。以降、巫女部としては活動を休止している。
有頂天部 (うちょうてんぶ)
有頂天高校にある部活動の一つ。山田美古都が所属する「巫女部」、辺銀律と獅子丸愛莉が所属する「昭和歌謡レコード部」、熊倉タクヤが所属する「TOKYO(とうきょう)ファッション部」、兎田夜空が所属する「ひきこも部」が統合してできた。メンバーは五人で、全員が部長を務めている。顧問は本来は教師が担当するが、人員が不足しているために生徒会書記の猫崎蓮が務めている。ちなみに部の名前は、発足時に活動内容がまとまらなかったため、有頂天高校の「有頂天」から取ったもので、特に深い意味はない。
場所
有頂天高校 (うちょうてんこうこう)
豊かな海に囲まれた島の高台にある全寮制の女子高等学校。昔は神道の学校だったため、校舎からほど近い場所に有頂天神社がある。制服はあるものの比較的自由な校風で、必ず部活動をしなくてはならない規則があることから、多種多様なクラブ活動が盛んに行われている。マイナーな内容の部活動であっても、四人以上を集めることができれば学校から承認される。ただし、巫女部だけは生徒会書記の猫崎蓮の根回しにより、部員は山田美古都のみだが、部として認められている。
有頂天神社 (うちょうてんじんじゃ)
有頂天高校の校舎からほど近い場所にある神社。かつて有頂天高校が神道の学校だった頃の名残りであり、現在ではその存在を知る生徒はほとんどいない。実家が神社の山田美古都が勝手に奉仕活動をしているところを生徒会書記の猫崎蓮に目撃されて以降、巫女部の活動拠点となる。巫女部が有頂天部と統合してからも、引き続き部活動の活動拠点として使用している。