概要・あらすじ
取り壊しが決まっているアイスリンクにやって来た煌河グループの御曹司・煌河一己は、立ち入り禁止区域のスケート場で滑っていた珠洲雪野と出会う。雪野の高いスケーティング技術を見た一己は、執事の小久保に彼女の身上調査を依頼すると、雪野はスケートをやめるために決死の思いでこの場所を訪れていたことを知る。雪野にスケートを続けさせたい思いを胸に、一己は煌河グループのあらゆる手段を使って雪野を自分のもとへと呼び寄せる。
そして日本人とカナダ人とのハーフであるロマン・ギルベールを紹介し、アイスダンスで再起をかける相談を彼女に持ちかける。
登場人物・キャラクター
珠洲 雪野 (すず ゆきの)
17歳の女の子。かつてフィギュアスケート女子シングルの全日本ジュニア大会を連覇したという実績の持ち主。現在はフィギュアスケートのコーチを務める元選手の両親に育てられ、5歳からスケートを始める。早くからその才能を開花させるが、トリプルアクセルの練習中にケガをして引退に追い込まれた。その後はアイスダンスに転向したがパートナーに恵まれず、かつてほどの栄光は得られていない。 自分で一度決めたことは貫き通す強靭な意志を持つ。引退することをあきらめきれずにくすぶっていた時、偶然にもシングルの選手だった頃に出会った煌河一己と再会。さらにひょんなことからロマン・ギルベールと知り合うが、すれ違いと衝突ばかりで思い悩む日々が続く。
煌河 一己 (こうが いつき)
煌河グループの御曹司。アークホテルチェーンの専務を務める男性。高校2年の時、男子シングルのフィギュアスケート全日本大会に出場したことがある元選手。気に入った女性選手にはコスチュームを送るなど、かなりの女たらし。現役の頃に試合で出会った珠洲雪野と再会し、引退寸前に追い込まれていた雪野を、全面的にバックアップすることを約束する。 ただの選手としてしか見ていなかった雪野を、いつしかかけがえのない存在として大切に思うようになり、徐々に惹かれていく。雪野がアイスダンスを続けられるよう、自らの社会的立場を失ってでも最善を尽くそうと常に思案する。
ロマン・ギルベール (ろまんぎるべーる)
カナダ人の父親と日本人の母親を持つハーフの男性。アイスダンス歴10年の選手。煌河一己からは「マロン君」と呼ばれている。現在は東京の大学に留学中の19歳。カナダで有名なアイスダンスのコーチに師事し、世界大会では6位に入賞したことがある。珠洲雪野とはアイスダンスのペアを組むため、一己によって引き合わせられた。 ジュニア時代にペアを組んでいたレティシア・ジリと婚約までしていたが、結果的に失恋。もう二度とパートナー相手の恋愛はしないと心に決めている。珠洲雪野とともにアイスダンスをやっていこうと決意をしているが、雪野との人間関係がなかなかうまくいかずに空回りしている。
月白 笙 (つきしろ しょう)
FSCアークに所属している選手。煌河一己の幼なじみの男性。黒姫なつきとアイスダンスのペアを組んでいるが、そろそろ現役を引退して後進の育成に力を入れたいと思っている。長年、ペアを組んでいたなつきに対して恋愛感情を持つものの、肝心のなつきからは友達以上の存在には思われていない。
黒姫 なつき (くろひめ なつき)
FSCアークに所属している選手。月白笙とアイスダンスのペアを組んでいる女性。過去に煌河一己と付き合っていたことがある。一己から珠洲雪野とロマン・ギルベールのコーチを務めてほしいと頼まれ、しぶしぶ引き受ける。自分から離れてしまった一己の心を再び取り戻そうとするが、時はすでに遅く、一己が雪野に惹かれていく様を間近で見ることになる。 その反動により、裏から手を回して社会的に一己を追い詰め、自分がいなければ雪野とロマンが立ち行かなくなるように仕向ける。
レティシア・ジリ (れてぃしあじり)
ロマン・ギルベールとジュニア時代からずっとアイスダンスのペアを組んでいた女性。ロマンとはプライベートでも交際していたが、現在は別れている。ロマンとのペアを解消してからは、ショーン・ウェリントンのパートナーとなり、カナダのジュニア大会で見事に優勝した。人並み外れた妖精のような美しい容姿で、珠洲雪野に圧倒的な敗北感を与える。 見た目とは裏腹に、内面は非常に冷酷な一面がある。たとえどんな相手であっても自分にメリットがないと判断すれば、たちまち突き放してしまう。
レフ・ニコラェヴィッチ・トラマノフ (れふにこらぇゔぃっちとらまのふ)
5年前のアイスダンス世界チャンピオンの男性。圧倒的なスケーティング技術と、王子様のような華麗な容姿で女性たちを魅了した。現在は引退し、体型も崩れて当時の面影はまったくないが、アイスダンスの技術は衰えていない。珠洲雪野とロマン・ギルベールのコーチを担当してほしいと、ボリス・ニキーチンから依頼を受けることとなる。 かつてパートナーだったスベトラーナ・トラマノフと結婚したが、放蕩生活に愛想を尽かされ離婚をつきつけられている。
小久保 (こくぼ)
年老いた母親とともに、煌河家で使用人として仕えている初老の男性。煌河一己から絶大な信頼を得ており、身上調査から下宿人の世話、食事の準備に至るまで、一己に頼まれた仕事は何でも忠実にこなす。ルールにはとても厳しく、たとえ相手が一己であっても、違反は厳しくたしなめる。
煌河 王護 (こうが たかもり)
煌河一己の叔父。煌河グループの会長を務める中年の男性。昔から一己には好かれておらず、名前の漢字一文字を変えた「タマゴ」呼ばわりをされている。FSCアークに大金を注ぎ込む一己に苦言を呈するが、まったく聞き入れてもらえずにいる。フィギュアスケートのことは何も分からないが、即座に試合で結果を出さなければ、グループの会長としてFSCアークの存続は許さないという厳しい試練を一己に与える。
ボリス・ニキーチン (ぼりすにきーちん)
かつてアイスダンスの選手だったロシア人の男性。現役引退後は、世界中から集まった数多くの選手たちのコーチを務めている。自身が担当したチームからは、国際大会で活躍している有能な選手たちを何人も輩出しており、各国から育成者として引っ張りだこの状態。普段はクールなポーカーフェイスを決めているが、レッスン中は不意に笑顔を見せることもある。
ユリア・ピアノワ (ゆりあぴあのわ)
ボリス・ニキーチンの助手として日本に滞在中の女性。小柄でかわいらしい容姿はまるで少年のように見えるが、実際は26歳。経済的な事情からアイスダンスの選手を続けることが困難となり、現役を引退してコーチになった。ロマン・ギルベールをことのほか気に入っている。ロマンが映えるような振り付けばかりを好んで教えていたところ、珠洲雪野から反感を買って、彼女と幾度となく衝突することになる。
桜内 香織 (さくらうち かおり)
SAKURAガスエナジーの社長令嬢。ピアノの勉強をするためモスクワの音楽院に留学している。祖父は元内閣総理大臣、祖母は六角コンツェルンの娘、叔父は駐ロシア大使という華麗なる一族の出身。格仙太郎から煌河一己とのお見合いを持ちかけられ、だんだんとその気になってしまう。あまり感情の起伏がなく、落ち着いているように見えるが、一己に惹かれることにより、徐々に本来の激しく嫉妬深い性格がむき出しになっていく。
ナジェージタ・フィリポワ (なじぇーじたふぃりぽわ)
ウクライナ出身のアイスダンスの女性選手。アナトリー・ソロコフとはアイスダンスのパートナーであると同時に、プライベートでも恋人同士。海外遠征時には、もともと別々の部屋が割り当てられていながら、ミーティングと称してアナトリーと夜をともにすることがほとんどだった。
アナトリー・ソロコフ (あなとりーそろこふ)
ウクライナ出身のアイスダンスの男性選手。非常にボリュームのあるリーゼントが特徴で、前髪のスタイリングにはかなり気を使っている模様。ナジェージタ・フィリポワはアイスダンスのパートナーであり、恋人。技術はそれほどでもないが、恋人同士の雰囲気をうまく利用して、ナジェージタの魅力を最大限に引き出している。
ショーン・ウェリントン (しょーんうぇりんとん)
レティシア・ジリとアイスダンスのペアを組んでいる男性選手。以前のパートナーが拒食症で体を壊したため、見限ってレティシアにあっさりと乗り換えた。現在は寮生活を送っており、ボリス・ニキーチンのもとでアイスダンスの猛特訓を受けている。冷酷な性格だが、それでもレティシアの計算高さと非情さにはとてもかなわないレベル。 気弱になった時はいつもレティシアに言いくるめられ、いいようにあしらわれている。
上林 百佳 (かんばやし ももか)
兄とペアを組んでいるアイスダンスの女性選手。ボリス・ニキーチンの特訓を受け、3年連続で全日本ジュニアチャンピオンに輝いている。思ったことははっきりと口に出してしまうタイプ。同じ日本人としてスケートリンクに立つ珠洲雪野にライバル心を燃やし、敵意をむき出しにする。
中谷 れいな (なかたに れいな)
珠洲雪野とロマン・ギルベールのペアを解消させるため、黒姫なつきが探して来たアイスダンスの女性選手。美しい容姿と天才的な技術習得の早さを活かしたスケーティングで、ロマンのパートナーに志願する。のちに赤羽涼と組み、大きな大会に出場するほどの選手に成長して、雪野とロマンを凌駕することになる。誰にも打ち明けていないが、密かにロマンに憧れている。
赤羽 涼 (あかば りょう)
FSCアークに所属しているアイスダンスの男性選手。中谷れいなとペアを組み、荒削りながらも、れいなと同様、天才的なのみ込みの早さを生かして、急速に技術の成長を遂げる。実はとある有名な歌舞伎役者の隠し子。子供の頃は歌舞伎界に身を置いていたことがあり、その際に鍛え上げられた体幹の安定さが、スケーティングで大いに役立つことになる。
スベトラーナ・トラマノフ (すべとらーなとらまのふ)
レフ・ニコラェヴィッチ・トラマノフとアイスダンスのペアを組んでいた女性選手。現在は引退し、ロシアの大物政治家であるストロガノフの秘書をしている。酒に溺れたレフに三行半(みくだりはん)を突きつけたが、なかなか諦めてもらえず、離婚するには至っていない。珠洲雪野とロマン・ギルベールのコーチを頼まれたレフの背中を押し、何とか落ちぶれた生活から這い上がらせようと奮起する。
小早川 走多 (こばやかわ そうた)
FSCアークに所属していた男性選手。4年前にスケートをやめ、コネクションを使って煌河グループが経営するアーク社に入社した。煌河王護の陰謀によって社史編纂室に異動せざるを得なくなった煌河一己を密かに支持し、秘書のような役割を果たしている。
宮内 大助 (みやうち だいすけ)
煌河グループが経営するアーク社の元専務だった老齢の男性。煌河グループの前会長の右腕として活躍していた。煌河王護が会長に就任して降格処分となり、ついには一家離散にまで追い込まれてしまった。現在は単身で団地に住み、野良猫にエサをやりながら孤独な余生を送っている。
格 仙太郎 (かく せんたろう)
煌河グループが経営するアーク社の前会長の部下を務めていた男性。以前はFSCアークの顧問も担当していた。現在はアーク社のモスクワ支社に左遷されている。かつては宮内大助とともに「社長室の格さん助さん」として、社内でもその活躍ぶりは有名だった。レフ・ニコラェヴィッチ・トラマノフにスベトラーナ・トラマノフを紹介したことが唯一の自慢である。 ロシアの友人からは「セリョージャ」の愛称で親しまれている。
集団・組織
FSCアーク (えふえすしーあーく)
煌河グループが経営するアーク社の運営によるフィギュアスケートクラブ。所在地は東京で、国内では設備もコーチも超一流ぞろいである。アーク社の前社長が日本のフィギュアスケートを更に発展させるため、煌河グループの系列会社の中で最も心血を注いでいた。スケートリンクの維持や選手の育成に高額な費用がかかるため、煌河グループの会長・煌河王護は存続について難色を示している。