概要・あらすじ
ヤクザの組を破門された者たちによるはぐれ者グループを率いる謎の男性ジジイ。新宿にある歌舞伎町サンライズマンション(☆ヤクザマンション)に目をつけたジジイは、妄想癖のある殺し屋・イチを使い、マンション内でヤクザ・安生組の組長・安生芳雄を殺害。金庫から3億円を強奪する。この事実を知った安生組の若頭・垣原雅雄は、報復を果たすため犯人探しに奔走するが、狡猾なジジイの策略と、化け物じみた残忍な殺しを行うイチの圧倒的な力の前に、逆に追い詰められていってしまう。
登場人物・キャラクター
城石 一 (しろいし はじめ)
22歳。ジジイ率いるはぐれ者グループの一員。高校時代に陰湿ないじめを受けた経験を持ち、そのときの記憶をジジイに利用され、殺し屋として暗躍する。普段は海鉄機工という地方の板金工場で働いており、殺し屋としてのイチの正体を知っているのはジジイのみ。ほかのメンバーはイチというニックネームしか知らない。 岩を破壊するほどの超人的な脚力の持ち主で、鋼鉄で補強した靴の踵に仕込んだ刃を使ってターゲットを殺害する。その切れ味は凄まじく、人間の体を軽々と切断してしまうほど。また、防弾加工が施された特殊なプロテクトスーツも着用する。気弱で臆病な性格だが、過去のいじめのトラウマを刺激されることで、殺し屋として覚醒。 かつて自分をいじめていた相手と、殺害のターゲットとなる人物を重ね合わせ、その復讐という自らの妄想に浸った状態で殺しを決行する。さらに潜在的には、人を痛めつけることに性的興奮を覚える究極のサディストでもあり、殺害時には興奮を抑えきれず、たびたび射精している。こうした過去のトラウマからくる妄想と、人を痛めつけることに対する性的衝動のふたつが、イチが殺し屋として活動する大きな原動力となっている。
ジジイ
本名不明。新宿で違法な商売をして生きるはぐれ者グループのリーダー。見た目は小柄な初老の男性だが、これは整形手術によるもので、実際の年齢は30代前半。極めて理知的な人物で、ヤクザや中国マフィアなどのアウトロー事情に精通している。また、小柄な体格とは裏腹に、ステロイド注射によって、異常ともいえる筋肉を身につけている。 イチの殺し屋としての超人的な才覚に目をつけ、自身の計画のためにその能力を利用。イチが抱えるトラウマと妄想を巧みに操り、新宿屈指の武闘派ヤクザである垣原組の壊滅を目論む。ジジイ自身はこれをイチによる平和の新宿計画と呼び、そのシナリオに沿って行動する。
昇 (のぼる)
両腕の入れ墨が特徴的な巨漢の男性で、ジジイ率いるはぐれ者グループの一員。拳銃の密輸ルートに詳しく、自身も拳銃の扱いに慣れている。
龍 (りゅう)
ジジイ率いるはぐれ者グループの一員。中国人の男性で、日本語が堪能。女たらしのヒモで、ミユキというヘルス嬢に貢がせている。生粋のスケコマシだが、女性への愛情は深く、寂しい女性を幸せにするのがスケコマシの仕事というポリシーを持つ。
井上 (いのうえ)
細身でスキンヘッドの男性。井上は偽名で本名は加納。盗聴器などの扱いに詳しい。重度の薬物中毒者であり、また死姦を好む異常な性癖の持ち主。かつては新宿を根城とするヤクザ・安生組の構成員だった。しかし、2年前に覚醒剤絡みの件で失態を犯したことから破門され、その後、整形手術によって顔を変え、ジジイ率いるはぐれ者グループの一員となる。
垣原 雅雄 (かきはら まさお)
35歳。新宿を根城にするヤクザ・安生組の若頭。大きく裂けた口をピアスで止めていることなどから、ピアスのマー坊との異名を持つ。組長の安生芳雄がイチに殺されたあと、独自に垣原組を立ち上げる。他人を容赦なく痛めつける残忍なサディストであると同時に、自分自身が痛めつけられることに対しても性的快楽を覚える生粋のマゾヒスト。 暴力や痛みに対して独自の美学を持っており、常人では理解不能な言動も多い。細長い針を何本も持ち歩いており、戦闘や拷問の際にはこれを利用する。組長の安生芳雄のことを単に杯を交わした親父というだけでなく、自分に暴力という快楽を与えてくれる存在として愛していた。当初、イチに対しては安生芳雄の仇という認識であったが、イチの残忍性を目の当たりにするにつれ、マゾヒストである自分の欲望を満たしてくれる存在として期待するようになる。
金子 修二 (かねこ しゅうじ)
ヤクザ・安生組の構成員。組に対する恩義が深く、いざというときは鉄砲玉として貢献することが自分の使命だと考えている。既婚者だが、妻に逃げられ現在は息子のタケシと二人暮し。また、かつてプロのキックボクサーだったという経歴を持つ。
高山 (たかやま)
ヤクザ・安生組の構成員。大柄な男性で、二郎・三郎兄弟にはゴリラとあだ名される。かつて怖いもの知らずの武闘派ヤクザとして名前が通っていたことがあり、若頭の垣原雅雄からも一目置かれている。しかし、実際には小心者な一面があり、垣原雅雄と行動を共にしつつも、内心ではその異常性に怯えている。
二郎・三郎 (じろう・さぶろう)
大柄な双子の兄弟で、6年前に解散した九州のヤクザ・阿籐組の残党。イチに対抗するための助っ人として、同じく阿籐組の元組員だった垣原雅雄に呼ばれて歌舞伎町へとやってきた。二郎はリーゼントヘアーで、素手で腕や耳を引きちぎるほどの怪力の持ち主。三郎はドレッドヘアーで、ドスの扱いに長ける。 阿籐組解散後は、組長クラスのヤクザの女房を寝取り、それをネタに女を脅して金を巻き上げるマメドロボウで生計を立てていた。ふたりとも短気で粗暴な性格であり、気に入らないことがあるとすぐに暴力に訴える。また、性欲が強く、これまで何百人もの女性を強姦している。双子だがお互いへのライバル心が異常に強く、ことあるごとにどちらが上か優劣をつけたがる。 実は三つ子でもうひとり一郎という兄がいたが、些細な喧嘩の結果、二郎と三郎によって殺された。
カレン
新宿のホステスで、ヤクザ・安生組の組長である安生芳雄の愛人。安生芳雄が殺害されたあと、その犯人を捜すため垣原雅雄に協力するが、裏でははぐれ者グループのジジイとも繋がっており、ジジイの計画完遂のために暗躍する。
安生 芳雄 (あんじょう よしお)
新宿のヤクザ・安生組の組長。新宿屈指の武闘派ヤクザの組長として恐れられていたが、歌舞伎町サンライズマンション(ヤクザマンション)の愛人部屋にいたところをイチによって殺害された。
鈴木 (すずき)
安生組と同じ三光連合の傘下にあるヤクザ・船鬼一家の幹部。以前から暴力を傘にシマを荒らす安生組のことを忌々しく思っていた。それを利用したジジイの策略により、安生組の若頭・垣原雅雄に組長である安生芳雄殺しの犯人と疑われ、拷問される。その後、疑いは晴れたものの、この一件から垣原雅雄に強い恨みを抱くようになり、中国マフィアに扮したジジイらの誘いに乗り、垣原雅雄殺害に協力する。
林田 洋子 (はやしだ ようこ)
イチが暮らす地元の風俗店でセーラという源氏名で働いている女性。同棲相手の男性に酷いDVを受けており、この男性を殺してやりたいとイチに打ち明ける。それに応えてイチは実際に殺害を決行し、セーラを自分のものにしようとする。しかし、その凶行を目の当たりにしたセーラは、これを激しく拒絶したため、逆上したイチによって殺害された。
金子 タケシ (かねこ たけし)
ヤクザ・安生組の構成員である金子修二のひとり息子で小学生。金子とともに歌舞伎町サンライズマンション(ヤクザマンション)で暮らしている。小学校でいじめに遭っていたが、イチに蹴りを教わったことでいじめられなくなった。
立花 (たちばな)
高校時代のイチの同級生である女子生徒。イチの思い出の中にのみ登場する。いじめられていたイチを庇ったことをきっかけに、自身も陰惨ないじめに遭う。
集団・組織
はぐれ者グループ (はぐれものぐるーぷ)
『殺し屋1』に登場するグループ。ヤクザ組織を破門され、新宿を根城にヘロインや拳銃の密売、密告、強盗といったアウトローな商売を生業として暮らす一団。ジジイをリーダーに、元ヤクザである昇、龍、井上、およびイチの5名が所属。新宿屈指の武闘派ヤクザである垣原組の壊滅を目論む。
三光連合 (さんこうれんごう)
『殺し屋1』に登場する団体。新宿を仕切るヤクザ組織による連合体の名称。会長は中沢俊至。安生組もこの連合の傘下だったが、組長の安生芳雄が殺されたあと、若頭であった垣原雅雄が暴走して、同門の船鬼一家にケンカを売ったことから絶縁された。
垣原組 (かきはらぐみ)
『殺し屋1』に登場する団体。垣原雅雄を組長とするヤクザ組織。歌舞伎町サンライズマンション(ヤクザマンション)に事務所がある。元々は安生組であったが、組長の安生芳雄がイチによって殺害され、さらに垣原雅雄が三光連合から絶縁されたことを機に立ち上げられた。
場所
歌舞伎町サンライズマンション (かぶきちょうさんらいずまんしょん)
『殺し屋1』に登場するマンション。新宿歌舞伎町にあるマンションで、入居者の8割がヤクザ関係者であることから、通称・ヤクザマンションと呼ばれる。組事務所、組長宅、組員住居、愛人宅、タコ部屋といったものから、SMクラブ、ホテトル、賭博場といったシノギ関連店舗まで28団体、約130軒が入っている。
その他キーワード
イチによる平和の新宿計画 (いちによるへいわのはいきょけいかく)
『殺し屋1』に登場する計画。はぐれ者グループのリーダーであるジジイによって立てられた計画で、日本でもっとも刺激的で面白い街である新宿を、平和で退屈な廃墟に変えるというもの。イチを使って歌舞伎町サンライズマンション(ヤクザマンション)の垣原組を壊滅させたのは、新宿のなかでもこのヤクザマンションがもっとも面白い場所であったため。 なお、ジジイがこの計画を立案したのは、自分が死んだあとに楽しいことがあるのは許せない、という極めて個人的な動機に基いている。