ドンケツの意味
タイトルにもなっている「どんけつ」とは、最下位・ビリという意味。作中で主人公の沢田政寿(ロケマサ)が「どんけつヤクザ」と蔑まれていることに由来する。北九州最大の極道組織月輪会の武闘派・孤月組最強の男でありながら、45歳にもなってなんの役職にもついておらず、出世する気配もない。その理由は、見境なしに恐喝、タカリを行い、気に入らなければ上役にも平気で暴力を振るうロケマサの傍若無人ぶりにある。読売テレビ『川島・山内のマンガ沼』で、作者のたーしは、ロケマサは『じゃりン子チエ』の登場人物竹本テツのオマージュだと発言。「こんな人がいたら嫌だなあ」と思いながら描いているという。嫌われ者だらけの極道社会でも特に嫌われていて出世するわけでもないという、一風変わった主人公がロケマサである。
無茶苦茶だが魅力的なロケマサ
「ロケマサとは関わるな」と忌み嫌われるロケマサだが、相手が誰であろうと自分を貫く姿に憧れを抱く者も多い。フリーでマリファナを売っていた内村タツオは、月輪会弦月組に捕まってしまうが、知り合いに頼まれて単身乗り込んできたロケマサに命を救われる。自分と母を捨てた、卑怯で嘘つきの惨めな父親を持つタツオは、強さに対して人一倍憧れを持っており、ロケマサの子分になろうと奮闘する。弦月組の見習い・時定卓也は、弦月組組長・小田に唆され、ロケマサの命を狙うが、返り討ちに遭って重傷を負う。しかしその後、ロケマサと小田の談判に同席した際、両者の器の違いを知り、ロケマサに憧れるようになる。そんな二人は、後に心身ともに成長し、ロケマサ組の構成員となった。
北九州弁で盛り上がる極道のドラマ
物語の舞台は福岡県北九州市小倉。極道たちの会話は北九州弁で行われるが、作者のたーしは北九州市門司区の出身であるため、方言がとてもリアルである。喧嘩の際の怒鳴り合いが迫力満点なのはもちろん、相手を「挑発する」「脅す」「すかす」といった極道同士の会話も読み応えがあり、物語に緊張感が増しているといえる。ちなみに作者のたーしは、ヤクザを取材したことはないが、「観察」のようなことを行い、作品のディテールにはこだわったという。
登場人物・キャラクター
沢田 政寿 (さわだ まさとし)
北九州最大の極道組織である月輪会の孤月組の組員。短髪、口ひげが特徴の筋骨隆々たる大柄な男性。背中に「極」の一文字の入れ墨がある。初登場時は45歳。20年前、孤月組の縄張りで商売をしようとしたヤクザの事務所に、ロケットランチャーを打ち込んだことから「ロケマサ(ロケットランチャーのマサ)」と呼ばれる。シノギはバクチと恐喝だけで、組に上納金を納めない。また、誰彼かまわず暴力をふるい、気に入らなければ上役にも手を出すならず者として有名。「ロケマサには関わるな」といわれる一方、人間離れした腕力、体力で無類の強さを誇ることから、憧れを持つ者も多い。
内村 タツオ (うちむら たつお)
沢田政寿(ロケマサ)の子分。初登場時は金髪で、18歳の青年。母と自分を捨てた父は、みじめな卑怯者だったことから、信念を持つ強者への憧れを抱いている。マリファナの売人であることがばれ、月輪会の弦月組に捕まるが、ロケマサに助けられる。その際、ロケマサの舎弟を志願するが、殴り倒されて追い返される。しかしめげずに通ったことで、小間使いとしてそばにいることを許される。その後、さまざまな失敗を重ねながら成長し、ロケマサと親子盃をかわすに至った。
続編
ドンケツ第2章 (どんけつだいにしょう)
作者・たーしの代表作『ドンケツ』の続編。月輪会、月暈組、月のはぐれ者による三つ巴の戦いから3年後。警察による暴排キャンペーンが功を奏し、ヤクザたちが鳴りを潜めたように見える北九州市小倉が舞台。組織に属... 関連ページ:ドンケツ第2章