あらすじ
第1巻
夜、アラサー女性の香西泉は、おしゃれなバーで一人酒をあおっていた。いい男にナンパされることを楽しみにしていたものの、客層はくたびれた中年ばかりという店の状況に荒れた泉は、店への悪態をつきながら、露骨に迷惑そうな顔をするマスターに対し、勝手にその日の出来事を語り始める。そして泉は、周囲に甘やかされるあまり身勝手な言動を繰り返す後輩のハナへの苦情をまくし立て、自分も甘やかされたいと愚痴をこぼす。そんな彼女の言葉を聞くとはなしに聞いていたマスターは、温かくて甘いものが欲しいのならばこれはどうだと、店の試作メニューであるハチミツをかけたピザを、泉の前に置く。(第1夜「甘くて…」。ほか、17エピソード収録)
登場人物・キャラクター
香西 泉
OLの女性で、年齢は29歳。黒髪をショートボブにしている。友人の結婚式への参加回数が二桁となり、親にも結婚をせっつかれていることから、男探しにやっきになっているがうまくいかず、マスターの働くバーへ通っては愚痴を吐くという日々を過ごしている。もともとマスターのバーにはナンパされることを目的にきていたが、客のほとんどが中年男性のため、現在ではバーでの出会いはあきらめ、単にストレス発散のために通っている。
マスター
香西泉の行きつけのバーで、バーテンを務める青年。金髪を刈り上げた坊ちゃんヘアで、どこかボーッとした表情をしているが、実際は慇懃無礼な毒舌家。金払いのいい客が大好きな拝金主義者で、店に来ては男関係の愚痴を吐くばかりの泉には、基本的にあたりがキツい。また、いちいち口には出さないものの、彼女に対して心の中で辛辣なツッコミを入れていることも多い。一方で客と店員という関係ながら仲はよく、バーで出す試作メニューを泉に試食してもらうことが多い。ちなみにその際も、試作とはいえ飲食代はしっかりと徴収する。
ハナ
香西泉と同じ会社で働くOL。泉の後輩にあたる。ゆるく巻いたロングヘアのかわいらしい女性で、日々合コンに繰り出してはいい男あさりに余念がない。その外見に反して腹黒く、男性に縁がない泉を合コンに誘うのも、あくまで自らの引き立て役としてであり、さらにそのことを明言して隠さない。コーディネイトを無難にまとめがちな泉に対し、勝負するように強くうながしたり、ファッション指南をしたりと協力を惜しまないが、それもこれもすべて、「ハナが合コンに連れてくる女性はダサい」という、自らの評価を下げかねない事態を憂慮するがゆえである。
新田
香西泉と同じ会社で働く新人の男性社員。明るい色の髪を短く借り上げた、爽やかな好青年。当初は泉に「年下は好みではない」と特に気にも留められていなかったが、泉の指導のもと順調に成長していくにつれ、彼女に意識されるようになっていく。のちに、泉に「時間を下さい」と告げ、半ば強引にアクセサリーショップへと連れ出して指輪を物色し始め、泉を動揺させる。
イチゴ
オタクの若い女性。ハナの知り合い。黒髪をツインテールにし、そばかすのある地味な顔立ちをしている。いわゆる「サークルの姫」であり、単に自分がちやほやされる姿をハナに見せつけることを目的に、オタク仲間の男性陣を相手にした合コンを主催して、ハナと香西泉を招いた。だが、日頃の立場に甘んじたわがままさが祟り、百戦錬磨のハナの合コンテクニックの前に徹底的に叩きのめされる。
高橋
香西泉と同じ会社で営業として働く青年。眼鏡をかけた落ち着いた風貌で、大人っぽいイケメンだと泉には好評だが、バツイチという噂があり、ハナからはどこか警戒されている。たまたま聞こえた雑談から、泉が高橋自身に好意を抱いていることを知り、以来、さりげなく彼女に接近していく。実は極端に束縛が強いうえにストーカー気質で、そば屋やマスターのバーで泉と出会ったことがあるが、それらは偶然ではなく、すべて陰から密かに彼女の行動を観察したことによるものであった。やがて泉と親しいマスターに嫉妬し、彼のバーから泉を遠ざけようと画策するようになる。