概要・あらすじ
レズビアンのカップルマリーとエリーは、人工授精で主人公の少年イハーブを代理出産する。女児を望んでいたふたりによって育てられたイハーブは、自分が誰からも必要とされていない人間だと考えるようになってしまい、泥棒のムッシュを自分の父親だと思い込んで、偶然出会った強盗のガンズやローゼス・アンをたどってムッシュを探し始める。
登場人物・キャラクター
イハーブ
表情が乏しく無愛想な少年。年上にも物おじしない性格。レズビアンのカップルの間に人工授精で生まれるが、両親は女児を望んでいたことから、自分が誰からも必要とされていないのではないかと気に病んでいる。有名な泥棒のムッシュがマリーたちに精子を提供した自分の父親だと考えている。時折姿を現すムッシュと会話をするが、その姿はイハーブ以外の人間には見えない。 自分の存在理由を確認するため、ローゼス・アンやガンズたちと行動を共にし、ムッシュに直接会って話を聞こうとする。
マリー
人工授精でイハーブを出産した代理母。子供のころに着ていた服を自分の娘に着せるのが夢で、男であったイハーブが幼いころには構わず自分の服を着せていた。マイペースで落ち着いた性格だがイハーブを思う気持ちは強い。恋人のエリーが失踪した現在はイハーブを養うため、自宅で「ヒゲ抜き屋」を営んでいる。
ムッシュ
有名な泥棒で、その身柄には莫大な懸賞金がかけられているが、現在に至るまで逮捕歴はない。現在では、難病に侵されているために仲間たちの元から姿を消している。たびたびイハーブの前に姿を現してイハーブと会話をし、時には窮地を救ったりもするが、その姿はイハーブ以外の人間には見えない。
トニー 谷田 (とにー たにだ)
中央警察生活安全課防犯・少年保安係に所属する刑事。創立記念日で外出していたイハーブを見て、学校をさぼっていると勘違いして補導する。元は刑事局に所属しており、左遷されているが、イハーブがムッシュに執着していることに気付いて、独自にムッシュの調査を始める。
ガンズ
紅バラ友の会という強盗団の一員。左腕の肘から先を欠損しており、マシンガンやドリルの付いた義手を武器にしている。宝石強盗をして逃げ遅れ、怪我をして入院していたところでイハーブと知り合い友人になる。ムッシュにあこがれて弟子入りするが、姉のローゼス・アンがムッシュに捨てられたことでムッシュを恨んでいる。 好物はアンパン。
ローゼス・アン
ムッシュの率いる組織の下部組織紅バラ友の会の女ボスでガンズの姉。弟のガンズと共にムッシュに弟子入りして強盗になる。ムッシュに恋をしており、ムッシュの子を妊娠したこともある。ムッシュが姿を消してからも好意を抱き続けており、ムッシュと再会したがっている。
ボンベイ
紅バラ友の会のひとり。常に機械のようなサングラスとクチバシのようなマスクをつけている。イハーブには「Dr.ボンベイ」と名乗るが、別に医者ではない。銀行に忍び込んだ際、うっかりローゼス・アンたちとはぐれ、ヒデ・デ・モンの人質になってしまう。
浜松 丈二 (はままつ じょうじ)
中央警察刑事局の課長。ムッシュの組織が起こした刑事事件の捜査を行っている。警察組織のあり方に疑問をいだいており、幼い頃から友人同士だったムッシュの犯行に密かに協力している。ムッシュのことはエリクと呼ぶが、自分が下の名前で呼ばれることは嫌っている。
エリー
マリーの恋人であり、イハーブを産むための卵子を提供した女性。しかし、マリーの蓄えていた貯金を持って、突然マリーとイハーブの元を去る。職業は奇術師であり、ムッシュ対策のアドバイザーとして警察に招聘されている女性。ムッシュを追うトニー谷田に情報を与える。
テン・ナン・ジャン
フレーゲル・ハイム銀行に勤める銀行員で、警備部に所属している。ムッシュとつながりを持っており、自分の勤めているフルーゲル・ハイム銀行の地下にある大金庫を襲撃するというムッシュの計画をローゼス・アンたちに伝える。
ヤハベ
ムッシュの組織の一人で、神父風のファッションをした男。構成員の中でも高い戦闘能力を持つ。ローゼス・アンたちとフルーゲル・ハイム銀行の金庫に侵入する。しかし、信頼する人を裏切ることに快感を覚える性質を持ち、ローゼス・アンたちを策略に陥れる。
キリコ
イハーブと同じ学校に通う、上級生の女の子。ムッシュの娘であり、子供ながらムッシュの代理人として組織を取り仕切っている。難病に臥せっているムッシュを救うために、ローゼス・アンたちにフルーゲル・ハイム銀行の地下金庫を襲撃させようとする。練乳などを直接なめるほどの、度を越えた甘いもの好き。
ワルムルダム
フルーゲル・ハイム銀行の金庫番をしている男。心眼を養うために、絆創膏で目を塞いでいる。忍び込んだローゼス・アンの前に立ち塞がるが、なにも見えずにあっさりやられる。かつて愛する恋人を失ったことから達観した性格の持ち主。
ヒデ・デ・モン
イハーブたちが地下に忍び込んでいるフルーゲル・ハイム銀行に強盗に入ってしまった青年。全ての歯が無く、筆談で会話をする。本当はある程度は話すことができるが、銀行強盗として迫力を出すために黙っている。