概要・あらすじ
2050年夏。定員たった1名の狭き門である大聖堂の司教を目指す隠塚葵は、同性の友人である高原吉祥への想いに悩んでいた。やがて2人は肉体関係を持つようになるが、「姦淫罪」に抵触した人間が司教を目指すことを快く想わない人物が、2人の関係を暴こうとする。
登場人物・キャラクター
隠塚 葵 (おんづか あおい)
神学校に通う男子生徒。上昇志向が強く、入学時から大聖堂の司教になりたいと考えていた。入学した年も若く、飛び級もしているため、年齢は三ツ木紫延よりも4歳か5歳下に当たる。しかし、授業中は眠っていることが多く、友人のノートを写して提出することもあり、模範生とは言いがたい存在でもある。友人である高原吉祥を想い、彼に強い欲望を抱いているが、それが「姦淫罪」に抵触すると感じ悩んでいる。
高原 吉祥 (たかはら きっしょう)
隠塚葵の友人で、神学校に通う男子生徒。大聖堂への志願書は提出していない。葵とはいつも一緒に行動しており、非常に親しい存在。葵と一線を越えてからもどこか余裕があり、葵はその温度差に悩むことになる。「キセリュズ」という香水を愛用している。
三ツ木 紫延 (みつぎ しのぶ)
隠塚葵の友人で、神学校に通う男子生徒。家族の強い意向もあり、大聖堂への志願書を提出しているが、そのプレッシャーに苦しんでいる。容姿端麗で清廉潔白な人物だが、司教への道に執着するあまり、大司教へある秘密を打ち明ける。
宮路 (みやじ)
隠塚葵の友人で、神学校に通う男子生徒。大聖堂への志願書は提出していない。葵の身体から高原吉祥のつけている「キセリュズ」の香りがすることと、あるものを目撃したことで2人の関係を確信する。告げ口をする気はないが強い嫉妬を感じ、彼らの行いは「神様が見ている」と考えている。
主任 (しゅにん)
神学校で主任を務める男性。左目の脇にほくろが2つあるのが特徴。大司教の命を受け、大聖堂への志願書を提出した隠塚葵の素行を調査している。結果、葵に芳しくない点があることに気付き、大聖堂へ志願し、司教になることを強く望む三ツ木紫延を揺さぶることで情報を聞き出そうとしている。
大司教 (だいしきょう)
神学校の大聖堂で、現在の大司教を務める男性。口元にほくろがあるのが特徴。隠塚葵と高原吉祥の関係を直感的に悟り、主任に葵の素行を調査するように命じる。その際主任に「同じ穴の狢を嗅ぎつけたか?」と問われているが、返答はしていない。
場所
神学校 (しんがっこう)
隠塚葵たちが通う学校のこと。名門中の名門聖バーロソミュー教会の付属校で、試験にパスし大聖堂の司教となることはこの上ない名誉とされている。生徒は皆寄宿舎で生活しており、乱れぬ秩序の元、規則と戒律にがんじがらめの暮らしを送っている。2050年夏に冷房が故障したため、全館がサウナのように暑くなっている。
夢 (ゆめ)
大聖堂で行われている処刑の執行法と、執行される場所のこと。受刑者にプログラムされた夢を見せることで、夢の中で処刑が執行される。夢の中でどれだけ苦痛を味わっても現実の身体には影響されず、刑執行終了後は受刑者は自由の身となる。しかし、夢の中に出現する断崖から落ちると、受刑者は2度と目覚めない身体になり、精神の死が訪れる。