イロメン ―十人十色―

イロメン ―十人十色―

『ミステリと言う勿れ』を代表作とする田村由美の、集英社媒体では初連載となる作品。名字に色の名前が付いた社員が多く勤務する「十色商事」を舞台に、自らの名に対して強いこだわりを持つ社員たちの、軽妙でテンポのいいやりとりを描いたサラリーマンコメディ。集英社「ココハナ」2012年10月号から2020年9月号にかけて掲載の作品。

正式名称
イロメン ―十人十色―
ふりがな
いろめん じゅうにんといろ
作者
ジャンル
サラリーマン
 
ギャグ・コメディ
レーベル
マーガレットコミックス(集英社)
巻数
全4巻完結
関連商品
Amazon 楽天

舞台は色にゆかりのある社員が勤務する「十色商事」

主人公の青木晴臣や緑川摩利夫、赤木譲をはじめ、彼らの直属の上司である黒仏樽馬部長、新人の桃栗はるか、ニューヨーク支社から秘書課にやってきた美和子・ホワイト、さらには灰谷大也常務など、本作の舞台となる会社「十色商事」には、名前に色が付いた社員が多い。そして彼らはいずれも、自分の名前に含まれる色に強いこだわりを持っている。なお、新人の枯枝大樹は名前に色が含まれていないものの、「かれえだ」→「カレーだ」という変換から、青木には黄色担当と見なされている。当初、枯枝自身はそのことを認めようとはしなかったが、周囲が色にまつわる話で盛り上がっている姿を見て、次第に黄色担当であることを受け入れるようになる。ちなみに十色商事は、2014年で創立100年を迎えた大手企業で、ニューヨーク支社や大阪支社もあり、それらの支社にも名前に色が付いた社員が多い。また、「といろくん」というかわいらしいマスコットキャラクターもいる。

色にまつわるさまざまなネタが満載

本作は、「十色商事」の社員である青木たちの「推し色」を主張する会話がテンポよく繰り広げられ、まるでギャグマンガのような展開が楽しめる。作者の田村由美特有の耽美なキャラクターたちとそのセリフとのギャップが、作品にさらなる笑いを提供している。ちなみに、色をテーマにした会話は、昭和から平成にかけての特撮ヒーローやアニメをはじめとしたマニアックな小ネタがふんだんに盛り込まれており、当時のサブカル好きに刺さる内容となっている。また作品を通じて慣用句や格言、観光名所や食べ物など、色にまつわるさまざまな知識を学ぶこともできる。そして物語中盤以降は、東京オリンピックに合わせて「色遺産選定」という国家事業が行なわれることとなり、その担当を巡って「レインボー物産」というライバル企業とのビジネスバトルが繰り広げられ、さらなる色ネタが展開されるようになる。中にはかなりディープなネタも含まれているが、コミックスの巻末には、各エピソードで語られたネタを解説する「田村由美によるイロメン用語解説」という辞典のようなコーナーが設けられており、その用語の詳細を知ることができる。

イケメンなのになぜかモテない男たちの恋の予感

青木と緑川は、イケメンながらなぜか女性にモテた経験がない。だが、物語が進むにつれて、彼らに好感を抱く女性が登場する。さらに、自らまったくモテたことがないと語っていた赤木の前にも、気になる女性が現れる。また、当初はガリガリに痩せて幽霊のようだった枯枝が、青木たちとのかかわりを通して日常に楽しみを見出して食欲が増し、どんどん愁いを帯びたイケメンに変身してモテるようになるなど、時に挿入される彼らの女性関連のエピソードにより、一部ラブコメディ要素も楽しめる。

登場人物・キャラクター

青木 晴臣 (あおき はるおみ)

十色商事に勤務する青年。緑川の先輩にあたる。甘い顔立ちのイケメンで、青田買で入社した。青色が大好きで、何かにつけて「青」という文字にまつわる言葉を発する。人当たりが柔らかく、周囲に対しても気遣いができる一方で、少々優柔不断なところがある。ニューヨーク支社帰りの赤木に軽いライバル意識を抱きつつも、「赤はリーダーだから仕方がない」と彼の存在を認めている。青木自身の担当カラーである青色にかかわることについてはボケがちだが、ほかの社員が担当カラーでボケる時には、突っ込み役に回ることが多い。年の離れた姉が二人いる。

緑川 摩利夫 (みどりかわ まりお)

十色商事に勤務する青年。青木の後輩にあたる。かわいらしく整った顔立ちをしている。緑色が大好きで、何かにつけて「緑」という文字にまつわる言葉を発する。明るく屈託のない性格で天然な発言が多く、よく青木に突っ込まれているが、大体は軽く受け流されている。また、多くの言葉を知ってはいるものの、キリンは黄色いから名前に「キ」が入っていると思っていたり、「目黒のサンマ」という言葉から、目黒でサンマが水揚げされると思っていたりと、カンちがいして覚えていることが多い。そのことを指摘されるたびに「カルチャーショック!」と大きな衝撃を受けている。ちなみに「万起男」という双子の弟がいるが、弟は摩利夫とは対照的にマルチリンガルで頭の回転は速いが口が悪く、人付き合いが面倒くさいという理由で引きこもっている。

赤木 譲 (あかぎ じょう)

十色商事に勤務する青年。最近ニューヨーク支社から帰ってきたばかりで、ニューヨーク支社では「ジョー」と呼ばれていた。精悍(せいかん)な顔立ちのイケメン。赤色が大好きで、何かにつけて「赤」という文字にまつわる言葉を発する。落ち着いた性格でつねに余裕ある態度を崩さないが、理屈っぽいところがある。ニューヨーク支社の赤字を2桁減らして3割増やし、さらに8倍にしたという謎の実績の持ち主。赤木自身は、このことについて「赤字とはいえ、赤を嫌うのは気が引けた」と嘯(うそぶ)いている。青木に対しては、その名前から「いつも2番手だが、クールでイケメンぶった立ち位置」と評しているものの、どこかライバル意識を抱いているのか、彼の言葉に異議を唱えがち。一方で、意外にも思考回路は青木と似通っており、彼が言葉を発する前に意を察していることもある。ちなみに、好きな言葉として「赤子丸裸」と答えるなど、どこか天然な一面を持つ。「実紅」という高校生の妹がおり、少々シスコン気味。料理が得意で毎日実紅と自分の弁当を作っているが、彼女にはかわいいキャラ弁ばかり作って嫌がられている。

書誌情報

イロメン ―十人十色― 全4巻 集英社〈マーガレットコミックス〉

第1巻

(2014-04-25発行、 978-4088452012)

第4巻

(2020-09-25発行、 978-4088443751)

SHARE
EC
Amazon
logo