あらすじ
序章/邂逅編(第1巻)
菱崎商事に勤務する神田太陽は、努力せずに結果を出せなかった部下を、自己責任の名目であっさり切り捨てるドライな男だが、史上最年少で企画一課の課長に昇進したやり手ビジネスマン。だが、そのスピード出世をねたむ上司にハメられ、不祥事の責任を押し付けられて警察へ出頭するよう命じられる。しかし、その命令に背いて逃げ出した太陽は、行き場もなく路地で行き倒れになっているところを、たまたま出会った月島英理子に保護される。食事をする金もない太陽は、やむを得ず英理子が社長を務める株式会社エリコムで働く事になる。しかし、エリコムはエロゲを作るソフトハウスだった。しかも社員は全員が若い女性。エロゲの事などまったくわからない太陽には、女性グラフィッカーが描いたエッチなイベントCGの局部に、モザイクを入れる仕事ぐらいしかできない。翌日、エリコムに仕事を発注した会社の社長、岩倉がやって来て、現在制作中のエロゲのCGの世界観がバラバラである事を指摘し、修正を依頼する。それはプロデューサーの指定ミスだったのだが、岩倉は責任をエリコムに押しつけ、完成できなければ報酬は支払わないと告げる。今からCGを修正するのは、時間的にもコストの面でも無理な話だった。1日分のアルバイト代を渡されてエリコムから解放された太陽は、ようやく食事にありつく。そこで太陽は、かつての部下が菱崎商事の不祥事の責任を被って逮捕されるニュースを見るのだった。自分の帰る場所は菱崎商事ではなく、エリコムの連中と仲間になりたいと感じた太陽は、エロゲ修正の解決策を思いつく。それはすべての女性キャラに「ちんこ」を書き足せば、世界観を統一できるという案だった。そのアイデアにスタッフ達はちんこを連呼しながら賛同。こうして無事発売されたエリコムの新作「もっこりガールズ」は好評を獲得。太陽はエリコムの一員として新たな一歩を歩み始めるのだった。
デバッグ編(第1巻)
神田太陽は、エロゲ制作会社「エリコム」でアルバイトとして働く事になった。スタッフと共に3日間の徹夜でデバッグ作業を終え、ようやく新作の納品を終えた太陽は、宝嶋原という人物と出会う。その男性は、エリコム社長、月島英理子のゲーム業界の大先輩であり、エロゲ界永遠の名作で究極の「泣きゲー」と呼ばれる名作「マジック・コンドーム」(通称マジ・コン)の制作者だった。エリコムのスタッフ、聖美がこの業界に入ったのも、「マジ・コン」に感動したからだった。しかし、宝嶋原は経営に行き詰まって、自身が経営する会社「チューズデイソフト」を倒産させる決断を下していた。完成間近の新作「マジ・コン2」を現金で売り渡し、そのお金で社員達に未払いだった給料を支払うという。「マジ・コン2」を買い取った人物が桐崎京市だと知った英理子は、チューズデイソフトに急ぐ。京市は、トラブルで制作が止まった企画を安値で買い叩いて儲ける、「回収屋(サルベージャー)」と呼ばれる業界の嫌われ者だった。京市が買い取った「マジ・コン2」は、まだデバッグがまだできていないバグだらけの未完成品だった。しかし京市はこのまま販売し、伝説のエロゲの続編がクソゲーになったという話題を作り、金を儲けようと考えていた。「マジ・コン」に思い入れもある英理子は京市に怒りをぶつける。利益のためにスタッフも作品も切り捨てる京市に、商社マン時代の自身の姿を重ねた太陽は、それなら3日間でタダでデバッグしてみせろという京市の挑発に乗ってしまうのだった。エリコムの社員、そして一部残ったチューズデイソフトのスタッフでデバッグ作業にあたるが、3日間ではとても終わらない。しかし、太陽が秋葉原の街中で通りすがりのユーザーに、デバッグに協力してもらうというアイデアを思いつき、「マジ・コン2」がクソゲーになる事は回避する。資金繰りに焦るあまり売り渡した作品が、ファンの愛で救われた事に感謝の涙を流す宝嶋原。しかし結局、京市はまんまと安値で「マジ・コン2」という傑作を手に入れた事になり、もとのスタッフ達が明日の生活もわからない状態である事に変わりはなかった。
ブラック社長編(第1巻~第2巻)
神田太陽が菱崎商事から正式な解雇通知を受けたある日、太陽は月島英理子から企画の仕事をやってみないかと提案される。これまでエリコムでシナリオを担当していた遥香が退社する事を受けての事だった。しかし、ゲームの事をろくに知らない太陽が作る企画はひどい代物ばかりだった。後日、一流ゲームメーカーの「水星堂」に転職した遥香は過労で倒れ、救急車で運ばれる。怒った英理子と太陽は、水星堂に押し掛け、そこで水星堂のボス、黒長のブラック社長ぶりを目にする。黒長は、疲れ切ったスタッフに無理なノルマを課し、飲み会には強制参加させ、飲み会でアイデアを出させてはボツを出して、アルコールのイッキ飲みを強いていた。病院から無理して戻った遥香は、水星堂の人気キャラクターである、忘れ妖精のリリンを使った純愛アドベンチャーゲームの企画を提案する。しかし、リリンは水星堂から去った前の企画チーフが生み出したキャラクターであり、その企画チーフに恨みを持つ黒長は、リリンとゴリラの純愛ストーリーという無茶な条件ならと企画を認める。遥香は命を掛けてでも1週間でリリンとゴリラの純愛シナリオを書きあげてみせると決意するのだった。美しい妖精とゴリラの純愛という無茶なストーリーでありながら、遥香は素晴らしいシナリオを書き進めていく。しかし、黒長はシナリオができたら、ゲームが完成する前に遥香をクビにして、シナリオだけ頂こうと考えていた。遥香の身を案じて水星堂に駆けつけた太陽と英理子は、過労死寸前で倒れている遥香を発見し、救急車を呼ぶ。完成したシナリオを手に入れた黒長は、コストカットのためにほとんどのスタッフを問答無用でクビにするのだった。そんな黒長に対し、ついに怒りの炎を燃え上がらせた太陽は、解雇されたスタッフ達に、黒長に対して解雇予告手当の内容証明を送らせる。黒長のもとには解雇予告手当の内容証明が100通以上届き、ついにはかつてクビにしたスタッフ達がバットを手に支払いを求めてやって来る。彼らに愛車まで破壊され、自分の何が悪かったのかと泣く黒長に太陽は、仲間を信じて遥香が書き上げたシナリオをもとにゲームを完成させる事を促がすのだった。こうして病院に運ばれた遥香は意識を取り戻し、騒動は無事収まった。しかし、エリコムにて太陽が考えるゲームの企画案は相変わらず使えないものばかりだった。
地獄進行編(第2巻)
エリコムでは、エロゲ制作の修羅場を乗り切り、ようやく新作「ぼくのおたからパンツ」の完成を迎えていた。そこに岩倉が現れ、フルプライスのエロゲを1本、1か月で作ってくれないかと依頼してくる。エリコムの通常の制作ペースは半年に1本であり、1か月で作るなど無理は話だったが、岩倉は報酬として札束をどんどん積んでいく。月島英理子にあこがれるエリコムのチーフプログラマーで、神田太陽に対抗心を持つ芽衣は、自分をリーダーにしてくれればいいアイデアがあると、その依頼を引き受けるのだった。芽衣のアイデアとは、スタッフが就業中に会社の機材で描いたイラストやシナリオを使って、制作時間の短縮を図るというものだった。英理子は、芽衣はプログラムで多忙になるという理由で、企画進行は太陽に頼む。しかし、素人の太陽は、みんなの夜食を作るぐらいしかできなかった。制作開始から3日でスタッフの疲労は早くも高まり、芽衣もリーダーとしての自信に揺らぎつつあった。そんな中、元やり手ビジネスマンである太陽は、見事な制作進行スケジュールを組み立ててみせるのだった。なんとか進行の目途が立ったが、ある日、メインヒロインのボイスを1個収録し忘れていた事が発覚する。追加収録を頼もうにも、メインヒロインのボイスを担当するのは売れっ子の声優、アユリンであり、彼女はライブイベントの真っ最中であった。太陽と芽衣はライブ会場へ向かい、芽衣はリーダーとして土下座をして収録を頼み込む。その熱意にアユリンは、その場でボイスの追加収録に応じる。こうしてボイスを収録した二人だったが、ゲームをプレスする工場の周囲が暴風雨と落雷でインターネットから遮断され、直接届けるしかなくなってしまう。二人は川に流されたりしながらも、なんとか無事にデータを工場に届け、新作「学園ラブ・バスターズ」は無事発売されたのだった。
新規参入編(第2巻)
暴力団の小學組に、ITプロデューサーを名乗る丸込進という若い男がやって来る。丸込は組長にエロゲは儲かると口説き、制作費1000万円を出させて、エロゲ業界に進出する。それ以来、丸込は新作「人妻アイランド」の制作資金が足りないといって、事あるごとに組長に金をせびりにやって来るのだった。若頭のマサは丸込を信用しなかったが、組長はすっかり金に目がくらみ、丸込のいいなりになっていた。組長が丸込に渡した金はどんどん膨らみ、ついには本家に収めるはずの上納金にまで手を付けていた。そんな中、マサは「人妻アイランド」がすでに販売されているエロゲである事を知る。丸込はそれを使って、さも制作中のゲームであるかのように見せて、組長達を騙していたのだ。マサは制作現場に乗り込むが、すでに丸込は金だけ持って雲隠れしていた。上納金を払えなくなった組長とマサは本家に捕まり、ドラム缶に入れられてコンクリートを流し込まれる。一方、丸込は次のカモを相手に交渉を開始していた。
音響編(第2巻~第3巻)
人手が足りないエリコムでは、神田太陽にも分担作業としてシナリオの執筆がまわってくる。そして太陽はエリコムの音響スタッフである琴音と共に、スタジオでのボイス収録にも立ち会い、忙しい日々を送っていた。そんな中、ヨーロッパの大物指揮者、ウルリッヒが初来日する。来日の目的は、彼の一番弟子であり、100年に一人という天才バイオリストである琴音をヨーロッパへ連れ戻す事だった。エリコムへやって来たウルリッヒは、エロゲなど認めず、無理矢理琴音を連れていこうとする。かつて琴音がウィーンに留学中、一番の親友だったのは、ウルリッヒの実の娘ハンナだった。しかし音楽の才能にしか興味のないウルリッヒは、ハンナが練習中に倒れて危険な状態になっても、琴音の演奏と練習を優先するような男であり、琴音が頑張るほど周囲の人達から笑顔が消えていった。その事がトラウマとなり、琴音は音楽の才能をエリコムの仲間達に隠していたのだった。太陽から、今の琴音にはみんなを明るくする才能があると言われた琴音は、音楽への衝動が急激に湧きあがってくるのを感じる。頭の中に次々とメロディーが浮かんできた琴音は、それを五線譜に書き連ねていく。書き上がった楽譜を見たウルリッヒは、その素晴らしい出来映えに驚嘆し、ついにいまの琴音を認めるのだった。1週間後、エリコムのスタッフは、貸し切りのホールで行われる琴音とウルリッヒのオーケストラ演奏に招待される。そこで披露されたのは、太陽が考えた勇者ジャッジメントを歌詞にした見事なオペラだった。そしてウルリッヒに琴音を連れ戻すよう頼んだのは、ハンナであった事がわかる。かつての親友と仲直りができた琴音だったが、引き続きエリコムで仲間と共にエロゲを作る道を選ぶのだった。
不正コピー編(第3巻~第4巻)
エリコムは新しいアルバイトとして、神田太陽に続く二人目の男性スタッフとなる、大学生の沖野を採用する。沖野からエロゲ会社「柏党」が不正コピーによる経営不振に苦しみ、倒産した事を知った月島英理子が、柏党にいた知り合いに連絡を取ると、発売直前のゲームを不正コピーされた事を知る。そして、発売前のゲームを盗み出してコピーし、ネット上にバラまく「ゴッド」と名乗る男の存在をつかむ。ゴッドは、アンダークラウンドの動画サイトを使って、発売前のエロゲをレビューする生放送を配信する覆面の男だった。その放送で、ゴッドは発売前のクソゲーを公開処刑する「ゴッド裁判」を開き、視聴者の意見も参考にして審判を下すという。ゲームが面白ければ無罪、クソゲーなら有罪として、有罪ならプロテクトを外して全世界へ無料でばらまき、作った会社が潰れればゴッドとユーザーの勝利というものだった。視聴者はタダでゲームを手に入れたいために、どんなゲームだろうと有罪に投票する。そんなゴッド裁判の次のターゲットはエリコムの新作だった。不正を許せない沖野はゴッドの生放送中に抗議するが、その事がゴッドの反感を買い、エリコムの新作がタダで配られるという噂が広まってしまう。予約のキャンセルが相次ぎ、さらにはゴッドがエリコムスタッフの個人情報までをネットに公開。太陽が女性スタッフを食いまくっているというデマまで拡散し、リア充撲滅を掲げるユーザーがエリコム本社を襲撃する。ネットから遮断したエリコム社内の情報が盗まれている事にスタッフ間に不信感が広がり、入ったばかりの沖野が疑われそうになるが、沖野を信じる太陽は芽衣と協力して、ゴッドが無線LANルータと偽造検索サイトを使ってエリコムから情報を盗み出していた事を突き止める。太陽はゴッドの居場所を突き止める「ゴッドフィッシング作戦」を発案し、居場所の特定に成功。英理子は犯罪者ゴッドに鉄槌を下すのだった。
倒産編(第4巻)
エリコムに仕事を依頼している岩倉の会社が倒産し、入金も断たれた月島英理子はエリコムをたたむ決断を下す。聖美や芽衣といった元エリコムのスタッフ達は、いまや爆発的な売り上げを誇るソーシャルゲーム「モンスターエレクトラ」を開発・運営する会社に再就職。それは桐崎京市が経営する会社だった。一方、行き場のなくなった英理子は神田太陽のアパートに転がり込む。英理子の荷物は、光ディスク1枚だけ。それは英理子の心の最後の支えであり、かつてのエロゲ黄金時代の思い出が詰まっているという。
時は、英理子が18歳だった頃に遡る。大学に入学したばかりの英理子はPC研究会に入部し、そこでゲームを作る光山一郎に出会う。ひょんな事から英理子がイラストを描ける事を知った一郎は、自分が考えたシナリオと組み合わせて恋愛シミュレーションゲームを作る事を思いつく。サークル仲間達でゲーム作りを始めると、そこへ経済学部の優等生である京市も加わり、京市はエロゲにして売れば儲かると、仲間を説得するのだった。完成したゲームは大ヒットし、1億円の利益を生み、サークル仲間達は大金を手にした。京市はサークル仲間に続編の制作を持ち掛けるが、一郎だけをグループから外そうと画策する。利益のみを追求する京市にとって、複雑で金のかかるシステムのゲームを作りたがる一郎が邪魔だったのだ。両親が事業に失敗して多額の借金を抱える一郎は、学校をやめようとするが、英理子は力を合わせてゲームを作ろうと説得する。しかし後日、京市から一郎抜きで新しいゲーム会社を立ち上げ、英理子がその社長に就任する事を聞いた一郎は、失意のまま金策に走る中、トラックに轢かれて帰らぬ人となる。英理子は一郎の遺品であるノートPCに残されていた書きかけのシナリオとプログラムを見つける。そしてその日記に書かれていた、いつかみんなで力を合わせる理想の会社を作りたいという遺志を受けて、のちにエリコムを立ち上げたのだった。一郎と英理子を失った京市の事業は失敗した。そして、英理子が一郎が遺した最後のゲームを持って、一郎の理想を追いかけている事を知った京市は、それを潰す事が目的となった。
仲間の事を第一に考えてエリコムをたたんだ英理子だったが、太陽はそれなら自分だって英理子の事を見捨てはしないと、エリコム最後のゲームを作ろうと提案する。英理子が持つ旧式の光ディスクを読み込める機械をなんとか手に入れた太陽は、そこから一郎が遺したゲームのデータをサルベージし、足りないものを作って完成させるために動き出す。新しい会社でのソーシャルゲーム作りに慣れ始めた聖美達も、英理子といっしょにゲームを作る道を選んで退職し、みんなでお金を出し合って株式会社、新エリコムの立ち上げを提案する。ファミレスで作業をする英理子や太陽達のもとに宝嶋原や遥香も加わり、再びゲーム作りを始めるのだった。
登場人物・キャラクター
神田 太陽 (かんだ たいよう)
女性だけのエロゲ制作会社「エリコム」に拾われた男性。大手商社で出世街道を走るビジネスマンだったが、社内の陰謀に巻き込まれて退社した。商社時代は、成功も失敗も自己責任というポリシーで、弱者を容赦なく切り捨てる冷血商社マンだったが、エリコムでスタッフ達と力を合わせるモノ作りを学び、仲間を思いやる熱血ビジネスマンへと変わった。 有能な人物だが、ゲームやエロゲ業界には疎く、エリコムではアルバイトとしてエッチCGにモザイクを入れるのが主な仕事。つねにスーツにネクタイ姿。
月島 英理子 (つきしま えりこ)
エロゲ制作会社「エリコム」の社長を務める女性。捨て猫を保護するついでに、その近くで行き倒れていた神田太陽を拾い、アルバイトとして雇っている。太陽いわく、ブティックやレストランの社長の方が似合いそうな、上品で大人っぽい美人。スタッフ数もそれほど多くない小さなソフトハウス「エリコム」を立ち上げ、厳しい制作スケジュールや資金繰りに苦心しながらも経営している。 エロゲ業界での経験は長く、業界に知り合いも多いが、太陽が年齢について追及する事を許さない。
聖美 (きよみ)
エロゲ制作会社「エリコム」の女性スタッフ。グラフィックを担当する。アルバイトとして入った神田太陽の最初の教育係となる。エロゲ好きで、いつもぼーっとしている。見た目にはあまり気を配らず、ボサボサの黒髪を左右でまとめ、タンクトップ姿。巨乳の持ち主で、液晶タブレットの上に胸を乗せて作業をしている。
遥香 (はるか)
エロゲ制作会社「エリコム」で企画とシナリオを担当していた女性。ポニーテールの髪型で、眼鏡をかけた幼い見た目をしている。もともと純愛小説を執筆して同人誌即売会で無料で配布していたところを、エリコム社長の月島英理子によってスカウトされた。英理子からは、純愛ものを書かせたら天才的なシナリオライターと評価されている。大手ゲーム会社「水星堂」からスカウトされてエリコムを去るが、水星堂の社長である黒長から酷使されて倒れる。
芽衣 (めい)
エロゲ制作会社「エリコム」の女性スタッフ。チーフプログラマーを務める。ツインテールの髪型で、ツリ目の、少女のような外見をしている。プログラムだけでなく、絵や文章の知識もあり、演出全般を担当する優秀なスタッフ。月島英理子にあこがれており、一番英理子の役に立っているのは自分だという自負があるため、仕事ができないくせに英理子にかまってもらっている神田太陽にヤキモチを焼いている。 カリフォルニアのシリコンバレーの生まれで、父親は数多くの製品で世の中を変えた、ITの革命児と呼ばれた人物。幼い頃からコンピューターが身近にあり、プログラム技術を身につけると、カリフォルニアの大きなゲームメーカーに就職した。しかし、英理子が作った1本のエロゲに感銘を受け、日本へやって来てエリコムに入社した。
芦屋 美野里 (あしや みのり)
エロゲ制作会社「エリコム」の女性スタッフ。背景担当のグラフィッカー。寝袋裸族で、いつも裸のまま寝袋に入って会社の床で寝ている。出社や帰社する時以外はつねに全裸。起きるとタロットカードでその日の運勢を占うのが日課。スタッフからは「ミノちゃん」の愛称で呼ばれる。
マコト
エロゲ制作会社「エリコム」の女性スタッフ。ショートカットの髪型でベレー帽をかぶっている。塗り担当で、まじめな性格を見込まれて、塗りチームのチーフを任されている。得意な塗りは男の乳首。
琴音 (ことね)
エロゲ制作会社「エリコム」の女性スタッフ。音声を担当する。音響関連の手配、ボイスや効果音の切り出しなどが主な仕事。趣味はギター集め。会社ではみんなのムードメーカーで、何の取り柄もない凡人を装っていたが、実は世界的な大物指揮者、ウルリッヒから、100年に一人の天才、音楽の神に愛された奇跡のバイオリニストと評される人物。 かつてはウィーンにバイオリン留学し、ウルリッヒに師事していた。
沖野 (おきの)
エロゲ制作会社「エリコム」にアルバイトとして雇われた男子大学生。かわいらしい顔立ちで、聖美からは猫みたいでかわいいと評される。ほかのゲーム会社でのバイト経験も多く、即戦力としてエリコムに採用された。おばあちゃん思いの優しい性格で、祖母は焼き鳥屋を経営している。エロゲを愛しており、ゲームを盗み出して不正コピーをネットにバラまくゴッドの事が許せず、ゴッドの生放送中に不正を糾弾する書き込みをし、ゴッドのエリコムへの怒りを買ってしまう。
岩倉 (いわくら)
岩倉コーポレーションの社長を務める男性。エロゲ制作会社「エリコム」にエロゲ制作の仕事を依頼している。非常に長い黒髪をオールバックにして後ろに流し、白目でスーツ姿という威圧感のある風貌で、いつもエリコム社員にはヤクザと間違えられている。エリコムにとってはメインの取引相手だが、エリコムに無茶な依頼をしてくる事もしばしば。
宝嶋原 (たからしまばら)
ゲーム開発を手掛ける株式会社チューズデイソフトの社長を務める男性。シナリオライターとしてデビュー後、チューズデイソフトを興し、数々の名作を発表して、ゲーム史の一時代を築いた。月島英理子にとっては業界の大先輩で、10年来の知り合い。宝嶋原が作った「マジック・コンドーム」(通称マジ・コン)はエロゲ界永遠の名作で、究極の「泣きゲー」と呼ばれる作品で、聖美にエロゲ業界入りのきっかけを作った。 しかし、経営に行き詰まってチューズデイソフトを倒産させ、社員に未払いの給料を支払うために、続編となる「マジ・コン2」を桐崎京市に売り渡した。
桐崎 京市 (きりさき きょういち)
トラブルで制作が止まった企画を安値で買い叩いて儲ける「回収屋(サルベージャー)」と呼ばれる業界の嫌われ者。スーツ姿で、眼鏡をかけた冷酷そうな目つきの男性。利益を上げる事にしか興味がなく、宝嶋原から買い叩いた「マジ・コン2」を、話題作りのために未完成のクソゲーのまま売り出そうとした。実は月島英理子とは大学生時代からの知り合いで因縁がある。 のちにソーシャルゲームを開発・運営する企業の社長として大成功を収める。
黒長 (くろなが)
家庭用ゲームの大作も手掛け、海外にもファンが多い大手ゲーム制作会社「水星堂」の社長を務める男性。サングラスに分厚い唇、モヒカン頭が特徴。ワンマンなうえ、社員に無茶なノルマや要求を強いるブラックな人物。かつてヒットを連発した企画チーフが、仕事に見合った報酬が支払われない事で水星堂を退社した事を根に持っており、それ以来スタッフの事をまったく信用しなくなった。 企画が終われば企画スタッフを予告なしに全員クビにし、次はグラフィッカーを雇うといった、コストを重視したスタッフ使い捨ての経営をする。
アユリン
ライブイベントで大会場を満員にするほどの人気を誇る声優の女性。無名時代にエリコム作品の声を担当していた関係から、ビッグになった今もエロゲ用の別名義で、エリコム作品の仕事を請け負ってくれている。
丸込 進 (まるこめ すすむ)
ITプロデューサーを名乗る若い男性。軽めのパーマで襟足だけを長く伸ばしている。その正体は、エロゲは儲かると口説いて制作費を騙し取って雲隠れするという業界ゴロ。たとえ相手がヤクザだろうとカモの相手に選び、暴力団の小學組から大金を騙し取る。
マサ
暴力団の小學組で若頭を務める男性。ツンツンヘアに顎鬚、サングラスをかけて顔に刃物傷があり、ノーネクタイにスーツという、いかにもヤクザという風貌をした武闘派。丸込進の持ってきた、エロゲ業界に進出するという儲け話に組長が乗り気になり、丸込の事を怪しみつつも、組長の判断に逆らえずにいる。
ウルリッヒ
世界的に有名なヨーロッパの大物指揮者。年齢は50代ほどの男性。ウィーンにバイオリン留学していた琴音の才能に惚れこみ、指導にあたっていた。音楽と才能を最優先とし、実の娘で、琴音の親友でもあるハンナが倒れて危険な状態になっても、琴音の練習を続け、琴音が練習を中断する事も許さなかった。琴音をヨーロッパへ連れ戻すために来日する。
ゴッド
アンダーグラウンドの動画サイトを使って、発売前のエロゲレビューを生配信する覆面の男性。発売前のゲームを盗み出してレビューし、クソゲーという審判を下しては、プロテクトを外して全世界へ無料でばらまき、ゲーム会社を倒産に追い込むという犯罪者にして愉快犯。不正コピーをやめろという書き込みを、次のレビューのターゲットと予告していたエリコムの社員によるものだと断定し、エリコム社長とスタッフの全裸土下座写真をネットにアップするよう要求してくる。
光山 一郎 (みつやま いちろう)
月島英理子が大学生時代に入部したPC研究会の先輩で、サークル仲間。ボサボサの頭に無精ひげを生やした男性。工学部の3年生で、いつも部室でゲームのプログラムを書いており、サークル仲間からも変わり者呼ばわりされている。地味なゲームばかり作っていたが、英理子が絵を描ける事を知ると、シナリオと仕様を進めていた恋愛シミュレーションゲームの制作に乗り出す。 仲間が一丸となってゲームを作る喜びを知るきっかけを与えてくれた英理子に、照れながらも感謝の気持ちを伝えた。しかし、同じゲーム制作仲間だった桐崎京市から裏切られ、失意のうちに交通事故で他界した。
クレジット
- 原作
-
はまむら としきり