エロスの種子

エロスの種子

男と女が織りなすエロスの世界を、一話完結のオムニバス形式で描いた悲恋の物語。戦前から現代にかけて、それぞれの時代を生き抜いてきた人々が、性に目覚めて虜になる、あるいは性によって身を滅ぼすさまが耽美に描写されている。「グランドジャンプPREMIUM」2016年1月号から2018年5月号にかけて不定期に掲載されたほか、「増刊グランドジャンプめちゃ」2017年11月29日号に掲載された作品。vol.2の巻末には「グランドジャンプPREMIUM」2017年5月号に掲載された、作者のもんでんあきこと小説家の桜木紫乃による対談も収録されている。

正式名称
エロスの種子
ふりがな
えろすのしゅし
作者
ジャンル
悲恋
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あらすじ

vol.1

昭和初期。大学生の蒼井孝太郎は、彼が通う大学の教授を務める日下部善文の家に、書生として住み込むことになる。善文には20歳以上も歳の離れた美しい妻の日下部珠子がおり、ある日、珠子と二人きりになった蒼井は、誘惑に負けて彼女と関係を持ってしまう。ところが、善文はそれを知っても二人の関係に憤ることはなかった。それから20年の歳月が流れた頃、裕福な実業家となった蒼井の自宅に、一人の若い美女が訪ねてくる。その女性の顔を見た蒼井は驚愕し、彼の脳裏に刻まれた過去の異常な体験の記憶がよみがえる。(第一話「因果」。ほか、3エピソード収録)

vol.2

昭和30年代、高度成長から取り残された地方の古い造り酒屋の嫁となった迫田妙子は、嫁いで3年が経過しても子供に恵まれないことを悩んでいた。嫁をただ子供を産む器としてしか見ていない病床の義母は、妙子を「産まず女」と罵り、陰湿ないじめを繰り返していた。夫の迫田幸治も妙子の肉体だけが目的という遊び人であり、妙子は愛のない家庭で陰惨な日々を送っていた。そんなある日、義母の往診で訪れた医師の塚本の優しさに触れた妙子は、次第に彼に惹かれていく。その後、不妊を理由に離縁を申し出た妙子は、幸治から意外な事実を聞かされる。そして幸治の本心を知った妙子は、ある大胆な企みを実行するのだった。(第五話「産む女」。ほか、3エピソード収録)

登場人物・キャラクター

蒼井 孝太郎 (あおい こうたろう)

第一話「因果」に登場する。大学に通う苦学生の青年で、まじめでおとなしい性格をしている。生活費を稼ぐためにアルバイトに追われており、つねに睡眠不足気味。そのため講義で居眠りをすることが多く、それを見かねた日下部善文の勧めで日下部邸の書生となる。

鞠子 (まりこ)

第二話「人形」に登場する。戦中に戦災孤児となった18歳の少女。廃墟にいたところを松岡に見そめられ、松岡の家で暮らすようになる。少女と大人の女性との中間という、この年代にしかない女性の魅力あふれる美少女。

奥村 凜 (おくむら りん)

第三話「ジゴロ」に登場する。奥村雅美の娘。気性の激しい母親とは正反対の性格で、小学生の頃から家事のいっさいをこなし、料理もうまい大人びた美少女。母親を嫌っているが、井崎六郎とは仲がいい。

井崎 六郎 (いざき ろくろう)

第三話「ジゴロ」に登場する。元プロボクサーの青年男性。プロボクサー時代には世界タイトル戦を目前にして網膜剥離を患い、無念にも引退して暴力団員となった。奥村雅美とは内縁関係で、彼女の娘の奥村凜とも仲がいい。

鈴木 一子 (すずき いちこ)

第四話「マリーゴールド」に登場する。白人と日本人のハーフで、18歳の少女。親に捨てられて孤児院で育った過去を持つ。行き場をなくしてストリップ劇場「ロマン座」で「マリー」という名の踊り子となる。踊りに関しては研究熱心で、たちまちスターの座を射止める。

(はやし)

第四話「マリーゴールド」に登場する。ストリップ劇場「ロマン座」の支配人を務める男性。若い頃はコックを目指していたが戦災で家族を亡くし、自暴自棄になって風俗の世界に足を踏み入れた。面倒見がよく鈴木一子をはじめ、踊り子には親身に接し、得意の料理の腕を奮って特製の唐揚げを振る舞う。

迫田 妙子 (さこた たえこ)

第五話「産む女」に登場する。地方の造り酒屋の迫田家に嫁いで3年になる20代の美女。働き者の若奥様として使用人たちからは慕われているが、まだ子供ができないことで姑からは陰湿ないじめを受けている。子宝に恵まれないことで、迫田妙子自身を責め続ける一途な性格をしている。

八代 光彦 (やしろ みつひろ)

第六話「ラブドール」に登場する。ラブドール技師を務める青年男性。制作会社から注文を受けて仕事する個人の下請け業者で「ヤシロ工房」の経営者でもある。本物そっくりな人形を造形する腕前には定評があり、八代光彦のオリジナル作品「天使シリーズ」は特に人気が高い。美術品のみを好む芸術家気質で、生身の女性を毛嫌いしている。

麻生 遥 (あそう はるか)

第六話「ラブドール」に登場する。謎の雰囲気を漂わせるフリーライターの美人女性。八代光彦が制作したラブドールのファンで、自分に似せたラブドールの制作を光彦に依頼する。

椎名 順子 (しいな じゅんこ)

第七話「縄迷宮」に登場する。六畳一間のアパートで、森川浩介と同棲生活をしている女子大学生。生活に窮しており、アルバイトで昭島薫が描くSM画の緊縛女のモデルをしている。

高梨 千代 (たかなし ちよ)

第八話「落雁」に登場する。戦時中に陸軍の高官の妾となった美人女性。子供が一人いたが、ある事情で夭逝しており、その悲劇を背負って生きている。息子の月命日には仏壇に落雁の供物を欠かさない。

日下部 善文 (くさかべ よしふみ)

第一話「因果」に登場する。大学教授を務める中年の男性。蒼井孝太郎の恩師でもあり、生活苦の彼をおもんばかって自宅に書生として迎えた。豪邸で歳の離れた妻の日下部珠子と二人暮らしをしており、謎を秘めた雰囲気を漂わせるインテリジェンスあふれる人物。

日下部 珠子 (くさかべ たまこ)

第一話「因果」に登場する。日下部善文の妻で、まだ20代前半のため、夫とは親子ほど歳が離れている。幼さの残る可憐な美女で、おとなしく忠実に夫に従う貞淑な性格をしている。同世代の蒼井孝太郎と親しくなり、やがて関係を持つようになる。

日下部 透子 (くさかべ とおこ)

第一話「因果」に登場する。日下部珠子の娘で、戦前に出生している。戦後、20歳になった時に蒼井孝太郎を訪ねた。母親と瓜二つの美しい容姿で、謎めいた雰囲気を漂わせ、応対した蒼井を驚かせる。

松岡 (まつおか)

第二話「人形」に登場する。元軍人である中年の男性。戦時中は海軍で駆逐艦の艦長だったが、敵の攻撃によって撃沈されて右腕を失い、顔にはやけどを負う。戦後は山奥の一軒家に引きこもり、従姉妹の紫乃と二人きりでひっそりと暮らしている。

紫乃 (しの)

第二話「人形」に登場する。容姿端麗な中年の女性。離婚して従兄弟の松岡の家で暮らしている。前夫とのあいだにできた子供を流産し、女性の機能を喪失するという悲惨な経験を持つ。鞠子に若き日の自分の姿を投影し、彼女に女の歓びを教える役割を担う。

奥村 雅美 (おくむら まさみ)

第三話「ジゴロ」に登場する。スナックを経営するママで、離婚歴がある。実娘の奥村凜と、内縁関係にある井崎六郎とマンションに三人で暮らしている。自由奔放な男好きで、しかも極端に嫉妬深いという気性の激しい性格の持ち主。

オノちゃん

第四話「マリーゴールド」に登場する。プロのミュージシャンの青年で、長髪にサングラスをかけている。ストリップ劇場「ロマン座」に足しげく通う常連客で、気分が乗ると鈴木一子をはじめとした踊り子の動きに合わせてタンバリンを奏でてくれる。ロマン座の雰囲気を心から愛している。

迫田 幸治 (さこた ゆきじ)

第五話「産む女」に登場する。地方の造り酒屋である迫田家の跡取り息子で、迫田妙子の夫。働き者の妙子の奮闘を尻目に遊び惚ける道楽息子。迫田幸治自身の秘密を隠し、ひと目惚れした妙子と結婚した自分勝手な性格をしている。

塚本 (つかもと)

第五話「産む女」に登場する。迫田家の主治医の青年男性。「塚本医院」という診療所を経営する開業医を務める。祖父がロシア人のため、色白で彫りが深いハンサムな顔立ち。姑にいびられ続ける迫田妙子に同情して心を寄せる。

昭島 薫 (あきしま かおる)

第七話「縄迷宮」に登場する。日本画家の青年。祖父からゆずり受けた広大な大邸宅で、一人暮らしをしている孤高の芸術家。ペットとして大型犬を飼っている。幼少時の悲惨な体験を胸に秘めている。

森川 浩介 (もりかわ こうすけ)

第七話「縄迷宮」に登場する。学生運動に精を出す学部セクトの過激派幹部を務める、大学生の青年。六畳一間のアパートで椎名順子と同棲生活をしている。貧乏学生で生活費をすべて順子に頼り切っている。

三浦 (みうら)

第八話「落雁」に登場する。憲兵を務める青年男性。陸軍高官の命を受けて高梨千代の家に日参し、彼女の護衛と見張り役を担当する。まじめな性格ながら、次第に千代に惹かれていく。10歳の息子がいる。

場所

ロマン座 (ろまんざ)

昭和40年代に流行ったストリップ劇場で、鈴木一子をはじめとした踊り子を大切に扱う支配人の林の努力によって、多くの常連客が集う人気店。だが高度成長期に入り、次第に廃れていく運命をたどる。

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