うたかたの日々

うたかたの日々

ボリス・ヴィアンの『日々の泡』を漫画化した作品。資産家で22歳のコランと奇妙な病を患っているクロエの愛が少しずつ壊れていく物語。シュールな設定、イマジネーションを掻き立てられるセリフの数々で、不思議な世界の悲恋を描く。

正式名称
うたかたの日々
ふりがな
うたかたのひび
作者
ジャンル
悲恋
 
不条理・シュール
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概要・あらすじ

金持ちの青年コランは、女友だちの飼い犬の誕生パーティーで運命の女性クロエに出会う。コランは、全財産を哲学者パルトルの著作に捧げているため、経済的な問題もあって、結婚できない親友シックアリーズの前で婚約を発表する。その発表の席で財産の4分の1をシックに分け与え、これで全員が幸せになれると宣言する。

しかし、シックはその財産をもパルトルの書物に使い果たした。新婚のクロエは睡蓮にとりつかれ、右肺の中に睡蓮が芽吹き、痛みで外出もできないようになってしまう。コランの財産のほとんどはクロエの治療に使われ、コランは初めて労働を経験。やがて、クロエの右の乳房の下から睡蓮が飛び出し花をつけた。

一方、アリーズシックのために原稿執筆を中断して欲しいとパルトルに頼むが、これを拒否され彼を殺してしまう。そのような中、シックは税金が払えなかったため、本が差し押さえられそうになったところを抵抗し、射殺されてしまう。右の肺を摘出したクロエだったが、左の肺も同じ病に侵されていた。

コランが就いた役所の仕事は、不幸の知らせを報告すること。そして自分が、明日、クロエが死ぬという通達をすることになるのだった。

登場人物・キャラクター

コラン

資産家で、起きているときはだいたい上機嫌。あとは寝ているという、生まれも育ちも良い青年。クロエと結婚するまで、金のために働いたことはなかった。銀行、兵器工場と仕事を転々とし、最後は高給取りである「不幸の知らせ」を配達する役人に採用される。配達する先々で忌み嫌われる。

クロエ

コランに、「きっとデューク・エリントンにアレンジされたような女性」と評された。コランとは一目惚れ同士で、1回デートをしただけで婚約する。結婚直後、胸の痛みで倒れ、医者から「睡蓮がついている」と宣告され、ほぼ寝たきりとなった。右乳房の下から睡蓮の花が開花し、切除したが左胸まで侵されており、死亡する。

シック

コランとは親友だが、哲学者のパルトルに傾倒しており、全世界に訳されたパルトルの著作を全て買い集めており、部屋中が本で埋まっている。税金を滞納したため、本が差し押さえられそうになったところを抵抗し、射殺される。

アリーズ

ニコラの姪。パルトルを敬愛することでシックと恋人になるが、シックの世界にはパルトルしか必要がないことを知り、自分の居場所を見つけられなくなる。これにより、パルトルを「心臓抜き」(描かれていないが小型の機械と思われる)で殺す。錯乱し、パルトルの著作を売る本屋も悪いと店主を殺害、放火。 火の中で自らも死んでいく。

ニコラ

コランの屋敷の料理人。世界的に有名なJ・グッフェの弟子と思われる。作る料理は美味傑作。見た目はハンサムで、毎日2通のラブレターが違う女の子から届く。アリーズという美人の姪がおり、「たまには平服で一緒に食卓へ着いてくれ」というコランの命令に、黒人ヒップホップ系のファッションで現れた。 私生活は不明。コラン没落後もしばらく給仕をし続けるが、主人同様に薄汚くなり、正式に解雇されるや「あなたにはうんざりだ」と繰り返し言い残して消える。

J・S・パルトル (じぇい・えす・ぱるとる)

実在の哲学者サルトルがモデル。作品内ではその哲学は語られないが、シックからは神同様に崇められている。その存在を嫉妬されたアリーズに殺される。

イジス

ニコラの恋人。ニコラに送られ、一人でクロエの見舞いに訪れた。

おちびさん

コランの家に住むハツカネズミで、人語を解し、タイルを磨いたりしている。

その他キーワード

睡蓮がつく病気 (すいれんがつくびょうき)

『うたかたの日々』に登場する奇病。治療法は薬品の他に、病人の部屋の中を花で取り囲み、睡蓮を怖がらせることと、睡蓮を成長させないために1日2匙の水しか飲まないこと。

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