概要・あらすじ
台湾の黒社会組織で、幼い頃から殺人兵器として養成されて育ったグラス・ハート。暗殺を繰り返していくうちに心が壊れ自殺を図るが、組織の力で心臓移植が行われ、奇跡的に一命を取り留める。じつは、彼女には冴羽獠の最愛のパートナー槇村香の心臓が移植されていた。槇村香の心臓を移植された事で、死ぬことしか考えていなかったグラス・ハートの心に変化が生まれる。
そして無意識のうちに槇村香のパートナーである冴羽獠を求めて新宿を訪れて彼と出会い、香瑩という名前をもらい新しい生活が始まる。
登場人物・キャラクター
香瑩 (しゃんいん)
幼い頃から殺人兵器として養成され、殺人エキスパート集団の朱雀部隊のメンバー。コードネームはグラス・ハート。初登場時は15歳だが、年齢よりもかなり大人っぽい。暗殺を繰り返していくうちに心が壊れ、14歳の時に自殺を図る。しかし組織によって槇村香の心臓を移植され一命を取り留め、移植された槇村香の心臓に導かれるように新宿にたどり着き冴羽獠と出会う。 グラス・ハートというコードネームしかなかったが、香瑩という名前をもらい、冴羽獠の娘として新しい生活を始める。
冴羽 獠 (さえば りょう)
新宿を拠点とする、通称シティーハンターと呼ばれる凄腕のプロの始末屋。スケベで美女を見ると「もっこり」するが、そのたびに槇村香の心臓を移植された香瑩から天誅をくらっている。香瑩の実の父である李堅強の願いと、香瑩の中に意識として残っている槇村香の想いから、香瑩の父親役を引き受け、新宿で共に暮らし始める。 香瑩という名前は李堅強がつけたグラス・ハートの本名だが、父であることを明かさないと決めた李堅強に代わり、冴羽獠が彼女に新たに名づけた形になっている。
槇村 香 (まきむら かおり)
冴羽獠の最愛のパートナー。ウェディングドレスを着て記念撮影をしようとしていた日に、車に轢かれそうになった子供を助けて2000年5月12日に28歳で交通事故で死亡する。ドナー登録をしていたため脳死確定後に心臓を摘出される。その心臓は輸送中に強奪され、グラス・ハートに移植された。 そして移植された香瑩の中に意識として残り、彼女に「生きて」と伝える。冴羽獠と出会った頃は看護師をしていて、傷ついて倒れていた冴羽獠を助け、名前の無かった彼に冴羽獠という名前を付けた。
劉 信宏 (りゅう しんほん)
香瑩とは訓練学校時代の友人で彼女に恋心を抱いていたが、最終試験で香瑩と戦い殺された。しかし奇跡的に仮死状態になり安置所で息を吹き返し、台湾マフィア正道会の戦闘部隊「青龍」に配属される。自分の命は香瑩に貰ったものだと思っていて、彼女の命を守るために自分の命を使うと心に決めている。 そのため正道会に命を狙われる香瑩を助けようと命を投げ出すが、冴羽獠に助け出される。その後、新宿で暮らす事になった香瑩の側にいたくて、COFFEE HOUSE CAT'S EYEで住み込みのバイトとして働くようになる。
ファルコン
元傭兵の殺し屋。いかつい身体に頭は坊主でサングラスをしているが、パジャマは猫模様の可愛らしいものを着ている。失明して裏家業を引退し、COFFEE HOUSE CAT'S EYEという店を経営している。店のガラスは防弾ガラスでバズーカーも装備。ミキと出会い彼女を養女として引き取り、共に暮らし始める。
野上 冴子 (のがみ さえこ)
冴羽獠の古くからの知り合い。現在は警視庁新宿西警察署の署長。30歳後半で未だに独身。何度もお見合いをしているが、見合い相手に自分が連続猟奇殺人犯の遠山一真にストーカーされていたことを知られるたびに逃げられている。ストレスが溜まると1人カラオケに行っている。
ドク
冴羽獠の知り合いの医者。眉間の真ん中にほくろがある。新宿のあるビルの3階で「花園診療所」を開いている。昔、看護師として槇村香がここで働いていた。今は「智ちゃん」という冴羽獠が「もっこり」するような看護師の女性がいる。香瑩が新宿で暮らすようになってから、彼女の身体を定期的に診察している。
李 堅強 (り じぃえんちゃん)
台湾最大のマフィア正道会の大ボス。李謙徳という影武者をしている双子の弟がいる。香瑩の実の父親。香瑩が2歳のときに手下の謀反により彼女と妻を失った。偶然に香瑩が生きて朱雀部隊にいると知った矢先に、彼女は飛び降りてしまい、彼女を救うために心臓の移植をした。暗殺者としての行き方しかしてこなかった香瑩に、普通の生活をさせたいと思っている。 しかし彼女がもう普通の人間に戻ることができないことも解っていて、そんな彼女を冴羽獠に託し、自分は本当の父親だと名乗る事はしないと決意している。
李 謙徳 (り ちぃえんどう)
李堅強にそっくりな双子の弟。兄の影武者をしていて、兄の代わりに狙撃され死亡する。1979年に敵に捕まっていたところを、兄の李堅強に雇われた冴羽獠に助けられている。生涯独身であったが、香瑩のことは自分の娘だと思っており、自分の財産は全て香瑩に譲ると遺言を残している。 その金額は台湾の一年分の国家予算ほど。
陳 (ちん)
正道会のボス直属の隠密部隊である玄武部隊の指揮官であり、李堅強の侍従長。組織内部の反乱を抑えた後、暇を貰ってファルコンが営む喫茶店の隣に中華料理玄武門を開店する。李堅強の代わりに陰ながら香瑩を見守り、余生を過ごす予定。李謙徳が香瑩に遺した財産の後見人でもある。
槇村 秀幸 (まきむら ひでゆき)
槇村香の義兄。刑事であるが、裏ではシティハンターというスイーパーをしている。傷を負い倒れていた冴羽獠が、槇村香に助けられ、槇村秀幸の相棒として押しかけてきてからは二人でシティハンターとして活動している。野上冴子の事が好きで指輪まで用意したが、喧嘩をして渡せぬまま、野上冴子をストーカーしていた遠山一真に殺される。
茅野 夢 (かやの ゆめ)
11歳で東京バイオリンコンテスト最年少優勝者となった少女。香瑩がグラス・ハートとして最後に殺した相手の娘。しかし実の娘ではなく、その事は父から聞いて知っている。父が目の前で穏やかに笑って死に、その後死体が消え、経歴が詐称されていたことをなどを知り、父親が何者だったのか、また死に際の笑顔は何だったのか知りたくて、シティハンターに依頼しにきた。
茅野 (かやの)
茅野夢を育てている義父。茅野夢は知らないが、通り名はマッド・ドッグという殺し屋。ドッグ・ウォーカーという仲間がいる。ドッグ・ウォーカーが依頼を受けて情報収集をし、マッド・ドッグが殺人の実行をしていた。爆弾魔で、人殺しを楽しむかのようにターゲットの周りの人間を平気で巻き込む。 そのことからファルコンからは殺し屋というよりテロリストだといわれている。正道会の組織の人間を何人も殺したため、組織から暗殺命令が出されグラス・ハートに殺された。
遠山 一真 (とおやま かずま)
14歳の中学生の頃に野上冴子に殺人の予告を伝え、それを実行していた。殺人予告の相手は風俗系の女性が多かったが、槇村秀幸の殺人予告のときだけは名指しで予告をしてきた。その時は槇村秀幸を囮にして冴羽獠が遠山一真を捕まえ、野上冴子に引き渡した。しかし少年院を脱走し、その日に槇村秀幸を殺して行方をくらましていた。 25歳となった10年後に、また野上冴子に殺人の予告を伝えてきて殺人を始める。
夏目 芳樹 (なつめ よしき)
画家。槇村香の中学時代の同級生で初恋の人。夏目芳樹も槇村香のことが好きだった。日本での知名度はまだ低いが、パリを拠点に活動していて高い評価を得ている。15歳で渡仏して、個展をするために日本に戻ってきたところ香瑩と出会う。香瑩は夏目芳樹に出会い、心が「キュッ」となる思いをし、野上冴子からそれは恋だと教えられる。 しかし、その想いが香瑩自身のものなのか、槇村香の想いに引きずられているのか解らなくなる。
立木 小百合 (たちき さゆり)
槇村香の実姉。アメリカのニュース誌の編集長。立木小百合が4歳の時に両親が離婚。自分は母に、2歳下の妹の槇村香は父に引き取られた。槇村香に会いにCOFFEE HOUSE CAT'S EYEを訪れ、彼女の死を知る。そして槇村香の心臓が香瑩に移植され、その香瑩がシティハンターの仕事の手伝いをしている事を知り驚く。 槇村香が、そして香瑩が冴羽獠と共にいて幸せなのか確かめるために一週間共に生活することを決め、おしかけてくる。
白蘭 (ぱいらん)
台湾マフィア正道会の戦闘部隊「青龍」での劉信宏の仲間。劉信宏の事が好きだった。「青龍」は司令官の反逆が露顕したあと規模を縮小され、大半の者が残りの三つの部隊に配属変えになり、白蘭は隠密単独任務を主とする、生還率の一番低いといわれる「白虎」に配属された。隼鷹会という正道会と敵対する組織の幹部である早川俊輔の暗殺の手引きの為に、隼鷹会が仕切っている裏カジノのディーラーとしてもぐりこみ、早川俊輔に近づく。 早川俊輔が、自分のことを亡くした娘と重ねていると解っているが、彼を父親のように感じ始め、組織を裏切ってでも彼を守ることを決める。
早川 俊輔 (はやかわ しゅんすけ)
隼鷹会という正道会と敵対する組織の幹部の1人。冴羽獠とは知り合いで、彼がシティーハンターであることも知っている。奈緒という娘がいたが、自分の命を狙う組織が工作した事故で自分の身代わりとなり亡くなってしまう。またそのときに足を負傷し義足となっている。死んだ娘に生き写しの白蘭が、傷を負って自分の前に現れると懸命に介抱して命を救う。 そして彼女が自分を暗殺しようとする組織の人間と知りつつも、娘のように愛し、側に置いている。
高畑 稔 (たかはた みのる)
年商数兆円のベンチャー企業TAKA Internet Interactive Companyという会社の社長だが、見た目は無精ひげをはやし、とても金持ちには見えない。先天性の心臓疾患で成人までは生きられないと言われていたが、心臓移植により30歳を超えるまで生き延びる事ができている。 あるとき偶然に出会った女性を見たとたんに、移植された心臓が激しい動悸をおこし、切ないような気分になり、確証はないがこの女性がドナーの家族であろうと推測する。その女性がドナーの家族かどうか調べてほしいとシティハンターに依頼しにきた。
倉本 綾菜 (くらもと あやな)
綾音という源氏名でぼったくりバーで働いている。16歳のとき、水難事故で脳死になった倉本沙織という双子の姉がいた。その後、倉本沙織の心臓が高畑稔に移植されていたことは知らない。高畑稔は自分が働くぼったくりバーに来ては毎回大金を払っている。しかし、彼に会うとなぜか姉の事を思い出し、複雑な心境になるため、会いたくはないと思ってしまう。
ミキ
不幸せな人の前に現れて幸運をもたらすことから、関わった人たちは「幸運の女の子」と呼んでいる。新宿の地下にある、かなり昔に閉鎖された地下街跡に1人で暮らしているストリートチルドレン。昔は母親のサトちゃんと住んでいたが、冬の雪の日にサトちゃんは亡くなり、死を理解できないミキは一人ぼっちでずっと地下街で母親の帰りを待っていた。 香瑩のなかの槇村香と語ることで、自分の中に母親がいるとわかり、暗い地下街で母親を待つ必要はないと気がつく。そしてファルコンが引き取り共に暮らし始める。
ジョイ・ロウ (じょいろう)
A国のアクション女優。日本でも人気があり、新作の『女傑-ヒロイン-』のプロモーションのために急遽来日した。プロモーション活動が面倒だからという理由で、香瑩に代役を頼みにきた。真の理由は、自分がA国の国王の愛人だった事から、国王が別人に代わっている事を知ってしまい命を狙われているため。 また、国王の30人もいる愛人の中でも、とくに寵愛していた日本人女性とその子供を捜していた。ミキに出会ったとき国王に似ていることに驚き、本当に彼の子供かどうか確かめるためにCOFFEE HOUSE CAT'S EYEに押しかけてくる。
朝倉 朋美 (あさくら ともみ)
冴羽獠が落とした女の子専用携帯を拾った女性。ひっきりなしに女性ばかりから電話がくることから、冴羽獠のことを売れっ子ホストだと思い込む。職業はテレビのキャスター。ちょうど歌舞伎町のホスト事情を取材していたため、冴羽獠に強引に取材対象になってもらった。冴羽獠の事を気に入り、しょっちゅう女性から電話がかかってくる冴羽獠の携帯にイライラして二つにへし折ったり、自分専用のGPS機能付の携帯を渡していつでもどこにいるか解るようにしておくようにさせるなど、かなり強引な女性。
楊 芳玉 (やん ふぁんゆぃ)
傭兵部隊である黒豹の頭で、彼女の事を人は女豹将軍と呼ぶ。傭兵時代に左目を負傷しアイパッチをしている。冴羽獠とは傭兵として同じ戦場で戦った仲。冴羽獠に好意を抱いているが、槇村香という女がいることを知りあきらめた。その際、冴羽獠とはたった一つだけ約束をしていて、それは自分の誕生日である12月25日に誕生日メールを送ってもらうことだった。 しかし約束は破られ、それは冴羽獠に新しい朝倉朋美という恋人ができて忘れたためだと思い、朝倉朋美の顔を見るため彼女をさらった。
新藤 (しんどう)
ミキの小学校の担任の先生。ショートヘアの冴羽獠好みの美女。ミキの小学校入学式の日に、ファルコンが先生の話を聞かない子供達を怒ってドアを壊した事で、ミキがクラスで孤立する事になってしまった。その事や、教頭からファルコンがヤクザだとか、暴力をふるうとかいう悪い話ばかりを吹き込まれ、大問題が起こる前にミキに転校を勧めるよう言われる。 しかし家庭に問題があるからと切り捨てるようなことをしてもいいのかと悩みながら、恐る恐るCOFFEE HOUSE CAT'S EYEを訪れ、ファルコンと話すうちに誤解は解けていく。そしてファルコンのミキに対する愛にあふれた力強い行動を見て、彼のことを好きになる。
クワン・マオ (くわんまお)
T国の現主席の長男で次期国王主席。冴羽獠に鋭利なナイフの光の様な印象の男と評された男。しかし香瑩には妄想超特急みたいな男だと言われている。ノリの軽いダメな男っぽくみえてしまうところがあるが、香瑩の攻撃を受け流したり、彼女の背後を2度もとったりと、底の知れないところがある。 跡目争いが激しいT国で生き残れるような女性を妃にと考えている。そしてシティーハンターに強い娘がいると噂を聞きつけ香瑩に会い、彼女を見初め即プロポーズをして、香瑩の意志に関係なく彼女をT国へ連れて行こうとする。
カメレオン
男にも女にもなれる変装の名人。冴羽獠が「もっこり」しない事から男ではないかと思われるが、本人は認めてはいない。学校で起こった麻薬密売事件を解決してほしいと依頼がきて、潜入捜査をしていた香瑩と出会い、彼女と一戦まじえることになる。戦闘能力はかなり高く、自分と張り合える香瑩に惚れこみ、自分と組まないかと誘う。
集団・組織
朱雀部隊 (すざくぶたい)
『エンジェル・ハート』に登場する集団。台湾最大のマフィア正道会に組織された、殺人エキスパート集団。孤児や、金で買って集めた幼い子供たちに殺人術のみを教育し、殺人マシンを生み出している。過酷な訓練に生き残れるのは20人に1人といわれている。生き残った子供たちは、最終試験で苦楽を共にしてきた訓練生同士の殺し合いをして半分に減る。 その試験に勝ち残ったもののみが正式な部隊員になれる。香瑩はそのメンバーで、エリート中のエリート。
場所
COFFEE HOUSE CAT'S EYE
『エンジェル・ハート』に登場する店。ファルコンが営む喫茶店。新宿の繁華街のど真ん中にある。客はあまりこない。ガラスは防弾ガラスでバズーカも装備している。冴羽獠がよく依頼者とここで会っている。新宿で暮らす事になった香瑩の側にいたくて、劉信宏がここで住み込みのバイトとして働くようになる。冴羽獠が槇村香に想いを伝えた場所でもある。
新宿 (しんじゅく)
シティハンター冴羽獠が拠点としている。香瑩は移植された槇村香の心臓に導かれるようにこの街にたどり着き、この街で冴羽獠と暮らすようになる。シティハンターは新宿駅東口にあった伝言板に「XYZ」と記入する事で依頼を受けていたが、時代は変わり伝言板は撤去されていた。しかし香瑩が新宿で暮らす事が決まり、ここには伝言板が必要だと李堅強の力により、再度設置された。
関連
シティーハンター
北条司の代表作。主人公冴羽獠が、依頼人から受ける様々な問題を超一流の凄腕技術を使って次から次へと解決していく姿を描く。集英社「週刊少年ジャンプ」にて1985年13号から連載。 関連ページ:シティーハンター
エンジェル・ハート 2ndシーズン (えんじぇる はーと せかんどしーずん)
北条司の代表作『シティーハンター』を、家族愛をテーマにリメイクした『エンジェル・ハート』の第2シーズン。中心となるストーリーは存在せず、数話にわたって展開される中編で構成。どんな依頼でもこなすシティハ... 関連ページ:エンジェル・ハート 2ndシーズン