概要・あらすじ
はるか昔、古の北祇の国。数千人の女達が暮らす後宮に、伝説の宮女見習いがいた。彼女の名は王花鈴(おうかりん)。友達が欲しくて、後宮で働くことを決めた花鈴だったが、誰一人彼女に近づこうともしなかった。それは彼女の父が、宮廷を陰で牛耳る極悪非道の悪徳文官・王皓(おうこう)だからだった。邪魔者を平然と拷問・暗殺した悪逆無類の政治家の娘だと聞いただけで、誰もが悲鳴を上げて逃げていってしまうのだ。12月8日に行われる宮中行事・臘祭(ろうさい)を間近に控えたある夜のこと。ほかの宮女見習いの嫌がらせを受け、ひどく落ち込んだ花鈴は、雨に濡れながら一人で泣いていた。するとそこへ小柄な少年が現れ、「風邪をひくよ」と、花鈴に傘を渡して去っていった。後宮にいる少年は、皇帝陛下・暁星(ぎょうせい)ただ一人である。皇帝の優しさに触れた花鈴は、めげずにもう一度友達づくりを頑張ろうと心に決めた。臘祭当日。廷内に羊を届けるため、畜舎に向かった宮女見習いの徐珠(じょじゅ)が、一刻をすぎても戻ってこない。花鈴は自ら申し出て、徐珠を捜しに出かける。その途中花鈴は、美しく装飾された羊を連れた宮女と出会う。宮女は献上の儀に行くというが、不審な点がニつあった。まず、花鈴を怖がらず普通に話しかけてきたこと。そして、花鈴がその宮女の顔を知らないことだった。花鈴は宮女見習いになる際、父・王皓の命令で、後宮にいる人間の氏名と特徴をすべて覚えている。花鈴が知らないということは、彼女は後宮の人間ではなく間者なのだ。慌てて畜舎に駆けつけた花鈴は、着物を奪われて死んでいる徐珠を発見する。正体を見破られたことを察した間者は、花鈴を殺そうとあとを追ってきた。間者の目的は皇帝暗殺だった。後宮には皇位を狙う勢力が複数おり、皇帝の味方は一人もいないという。それを聞いた花鈴は、腕輪に仕込んだ武器で間者を返り討ちにした。皇帝陛下はただ一人自分に優しくしてくれた人である。その恩に全身で報い、後宮で友達づくりを頑張ろう。花鈴は、そう決意を新たにするのであった。
登場人物・キャラクター
王 花鈴 (おう かりん)
宮廷を陰で牛耳る悪徳文官・王皓(おうこう)の娘。父親譲りの目つきの悪さ、ギザギザの歯が特徴の少女。後宮の宮女見習いを経て、正式な宮女となり「寝尚」というお掃除係として働く。極悪非道として名高い父のせいでまったく友達ができないため、家から出ることを計画。後宮で働き、そこで友達をつくろうと考える。後宮で働く条件として、父から定期的な状況報告を義務付けられており、後宮にいるあらゆる人間の氏名と特徴を覚えさせられた。この世に存在するすべての暗殺術を習得しており、腕輪に武器、衣の留め具にノコギリを忍ばせている。自分に唯一優しくしてくれた皇帝陛下・暁星(ぎょうせい)を守るために、彼の命を狙う暗殺者と闘いを繰り広げる。
王 皓 (おう こう)
王花鈴(おうかりん)の父親。宮廷を陰で牛耳る極悪非道の悪徳文官で、目付きの鋭い超絶美形。出世のための拷問・暗殺を当たり前に行い、宮中の誰からも恐れられている。悪い噂も数多く、反逆者の手足をもいでツボに入れ、その生き血で若さを保っているともいわれている。花鈴が宮女になる条件として、定期的な状況報告と隠し武器の携帯を義務づけた。
暁星 (ぎょうせい)
北祇国第五代皇帝。二人の異母兄たちが立て続けに暗殺され、先帝の遺言によってわずか10歳で即位した幼き帝。病弱な小柄な少年で、優しく穏やかな性格をしている。雨の夜、ずぶ濡れで泣きじゃくっていた王花鈴(おうかりん)を見つけ、傘を貸してあげる。後宮を牛耳ろうとする、娥太妃(がたいひ)、憲嫄太皇太后(けんげんたいこうたいごう)、光姫長公主(こうきちょうこうしゅ)の争いに巻き込まれ、命を狙われている。
娥太妃 (がたいひ)
亡き先帝の正一品(せいいっぴん)、麗妃(れいひ)。大将軍の娘でもある。後宮で勢力を分ける三人の女傑のうちの一人。先帝とのあいだに生まれた皇子がいる。12月8日に行われる宮中行事・臘祭(ろうさい)で、皇帝・暁星(ぎょうせい)の暗殺を企て、刺客を放つが失敗に終わる。
憲嫄太皇太后 (けんげんたいこうたいごう)
亡き先帝の生母で、現皇帝・暁星(ぎょうせい)の祖母。後宮で勢力を分ける三人の女傑のうちの一人。絶大な力を持つ後宮の主であり、暁星に大量の政務を押し付けている。
光姫長公主 (こうきちょうこうしゅ)
亡き先帝の一人娘。皇帝・暁星(ぎょうせい)の義理の姉(異母姉)にあたる。後宮で勢力を分ける三人の女傑のうちの一人。兄が二人いたが、いずれも暗殺されている。
張 鴻 (ちょう こう)
王花鈴(おうかりん)の同僚。商家出身で、目の下のホクロが特徴の少女。花鈴から一方的に好かれている。後宮の宮女見習いを経て、正式な宮女となり「食尚」という食事係として働く。6人部屋で花鈴と同室となり、恐れおののく。
周女官 (しゅうにょかん)
居場所がなくなった女官・宮女が暮らす「北の閑宮」にいる女性。たくさんの鳥を飼っている。役人だった父を王皓(おうこう)に殺され、後ろ盾をなくして閑宮に送られる。そのため王花鈴(おうかりん)に恨みを持ち、訪ねてきた花鈴を閉じ込め、毒鳥で殺そうとする。元の地位に戻れることを条件に、皇帝・暁星(ぎょうせい)の暗殺依頼を受諾。毒鳥を皇帝に献上しようとする。しかし、花鈴の鳥寄せの術で、逆に毒鳥の犠牲となって命を失う。
書誌情報
暗殺後宮~暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい~ 6巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2022-02-10発行、 978-4098612451)
第2巻
(2022-07-12発行、 978-4098613298)
第3巻
(2023-01-25発行、 978-4098615803)
第4巻
(2023-07-12発行、 978-4098617364)
第5巻
(2024-03-19発行、 978-4098626328)
第6巻
(2024-07-11発行、 978-4098627882)